新製品レビュー

Canon EOS R6(前編:単写編)

一眼レフ感覚のファインダー 操作レスポンスの高さも魅力

7月9日に発表されたキヤノンのフルサイズミラーレス「EOS R6」。EOS R5と同時に発表された製品で、同社フラッグシップモデルであるEOS-1D X Mark III由来の撮像センサーを搭載したモデルだ。今回、EOS R5に先行して本機の実写レビューをする機会を得た。以下、前後編にわけて実写結果と撮影時の感触についてお伝えしていきたい。なお、詳かいスペックやEOS R5との違い、外観およびスペック詳細については以下の記事を参照されたい。

写真で見る:キヤノン「EOS R5」「EOS R6」
EOS R5/R6の外観とメニューについてまとめています
キヤノンEOS R5/EOS R6関連記事まとめ
これまでにレビューを掲載したRFレンズや関連するニュース記事を一括でまとめています
解説:キヤノン「EOS R5」と「EOS R6」の違い
EOS R5/R6、両機の違いをスペックベースで比較しています

まずは外観の印象から

元箱から取り出しご尊顔を拝んだ際の印象は結構良い感じ。1点だけ苦言を呈すれば、昨今のコストと耐衝撃性がバランスされた、つまり機能性重視の合理的かつ低カロリーな梱包には少し寂しさを感じるところではあります。エコだし元箱を捨てる事に何の躊躇も生じないというメリットは否定できません。オーナーさんの特権なので写真は載せません。

話を戻して、いわゆる金属外装ではないけれど、触り心地はなかなか良いし握り心地も上々。強く握りしめたり、大口径レンズを装着して捻じり方向に負荷を掛けても剛性感が高く「シッカリしている」という感覚が伝わります。こういうところは「さすがは老舗だ」と感じさせる部分。

EOS Rにはあった、どこか地に足がついていない雰囲気が完全に霧消し、つくり慣れた一眼レフみたいな佇まいがあるので「おっ!」と嬉しくなりました。著者はこういった製品から受ける印象とか雰囲気について、とても大切なことであると捉えています。というのも、スマートフォンを筆頭として、写真撮影が可能な選択肢がたくさんある中で、本家のカメラを選択する理由の1つに、カメラでなければ成就できない特別な感覚、例えば所有欲だったりカメラならではの撮影感触などがあると考えているから。

なので、“高級そう”とか“使い易そう”とか“佇まいが良い”とか“良い写真が撮れそうな気がする”といった感覚や印象は、撮影のモチベーションを高めるとても重要な要素である、という認識です。

まぁ、たくさんの選択肢がある現在、なぜカメラを選ぶのか? という事への豊田なりの見解だね。

手に持った印象は直接比較したわけではありませんが、記憶の中のEOS Rよりも質感が高いように思いました。価格帯が上だから当然なのかも知れません。ダイヤル類の操作感については、一眼レフのEOS 5D Mark IVよりは下かな? という印象。ボタン配置等の操作系レイアウトは「一眼レフのEOSそのもの」なので、一眼レフのキヤノンユーザーなら1ミリも迷うことなく初見からガンガン使いこなせることでしょう。

従来機ユーザーなら、と書きましたが、他社機ユーザーであってもそれほど戸惑うことなく使えると思います。個人的にはキヤノンの操作性はとても好ましく感じています。例えば、欲しいところに欲しい機能が割り当てられたボタンがあるし、UIも分かりやすくて直感的。操作性デザインに関しても確固としたノウハウと理論を持っているのであろうことがうかがわれます。

EOS Rの登場時に鳴り物入りで投入されたマルチファンクションバーはEOS R5/R6ではアッサリと非採用にする辺りにもキヤノンらしさを感じて良いと思いました。

しばらくいじくりまわしていて気になったのが、垂直に立っている前ダイヤル(正式名称:メイン電子ダイヤル)が、三脚使用時に背面モニターを眺めながら操作するようなシーンではちょっと操作しづらいと感じられたところ。

