特別企画

こんなに出てました! 2020年発売カメラ振り返り(後編:7月〜12月)

先日掲載した前編(1月〜6月)に引き続き、後半では2020年の7月〜12月に発売されたカメラを振り返っていく。

下半期は、特にフルサイズミラーレス機が充実。キヤノンは満を持してEOS R5/R6を、ソニーはこれまでとボディデザインを変え小型化したα7C、ニコンは性能・機能を強化したZ 7II/Z 6IIと廉価なZ 5を、パナソニックは小型化したLUMIX S5を、ライカも価格をおさえたライカSL2-Sを発売している。いずれもキャラクターは異なるが、今後の発展を予感させる新機軸のモデルといえる。

CIPA(カメラ映像機器工業会)のデータによると、5月までは出荷台数が落ち込んでいたが、6月からは増加に転じているのは、その頃に新型コロナウイルス感染拡大による市場への影響が落ち着いてきたことだけでなく、魅力的な新モデルの登場という効果も大きいだろう。

※発売日順。実売価格は12月20日時点

KODAK PIXPRO WPZ2

7月上旬。税込実売価格は1万8,760円前後

防水(水深15m)、耐衝撃(約2mからの落下)性能を有するコンパクトデジタルカメラ。レンズは35mm判換算27-108mm相当、有効画素数は約1,600万。いかにもタフギアらしいデザインが特徴的で、低価格ながらWi-Fi機能も備えている。

ライカM10-R

7月24日発売。税込実売価格は115万5,000円前後

レンジファインダーカメラ、ライカM10シリーズの派生モデル。基本仕様や外観は基本的にスタンダードモデルのライカM10と同じだが、撮像素子を4,000万画素とした。画素数が増えても広ダイナミックレンジを実現しているという。RがResolutionに由来するのは、ソニーのα7Rシリーズと同様。

キヤノンEOS R5

7月30日発売。税込実売価格は50万6,000円前後

「5」の名前が付いたフルサイズミラーレスEOS。レンズ側のIS機構と協調して、最大8段分の効果が得られるセンサーシフト式の手ブレ補正や、8K動画の撮影が可能な点など、従来モデルより上のクラスとして登場。7月末の発売だが、想定以上の人気により本稿執筆時点でも入荷待ちの状態が続く。

パナソニックLUMIX G100

8月20日発売。税込実売価格は11万1,100円前後(LUMIX G VARIO 12-32mm F3.5-5.6 ASPH. MEGA O.I.S.レンズキット)

Vlog動画撮影を意識した、小型・軽量のマイクロフォーサーズ機。3つの内蔵マイクと顔認識機能を連携させ、より好ましい音声記録ができるモードも搭載。EVFも内蔵しており、静止画の撮影にも不満がない仕様。三脚にもなるグリップとのキット(税込実売11万6,600円前後)もある。

キヤノンEOS R6

8月27日発売。税込実売価格は33万5,500円前後

EOS R5の兄弟機であるフルサイズミラーレス機。最大の違いはイメージセンサー(有効画素数)だが、EVFや背面モニターのスペックの差違、情報表示パネルの有無、外装素材など、それぞれ性格が異なる2つのカメラに仕上がっている。

ニコン Z 5

8月28日発売。税込実売価格は18万2,600円前後

4台目のZマウント機は、低価格を意識したフルサイズモデル。連写速度、拡張最高感度、背面モニターの解像度といったスペックにZ 6との差違がある。一方で、ユーザーの求めにより記録メディアスロットはSDデュアルとなり、新しい沈胴式キットレンズ「NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」との組み合わせによる小型軽量性もアピールしている。

ハッセルブラッド907X 50C

9月18日発売。税込実売価格は80万8,500円前後

背面モニターが3.2型に大型化された以外の仕様は、先に発売された限定モデル「907Xスペシャルエディション」と同一。通常モデルとなる本機は外観もクローム仕上げのふちどりを持ち、デジタルバックの「CFV II 50C」をVシステムカメラに装着したとき、より統一感が得られるようになった。

オリンパスOM-D E-M10 Mark IV

9月18日発売。税込実売価格は9万1,940円前後

E-M10は同社OM-Dシリーズのエントリーライン。上位機と異なり像面位相差AFは持たないが、有効2,030万画素となり、連写速度も少しアップしている。背面モニターは下方向に180度開くようになり、グリップ形状の改良とあわせ、自撮りのしやすさに配慮した。

パナソニックLUMIX S5

9月25日発売。税込実売価格は27万5,000円前後

LUMIX S1を小型化し、価格を抑えたモデル。シャッターユニットや手ブレ補正機構を新開発して、S1からのスペックダウンをわずかに抑えている。また、バッテリーは小型化のため容量は少なくなったが、消費電力を抑えることで撮影可能枚数は向上した。キットレンズ「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」の絶妙な画角設定にも注目。

ソニーα7S III

10月9日発売。税込実売価格は44万9,900円前後

α7シリーズの高感度モデルが刷新。裏面照射型CMOSセンサーにするとともに、銅配線にすることで読み出し速度を向上、ローリングシャッター現象を低減している。画像処理エンジンも高速化したBIONZ XRになった。メモリーカードは、SDカードと共にCFexpress Type Aにも対応。

