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触ってきました「RICOH GR IV」。GR IIIからの変化点を詳しくチェック

RICOH GR IV

リコーイメージング株式会社は8月19日(火)、2025年秋に発売予定のレンズ一体型デジタルカメラ「RICOH GR IV」の動作機を関係者向けに初公開した。外観写真を中心にハンズオンレポートをお届けする。

GR IVは、ポケットサイズのAPS-Cコンパクトカメラ「RICOH GR III」から6年ぶりとなる新製品。5月に開発発表され、外観サンプルを東京、北京、上海の「GR SPACE」で展示していた。スナップ撮影向けという基本コンセプトを守りつつ高画質化すべく、新型のイメージセンサーと画像処理エンジン、レンズなどの主要デバイスを一新しているのが見どころだ。

今回は展示機を屋外に持ち出すことはできず、リアルな撮影環境での試写は叶わなかった。気になる起動時間の短縮やAFスピードの向上についても、持参したGR IIIとの比較で進化は感じられたものの、その度合いは明らかにされなかった。また、ファームウェアのバージョンも0.0と表示されていたため、この記事に掲載した画面なども発売までに変更される可能性があることをお含みいただきたい。

RICOH GR IV

なお、特殊効果フィルター「HDF(Highlight Diffusion Filter)」を搭載したモデルも開発中で、冬以降に発売予定。「GR III」は7月中の出荷分をもって製造完了だが、「GR IIIx」は当面の間、製造・販売を継続するとアナウンスされている。

リコーのGRシリーズは“高級コンパクトカメラ”の代名詞と呼ばれるロングセラーで、その歴史は1996年に登場した初代「RICOH GR1」からまもなく30年。デジタル化した「GR DIGITAL」の登場からも20年を迎える。現在のようにAPS-Cセンサー化したのは2013年の「RICOH GR」から。ファームウェアアップデートによる機能拡張に積極的で、最新機種のライフサイクルが長いことでも知られている。

外観

GRシリーズらしく、新機種でも見た目の印象は大きく変わらないが、握ってみると本体部分にスリムさを感じる。グリップ部は背面右手の親指部分の引っかかりが強くなるように形状が変更。来場していたGRユーザーからは「露出補正が以前のボタン式に戻った」と好評の声が聞かれた。

上がGR IV、下がGR III。特にレンズ側の本体部分が薄くなっていることが感じられる
背面グリップ部の突出が下まで続き、ホールド性が向上していた
GR IIまで採用していた露出補正ボタンに戻った

背面の十字キー周囲にあったホイールがなくなり、右上のADJレバーが回転&押し込み式のダイヤルに変更。前後ともに回転式のダイヤルとすることで、操作性を揃える狙いもあったという。ダイヤルを押し込んで呼び出す“ADJメニュー”のレイアウトや操作性にも変更はなかった。

左がGR IV。ADJレバーがダイヤルになり、露出補正ボタンが再び独立。ひとつのレバーで複数の操作をするのが難しいとの声もあったようだ。ホイールがなくなり、十字ボタンの押し心地も確実なものになった
左のGR IVのほうが、前ダイヤルが大きく露出しており操作しやすい

モードダイヤルには「Sn」ポジションが追加。GR IIIシリーズにファームアップで加わった「スナップ距離優先AE」モードのことで、これを選択すると前ダイヤルでDoF(1〜3で被写界深度の深さを選ぶ。絞りの開放寄り〜絞り込みのイメージ)、後ダイヤルで撮影距離を決め、それに合わせた露出が自動設定される。スナップカメラらしさを強く感じさせる、マニアックとも言える新モードだ。

左がGR IV。「Sn」のポジションが増えている
Snモードの画面。前後のダイヤルで被写界深度と撮影距離を決める

P(プログラムAE)モードに変更があった。Pモード時に前ダイヤルを回すと、以前であれば絞りとシャッタースピードが同じステップずつ動いたが、今回は前ダイヤルを回すと絞りが変わってシャッター速度は変わらず、ISO感度が追従。後ダイヤルを回すとシャッター速度が変わって絞りは変わらず、ISO感度が追従した。画面左下にも”P-Ex”と表示され、新機能らしさが伝わる。機能名はまだ秘密らしいが、メニュー画面の中には「プログラムオートEx」という表記を見つけた。

Pモードで操作すると“P-Ex”と表示。絞りやシャッター速度を変更すると、ISO感度が追従する

気になったのは、モードダイヤルのロックボタンに丸いポッチ(窪み)が設けられていることだった。聞けば、今回はロック解除だけでなくボタンとしての機能も持っており、先のPモードで利用するという。プログラムシフトしたあと、このロック解除ボタンを押すと、プログラムAEの標準値に戻るのだ。PENTAXのカメラにあるグリーンボタンのようなものと思って間違いないらしい。

モードダイヤルのロック解除ボタンが、PENTAXでいうグリーンボタンのような役割も兼ねる。押すと、プログラムAEが初期値に戻る。限られたスペースにボタンを追加しようと考え、ロック解除ボタンに目を付けたそうだ
レンズも新規設計(非球面3枚を含む5群7枚構成)。電源ON時の鏡筒突出量がわずかに少なく見えた
正面。レンズ銘板の水平を出すためのポッチが、右のGR IIIとは異なる位置に付いていた。つまり銘板も別パーツということ