ちなみに手持ちでは正位置撮影では全く気にならなかったけれど、グリップを下にした縦位置では人差し指で操作するのが難しかったので、握り方を変えて親指で操作するようにすると良さそう。まぁ、後ダイヤル(正式名称:サブ電子ダイヤル1)に背面のサブ電子ダイヤル(正式名称:サブ電子ダイヤル2)、レンズ側のコントロールリングもあるから、設定を工夫すれば解決しそうです。

あと、前ダイヤルにはゴムが巻かれていて指掛かりも良さそう。後ダイヤルにはゴムは巻かれていません。どっちにもゴムを巻いたほうが操作性は良いように思うのだけれど、どうだろう?

マルチコントローラーの使用感は優良。操作に対するレスポンスが良いし、AF枠の動作に引っ掛かりがないので非常に快適。個人的にはパナソニックのS1シリーズの方が少しだけ快適だと思うけれど、ほぼ同等クラスの操作快適性があると感じました。ちなみに筆者的なベストはEOS-1D X Mark III。あれは極上です。

AFフレーム選択の敏感度が3段階から選択出来ますが、デフォルトの「0」がちょうど良いバランスに感じました。

あ、マルチセレクターがデフォルト設定では無効にされているやつ、いい加減ヤメません? ココだけは相変わらず初見殺しな設定だと思います。

気になったのはメディアスロットの防水性能。三脚使用時、グリップが上を向く縦位置だと場合によってはヒンジ側から水が回るのでは?という気がしています。カメラのクラス的にはEOS 6D Mark II相当らしいので、妥当なのかな? とは思うけれど、他社を見てみるとエントリークラスであっても手抜かりなく対策されてる場合もあるので、やはり30万円超のカメラとしてはもうひと踏ん張りしてほしかった、という気持ちはあります。だってフィルムEOSの最高峰、EOS-1Vよりも高価だからね、EOS R6は。

作例

さて、ひととおり操作まわりを確認したところで、作例をご覧いただこう。実写画像のあとで、ファインダー等のインプレッションをお伝えしたい。

写真らしい写りが本当に好印象のRF70-200mm F2.8 L IS USM。寄れるし比較的コンパクトだし、でEOS R6を持ってたら是非とも欲しい1本。70-200mm F2.8って仕事以外では正直使いたくないんだけど、このレンズは趣味でも持ち歩いて良いかも……、って思いました。

EOS R6 / RF70-200mm F2.8 L IS USM(100mm) / プログラムAE(F5.0・1/320秒・-0.7EV) / ISO 100

AEの傾向は画面内の明るさに対して素直に反応するタイプなので傾向は分かりやすい。けど露出補正量を見てもらうと分かる通り、今どきのカメラとしては補正量が多め。個人的には好きだけど「スタンダード」を掲げるならもう少し賢くても良いのでは?

EOS R6 / RF70-200mm F2.8 L IS USM(142mm) / プログラムAE(F3.2・1/200秒・-2.3EV) / ISO 100

EOS-1D X Mark IIIとは光学ローパスフィルターが異なるので、EOS-1D Xシリーズが持つあのキレ感はないけれど、良い意味でローパスフィルターありらしい自然な解像感がとても好印象。いたずらにシャープネスを高めてないのもGood。

EOS R6 / RF70-200mm F2.8 L IS USM(70mm) / プログラムAE(F5.0・1/250秒・±0EV) / ISO 100

1点やスポットで上手くAFできなくて、試しに動物AF(顔+追尾優先)でトライしたところドンピシャ。シーン認識とAFが上手く協調できている気がします。蝶の羽のように模様がある部分に積極的にAFしてくれる印象。

EOS R6 / RF24-70mm F2.8 L IS USM(70mm) / プログラムAE(F4.5・1/200秒・±0EV) / ISO 100

何度かトライしているので作例ではピント合焦しているんだけど、こういったシーンだとAFさせる位置は少し考える必要があって、カメラの癖を理解しておく必要がある。至近優先傾向が好きな筆者には少しだけ合わないと感じる部分。

