インタビュー

ニコン「Z 5」に見る“ニコンクオリティ”の現在(前編)

開発コンセプトと細部への“コダワリ”、Z 7/Z 6との差異を聞く

ニコンが8月28日に発売したミラーレスカメラ「Z 5」に関するインタビューを、前後編の2回にわたってお届けする。

前編では「Z 5」の開発コンセプトや、具体的なこだわりポイントなどについて聞いた。また、カメラを使用してみての感想や気になる点も担当者に直接質問。細かな仕様に至るまで回答を得ることができた。(聞き手・本文:豊田慶記/ 写真:編集部)

左から、映像事業部 開発統括部 第一開発部 第四開発課の神保直樹氏
映像事業部 デザインセンター IDグループの今水誠氏
映像事業部 UX企画部 UX企画二課の鈴木伸世士氏
映像事業部 UX企画部 UX企画一課の足立悠佑氏
映像事業部 開発統括部 設計部 第三設計課の森剛一郎氏
映像事業部 開発統括部 設計部 第一設計課の藤田昌之氏
映像事業部 開発統括部 第一開発設計部 第三開発課の浅見典充氏
※ソーシャルディスタンスを考慮しておりますが、撮影時のみマスクを外しております。

「Z 5」の開発コンセプトとは

——最近のカメラとしては珍しく、カタログに「売りとなる文句」が少ないカメラという印象があります。例えば“同クラスで世界最小”といったスペック的な看板がZ 5にはありません。どのようなコンセプトで企画された製品なのでしょうか?

足立 :Z 7とZ 6を発売した段階で、Zシリーズのモデルラインナップを広げていきたいという気持ちがありました。ラインナップを広げる手法については色々な考えがあると思います。

ニコンとしては、カメラをより多くの人に使っていただきたいという気持ちがありましたので、「お手頃」という表現が適切かは分かりませんが、フルサイズ機の入り口となる機種を投入しようという議論になりました。

そこで、「高い基本性能を保ちながら、より多くの人にフルサイズを楽しんで欲しい」というコンセプトを設定し、Z 5を企画しました。

ボディの企画を担当した足立氏

——そういったコンセプトに対して、カメラの仕様やスペックはどのようにして決まるのでしょうか?

足立 :「どのような方にお使いいただきたいのか?」というユーザー像の想定から行います。チームを作って意見を出し合い、お使いになる方のイメージを作り上げていきました。

Z 5のユーザー像には、大きく分類して2つあると考えました。ひとつは、いままでフルサイズの一眼レフを愛用していたが、初めてミラーレスを試してみたいと思ったユーザー。もうひとつは、現在APS-Cなどフルサイズ以外のセンサーサイズのカメラを使っていて、フルサイズ機にステップアップしたいと考えているユーザーです。

そうして定まったターゲットユーザーに対して「どのようにアプローチするのがニコンらしいのか?」という点を議論し、必要な仕様に落とし込むという流れでした。

——Z 5の仕様・スペックを策定する上でこだわったのは、どんなところでしょうか?

足立 :Z 5の商品企画では「ニコンのカメラの良いところを踏襲したい」という気持ちが部門を越えた共通認識として存在しました。我々の考えるニコンのカメラの良いところは、「カメラの、道具としての高い品質」だと考えていますので、カタログスペックよりも品質にこだわろうと考えました。

Z 7/Z 6とのパーツ共用化、コストと品質のバランス

——Z 5はZ 7/Z 6とほぼ同じデザインに見えますが、「お手頃」な価格を実現するための選択、ということでしょうか?

