特別企画
こんなに出てました! 2020年発売レンズ振り返り(レンズメーカー編)
2020年12月28日 19:10
先日公開した「こんなに出てました! 2020年発売カメラ振り返り」に続き、ここでは2020年に発売された主な交換レンズについて、各社の傾向なども踏まえながら振り返ります。(編集部)
コシナ
今年のコシナは、フォクトレンダーブランドの新製品のみだった。カールツァイスのレンズは登場していない。
そのうち、ライカMマウント互換のVMマウントは3本。NOKTON 21mm F1.4 Aspherical VMは、ソニーEマウント版が先行していた大口径広角レンズ。NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VMはレンズ構成が新しくなり、従来比で約30%減の小型化を実現した。
NOKTON Vintage Line 50mm F1.5 Aspherical II VMは、現代的な光学性能とクラシカルな雰囲気の外観を持つヴィンテージラインに属する。レンズ構成が変わって全長が短くなり、外観デザインも異なる雰囲気となった。ブラック、シルバー、ニッケル・ブラックペイントの3種類と、コーティングの違い(シングルコート:SC/マルチコート:MC)により計6モデルある。
なお、2021年1月発売予定としてAPO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical VMも発表されている。フォクトレンダーの中でも性能追求が身上のアポランターで、同名のEマウント用が発売済み。高性能が特徴のレンズだけにM型デジタルカメラへの合わせ込みが徹底されており、マウントアダプターでMマウント以外のカメラで使う場合は、本来の性能が発揮できないとアナウンスしている。
NOKTON 35mm F1.2 Aspherical SE E-mountとNOKTON 40mm F1.2 Aspherical SE E-mount、NOKTON 50mm F1.2 Aspherical SE E-mountはソニーEマウント用。同様の光学仕様を持つレンズがソニーEマウント用やVMマウントで発売されていたが、スチル撮影に特化した鏡筒仕様により小型化され、価格も若干抑えられている。
NOKTON 60mm F0.95とSUPER NOKTON 29mm F0.8 Asphericalは、マイクロフォーサーズ用の超大口径レンズシリーズ。特にSUPER NOKTON 29mmは、研削非球面レンズの新採用により既存シリーズのF0.95を超えるF0.8のスペックで商品化している。価格もフォクトレンダーとして最も高価だという税別22万5,000円と格別だ。
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シグマ
シグマのレンズで「DG」はフルサイズ用、「DC」はAPS-C以下のサイズ用。これに「DN」がつくとミラーレス専用設計だ。DGだけなら一眼レフ用、DG DNがフルサイズミラーレス用、DC DNがAPS-C以下サイズのミラーレス用ということになる。
同社はLマウントカメラのSIGMA fpを発売していることもあり、新製品もミラーレスカメラ用レンズ中心にシフトしている。フルサイズミラーレス用のDG DNレンズは、今のところLマウントとソニーEマウント用が用意されている。
24mm F3.5 DG DN | Contemporaryと35mm F2 DG DN | Contemporary、65mm F2 DG DN | Contemporaryは、SIGMA fpと同時に発表された45mm F2.8 DG DN | Contemporaryと似た雰囲気のデザインになっている。この4本をあわせて、金属外装の質感や、各部の操作感などから所有欲も満たす「Iシリーズ」として展開される。
また、フルサイズミラーレス用としては"ライトバズーカ"としてお馴染みの望遠ズーム100-400mm F5-6.3 DG DN OS|Contemporary、ミラーレスカメラ用レンズに期待されるサイズ感を実現した中望遠レンズの85mm F1.4 DG DN|Art、マクロレンズの105mm F2.8 DG DN MACRO|Artがある。
Lマウント用では、APS-C対応のDC DNレンズも追加されている。16mm F1.4 DC DN | Contemporaryと 30mm F1.4 DC DN | Contemporary、56mm F1.4 DC DN | Contemporaryの3本は、いずれもキヤノンEF-Mマウント、ソニーEマウント、マイクロフォーサーズ用が発売済み。LマウントのAPS-Cセンサー機は今のところライカCL/TLシリーズのみで、これが今後シグマがLマウントAPS-Cカメラを発売する布石かは分からない。