EOS R6 / RF50mm F1.2 L USM / プログラムAE(F1.8・1/6400秒・±0EV) / ISO 400

完全俯瞰の撮影って地味に手ブレ補正(特にボディ内手ブレ補正)が苦手なシーンだ、という認識。カメラによっては24-70mmクラスのレンズで1/250秒で撮影しても「これでブレるの?」みたいな事がままある。試した限りEOS R6は問題無かったので好印象ポイントを積み重ねています。

EOS R6 / RF24-70mm F2.8 L IS USM(50mm) / プログラムAE(F8・1/125秒・-0.3EV) / ISO 100

EOS 5D Mark IVが悪いって訳じゃないんだけど、一眼レフとはやはり一線を画するAF精度を実感出来るのがこういったシーン。「え?ピント甘いの??」が本当に少ない。

EOS R6 / RF70-200mm F2.8 L IS USM(100mm) / プログラムAE(F4・1/200秒・-0.3EV) / ISO 100

重箱の隅をつつくような事を言えば、ISO 100にしては画面右下辺りのシャドー部のボケが若干ノイジーに見えるのが最近のキヤノン機の傾向。だからと言って写真のクオリティを左右される事は無いけど、他社機と比べると「あれ?」と思うことは事実かも。

EOS R6 / RF70-200mm F2.8 L IS USM(70mm) / プログラムAE(F5・1/250秒・±0EV) / ISO 100

EOS R6のEVFはちゃんとピントが見えるしボケ感も分かりやすい。一眼レフのEOSのファインダーは明るいけどピントは少し掴みにくいから、ミラーレスのEOS R6の方が逆に一眼レフらしいってのが面白かったところ。

EOS R6 / RF70-200mm F2.8 L IS USM(182mm) / プログラムAE(F3.5・1/320秒・±0EV) / ISO 100

ストレスのないファインダー表示

撮影に出てみて、まず感動したのが起動時やスリープから復帰するまでのレスポンスが非常に良いこと。電源ONからシャッターボタン一気押しでは間髪入れずに撮れるし、何より感心したのがEVFの表示が安定するまでに要する時間が非常に短いこと。これくらいレスポンスが良いとほぼ一眼レフの感覚で使えそうだな、という実感があります。

ちなみにメガネ着用だと、アイセンサーの反応が一瞬遅れることがあるので、凄く厳しく評価するなら「あと少し鋭敏であれば」ってシーンがゼロではないけれどね。でもどのライバル機よりもワンテンポ以上はやくEVFが表示されるからマジでストレスないよ。時間計測したら0.1秒とかの違いかも知れないけど本当に快適だから。

この点だけでミラーレス機に漠然とした不満がある人にとっては最良の選択肢の1つだろう、と20ショットもしない内に思ったのは事実です。単純な筆者はこれだけでEOS R6が好きになりました。撮影画像をEVFに表示させない設定もあるので、撮影時にEVFにプレビューが表示されて萎える……、みたいな事が回避されるのはとても良いポイント。このあたりは実機に触れて体験して欲しい部分です。

EVFのリフレッシュレートもデフォルトの60fpsで充分に快適。ヌルヌル表示設定の方がさらに快適だけれど、スナップ撮影なら60fpsでも充分だと思いました。

ただ、EV5以下の暗さになるシーンだとフレームレートが下がる(多分30fpsくらい)のが気になりました。EV5というと、ISO 200時に1/8秒 F2.8。少し暗めの室内って言えば良いかな? 筆者のメイン機材であるFUJIFILM X-H1ではEV5程度ではそういった挙動にならないので「あれ?」と思ったところの1つ。

EOS R6は実写フィールドだと夕方以降は少しカクカクすると思ってもらって良いかも知れません。キットレンズに設定されているRF24-105mm F4-7.1 IS STMとの組み合わせだとより顕著なのでは? と心配な部分。“普段のヌルヌル表示との落差が大きいから余計に気にしてしまう説”については否定できません。