足立 :はい。ご覧の通りZ 5は、Z 7/Z 6とほぼ同じ形状をしています。可能な限り手頃な価格を実現するため、また、品質を維持しながらコストを抑えるために、Z 7/Z 6からのパーツの共用化という手法を採りました。

今水 :例えばカバー類や操作部材を共用化することで、防塵・防滴性能や剛性・堅牢性の高さだけでなく、操作性や操作の感触についてもZ 7/Z 6と同等になるという品質上のメリットが挙げられます。

外観デザインを担当した今水氏

——Z 7/Z 6とのパーツ共用化について、もっと詳しく聞かせてください。

今水 :例えばレリーズボタンはZ 7/Z 6と同じリーフスプリング式スイッチになっていますので、繊細なタッチフィールがあります。ボタン類についてもZ 7/Z 6専用にカスタマイズしたラバースイッチを採用していますので、静音性と滑らかな押し心地を実現できました。

これらの共用によって、Z 7/Z 6で達成していた品質を維持しつつ価格を抑えられましたので、Z 5ユーザーの皆様に高い満足感を提供できると考えています。

——今回のZ 5のように上位機種のパーツを継承することは、ユーザー目線では“お値段以上”の嬉しさがあると思いますが、会社としては必ずしもメリットばかりではないと思います。そうした検討に「待った」はかからないのでしょうか?

足立 :ニコンは上位モデルの部品を下位モデルに採用することにあまり躊躇がない会社です。良い部品や評価された部分はクラスの垣根を超えてドンドン使っていこうという気風があります。

今水 :正直なところを言えば、上位モデルからの流用は、利益率という観点からは苦しいところが多々あります。もちろんコンセプトに左右されるところもありますが、足立が申し上げた通り、少しでも良いものに触れて欲しいという考えが優先される会社ですので、どちらか選択できる場合にはコストではなく、より品質の高いものが選ばれます。

——後ダイヤルの質感が変わっていますが、こちらは共用していないのでしょうか?

今水 :こちらは共用化していません。Z 7/Z 6はアルミ製のダイヤルでしたが、Z 5では樹脂を採用しています。しかし、ダイヤル天面にアルミ製の天板を貼り付けることで見た目の品位を保ちつつ、ローレットパターンのピッチも変更し、操作時の指への食いつきを改善しています。

——まさか樹脂製とは思いもしませんでした。個人的にはZ 7/Z 6よりも操作触感が良いと感じたので、驚いています。

今水 :使用感や外観の品位を保ちながら、「どのようにしてコストを抑えることができるか?」という課題への取り組みが、今回のZ 5の開発においてデザインチームが最も苦労したところです。

AF合焦スピードに多少の違い?

——Z 5とZ 6を使い比べて気になったところがAFです。AFが合焦するまでの速度が、暗所や低コントラストシーンでは顕著にZ 5のほうが遅いです。またそれ以外のシーンでもごく僅かな体感上の違いにはなるのですがZ 5の方が遅く感じます。

AF担当(後日メール回答) :Z 6では撮像素子の違いによる読み出し速度の差などから、低輝度下でのフレームレート制御が異なるため、Z 5よりも合焦までの時間が早くなっています。Z 5ではローライトAFをOFFにすると夕暮れ時や暗めの室内といった薄暗いシーン、キットレンズ装着時にEV4以下程度のシーンでAF合焦までの時間が改善する場合があります。

——AFのアルゴリズム自体はZ 7/Z 6と同じ制御なのでしょうか?

足立 :撮像素子に合わせたチューニングの違いはありますが、基本的に同じ考えのアルゴリズムを採用しています。

——EVFの覗き心地はZ 7/Z 6と同様に素晴らしいレベルであると思いました。その一方で暗所ではZ 6と比べてノイジーに見えるのは何故でしょうか?

神保 :撮像素子の違いによりノイズ特性が異なるため、高感度や暗所シーンではその影響を受けやすくなっていることが原因です。

撮像素子開発を担当した神保氏

——EVFで受けた印象とは裏腹に、高感度性能は悪くないように思います。

浅見 :Z 6と撮像素子は異なりますが、EXPEED6との組み合わせで、最大限の性能が出るように画像設計を行っています。

画像設計を担当した浅見氏

——高感度に強い裏面照射型CMOSセンサーに対して表面照射型CMOSセンサーで同等のスペックを達成していることには多大な苦労があったのだろうと思います。
一方で読み出し速度については遅く、サイレントモードで撮影すると、ローリングシャッター歪みの影響をかなり受けます。

