Nikon Z 7IIに決めた理由
F1.2のボケと瞳AFの相性は抜群!仕事にも作品撮りにも頼りになる存在…柴崎まどかさん
Nikon Z 7II & NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
2020年12月23日 17:00
2020年12月11日に発売となったフルサイズミラーレスカメラ「Nikon Z 7II」。4,000万を超える画素数や瞳AFなどの機能はより強化され、CFexpressとSDカードの両方に対応したダブルスロットなど、細かい点に改良を加えたフラッグシップ機だ。NIKKOR Zレンズのラインナップも充実してきた。
今回はこのNikon Z 7IIと、「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」を、写真家の柴崎まどかさんに使ってもらい、その性能を存分に語ってもらった。
柴崎まどか
1990年生まれ、埼玉県出身、東京都在住。フリーランスフォトグラファーとして『左様なら』『アルプススタンドのはしの方』『転がるビー玉』など、数々の映画スチールの他、雑誌、広告、カタログ、アーティスト写真など幅広く活動。写真家としての作品も精力的に発表しており、俳優 笠松将を一年に渡り追った写真集『Show one's true colors.』が代表作となる。
服飾専門学校卒業後、アパレルデザイナーとして3年間勤務。在職中にWebデザインを学び、並行して独学でDTPデザインを学ぶ。その後、某大手アパレルメーカーのアートディレクション部署にてファッション広告のディレクション、デザイン業務を経験。その経験を活かし、現在デザイナーとしても案件を請け負う。
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最初のカメラからニコン一筋
——まずは写真家になった経緯を教えてください。
服飾の専門学校で学んでいた頃、高校生の頃に初めて買ったデジタル一眼レフカメラ「ニコンD60」でファッションショーや自分の作った服をカメラで撮っていました。
その後、アパレルのブランドに服飾デザイナーとして就職したのですが、服のデザインに加えて、商品の撮影、Webデザイン、カタログ制作などもこなすようになったのです。
そうするうち、制作の中でスタジオ撮影に立ち会う機会も増えていき、自分でも撮影したくなりました。友だちにモデルになってもらって撮影して、それをSNSにアップすると、意外にも良い反応が(笑)。そのまま勢いに乗ってデザイナー兼フォトグラファーで独立してしまいました。
ただ現場を知らない私が生き残るためには、とにかくいろんな人に出会う必要がありました。そこでグループ展に参加したり、そこで仕事をいただいたりして、じわじわとフォトグラファーの仕事が広がっていきました。現在はありがたいことに、デザイナーよりもフォトグラファーの仕事の方が多くなっています。
——最初にニコンのカメラを選んだのはなぜですか?
友だちのお父さんがニコンのデジタル一眼レフカメラを持っていて、当時私が使っていたコンパクトデジタルカメラと「写りが全然違う」と感動したのがきっかけです。そこで私も真似してD60を買いました。その後のデジタル一眼レフカメラはD90、D800です。
——カメラボディ、レンズ以外でニコン純正のアクセサリーを使用されていますか?
スピードライトのSB-700をよく使います。古い機種ですね(笑)。5年以上使っていて、一度も故障したことがありません。
瞳AFが撮影を変える
——Nikon Z 7IIのお話を聞かせてください。まず、率直な印象はいかがでしたか?
瞳AFがとても優秀ですね。しっかり追ってくれるので、ピントはほぼ任せて良いと思います。今回は「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」で撮りましたが、浅い被写界深度も瞳AFがあれば問題ありません。これはすごいですね。右目と左目のどちらにピントを合わせるかも選択できますし。D850やD800ではこうはいきませんよね。
デジタル一眼レフカメラではAFエリアモードを「シングルポイント」にして、手動で瞳の位置まで移動させていましたが、瞳AFではそういった操作がそもそも必要ない。これはとても便利です。
映画の撮影風景を撮る場合、本番中に写真を撮らなければいけません。ワンテイクで撮影が終わってしまうと、その場面は2度と撮れないのでとても神経を使います。その不安を拭ってくれるのは非常に助かります。Z 7IIからは「ワイドエリアAF」でも瞳AFが使えるようになりましたし、いいですよね。
——大きさや重さ、グリップはいかがでしょうか?
