ニュース

パナソニックに聞いた「LUMIX S5」一問一答(その2)

USB給電の仕様、動画記録の熱対策、S1やGH5との使い分けなど

9月25日発売の「LUMIX S5」について続報をお届けする。今回は動画周りの話題を中心に、気になる機能・仕様に関する公式回答をまとめた。

動画について

——動画機能の見どころを教えてください。

一番のポイントは、この小型ボディで4K/60p 10bitの内部記録が出来ることです。しかも4K/60pや4Kの10bit撮影では、確実に30分撮影いただけます。また4Kの8bit撮影やFHD撮影においては、時間制限なしでの撮影が可能ですので、安心して映像制作の現場でもお使いいただけます。

さらにHDMI経由での4K/60p 4:2:2 10bitの外部出力にも対応しています。またLog撮影については、当社のデジタルシネマカメラVARICAMやS1Hと同水準となる広ダイナミックレンジの14+ストップV-LogとV-Gamutによる広色域の動画記録が可能です。このV-Logについては、同じV-Logを搭載しているVARICAMやS1H、S1、V-LogLを搭載しているMFTSのGH5やGH5S、G9などで記録した素材と組み合わせても、統一されたガンマ特性とルックにより、効率よく編集することが可能です。

これらに加え、HLG方式の4K HDR動画やアナモフィック撮影、スロー&クイックモーション撮影(4K:1-60fps, FHD:1-180fps)にも対応しています。今後のファームアップ(2020年内予定)では、HDMI経由でのATOMOS NINJA Vへの動画RAWデータ出力(5.9K/30pなど)やC4K動画記録などに対応を予定しています。

——熱対策はどのようにしていますか?

センサーや画像処理エンジンで発生した熱を効率よく分散させるため、独自の熱シミュレーションの活用やS1HやGH5などでこれまで培ってきた放熱技術や省電力化技術をさらに進化させています。

——アナモフィック撮影モードとはどんなものですか?

4:3アスペクトのアナモフィックレンズによるシネマスコープサイズの映像作品の制作に対応した撮影モードになります。S5はS1H同様、フルサイズセンサーを活かし、アナモフィックレンズの表現力を活かせる4パーフォレーションアナモの画角で撮影できるのが特徴です。

またアナモフィックデスクイーズ表示機能を搭載しており、撮影中にシネマスコープサイズ相当に引き伸ばした状態をモニターにシミュレーション表示することが出来ますので、編集後の仕上がりをイメージしながら構図決めやセッティングを行うことが可能です。

——動画機能でS1シリーズにない新要素はありますか?

S5にはS1/S1Rにはないクイックモーション撮影に対応しており、またスローモーション/クイックモーション撮影ともにAFに対応しています。

——動画撮影用にS1かS5を選ぶ場合、何を判断基準にするとわかりやすいですか?

S1はプロ向けに妥協のない機能・性能を有したカメラであり、ファインダーや手ブレ補正、シャッターや堅牢性、耐環境性という面において、S5よりも1ランク上の性能になります。

一方、S5は小型軽量ボディに静止画・動画両面において高い性能を搭載したモデルで、アマチュアからプロまでの幅広いクリエイターの方々をターゲットとしています。

動画のスペックでは、S5がS1を上回る部分などもありますが、静止画撮影の用途などに応じ、選択いただければと思います。

LUMIX S5の背面モニターはフリーアングル式。

——動画撮影ではマイクロフォーサーズのGH5も根強い人気ですが、S5でのみ得られるメリットには何がありますか?

S5は4K/60p撮影であれば、フルサイズセンサー上のAPS-C領域の画素情報、4K/30p撮影であれば全画素から4K動画を生成しますので、解像感の高い4K動画を撮影いただけます。

——マイクロフォーサーズのG100とは想定用途が異なりますか?

G100は昨今増えているVloggerに向けた商品で、Vlog撮影を想定した機能を搭載しています。S5については、一部Vlog用途で使用されることもあると思いますが、それ以外にも個人で動画配信される方や、少人数での映像制作など幅広くご使用いただけると考えています。

LUMIX G100。トライポッドグリップ「DMW-SHGR1」にも対応している。

——静止画と動画のハイブリッドを早くからアピールしていたLUMIXですが、昨今の動画撮影に関して、環境変化があると感じますか?

従来ですと、静止画を撮影される方は静止画のみ、動画を撮影される方は動画のみという感じでしたが、静止画・動画両方を撮影される方が非常に増えてきているという印象を持っています。その中でも、手持ちで簡単に動画を撮影されたり、静止画のイメージでショートムービーを撮影される方も増えています。またそれらの動画をYouTubeやInstagramなどのSNSで配信し、スマートフォンで簡単に視聴するというスタイルが増えてきていると感じています。

仕様などについて

——USB PDには対応していますか?

カメラボディはUSB PD非対応になりますが、USB充電や一部バッテリー消費を伴いながらの給電動作は可能です。チャージャーはPD対応していますので、PD対応ACアダプターとの組み合わせにより急速充電が可能です。PD対応ACアダプターを付属したバッテリーチャージャー(DMW-BTC15)も展開していきます。

バッテリーチャージャー「DMW-BTC15」

——最近"クルポンダイヤル"(押し込みも可能な後ダイヤルの愛称)を見かけませんが、何故でしょう?

S1シリーズでは、プロの仕事の道具として操作性に徹底的にこだわったモデルであり、被写体から目を離すことなく、迷わず操作できることを目指し、1ボタン1機能を基本としていました。今回のS5では、小型ボディでありながら、そのS1シリーズの思想を受け継いでおります。

GX7 Mark IIIなどに搭載しているクルポンダイヤルにつきましてもユーザーからの評価をいただいていますので、基本的にはLUMIXとして統一した操作性を実現していく中で、各モデルにおける最適な実現方法の1つとして検討していければと考えています。

※9月8日追記:記事初出時にクルポンダイヤルの搭載機種例としてGH5を挙げていましたが、誤りでした。GH5の後ダイヤルは押し込み非対応です。

——Webカメラ化ソフトは使えますか?また、USB給電で長時間使用できますか?

“LUMIX Tether for Streaming(Beta)”に対応していますし、7月に開発を発表した“LUMIX Webcam Software”にも対応予定です。S5のUSB給電は一部バッテリー消費を伴います。長時間撮影に向けては、AC電源から電力を供給できるDCカプラー(DMW-DCC17)をご用意しております。

DCカプラー「DMW-DCC17」

——今後のレンズ展開について、新情報はありますか?

S5のキットレンズは7月に発売開始した標準ズームレンズLUMIX S 20-60mm F3.5-5.6(S-R2060)になりますが、今回ロードマップに、望遠ズームレンズ70-300mm F4.5-5.6や、低照度下での撮影やボケを活かした表現を可能とする大口径単焦点レンズ24mm、35mm、50mm、85mmを追加しました。この単焦点レンズは、クリエイターの皆さまがご使用になられる様々なシーンに対応するべく、主要な焦点距離をカバーし、さらに全て同一サイズ、同一操作性を実現します。またこれらのレンズ以外にも、広角単焦点レンズや大口径広角ズームレンズなど、レンズラインナップをしっかりと拡充させていきます。

海外向けのオンライン発表イベントで公開された、今後発売予定のレンズ。
9月3日に公開された最新ロードマップ。

本誌:鈴木誠