一眼レフカメラ用の14mm F1.8 DG HSM | Artと70mm F2.8 DG MACRO | Artには、Lマウント版が追加された。
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タムロン
タムロンのレンズで「Di」はフルサイズ一眼レフ用、「Di II」はAPS-C一眼レフ用、「Di III」はミラーレス用になっている。ミラーレス用はセンサーサイズの区別はなかったが、2021年発売以降のAPS-Cサイズ相当のミラーレス機用は「Di III-A」になる。2020年にタムロンから発売されたレンズはすべてDi IIIで、ソニーEマウント用のみ。
20mm F/2.8 Di III OSD M1:2(Model F050)は、F2.8シリーズとして2019年に発売された24mmと35mmと共に共通した大きさとデザインの三兄弟だ。本レンズも同時に発表されたが、発売は2020年1月だった。
70-180mmF/2.8 Di III VXD(Model A056)は、望遠側を少し抑えてフィルター径67mm(同社のフルサイズEマウント用レンズは全て共通)をキープしたF2.8通しの望遠ズームレンズ。MF時には、周辺画質が多少犠牲になるというが最短撮影距離0.27mのテレマクロ的な撮影にも対応。17-28mm F/2.8 Di III RXD・28-75mm F/2.8 Di III RXDの2本合わせてF2.8通しの大三元レンズが揃ったことになる。
28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD(Model A071)は広角端F2.8からの高倍率ズーム。70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD(Model A047)は300mmクラスで世界最小・最軽量をアピールする望遠ズーム。いずれも10万円を切る価格で、高性能レンズひしめく中においては大きなインパクトがある。
2021年1月には、APS-Cミラーレス機用として、17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD(Model B070)も発売予定。動画撮影時は機械学習により撮影状況を自動判別して、適切な手ブレ補正を行うという。なお、こちらもソニーEマウント用のみになる。
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ケンコー・トキナー
トキナー
同社トキナーブランドのレンズは3本。atx-i 11-20mm F2.8 CFは、AT-X 11-20 F2.8 PRO DXのリニューアル製品となる大口径広角ズームレンズ。基本的な光学設計はそのままだが、レンズ前面には撥水のWRコートが施され、ファームウェアも最新になっている。
atx-m 23mm F1.4 Xとatx-m 33mm F1.4 Xは、富士フイルムXマウント用のAFレンズ。Xシリーズカメラのフィルムシミュレーションを考慮した光学系を謳っている。なお、56mm F1.4も予告済み。
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サムヤン
韓国サムヤンはAFレンズに注目。AF 35mm F1.8 FEとAF 75mm F1.8 FEはソニーEマウント用、AF 85mm F1.4 RFはキヤノンRFマウント用レンズだ。
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レンズベビー
アメリカのレンズベビーからは、ソフトフォーカスレンズのVelvet 28が登場。レンズ先端から約5cmの距離で、1/2倍の近接撮影も可能。各種一眼レフおよびミラーレス用のマウントが用意されている。
ケンコープロフェショナルイメージング
Irix
Irix(アイリックス)社は、スイス、ポーランド、韓国の3カ国に拠点を持つレンズメーカー。キヤノンEF用、ニコンF用、ペンタックスK用がある。
11mmF4と15mmF2.4は、鏡筒の違いで軽量なFireflyと、堅牢なBlackstoneがある。150mmF2.8と45mmF1.4はDragonflyで、Fireflyの外観とBlackstoneの堅牢性を両立したモデル。珍しいラインナップ展開だ。
サイトロンジャパン
LAOWA
中国は安徽長庚光学によるLAOWA(ラオワ)は、魚眼/広角やマクロ系といった個性派レンズが得意なメーカーだ。
9mm F5.6 W-Dreamer、11mm F4.5 FF RLはフルサイズミラーレス用でソニーE、ニコンZ、ライカLのほか、ライカM用もある。
50mm F2.8 2X ULTRAMACRO APOはマイクロフォーサーズ用の2倍マクロレンズ。カメラボディからの絞り制御に対応している。
4mm F2.8 Fisheyeはすでにマイクロフォーサーズ用があったが、APS-C対応のキヤノンEF-M、ソニーE、富士フイルムX用が追加された。