神保 :読み出し速度とノイズはトレードオフの関係がありますが、今回はZ 5という製品コンセプトを考慮し、ノイズを優先しています。画質性能や高感度性能では最大限こだわって、Z 6と同じ最高ISO51200を実現しました。

——実際に撮り比べてもZ6に対して使用上で遜色ない高感度画質があるように思います。

神保 :はい。開発メンバーである我々も同じように考えています。製品コンセプトとしても、画質性能、高感度性能についてはこだわっている点です。

好感触な操作感

シャッターボタンへのコダワリ

——Z 5の使い心地の良さについては本当に感心しています。シャッターボタンと同軸にある電源スイッチの滑らかで全くガタつきのない操作感など、他社機と比べても秀でています。シャッターボタンの取り付け角度も適切で自然な位置に指を置けますし、どの角度からでも変わらない押し感そのものも素晴らしい。「やっぱりこういうところがニコンだな」と感じられる部分です。

今水 :そう言って頂けると、こだわった甲斐があったと嬉しく思います。

——Z 7/Z 6の登場時に感じたのですが、Dシリーズと比べてZシリーズではシャッターボタン周りのサイズも本体サイズ同様に凝縮されていますが、実際の操作感には変わらぬ精緻感があります。触ってみると見た目以上に“高そう”な印象を受けます。

今水 :設計チームと品証チームの努力の賜物だと思います。

:シャッターボタンはカメラで最も頻繁に操作する部分ですので、スムースな操作感がなくてはダメだと考えています。ユーザーによって押し方や力のかけ方は様々ですが、いかなる操作時にも引っ掛かりやスレ感がないように注意しながら設計を進めています。

構造設計を担当した森氏

——Z 5やZ 50も含めたZシリーズだけでなくDシリーズにおいても、ハイエンドからエントリークラスまでシャッターボタンにはとてもスムースな押し感がありますね。

:ニコンでは全てのクラスの製品で同じ思想を持って設計しています。

——例えば……の話になりますが、お手頃価格がコンセプトの核に設定されたカメラを開発するとして、シャッターボタンの感触を仕方なく妥協した設計をした場合、コンセプトに適合しているからといって、品証チームはそうした妥協を納得してくれるのでしょうか?

:製品の価格帯に関係なく、そうした部分を妥協させてはくれないので、設計の頑張りで対応しています(笑)

一同 :(笑)

今水 :「心地良い操作感」という点は本当にこだわって作り込んでいます。先ほどお伝えしたダイヤルの操作感もそうですし、例えばボタンの押し感やシャッターを切った時の気持ち良さからくる「道具としての信頼感」などについても、価格帯の近い他のカメラとは違うと考えています。

——メカ設計において注力したところや新規要素はありますか?

:メカ的に新規要素はあまりありませんが、先程デザインの観点からダイヤルの部材変更などを説明した通り、低コスト化を図りつつも“安っぽく”見えないようにする工夫という意味では注力しています。例えば背面カバーはZ 7/Z 6のマグネシウム合金製からZ 5では樹脂製に変わっていますが、ダイヤル類などと同じく高い品質に感じられるようにこだわっています。

——確かに、背面カバーの質感は注意して観察しないと樹脂だと気付きません。

今水 :例えばモードダイヤルの軸は、回転させた時の軸のガタが殆どありません。高い精度で形成から組み付けまで出来ていますので、引っ掛かりの無い回転感触が得られています。品証チームと何度も意見交換をしまして、そうした触感のスムースさにこだわった作りとしています。

——確かに、非常にスムースです。こういった操作触感は価格的な満足感に関わる部分、という認識でしょうか?

今水 :はい。その通りです。

——Z 5で金属外装を選んだ理由を教えて下さい。価格的な満足感に関わる部分での質感を重視した結果でしょうか?それとも材質が持つ特性の違いを重視した結果でしょうか?

今水 :触った際の感性的な部分、質感の優位性や剛性等を総合的に判断して、積極的に金属外装を採用していこう、というのが背景です。

——Z 5はZ 7/Z 6と比べて、マウント表面の仕上げが変わっていますよね?

