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4,000万画素になったレンジファインダーカメラ「ライカM10-R」

2,400万画素から向上 最高感度ISO 50000

ライカカメラジャパンは、レンジファインダーカメラ「ライカM10-R」を7月24日に発売する。希望小売価格は税別105万円。ブラッククロームとシルバークロームを用意している。

「ライカM10」(2017年2月発売)の高解像度版と位置づける新モデル。従来の2,400万画素から約4,000万画素(RAW:7,864×5,200ドット。14bit)となった。ディテール描写力が向上するほか、これまでのM型で実現できなかったというトリミングや引き伸ばしによる写真表現も可能としつつ、ノイズ低減と広ダイナミックレンジも同時に実現したとしている。

ライカM10-Rの性能をフルに活用するにはライカのMレンズがベストとし、「アポ・ズミクロンM F2/50mm ASPH.」などの最新世代レンズで美しい描写が得られるほか、オールドライカレンズでもそれぞれの個性を活かした表現が楽しめるという。

感度の設定範囲はISO 100〜50000。シャッター速度は最長16分まで設定可能。シャッターはライカM10-Pから採用されている静音機構で、音と振動を最低限に抑えているという。

連写速度は約4.5コマ/秒。バッファメモリーは2GB。RAWのファイルサイズは1枚あたり40〜60MBとしている。

ファインダー周りなど、そのほかの主な仕様はライカM10から継承。倍率は0.73倍で、28mmから135mmまでのブライトフレームを2フレーム1組で表示する。本体はマグネシウムダイキャストで、トップカバーとベースプレートは真鍮削り出し。

Wi-Fi/Bluetooth機能を搭載。スマートフォンアプリと連携できる。また、別売の外付けEVF「ライカ ビゾフレックス」を装着すると、EVFユニットに内蔵されたGPS機能を用いてExifに位置情報データを付与することもできる。

外形寸法は約139×80×38.5mm。バッテリー込みの重量は約660g。

ライカM10シリーズは、ライカM10、ライカM10-P(赤バッジのない外観と静音シャッター)、ライカM10-D(背面モニター非搭載)、ライカM10モノクローム(4,000万画素モノクロセンサー)に続き、通常モデルとしては5機種目。今回のライカM10-Rを含め、いずれも動画撮影には対応していない。

オンライン配信を実施(23:00追記)

7月16日22時から、ドイツのライカカメラ社によるオンライン配信が開始。ライカカメラ社主のアンドレアス・カウフマン氏と、同社で写真関連製品のディレクターを務めるステファン・ダニエル氏が、M型ライカの歴史やライカM10-Rの概要を語った。

当初は"Leca"(LeitzのCameraに由来)という名前を予定し、1925年にカタログも少数印刷したが、フランスに同名のカメラがあったことから"Leica"に切り替えた話からスタート。

初期の距離計連動ライカは距離計とビューファインダーが別窓になったスタイルだったが、1954年にはビューファインダー内に二重像合致部分を備えた(いわゆる一眼式レンジファインダーカメラの)M型ライカが始まる。Mとは、その特徴であるドイツ語のmesssucher(英語に置き換えればmeasuring finderだという)の頭文字から名付けた。

1970年代中期になると、一眼レフカメラの台頭でM型は厳しい時代を迎える。時代遅れとなってしまったレンジファインダーカメラはドイツ・ウェッツラーでの生産をやめていたが、カナダ(現在のELCAN)からの要請でウェッツラーから製造設備を送ったことにより、1976年にM4-2が登場したという。

カメラがデジタル化の時代を迎えると、Mレンズのようにバックフォーカスが短く、イメージセンサーに急角度で光が入るレンズを使用することは難しくなる。ライカR8/R9をデジタル化するDMRや、2006年登場のライカM8では、ロチェスター(=コダックのこと)のイメージセンサーを使ったが、それはフルフレームではなく、APS-Cより少し大きな程度の、1.3倍のクロップファクターを持つもの(いわゆるAPS-Hサイズ)だった。「35mmレンズが50mmのような画角になっていた」とダニエル氏。

カウフマン氏は、当時発売された16mmから始まるトリ・エルマーを「M8用のレンズ」と振り返り、ダニエル氏は「フルフレームでもよい働きをする」と補足していた。

2009年9月には、同社初というストリーミングイベントをニューヨークで実施。M9と名付けられたそのカメラは、最初のフルフレーム"ミラーレスカメラ"だったという。

続いてMデジタルは、"番号のないカメラ"ことライカM(Typ240)を2012年に発表。当時のライカカメラ社では「MはMである」としてナンバリングをやめようとしていたが、ユーザーがそれを好まず、"M240"(エム・ツーフォーティー)と社内用のプロダクトコードで呼び始めたことを受けて、2017年のライカM10から再び番号に戻した。

今回登場したライカM10-Rの"R"は、Resolutionに由来。新開発のセンサー構造だとし、高解像度ながらダイナミックレンジを従来の2,400万画素モデルより向上しているという。

配信動画より(以下同)。左からアンドレアス・カウフマン氏、ステファン・ダニエル氏。ライカM10-Rをアンベール。

背景には"画素数競争"(pixel race)があったという。カウフマン氏とダニエル氏は自動車の馬力に例えて、他を知らなければ100馬力で満足できるが、200馬力、250馬力、もしくはAMGバージョンのような車のキーを一度手にしてしまうと、以前の車には戻れなくなってしまうと語る。ダニエル氏にも、実際にその感覚が起きたという。

当初はM10-Rのような高解像度機に古いレンズを組み合わせることに対して不安があったそうだが、試してみると、古いレンズはその個性(レトロルック)をより出せることがわかったという。

それでも新レンズを作っている意味として、「絞り開放でもシャープに解像するのは古いレンズでは無理。少し絞らなくてはいけない」とダニエル氏が説明した。

ライカM10-Rは、前面にライカの赤バッジがあり、上面に筆記体ロゴがない点から
、外観はライカM10に近い。しかし、内部的には静音シャッター機構やタッチスクリーンといったライカM10-Pからの特徴を備えており、「ベストな内容」と表現していた。

配信では続いて、予告のなかったゲストとして俳優のクリストフ・ヴァルツ氏を迎えてトークを行った。

俳優のクリストフ・ヴァルツ氏(右)

本誌:鈴木誠