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ソニーに聞いた「α7S III」一問一答(その2)
ローリング歪みの低減、放熱の工夫、CFexpress Type Aの理由など
2020年7月31日 00:00
7月29日に発表されたミラーレスカメラ「α7S III」(10月9日発売)。発表情報に関して気になった点について、ソニーから得られた公式回答を追加情報としてお届けする。既報の「その1」に続き、今回は動画機能とCFexpress Type Aが話題の中心となる。
・ソニー、有効1,210万画素の「α7S III」を10月発売。約45万円
・ソニー、CFexpress Type Aカードを10月に発売
・ソニーストアで7月31日から「α7S III」を先行展示
ソニーに聞いた「α7S III」一問一答
(その1)前機種との違い、新機能・新メニューUIについてなど
動画関連の仕様について
——ローリングシャッター歪みはα7S IIと違いますか? どのように実現を?
裏面照射型構造に合わせ伝送速度が速いCu(銅)配線を採用することで、従来機「α7S II」比で約2倍のデータ読み出しを実現し、カメラを横方向に振る(パン)などの撮影時に起こりやすい動体歪み(ローリングシャッター現象)を静止画・動画撮影時において大幅に低減します。動画時は約3倍、「α7S II」比で改善しています。
——4K60pで1時間を超えるという連続撮影には、どのように発熱対策をしていますか?
撮影中の温度上昇を抑制するため、イメージセンサーから画像処理エンジン、各種回路設計すべてにおいて細やかな制御を行うことで、低消費電力を実現しています。また、カメラの内部構造やパーツを新たに設計し、イメージセンサーや画像処理エンジンの駆動に伴う熱を効果的に分散し放熱させることで、バッテリー容量を使い切るまで、1時間を超える高精細4K60p動画記録を可能にします。※
また、スマートフォン等にも用いられる熱伝導性に優れたグラファイト素材を、ソニー独自の「Σ(シグマ)形状」に加工し手ブレ補正ユニットに組み込んでいます。この画期的な新開発構造により、手ブレ補正時のイメージセンサーユニットの円滑な動作を妨げることなく、本体内の温度上昇の主要因となるイメージセンサーからの発熱に対し、従来機「α7S II」比で約5倍の放熱効果を得ることに成功しました。
※:ソニー測定条件。XAVC S-I 4K 4:2:2 10bit記録、25度(室温および録画開始時のカメラ温度)、自動電源OFF温度[高]設定、条件により撮影可能時間は変わります。社内測定では、USB給電ですと4時間以上撮影できました。
——手ブレ補正アクティブモードとは何ですか? どのように実現していますか?
「アクティブモード」は、動画撮影時の手ブレ補正を大幅に強化し、歩きながらの手持ち撮影でも高い安定性を発揮する動画専用の光学式5軸ボディ内手ブレ補正機能です。ボディ単体で高い補正効果を得られるため、機動性を損ないません。カメラに内蔵した高精度な手ブレ補正ユニットとジャイロセンサー、最適化されたアルゴリズムにより手ブレ補正効果を向上させています。リアルタイム処理能力に優れた新画像処理エンジンBIONZ XRが、手ブレ量を高精度に検出し光学的に補正することで、4Kを含む各フォーマットで圧倒的に安定した動画撮影を可能にしています。
——手ブレ補正アクティブモードは純正レンズ以外でも使えますか?
はい、使えますが、純正レンズと組み合わせることで機能を最大限に使用することが可能です。
——もっとも広いダイナミックレンジを得られるカメラ設定は何ですか?
動画撮影時のS-Log3設定時です。(ソニー測定条件)
——動画撮影時のAFアルゴリズムに特徴はありますか?
業務用カメラのFX9とあわせ、従来より細やかな設定が可能になりました。AFトランジション速度を7段階に、AF乗り移り感度をそれぞれ5段階に設定できるようになり、撮影シーンや撮影者の表現・意図に合わせた細かなフォーカス表現が可能です。
加えて、追従する被写体をタッチ操作ですばやく変更できるようになり、インタビュー取材などフォーカス合わせに集中できないシーンでも直感的な操作ができます。マニュアルフォーカス中に、タッチフォーカスによるピント合わせも可能です。さらにモバイル機器にインストールしたImaging Edge Mobile(イメージングエッジモバイル、Ver.4.2以降)からも、タッチ操作によるフォーカシング操作が可能になりました。
——本体にHDMI Type-A端子を採用した理由は何ですか?