強力な手ブレ補正

今回撮影スケジュールとレンズ側の新ファームリリースのタイミングが合わなくて、本来の性能を発揮出来ていない可能性がありますが、それでもRF24-70mmF2.8 IS Lとの組み合わせで露光時間が0.5秒前後なら概ね80%の歩留まり。5ショットしたら4ショットはOKっていう世界でした。1秒でも50~60%くらい。最新ファームにするとまだ先があるってことだから、驚異的以外の言葉が出てきません。

表現上の目的が無い状態で1秒以上の露光を手持ちでトライする行為をチャレンジ以外のナニモノでもないと考えている筆者ではありますが、三脚を立てるのが惜しい状況等ではとても心強い性能だと感激しました。何より高感度性能に余裕のあるフルサイズ機でマイクロフォーサーズ機と同等以上の手ブレ補正機構があると撮影時の手数がかなり増えるので、撮影者としては特大のギフトを貰った気分になります。選べる感度や絞り、シャッター速度が多いっていうのは嬉しいからね。

「今日は三脚を持たずに軽装で行く!」と断固たる決意で撮影に出かけて後悔することの多い筆者だけれど、R6なら後悔するシーンがかなり減りそうです。

まさに「山が動いた(キヤノン、本気出したな)」って感じ。スペックに偽りなしの印象で露骨に強力な補正効果に「キヤノンかソレ以外か」って思っちゃった。っていうのが、例えば補正効果が5段と6段ではそれほど大きな違いを正直感じられない鈍感男なんだけど、そんな筆者でも流石に「こりゃ全然違うわ」って感じたからね。

「大丈夫だろ」って気持ちで撮ってるとブレちゃうことがあるから、「大丈夫かな?」っていう気持ちで撮るのが肝心なのと、どんなに補正が強力でも被写体ブレは防げない。気分的にはスペックマイナス2段くらいの気持ちでいると精神衛生上よろしいかと思います。それでも凄いよね。

スナップ撮影での使用感について

いつも確認している“正対がどれだけ楽か?”という確認をしているのが下の作例です。頑張ってフレーミングを決めると意味がないので手持ちでパッと撮っていますが、ほぼ正対できていることが分かると思います。奥行きが掴みやすくてGood。EOS 6Dクラスの光学ファインダーより奥行きやピントは掴み易い気がしました。ドット数の多いEOS R5はもっと良いのかな?

EOS R6 / RF24-70mm F2.8 L IS USM(33mm) / プログラムAE(F5.6・1/250秒・-0.3EV) / ISO 100

ファインダーはメガネ着用でも周辺までひと目で見渡せるし、ケラレや歪みも気にならないので良好な覗き心地があると思いました。冒頭でもお伝えしているとおり、パッと構えてファインダーを覗いても真っ暗だったり、モワーと表示が立ち上がる、みたいなことがないからヨイショ抜きで「一眼レフ感覚で使える!」と思いました。これはマジな感想です。だからトータルでは9:1くらいの割合で、EVFを覗いて撮影していました。このレスポンスは“敢えての369万ドット”が効いているのかも知れないね。EOS R5も同等のレスポンスがあるなら文句ナシ。

撮影していて気になったのは、1点AF時にAF枠のサイズが変えられないこと。あと期待していたよりもAF枠内の奥側にAFさせたがる癖があること。前者については、他のいくつかのメーカーと同じようにAF枠のサイズを選択できると良いなと思いました。後者はお花を撮るようなシーンだと雄しべとか雌しべにピントを合わせたいのにちょっと奥の花弁にAFしちゃう事が多いって言えばわかりやすいかな。

EOS 5D Mark IVの感覚で撮影しようと思うと「せっかく1点を選択してるのに」ってネガティブな思考が沸き起こるけれども、“ワンショット後MFを可能”にすれば微調整は簡単だし、ゾーンAFだと結構狙い通りにAFしてくれる場合もあるから、使いこなしというかカメラのAFの癖をしっかり理解する必要があるなと感じました。