新東京物産
MEIKE
香港に本社があるMEIKE(メイケ)。3.5mm f/2.8 フィッシュアイレンズは円周魚眼レンズ。マイクロフォーサーズ用。ほかにも多数商品があり、Amazonなどで購入可能。
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焦点工房
中一光学
中国瀋陽の中一光学からは、2020年も低価格なMFレンズが多数発売された。電子接点はない。なお多様なマウントに対応するが、レンズ名に一眼レフ用/ミラーレス用の区別はなく、ミラーレスと一眼レフの両方に対応するレンズもある。
APO 85mm F2.8 SUPER MACRO 1-5Xは5倍マクロ撮影が可能で、無限遠撮影はできない仕様。ソニーE、富士フイルムX、マイクロフォーサーズ、キヤノンEF-M、キヤノンEF、ニコンF、ペンタックスK用がある。フルサイズ対応。
CREATORシリーズは、お手頃価格が魅力のMFレンズシリーズ。一眼レフ用が発売済みで、新たにEマウント用が加わった。
SPEEDMASTERシリーズは、大口径が特徴のレンズシリーズ。17mm F0.95はマイクロフォーサーズ用。50mm F0.95 EFはキヤノンEF用。85mm F1.2は一眼レフ用が発売済みで、キヤノンRF用とニコンZ用が追加された。
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銘匠光学
中国深セン、銘匠光学のTTArtisanは、どこかライカ風なデザインが特徴のお手頃レンズ。2020年もその雰囲気は継承しており、大口径なMFレンズが発売された。Mマウント用には21mm f/1.5 ASPH、TTArtisan 35mm f/1.4、50mm f/0.95 ASPH、50mm f/1.4 ASPHが登場し、35mm f/1.4には限定200本のGold Editionも存在する。
ミラーレスカメラ対応のレンズとしては、11mm f/2.8 Fisheye(キヤノンRF、ソニーE、ニコンZ、ライカL用)と、各マウント20本限定だった50mm f/0.95(APS-CのソニーEと富士フイルムX用)があった。
"1万円で買える"として話題になったAPS-C対応レンズのTTArtisan 35mm f/1.4 C(ソニーE、富士フイルムX、マイクロフォーサーズ、キヤノンEF-M、ニコンZ用)も今年の登場だ。
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・1万円で買えるAPS-C対応レンズ「TTArtisan 35mm f/1.4 C」
七工匠
七工匠も中国深センのメーカー。焦点工房扱いで発売されたのは2本。35mm F1.2は、APS-C以下のフォーマットのミラーレス用。キヤノンEF-M、ソニーE、富士フイルムX、マイクロフォーサーズ用がある。35mm F1.4は、ソニーEとニコンZ用のフルサイズ対応レンズ。いずれも電子接点は持たない。
若明光学
中国瀋陽の若明光学からは、毒鏡 DULENS(ドクキョウ デュレンズ)が登場。名前からしてインパクトがある。アポクロマート設計としており、キヤノンEFとニコンF用がある。電子接点はない。
PERGEAR
35mmフルサイズ対応の超広角レンズ。ソニーE、ニコンZ、富士フイルムX、マイクロフォーサーズ用がある。フルサイズ機では35mm判換算24mmとなり、このクラスの超広角レンズがアンダー2万円で手に入るとして話題になった。
純正レンズとの違いを楽しむ
互換レンズメーカーが2020年に発売した製品を見ても、フルサイズミラーレス機用のレンズが多い。当然レンズメーカーとしても売れるところを狙うはずで、フルサイズでもこれからは一眼レフよりもミラーレスという流れなのだろう。また、ソニーEマウント用が多めという流れは変わらない。もちろんソニーはEマウントの情報を契約に応じて公開しているので、その辺りも関係しているだろう。一方で、その他の仕様が公開されていないフルサイズミラーレス用でも、中国メーカーから一部電子接点があるものが登場してきている。
国内のコシナや、中国メーカーのレンズには、ライカMマウント互換のレンズも少なくない。もちろんM型ライカで使用する人も多いのだろうが、マウントアダプターを使ってフルサイズミラーレス機で使うという人もいるようだ。Mマウントがミラーレス時代においてもユニバーサルマウント化しているといえるのかもしれない。
サイトロンジャパンや焦点工房といった代理店が窓口になり、中国メーカーのレンズも多く発売された。大口径だったり超広角だったりマクロだったり、それぞれが個性的ながら手頃な価格のものが多いが、その多くは電子接点のないMFレンズなので、純正レンズとの違いを理解してから楽しみたい。
カメラメーカー編はこちら→こんなに出てました! 2020年発売レンズ振り返り(カメラメーカー編)