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ソニーに聞いた「α7S III」一問一答(その1)

前機種との違い、新機能・新メニューUIについてなど

7月29日に発表されたミラーレスカメラ「α7S III」(10月9日発売)。発表情報に関して気になった点について、ソニーから得られた公式回答を追加情報としてお届けする。動画関連やCFexpress Type Aの話題についても、追って「その2」として掲載予定だ。

——前機種とのセンサーまわりの違いを教えてください。

α7Sシリーズとしては初となる裏面照射型の有効約1,210万画素の35mmフルサイズCMOSセンサーを新たに開発しました。Sシリーズの特長である高感度・低ノイズ・広いダイナミックレンジに加えて、裏面照射型構造に合わせ伝送速度が速いCu(銅)配線を採用することで、従来機「α7S II」比で約2倍のデータ読み出しを実現しています。またSシリーズとして初めて、高いフォーカス精度と追随性をもつ像面位相差AFに対応しています。

——1,210万画素という少なさにはどういったメリットがありますか?

フルサイズに有効約1,210万画素のセンサーでは、1画素あたりのサイズが大きくなることで低ノイズ・広いダイナミックレンジの動画・静止画を撮影できるというメリットがあります。

新開発の35mmフルサイズ有効約1,210万画素 裏面照射型CMOSイメージセンサーExmor Rは、大きい画素サイズにより1画素あたりのノイズ成分が少なく、SN比が高いのが特長のひとつです。α7Sシリーズで初となる裏面照射型構造により、7Sシリーズの特長である高感度性能を更に向上させるとともに、配線の自由度が増すので、読み出しの高速化につながっています。静止画・動画ともに常用ISO 80-102400(拡張感度は、静止画時ISO 40-409600、動画時ISO 80-409600)の幅広い感度域でノイズの発生を抑え、高い描写力を実現します。

——8Kも話題ですが、なぜ4Kにフォーカスしましたか?

商品性を総合的に考慮し、仕様を決めています。「α7S III」は、α7のSシリーズとして優れた高感度性能をもち、低照度の撮影環境など幅広い環境における低ノイズかつ最大15+ストップの広いダイナミックレンジの映像を4K 4:2:2 10bitで提供することを追求しています。

Introducing Alpha 7S III | Sony | α

——BIONZ XRの特徴を教えてください。デュアルエンジンですか?

新開発の画像処理エンジンBIONZ XRは従来のBIONZ X比で処理能力約8倍を実現しています。

新開発イメージセンサーのもつ高速読み出し性能や高感度・高画質性能を活かすよう、処理速度や描画性能を向上させています。デュアルエンジンではなく、2チップ構成です。

今回、画像処理エンジンとフロントエンドLSIであった従来の構成を見直し、BIONZ XRに集約させました。AFや画像認識、画質調整、現像といったリアルタイム処理と、ユーザーインターフェイス/ネットワーク/ファイル管理といったメディア処理の負荷を分散させます。リアルタイム処理の負荷の大きさによらず、快適な操作レスポンスを実現しました。

——瞳AFに既存モデルと仕様上の違いはありますか?

リアルタイム処理に優れた新画像処理エンジンBIONZ XRにより、リアルタイム瞳AFの検出能力が従来(BIONZ X)比30%向上しています。また動画撮影中においてもリアルタイムトラッキングやリアルタイム瞳AFが利用可能です。

——Sシリーズで初めて像面位相差AFに対応しました。画素数が少ない中に位相差画素を埋め込んで、画質に影響はありませんか?

ありません。

——前機種と比べて画質面での大きな違いはどこですか?

「α7S III」は、新しいイメージセンサーと新エンジンBIONZ XRの組み合わせで、高度なノイズリダクションを行い、静止画・動画ともに高感度画質を向上させています。画素加算なしの全画素読み出しによる高精細な4K120p、4:2:2 10bit記録にも、αとして初めて対応しました。

またS-Log3撮影では業務用カメラに合わせたカラーサイエンスを採用。さらに中~高感度にかけて幅広い感度域で平均約1段分のノイズ性能の改善が加わり低照度での撮影の自由度を更に広めています。高感度画質を向上させながら、低感度は常用ISO 80から選択できるようにしており、撮影領域を拡大させています。

——α7S IIからIIIまで、他のモデルより期間が開きましたが、その理由は何ですか? 何を待っていましたか?