今水 :はい。マウントの材質が変わっていまして、材質変更に伴う摩擦特性の違いから最適なピッチのパターンを採用しました。そのため、Z 7/Z 6と比べて仕上げが変わっています。

——マウントの材質はどのような観点から決めるのですか?

今水 :コストと材質の特性、と言えば良いでしょうか。材質によって品質が左右されることはなく、上位機種ではよりハードな使用が想定されていますので、高コストであってもより高い剛性のものを選ぶ、というような基準で選択しています。

——表面処理はされているのですか?

今水 :Z 5のマウント部はメッキ処理をしています。

——自動車などでは低摩擦・高耐久などといった観点からモリブデンコートやDLCなどの表面処理がなされますが、メッキということは耐腐食性という意味合いが強いのでしょうか?

:はい。Z 5では耐腐食性の観点もあります。もちろん耐久性についても確認しています。材料については機種の性格に応じて選定しています。

ボディの堅牢性は?

——Z 5は、どの程度の乱暴な扱いに耐えられるのでしょうか?

というのもDシリーズはかなり頑丈に出来ていて、実際に私がD800やD300を使っていた時は、不注意から落下させてしまったり、強くぶつけてしまったことが何度もありましたが、それでもボディの動作には問題が発生しませんでした。Dシリーズの上位モデルと同じくらいのタフネス性があるのでしょうか?

:具体的な評価基準は提示できないのですが、強度に対しての評価基準に基づいて設計しており、Z 5もかなり丈夫に出来ています。D1桁と同等というのは流石に難しいですが、Z 5もタフな使用に耐えるボディーになっています。

——防塵防滴について、これも多くのメーカーに当てはまることですが、具体的な指標が示されていません。私の使用経験からニコンの“防塵防滴仕様”は一般的に期待される以上の性能があると思っています。

Z 5では「Z 7/Z 6と同等」ということですので、D850と同レベルの防塵防滴性があると理解していますが、具体的に“どのくらいの降水量で何時間OK”のような例を出さないのは何故でしょうか?

足立 :独自規格による判定を行っているから、というのがその答えになるかと思います。

——上位モデルはそこそこの豪雨に1時間以上晒しても平気でしたが、あくまでも業務で仕方なくその条件下で使ったというだけで、結果的に大丈夫だったということは理解しています。ですが、実際に「防塵防滴」を謳っているカメラであれば、少なくとも少々の雨であれば全く問題が無いというのは知られていない事実と思います。ユーザーの安心材料として目安があればなと感じました。

:確かにそうですね。私は防滴に対する実力をある程度把握していますので、個人で所有しているエントリーモデルでも、ちょっとの雨であれば全然気にせず使っています。ただ、雨量の表現は難しく、どのくらいなら小雨なのか、本降りなのか、そうした表現上の定義が難しいです。

——例えばZ 5では、水撒きの要領でホースで軽く水を掛けたくらいでは全然平気ですよね?

:その程度であれば問題ないと思いますが、やり方・環境にもよりますので100%大丈夫というのは難しいと思います。

——ちなみに私は防塵防滴性を簡単にチェック出来る部分として、メディアスロットを見ています。Z 5はシッカリとシールされていることが分かりますので、「これは本気だぞ」と思いました。Z 5はスロットカバーを閉めた時の感触にもシッカリと密封した感じがあって、「高級そう」でした。

メディアスロット、細部へのコダワリは“蓋を閉める音“にも

今水 :そのメディアスロットカバーですが、剛性感というかシッカリ感がとても高いですよね。関わった人間が自ら申し上げるのもどうかと思いますが、この剛性感には感動しています。Z 5ではメディアスロットがSDダブルとなり、カバーが大型化しています。カメラを持った際の指掛かりとスロットのフタを兼ねた構造なのですが、いくら力を入れてもガタツキが全くありません。Z 7の時にも驚いたのですが、Z 5ではさらに開口の大きなフタになっているものの、品位を全く損なっていないのには、改めてニコンの設計、製造技術の高さを感じました。

