新製品レビュー
Panasonic LUMIX G100
Vlogに必要な機能を凝縮 音質へのこだわりにも応える
2020年9月28日 06:00
パナソニックのLUMIXシリーズより、Vlog向けのマイクロフォーサーズカメラ「LUMIX G100」(以下G100)が8月20日に発売となった。本機はVlogger(ビデオブロガー)をメインターゲットにした、マイクロフォーサーズ規格のカメラだ。マイクロフォーサーズのLUMIXシリーズにとっても新しい着眼点から産み出された機種だと言えるだろう。近年は静止画のみならず、動画の用途も重要視されるようになってきており、“動画にも強いLUMIX”としては、非常に良い流れになっているように感じられる。また本機は軽量・コンパクトにも配慮されており、機動力抜群なところもポイントだ。今回は静止画をメインに、動画のことにも触れながら本機の魅力を紹介していきたい。
スペック
センサーは有効約2,030万画素の4/3型Live MOSセンサーを搭載。画像処理エンジンはヴィーナスエンジンを採用している。AFは240fpsの高速コントラストAFで、LUMIXで定評の空間認識技術DFDテクノロジーを搭載。高い精度と高速動作によるAF撮影が可能だ。AFの追従感度もメニュー上から微調整が可能になっている。ISO感度はISO 200〜25600まで設定可能。拡張ISOに設定すると、低感度側をISO 100相当に設定できる。
外観
本機のサイズは手の平に収まるほど小さく(約115.6×82.5×54.2mm)、質量はレンズやバッテリーなどを含めてもわずか412gと非常に軽量だ。最近発売される多くのカメラが、性能を求めて大きく重くなる傾向にある中、このサイズ感と質量は非常にありがたい。小さいながらもグリップはとてもしっかりとしている。この辺のサイズ感を実現できるのは、マイクロフォーサーズの魅力と言っても良いだろう。キットレンズとなっている「LUMIX G VARIO 12-32mm / F3.5-5.6 ASPH. / MEGA O.I.S.」は沈胴機構を採用しており、収納面でもコンパクト性を追求した1本。レンズを付けたままポーチなどに収まるサイズ感で、とりまわしのしやすさでも便利だ。
コンパクトであることに注目してきているが、小さくなることで何かが犠牲になっているということはなく、重要な部分に抜かりはない。
例えば、ファインダーは倍率0.73倍の約368万ドットと贅沢な仕様となっている。視認性も高く、またピント位置などもしっかりと確認できる。本格的なファインダー撮影にもしっかりと応えてくれることだろう。
背面モニターは約184万ドット、3.0型のフリーアングルタッチパネルモニターを採用している。明るさも十分で、野外での視認性も高い。
ボタンレイアウトや操作感も好印象。また、モードダイヤルで「スロー&クイックモード」(S&Q)への切り替えも可能。1/4倍のスローモーションや8倍のクイックモーションによる撮影が可能で、印象的な映像を手軽に楽しむことができる。
外部端子はシンプルで、microHDMIと、microUSB端子を備える。USB端子部はモバイルバッテリーなどを利用した充電に対応しているところもポイントだ。
さらに、最も個人的に嬉しかったのは3.5mmのマイク端子を備えていることだ。YouTubeの撮影などではピンマイクを使うこともあるので、このサイズのカメラに搭載されたことは非常にありがたい。LUMIXシリーズの中でもマイク端子が搭載されているのは、LUMIX G99よりも上位機種のみだったので、とても助かる。これまで上位機種だと価格的に厳しいけれども、本格的なYouTube配信用のカメラを探していたという人にとっても、有望な選択肢のひとつとなるだろう。
作例:静止画
それでは、さっそく作例をご覧いただきたい。画質に関する印象は、コンパクトなのにしっかりと写るカメラだというもの。今回はキットレンズの12-32mmのみで撮影しているが、もっとボケ感にこだわりたいという人は、数多く発売されている単焦点レンズを、ぜひ使ってみて欲しい。
フリーアングル液晶のお陰でローポジション撮影も楽々。キットレンズとはいえ適度な前ボケも活用できた。空の色、緑の色も深みがあり好印象だ。
F8まで絞って稲を撮影した。解像感は高く、キットレンズとしては十分な描写だと感じられる。稲の緑の色の表現も美しい。
いつもの散歩道をスナップ。軽量コンパクトなのでストレスなく毎日持ち歩ける。すっきりとした空の色は好印象だ。キットレンズの広角端でも十分な画質でスナップには十分だ。