プロの映像クリエイターなど多くのお客さまの要望を理解し、期待を超える商品を作り上げるため時間を十分にかけました。従来機から、撮影性能や機動性を大きく向上させており、例えば、新開発のイメージセンサーと新画像処理エンジンBIONZ XRの組み合わせで、高度なノイズリダクションを行うことで、静止画・動画共に高感度画質を向上させています。

——HEIFフォーマットのメリットは何ですか?

従来の8-bitのJPEG方式に比べ、10-bit対応のHEIFを採用することにより、階調が変化する空やポートレート撮影時の肌再現など様々なシーンで10-bitの豊かな階調表現で映像を記録することができます。また、従来に比べ約2倍の圧縮効率でファイルの保存が可能です。用途に合わせて、4:2:0と4:2:2のサンプリングから選択が可能になっています。

HEIFは"High Efficiency Image File"の略で、一般的に「ヒーフ」と発音します。なお、HEIFフォーマットは比較的新しいフォーマットのため、再生・編集が可能な機器・アプリケーションは限られますが、より高画質・低容量で記録できるフォーマットのため、今後の対応拡大が期待できます。HEIFフォーマットのファイルは、カメラと対応のBRAVIAをHDMIで接続してHDR静止画をとしてお楽しみいただけます。

——アンチダストシステムは従来のものと仕組みが違いますか?

イメージセンサーの前面に搭載したフィルターが7万回/秒以上の超音波で振動します。フィルターガラス面の揺動方法を変更することで、付着したゴミやほこりを効率的に除去します。静止画はもちろんレタッチ作業への影響が大きい動画撮影時も安心してレンズ交換を行えます。アンチダスト駆動はカメラの電源オフ時に自動的に行います。もちろんメニューからクリーニングモードを手動で実行することも可能です。

——操作部でリファインされた点はありますか?(α7R IV、α7S II比)

メニュー構成をはじめ、快適に撮影いただけるようさまざまな工夫を組み込んでいます。ご要望の多かったメニューのタッチ操作にも対応し、さらに静止画、動画モードで表示される撮影メニュー項目や設定も切り替わります。

様々な撮影アングルからの操作性を考慮し、MOVIEボタンをボディ上面に配置することで、動画撮影で多いウエストポジションでの撮影時もボタンへアクセスしやすくしました。加えて、形状も周囲のボタンと外径、高さを変えるなどの細かなチューニングを施し、指で触れた際にも識別しやすくしています。カスタムアサインも可能になりました。

また、シーンに合わせて角度の調整が可能なバリアングル機構を、ソニーのミラーレスカメラで初めて搭載しています。

——メニューUIを変えた理由は何ですか? そのコンセプトは?

要望を多くいただいていた中のひとつで、一覧性とアクセス性を向上したメニュー構成に刷新しました。

タッチによるメニュー操作にも対応し、より直感的にレスポンスよく設定変更ができるようになりました。静止画・動画で別設定が可能になったFn(ファンクション)メニューや、多彩なカスタム設定にも対応します。

α7S IIIで新搭載されたメニューUIの一例(英語)
a7S III New Menu Design | Sony Alpha Universe

——新しいメニューUIは、今後の「S」モデル以外にも採用されますか?

将来の商品計画に関してはコメントを控えさせていただきますが、ぜひ多くの皆さまに新しいメニューUIをお試しいただきたいと思っています。

——いつから街で実機を触れますか?

「α7S III」および同日発表のCFexpress Type Aカード、CFexpress Type A / SDカードリーダーの先行展示を、ソニーショールーム/ソニーストア銀座にて7月31日(金)から行います。ソニーストア札幌、ソニーストア名古屋、ソニーストア大阪、ソニーストア福岡天神では、期間を限定して先行展示を行う予定です。

日程の詳細は、ソニー商品情報サイトの先行体験・展示一覧ページをご参照ください。

関連リンク→新商品 発売前体験・展示について(ソニー商品情報サイト)

Introducing Alpha 7S III | Sony | α [Subtitle available in 17 languages]
本誌:鈴木誠