:開口部というのは、基本的にはプラスチックとプラスチックの嵌合になりますので、しっかりシールしないと水が入ってしまいます。また、ガタツキなどによって、万が一水が入ってしまった事による不具合や故障があってはいけませんから、注意を払いながら設計しています。

フタを開けた時の音にも注意を払っています。開発当初、開閉時の音があまり良くありませんでした。Z 7/Z 6に比べて、フタが大きくなった分だけ重さが増し、動作に勢いがついてしまったんですね。それで何度か調整を重ねて今に至りました。

——他社製品のスロットカバーは、そもそも手の平がかぶさるような位置に配置されていることが多いです。Z 7のときにも感じましたが、可動部品にも関わらずグリップ部として思い切り力が掛かる構造になっているのにガタが一切無いので、「随分と攻めた構造だな」と思いました。

今水 :Z 7/Z 6との部品の共用化をしつつ、サイズ感も維持しながらダブルスロット化していますので、サイズに対する課題という意味では、このスロット周りの設計に最も苦労したという話がデザインチームには伝わっています。

:ダブルスロット化によってメディアの挿抜性が犠牲になってはいけません。当然ボディーの厚みを増やしてサイズ的な余裕を作れば対処は出来るのですが、そうした妥協も極力したくありませんでしたので、メディアの挿抜性とボディーの厚みを両にらみしながら検討しました。

——お話を伺って改めてメディアスロットを観察しますと、スロット1と2の仕切りが凄く薄いですね!そして、細い仕切りなのに指で押しても全く歪まない。

今水 :担当者のコダワリと言ったレベルではなく、操作性の評価と同様に官能性——例えば先程のメディアスロットカバー等の開閉音などについても、使って心地良い感触があるかどうか、という評価をしています。

——確かにニコンはバッテリーの抜き差し1つにしてもやりやすいですし、安っぽい音があまりないという記憶があります。

ちなみにですが、バッテリー室のフタについてはもっとシール性を向上させるのは難しいのでしょうか?というのも、防滴と言われると「雨が大丈夫なのだから、濡れたところに置いても平気だろう」という心理が少なからず働きます。

確かに防滴性を謳っているカメラは上からの水には強いですが、例えば濡れた机の上に置くといった下からの水には弱くて、実際にZ 6を雨上がりの野外テーブルに置いて風が吹いたりテーブルに手をついたりしたという想定で、カタカタと何度も揺らせるという意地悪な検証をした際には、毛細管現象でバッテリー室に水が回る場合がありました。

:メディアスロットのカバーとバッテリー室のカバーは同じ防滴基準で作っていますが、濡れたところに置かれるのは部分的な水没に近い状況になりますので、難しさがあります。今後の課題とします。

デザインの“標準化”とは?

——Zシリーズの操作部分は、配置的も形状も立体的に出来ていますね。

今水 :操作性に寄与する部分なので、操作中に「どのボタンに指が触れているか?」ということを認識出来るように、角度や立体感に強弱を付けて配置しています。これはノウハウとしてずっと踏襲している事になります。

——そのノウハウは文書や資料として纏めてあるものなのでしょうか?

今水 :デザインセンターには、ニコンデザインに携わる上での“こういう考え方でデザインしましょう”という考えをまとめた「標準化」という資料があります。

具体的にお話出来る範囲で言えば、背面のレリーズボタンは握りこんだときにボタンを誤操作しないよう凸量を抑えています。これは握り込んだ際に誤操作などを防ぐためという意図があり、ニコンの全てのカメラが踏襲している考え方になっています。

——ニコンの製品ページで、こうした強みに1ミリも触れていないのは何故でしょうか?このお話を伺ったうえで意識して触れてみると、「なるほど!」という感動がありますね。

一同 :(笑)

(後編では、新キットレンズ「NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」や、ニコンに受け継がれる伝統などについてお届けする)

豊田慶記

1981年広島県生まれ。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープの写真に感銘を受け写真家を志す。日本大学芸術学部写真学科卒業後スタジオマンを経てデジタル一眼レフ等の開発に携わり、その後フリーランスに。黒白写真が好き。