味のあるベンチを50mm相当で撮影。ベンチの木目までしっかりと解像している。50mm相当時の開放F値はF5.2になるので、作例のような距離感ではボケは少なめ。
広角端、最短撮影距離20cmで撮影。花壇の花も適度に大きく撮影できピント位置はシャープに描写している。曇天ではあったが発色もよく安心して撮影できた。
雲が印象的だったので撮影。キットレンズでの撮影だが、雲のハイライト部分などを見ても色収差がなくしっかりと描写していることが分かる。空広めの構図だがゆがみもなく好印象だ。
レインボーブリッジから手持ちで夕景を撮影した。ボディ内手ブレ補正は搭載していないがレンズ側の手ブレ補正で十分撮影できる。
銀座でスナップした。レンズ側の手ぶれ補正は強力で広角端で1/10秒でも余裕で手持ち撮影できる。キットレンズでもローライトコンディションでも問題なく撮影できるのは安心感がある。
新しい絵づくり機能
機能面でも、既存のLUMIXシリーズのエッセンスを継承しており、便利な機能を数多く搭載している点も魅力だ。LUMIX G99から搭載された「ライブコンポジット機能」も搭載。光跡写真や星空写真が手軽に楽しめるようになっている。
さらに定評のあるフォトスタイル「L.モノクロームD」も搭載している。ハイライトとシャドウに深みを持たせたモノクローム表現ができる画づくり機能のひとつだ。もちろん粒状感も調整できる。
このほか、静止画撮影では動画用のフォトスタイルが使えるのも魅力だ。グレーディングを前提にした「V-log L」や、「シネライクD」、「シネライクV」といったスタイルが揃っており、動画に合わせた色合いで静止画の撮影ができる。そのため、動画の中に静止画を入れたい、といった場合であっても色を合わせる必要がないので、その分編集作業に時間を割くことができる。こうした動画づくりも増えてきているので、とても便利だ。
動画向けの電子式手ブレ補正も搭載
動画機能に注目されがちだが、静止画撮影の性能もしっかりと確保している。高速連写を使うと6コマ/秒(AFC時は5コマ/秒)の連写が可能。それ以上の連写をしたい場合は、4K動画の機能を活かした4Kフォト機能がある。この機能を使えば、30コマ/秒の撮影もできてしまうので、使い方と用途を自由に選ぶことができる。
手ブレ補正に関しては、コンパクトさを実現するために内蔵の手ブレ補正機構は搭載していない。だが、LUMIXシリーズにはレンズのほうに手ブレ補正機構を搭載している製品も多いので、どうしても手ブレが気になるようなシーンで利用したい場合は、そうしたレンズを使うと良いだろう。動画撮影では動画撮影では電子式の手ブレ補正により強力な手ブレ制御が得られるので、動画シーンでも心強い。
OZO Audioによる音声収録も注目ポイント
動画機能は4Kは30pに対応し、フルHDでは60pの収録が可能。最長収録時間は4K撮影では最大で10分、フルHD 60pでは20分、フルHD30pなら29分59秒となっている。4Kで撮影する際は、最長時間に注意しよう。
スロー&クイックモードを利用して、約スローモーション動画やクイックモーション動画の撮影も可能だ。
ちなみに120fpsで記録する場合は、フルHDでもクロップされるので注意が必要だ。また、4K撮影時にもクロップは発生する。キットレンズの場合、広角端12mm(35mm判換算24mm相当)で撮影すると、35mm判換算で32mm相当の画角になる(約1.33倍クロップ)。
フォトスタイルも多彩だ。使い勝手のよい「シネライクD」や「シネライクV」に加え、GH5シリーズでは有償だった「V-log L」も標準で搭載している。V-log Lは、広いダイナミックレンジで収録できるプロファイル。この取り揃え方を見ただけでも、ビデオブロガー向けだということが分かる。
内蔵の手ブレ補正は搭載していないが、動画撮影時には5軸の電子手ブレ補正(E.I.S.)と、手ブレ補正機構搭載レンズであれば、2軸の光学手ブレ補正(O.I.S.)が連動する仕組みなっている。補正効果は十分で、手持ちでの撮影であったり、ゆっくり歩いて撮影するのであれば問題なく使用できる印象だ。ただし、5軸電子手ブレ補正を使う場合は、さらに画角が狭くなるので注意が必要だ。ブレ補正はOFF、標準、強の3種類から選択できる。