片手で撮れるのが本当にいいですね。映画の撮影風景を撮るときは、けっこう無理な姿勢で撮るので(笑)、そういった時に腕の負担が軽くなるのがいいですね。それとグリップも握りやすく、そこにさらに瞳AFがあるとなると、本当になんでもできそうな気がします(笑)。
——操作性はいかがでしょうか? ZシリーズはDシリーズと比べると、ボタンの配列もかなり変わっていますが。
最初は戸惑いましたがすぐに慣れました。ボタンが右側に集められていて、これが片手で操作しやすい要因になっていますね。D850やD800では大きすぎると感じる人も、Zなら問題ないと思います。女性にとってもありがたいカメラだと思うのでおすすめですね。
あと、iボタンとiメニューですね。必要な機能にすぐアクセスして設定できるのが便利。特に瞬発力を求められる現場だと、設定に時間をかけることは、シャッターチャンスを逃すことに直結します。iボタンで簡単にアクセスできれば、その心配も少なくなります。
——電子ビューファインダーの印象は?
デジタル一眼レフカメラの光学ファインダーに慣れ親しんできたのですが、Z 7IIの電子ビューファインダーに違和感はそれほど感じませんでした。むしろ、撮影設定をファインダー内に反映させられるのがありがたいです。
デジタル一眼レフカメラでは感覚で露出を設定し、撮影してそれを確認……という手順だったところを、撮影前にどうなるか、ファインダー内で確認して撮影できるのはいいですね。一眼レフカメラで撮る時より、撮影のレスポンスが非常に良くなります。
——撮影設定をお聞かせください。
露出モードはマニュアルです。ホワイトバランスもマニュアルで、色温度指定で設定することが多いです。ピクチャーコントロールは「ポートレート」、まれに「ニュートラル」を使います。アクティブD-ライティングは「標準」、測光は「マルチパターン測光」。これがベースで、撮影現場によって調整します。
——現場での撮影とRAW現像では、作業の比重はどのくらいでしょうか?
撮影できれいに撮れていないと、RAW現像もうまく仕上がらないんですよね。RAW現像はあくまで補助で、色やコントラストを少し補正して、粒子を入れるかどうかくらいです。マイナスを補うよりも、プラスαの味付けをする程度にとどめています。
——粒子ですか。そういえば柴崎さんの写真はフィルムのような質感の写真が多い印象です。
昔からフィルムの写真が好きで、そういう写真を撮りたいと思っていました。小さい頃はまだフィルムカメラがあって、子どもの頃の写真はフィルムから現像したプリントとして残ってたりします。こういう質感はどうやったら表現できるんだろう? と探求して、いまの表現になりました。
友だちに言われて嬉しかったのが、「古い本に挟まってそうな写真だね」ということです。ふとした時に見るというか、忘れられた思い出のような、そういう作風に見てもらえたら嬉しいです。
フィルムのような質感を表現するのに、Z 7IIは非常に良いと思います。撮影の時はもちろんのこと、RAW現像の時にも非常に細かい調整に耐える画質だと思います。階調の幅が広く、データが崩れにくく感じますね。
この窓際で撮影した写真ですが、光が当たっているカーテンと、壁にさしている影が強いコントラストをつくっています。それなのに、白とびも黒つぶれも出ていません。
——その他、Z 7IIで気付いた点はありますか?
ダブルスロットというのがいいですね。仕事では必須といえる装備だと思います。
作風を変えてしまう力を持つ「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」
——続いてレンズの話も聞かせてください。F1.2の大口径レンズ「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」の印象はいかがですか?
普段、ズームレンズを使って、少し絞り込んで撮影することが多いんですよね。パンフォーカス気味の写真が多めになっています。でも「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」を使った時は、自然と絞り開放で撮影していました。なだらかで美しいボケのせいでしょうか。レンズひとつで自分の撮影するものがここまで変わるのかと驚いたくらいです。瞳AFの安心感もあるかもしれません。D850などのデジタル一眼レフカメラでは使えないレンズですので、この描写を得るためにZを選びたくなります。
これは豊島区の公園で撮影した写真です。学校のようなシチュエーションに惹かれて、撮影地に選びました。モデルさんとは少し離れて撮影しましたが、それでも髪の毛の質感や、頭に当たる光の階調が残っていて、逆光でもフレアやゴーストは起こりませんでした。
Z 7IIを使って思ったのは、操作性の良さと優秀な瞳AF。またNIKKOR Z 50mm f/1.2 Sは、私の撮影する写真を変えてしまうくらい優れたレンズでした。この2つの機材でポートレートを撮影すれば、デジタル一眼レフカメラとは違う写真が撮れるのではないでしょうか。
デジタルカメラマガジンにも柴崎まどかさんが登場!
デジタルカメラマガジン2021年1月号の「Z 7IIに決めた理由」では、インタビューにお答えいただいた柴崎まどかさんと風景写真家の佐々木和一朗さんが、D850とZ 7IIの比較やミラーレスカメラへの乗り換え条件について考察しています。ぜひご覧ください。
協力:株式会社ニコンイメージングジャパン