また、ホットシューは接点に変更が見られた。以前と同じ中央のシンクロ+3点は継承しつつ、左上に新たに2点増えている。何のための接点追加なのかは明らかにされなかった。

左がGR IV、右がGR III。ホットシューの接点配置が異なる

底面のバッテリー室は、今回チェックすることができなかった。事前情報によると、バッテリーの変更と、記録メディアがSDからmicroSDになることが明らかになっている。おそらく、microSDの採用で空いたスペースを使ってより大容量のバッテリーを使い、課題とされていた撮影可能枚数の増加を狙っているものと想像できる。

バッテリー室をチェックすることはできなかったが、新型バッテリーの採用が明らかにされている
側面にはGR IIIと同じくUSB Type-C端子があり、充電・給電に対応。撮影データの取り出しも行える
GR IIIとリングの互換性はなかった
グリップのシボパターンも微妙に違った。左がGR IV

メニュー画面など。新イメージコントロールも

メニュー画面の基本構成はGR IIIを継承。前ダイヤルで項目スクロール、後ダイヤルで階層の出入り、露出補正ボタンでも上下に項目を移動できた。もちろん、タッチ操作にも対応する。

メニュー画面の基本デザインはGR IIIと同じ

オートホワイトバランスは、「ウォーム優先」と「ホワイト優先」も含む3通りになった。従来はメニュー内から人工光源の色味の残し方と「弱」「強」で選べたが、ホワイトバランスのメニューに組み込んだことで、ライブビュー画面上で色味の変化を確認しながら設定できるようになった。

人工光源色の補正度合いを、WBメニューから素早く選べるようになった

フォーカスリミッターを搭載。具体的な距離範囲は教えてもらえなかったが、「近距離側」「遠距離側」にAF駆動を制限できるため、金網越しの景色を撮りたいシーンなどで便利だという。超望遠レンズによくある機能で、広角域のレンズを積むGRシリーズがこれを搭載するあたり、さすがの入念さだ。

フォーカスリミッター

アスペクト比は、「3:2」「4:3」「1:1」「16:9」から選択可能となった。ADJメニューの初期設定には、アウトドアモニター設定に代わって組み込まれている。なお、屋外晴天下で背面モニターの輝度を高めるアウトドアモニター機能は、これまで手動でオンオフする機能だったが、今回「オート」が新搭載。外観に環境光センサーのような新デバイスは見当たらなかったので、イメージセンサーからの情報のみで環境光の明るさを判断するのかもしれない。

アスペクト比の選択肢が増えた
アウトドアモニターに「オート」が追加。環境光の明るさに連動するという

イメージコントロールには「シネマ調(イエロー)」と「シネマ調(グリーン)」が新搭載。また、粒状感の詳細設定が可能になり、大きさと強度を各3段階から選べる。イメージコントロールのカスタム設定は「カスタム3」まで増加した。

イメージコントロール内の「粒状感」
粒状感の詳細設定が可能に
クロップ機能は、35mm相当、50mm相当を用意。これはGR IIIと同じだ

さらに高まったカスタマイズ性

背面のレイアウト変更に伴い、操作部のカスタマイズ性についてもチェックしておきたい。

各モードごとにダイヤルと露出補正ボタンの機能割り当てを選択できる
機能配置の組み合わせを選択する仕組み
Snモードもカスタマイズ可能
Mモードでは、露出補正ボタンにISO感度を割り当てられる
ADJメニューは5項目

撮影メモリー設定から、撮影画像の記録先を選択可能。ボタンでも切り換えられる。以前は記録メディアが入っていないときに限って内蔵メモリーに保存されるスタイルだった。内蔵メモリーは約53GBと豊富。

記録先を選べるようになった
記録先の切り換えをFnボタンに割り当てることもできる
WBボタンにも任意の機能割り当てが可能に。側面の動画ボタンは短押し・長押しのそれぞれに別機能を割り当てられる

詳細は後日のお楽しみ

今回はGR IVを実際に手にする機会に恵まれたが、価格や具体的な発売日、バッテリー持ちやAF速度の具体的な進化度合いなど、まだまだ情報が非公開の部分が多かった。なお、本イベントは関係者向けに「GR SPACE TOKYO」で開催されたが、GR IVを展示するのは同日のイベントだけで、明日以降は現行製品の展示に戻るという。

一般向けのタッチ&トライは正式発表後に行われるとのことで、「2025年秋」と予告されているGR IVの発売が、いよいよ近づいていることを感じさせられる。次のニュースも楽しみに待ちたい。

イベント当日に限り、GR SPACE TOKYOに12台のGR IVが並んだ

ライター。本誌編集記者として14年勤務し独立。趣味はドラム/ギターの演奏とドライブ。日本カメラ財団「日本の歴史的カメラ」審査委員。YouTubeチャンネル「鈴木誠のカメラ自由研究