バッテリー消費について

EVF表示を省電力優先設定時、カタログスペックだと約380枚だから正直「大したことねぇな」って思ったんだけど、電源をあまりOFFにせずにデフォルトの電源設定で、ほぼEVFとメカシャッターのみとした条件で、2日撮影(単写オンリー)してみたところ、500ショットを撮影しても両日ともにバッテリー残量が25%以上と余裕がありました。筆者の撮影スタイルなら600ショットはクリアできそうです。

試しにEVFの表示を「滑らかさ優先」にして丸一日撮影してみたけど、同じような使い方で360ショットした段階でバッテリー残量は21%でした。もちろん撮り方によってはバッテリー消費に増減はあるだろうけれど、400ショット程度なら問題なくできそう、という感触がありました。

カタログスペックだけで判断すると悲観的になっちゃうけれど、どちらの設定にしても別にエコモードで運用しなくて良さそうに思うし、連写を多用する人ならもっと撮影コマ数は伸びると思います。今回は予備バッテリーを持ち歩いていたけど、結局1度も使いませんでした。だから大多数の人にとっては予備バッテリーも1つあれば十分なんじゃないかな。

暗所AF性能

1点AFで測距点が中央時にEV-6.5に対応するAF。中央部以外の測距点や測距エリアでのAF可能な低輝度限界スペックは非公開とのこと。

実写スナップでテストした感じは、F2.8ズームとの組み合わせで夜間でも全く問題なく当たり前のようにAFするからストレスフリーです。

中央以外でもEV-5くらいはイケるんじゃないかな? って感触があったので公称スペックに記載してあるRF50mm F1.2 L USMとの組み合わせで物撮りシーンで、その限界をチェックしてみました。撮影条件は任意選択のスポット1点AFでEV-5前後(露出値みてね)のシーン。

背面モニターの表示
肉眼だとこんな感じの暗さ

以上の条件で試してみたところ、何の問題もなくAFしました。被写体のコントラストにもよると思うんだけど、多分EV-5強くらいに対応する低輝度性能があるんじゃないかな。

EOS R6 / RF50mm F1.2 L USM / マニュアル露出(F1.2・4秒) / ISO 3200

感度比較

感度別にノイズの出方を比較。EOS R6の常用ISO感度はISO 100~102400となっています。ここまでの範囲で各感度別の比較を実施。またマルチショットノイズリダクションについても次の項でチェックしました。

EOS R6 / RF24-70mm F2.8 L IS USM(50mm) / 絞り優先AE(F11・1/8〜1/8,000秒・±0EV)
ISO 100
ISO 200
ISO 400
ISO 800
ISO 1600
ISO 3200
ISO 6400
ISO 12800
ISO 25600
ISO 51200
ISO 102400

高感度性能

続けてマルチショットノイズリダクションの効果を確認。感度別のテストではある程度光量のあるシーンでNRの具合をチェックしていましたが、ここでは、より実写に即したシーンでマルチショットノイズリダクション(以下、マルチショットNR)との違いを確認しました。いずれもレンズはRF50mm F1.2 L USMを使用して、三脚を用いて撮影しています。

EOS R6 / RF50mm F1.2 L USM / 絞り優先AE(F11・1/250秒〜1/8,000秒)
ISO 3200
マルチショットNRなし
マルチショットNRあり
ISO 6400
マルチショットNRなし
マルチショットNRあり
ISO 12800
マルチショットNRなし
マルチショットNRあり
ISO 25600
マルチショットNRなし
マルチショットNRあり
ISO 51200
マルチショットNRなし
マルチショットNRあり
ISO 102400
マルチショットNRなし
マルチショットNRあり

今回試した限りではマルチショットNRはISO 6400以上で効果が明確になっていると思います。が、JPEG記録時のみ選択可能な機能です。

マルチショットNR適用時でも画角が変わらなかったのは朗報。試した限りでは手持ち撮影でも画角が削られることもありませんでした。

個人的には通常撮影でISO 6400、マルチショットNRでISO 12800までなら高感度設定であることをそこまで意識せずに撮影できそうなので、いわゆる「フルサイズセンサー」に期待する高感度画質を十分に満たしているように思います。