ベクノスIQUI

10月15日発売。税込実売価格は3万2,780円前後

イクイと読む。リコー発のスタートアップ企業が開発した、ペン型の360度カメラ。側面に3つ、天面に1つの合計4つのカメラを使うことで、5,760×2,880の記録解像度を実現している。Amazonや楽天で購入可能。

ソニーα7C

10月23日発売。税込実売価格は22万9,900円前後

ミラーレスαのフルサイズ機では初となるフラットタイプのデザイン。ファインダー倍率が控えめになったり、メモリーカードスロットが1つになるなど小型化が図られた一方で、背面モニターをバリアングル式としたことで動画撮影も考慮されている。

キヤノンiNSPiC REC PIKACHU MODEL

10月29日発売。税込実売価格は1万8,480円前後

基本性能は既存のiNSPiC RECと同じで、液晶モニターがなく、ピントも固定で、とにかく気軽に撮るカメラ。ポケットモンスターのピカチュウをイメージしたモデルだが、なぜピカチュウだけなのか。ポケGOトレーナーの筆者としては、青いカビゴンモデルや、桃色のヤドンモデルにも期待したい。

ニコン Z 6II

11月6日発売。税込実売価格は26万8,400円前後

Z 6と撮像素子は変わらないが、画像処理エンジンが2つになり処理速度が向上。連写速度のアップに加え、メモリーカードスロットがXQD/CFexpress Type BとSDメモリーカードのデュアルスロットになった。また瞳AFの機能を強化。バッテリーはZ 5の同梱品と同じになり、撮影枚数が向上した。

ライカQ2モノクローム

11月19日発売。税込実売価格は81万4,000円前後

35mm判フルサイズCMOSセンサーとズミルックス f1.7/28mm ASPH.を組み合わせたレンズ一体型カメラ「ライカQ2」の派生モデル。カラーフィルターを排したモノクロ撮影専用機となっている。外観はモノトーンで、マット仕上げ。

富士フイルム FUJIFILM X-S10

11月19日発売。税込実売価格は13万2,000円前後

富士フイルムのAPS-Cミラーレスカメラ新シリーズ。上位機のX-H1を小型化し、X-T4の最新機能を詰め込んだようなモデルといえる。撮像素子もX-T4譲り。連写速度やファインダーなどの仕様に違いはあるが、ボディ内手ブレ補正も搭載しつつ小型化・低価格化を実現した点が話題となった。

キヤノンEOS Kiss M2

11月27日発売。税込実売価格は8万4,700円前後

EF-Mマウントを採用するAPS-Cミラーレス機。EOS Kiss Mをリファインしたような位置付けで、本体サイズは変わらず、重さも色によって1g違うのみ。機能面では、ワンショットAF限定だった瞳AFが、サーボAF時でも使えるようになった。使い勝手としてこの差は小さくない。

キヤノンPowerShot ZOOM

12月10日発売。税込実売価格は3万5,750円前後

手のひらサイズの望遠専用カメラ。単眼鏡のように構え、100mm相当と400mm相当の2焦点ズーム+デジタルズームの800mm相当を切り替えながら観察・撮影できる。新開発の制御による手ブレ補正も強力で、超望遠という狭い画角を片手で撮れる。

ニコン Z 7II

12月11日発売。税込実売価格は39万8,200円前後

Z 6とZ 6IIの関係同様に、Z 7を強化したモデル。画像処理エンジンを2つ搭載し、連写速度などが向上。瞳AFも強化されている。またカードスロットもCFexpress Type BとSDメモリーカード両対応のダブルになった。

ライカSL2-S

12月17日発売。税込実売価格は66万円前後

Lマウント採用の35mm判フルサイズミラーレス機。ライカSL2の4,730万画素センサーを裏面照射型の2,600万画素タイプに変更。静止画/動画の両対応を特徴としており、それぞれ専用メニューを用意するなど使い勝手に配慮している。LEICAのロゴが黒くなったのが外観での特徴。価格はライカSL2の89万1,000円から抑えられている。

風に吹かれた一年

新型コロナウイルス感染拡大の影響によりCP+2020は中止になり、ドイツの歴史ある展示会「フォトキナ」も次回の予定はなくなった。そのほか、写真カメラに関するイベントはかなり制限された一年だった。冒頭にも書いたが、上半期のカメラ売り上げの減少は明らかにコロナ禍といえるものだった。本稿執筆時点ではGo To トラベルも一時休止となり、筆者も予約していたホテルがキャンセルされてしまった。

しかし、だからといって写真が撮れなくなったわけではない。振り返ってきたように新型のカメラは続々登場しているし、どれも個性的で魅力にあふれている。新しいカメラを手にすると、今までとは違った写真が撮れるような気がして、気持ちが高まってくる。幸いにして余裕のある人や、ここらでひとつ気分を変えたいという人は、この機会にぜひ新しいカメラを導入してみてはいかがだろうか。

猪狩友則

(いがり とものり)フリーの編集者、ライター。アサヒパソコン編集部を経て、2006年から休刊までアサヒカメラ編集部。新製品情報や「ニューフェース診断室」などの記事編集を担当する傍ら、海外イベントの取材、パソコンやスマートフォンに関する基礎解説の執筆も行う。カメラ記者クラブでは、カメラグランプリ実行委員長などを歴任。