本機の注目ポイントは、なんと言ってもOZO Audioを搭載している点だろう。これは3つの内蔵マイクを搭載することで、クリアで美しい音声を収録できるというもの。外部マイクが無くても驚くほど綺麗な音声収録ができる。一般的にカメラの内蔵マイクではクリアな音声収録はとても難しかったが、本機に搭載されたOZO Audioは、お世辞抜きで使える音質だ。指向性は5つのモード(オート、サラウンド、フロント、トラッキング、ナレーション)を搭載している。
それぞれの指向性モードの特徴をみていくと、オートはカメラが自動的に指向性を変えてくれるモード。サラウンドは、前後左右の音声を収録してくれるので臨場感がある。フロントは、カメラ前方の音をクリアに収録できる。トラッキングは、画角と顔・瞳認識AFに連動して指向性を変えてくれる。そのため、画面の端から端まで動いても音が綺麗に収録できる。ナレーションは、カメラ後方の音声を収録できるため、風景などを写しながら撮影するのに向いている。
OZO Audioの音声は内蔵マイクとは思えないほどしっかりしているので、通常はOZO Audioだけで全く問題ない印象を受けた。もちろん本機はマイク端子を備えているので、外付けのガンマイクなども装着できるが、まずはOZO Audioを試してみて欲しい。
高感度(静止画)
高感度性能もISO 200からISO 25600まで試してみたが、テストした撮影シーンにおいてはISO 1600まではシャープネスやクリアさに加え、ノイズ感も少ない印象。
高感度ノイズはISO 3200くらいから目立つ、というよりもノイズリダクションにより少しノッペリとしてくる印象をもった。総じてISO 6400までは十分に使える感触で、ISO 12800以上はノイズ感が少々気になる感じだ。
ダイナミックレンジ
キットレンズでテストしているが、本レンズは遠景のディテールをしっかりとシャープに描写してくれる。ここまで写れば、まず不満を抱くということはないだろう。ダイナミックレンジも、シャドウからハイライトまでしっかりと表現できている。さらにDレンジコントロールを組み合わせることで、よりナチュラルな表現も可能となる。色はフォトスタイル「スタンダード」でも少し鮮やか目の印象だ。
Vlog仕様のアクセサリーも
本機には2種類のキットが用意されている。大きな違いは、トライポッドグリップの有無だ。
このトライポッドグリップは動画撮影で非常に役立つアクセサリーだ。歩きながら撮影する際や、自撮りする際に、撮影を助けてくれる。動画録画ボタンや静止画撮影ボタンも備えており、スリープボタンもあるので主電源をオン・オフすることなく撮影できるのもポイント。グリップは自由雲台のようになっているので、水平もとりやすい。動画撮影でも静止画撮影でも役立つのがトライポッドグリップだ。
まとめ
本機を一言で表現すると、“軽量コンパクトで静止画・動画にも気軽に挑戦できる毎日持ち歩けるカメラ”となる。画質も十分で、このカメラであれば毎日の撮影を楽に行えると感じた。電池の持ちもよく、静止画であれば一本で十分だろう。動画を撮影する場合は予備を用意しておくと安心だ。
動画機能にフォーカスしていることからも分かるとおり、本機のメインターゲットはVlogger(ビデオブロガー)だ。ビデオブロガーとは、YouTubeをはじめとしたSNSメディアを通じて情報発信や、ライフスタイルをクリエイティブに表現する人たちのことを指す。筆者も1年半くらい前から、YouTubeによる発信をしており、動画撮影の機会が圧倒的に多くなった。
ちなみに筆者のYouTubeチャンネルは、実はLUMIX GH5シリーズで撮っていることが多い。旅先などでも綺麗に撮影できるため便利なのだが、やはり機材重量がそこそこ重くなってしまい、重さとサイズの制約から、アクションカムなどで妥協することもあった。
GH5シリーズよりも軽量なLUMIX G99も使用しているが、それでも“そこそこ”なサイズ感になる。スナップで大活躍しているLUMIX GX7 Mark IIIは、ベストなサイズ感だが、背面モニターがチルト式で、かつマイク端子も備えていないため、YouTube用の動画撮影には残念ながら不向き。こうした重量とサイズ感のジレンマを抱えていたところに、マイク端子を備え、かつ軽量でコンパクト、しかもフリーアングルタイプの背面モニターを搭載したG100が加わった、というわけだ。これで一挙に悩みが解決。強い期待と関心を寄せることになったというわけだ。
本機はコンパクトさを重視しているので手ブレ補正や4Kの収録時間に制限がある。これをデメリットと考える向きもあるだろうが、上手く使いこなすことでカバーできる範囲だ。静止画はもちろんのこと、音質にもこだわった動画撮影に挑戦してみたいという人にこそ、ぜひ手にとってもらいたいカメラだ。