単写スナップでの総合的な感想

最も印象的だったのは使いやすさとストレスの少なさ。

「あれ? 世界最強の手ブレ補正は??」とか「EOS-1D X Mark IIIゆずりの高感度性能は??」って思っちゃうかもしれません。

確かに今回のような手ブレ補正効果の数値など、衝撃的なスペックにどうしても注目してしまいがち。でも実際の撮影現場ではそんな評価試験めいたカメラの限界に挑戦するような撮影は頻度として少ないと思います。手ブレ補正にしても、スペックを信じて“一か八か”でスローシャッターを選択するよりも、素直に感度を上げるか絞りを開けるかして撮った方が余程建設的だからです。なので基本的には普段使いに即した使い方にウェイトを置いて評価しています。

EOS R6の名誉のためにちゃんと言及しておくと、カメラ性能は素晴らしいです。でもソレ以上に使いやすさと撮影時のストレスの少なさに感激しました。

使いやすくデザインされていたのか、あるいはそれに慣れていたからこそ“使いやすい”と感じていたのかは定かじゃないけれど、どちらにしろ“使いやすいと思っていた操作性を持っていた一眼レフ”(EOSのことね)の良いところをそのまま継承していて、冒険せず、良い意味で手堅くまとめられているところは称賛したい部分。

ライバル機と比べて(比べなくても優良)、撮影や操作の快適性という点で大きくリードしているのがEOS R6の最大の特徴だと思います。注目に値するスペックをたくさん持っているけれど、そうした数値性能が全て裏方に徹していて主張も控えめ。「なんか高性能だな、このカメラ」とか「そう言えばあんましブレねーな、このカメラ」みたいなヤツです。

新製品とか新機軸とか、新しいことをやろうとするときにはどうしても今までにない提案を盛り込みたくなるのが開発者というか、つくり手の性(さが)だと思うんだけれど、“ユーザーにとって価値のあることは何だろう?”という点を重視して、あえて“変えないこと”を選んだのだろうと推測しています。

だからEOS R6の公式Webページを確認すると出てくる「NEW STANDARD」に何の違和感も感じませんでした。カメラのこういうキャッチコピーを見て「は?」って思うことの多い筆者ですが、EOS R6のコピーについては全面的に賛成です。これぞミラーレス機の新しい標準機でしょう、お値段以外はね。

Webページ:your EOS. EOS R6の特長紹介より

ところで、1日合計6時間ほどカメラを握りしめてスナップ撮影でウロウロ徘徊するのが筆者のスタイル。こういう使い方すると身体への負担がどのくらいあるのか? みたいな事が顕著に分かります。

EOS R6で気になったのが、グリップの形状がニコンのZシリーズほどは握りやすくないところ。手の大きな筆者でもグリップが手に収まる感じが希薄で吸い付くような感触や実際の重量より軽く感じる、といった感覚が無かったのはちょっと残念に思った部分。なので、片手持ちだと腕に負担があります。高性能なのは良いんだけど、現状ラインナップされているRFレンズが大きめ重めが多いしね。手の小さな人だと、もしかしたらちょっと気になる部分かもしれません。

あと電源スイッチの位置。レリーズボタンと同軸にあれば……、と何度思ったことか。片手で電源操作が完結できないので、筆者は結局常時電源ONで持ち歩いていました。

とはいえ、それでもデフォルト設定で500ショットを単写できたし、なによりファインダーを覗いた瞬間から撮影できる状態になっているEVFのレスポンスには、あらためて感動しました。一眼レフで育って「最近のミラーレス、便利なんだけどちょっとレスポンスがなぁ」って思っている人は「コレだよ、コレ!」って思うハズ。

次回は連写でのインプレになります。

豊田慶記

1981年広島県生まれ。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープの写真に感銘を受け写真家を志す。日本大学芸術学部写真学科卒業後スタジオマンを経てデジタル一眼レフ等の開発に携わり、その後フリーランスに。黒白写真が好き。