HDMI Type-A端子は、耐久性や汎用性が高いため採用しています。
——バリアングル式モニターのメリットは何ですか?
ウェストポジションでの動画撮影や、縦位置アングルでのチルト静止画撮影に対応するため、横開き式の液晶モニターをソニーのミラーレスカメラで初めて搭載しています。横方向に開く機構のため、ジンバルやリグ使用時にもモニターの操作性を損ないません。モニターは、約144万ドットの高精細かつ3.0型の大画面で、新たにタッチ操作に対応します。録画中は、撮影画面に赤枠を表示することで、認識しやすくしています。
CFexpress Type Aについて
——記録メディアのスロット構成はどうなっていますか? 2つにスピードや仕様の違いはありますか?
α7S IIIは世界で初めて、CFexpress Type AカードとSDXC/SDHCカード両方に対応したスロットを2基搭載しました。例えば、4K 4:2:2 10bit XAVC S-I映像を、リレー記録で長時間撮影ができたり、2つのメモリーカードへの同時記録でバックアップができたりするなどプロが求めるニーズに応えます。
CFexpress Type Aカードは、連続撮影や高ビットレート4K動画撮影に適した小型のメモリーカードで、その高速書き込み処理性能により、静止画・動画の膨大なデータ処理においてもカメラ本体のバッファーを迅速に解放し、クリエイターの撮影中のストレスを低減します。
また撮影後のワークフローにおいても、SDカード記録比(ソニー測定条件)で約1.7倍のPCへの高速データ転送が可能になるなど高速性能を備えるとともに、小型サイズでカメラの小型設計にも寄与しています。
——Type Bとはどう違いますか?
どちらのメモリーカードもインタフェースに非常に高速なPCI Express Gen3を採用し、最新のNVM Express1.3プロトコルに対応していますが、カードの大きさや重さ、メモリーカード規格としての理論的な最大速度が異なります。
CFexpress Type Aカードは「α7S III」との組み合わせでSD UHS-IIカードの規格では一部のモードで記録できなかった4K 4:2:2 Intra動画記録や1,000枚を超える非圧縮RAW静止画の連続撮影が可能な高速性能を実現しつつ、小型・軽量なカードサイズであることから、「α7S III」のようにミラーレスカメラの特長であるカメラ本体の小型・軽量を維持したまま、CFexpress Type Aを2枚挿入できるデュアルスロットを採用することができるのがCFexpress Type Bカードとの大きな違いです。
——XQDをスキップした理由は何ですか?
商品性を総合的に考慮し、カメラ本体のサイズを抑えながら高速な記録メディアに対応したデュアルスロットを実現するため、CFexpress Type Aを採用しました。これにより、静止画・動画の迅速な記録・再生を実現しています。
——カメラとPCをUSBケーブルで繋いでも(カードリーダー経由でなくても)CFexpress Type A内のデータを高速で読み出せますか?
はい、可能です。
その他の仕様について
——今回のEVFの特徴を教えてください。
「α7R IV」比で約1.6倍の世界最高(※1)の解像度をもつ、新開発の約944万ドット(Quad-XGA)・大型0.64型有機ELディスプレイを採用した、電子ビューファインダーを搭載しています。世界最大(※1)0.90倍(※2)のファインダー倍率(対角視野角:約41度)とハイアイポイント(約25mm ※3)や周辺歪み低減設計で、隅々までクリアな映像を映し出します。防塵・防曇性能や表示レスポンス、被写体に応じたモード設定など、クリエイターのユーザビリティに配慮した性能で撮影を強力にサポートします。
※1:2020年7月広報発表時点、ミラーレス一眼カメラにおいて。ソニー調べ。
※2:50mmレンズ、無限遠、視度-1m-1時。
※3:最終光学面からの距離、視度-1m-1時 (CIPA規格準拠)。
——可視光+IRセンサーを採用した理由は何ですか?
カメラの前面に新たに可視光+IRセンサーを搭載しています。蛍光灯やLEDなど色調整が難しい人工光源下でもより正確なホワイトバランスが得られるよう、AWB(オートホワイトバランス)性能も進化しました。
——USB充電・給電に対応していますか? PD対応ですか?
USB Power Delivery対応による給電および高速充電を実現しています。
ソニーに聞いた「α7S III」一問一答
(その1)前機種との違い、新機能・新メニューUIについてなど