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ベクノス、ペン型全天球カメラ「IQUI」の実機を披露

スマホアプリ「IQUISPIN」の使い心地も体験

ベクノス株式会社は、全天球カメラ「IQUI」(イクイ)を10月1日に発売する。価格は2万9,800円。発売に先駆けて開催された製品発表会の様子を、実機写真とともにお届けする。

リコー発のスタートアップ企業「ベクノス」

冒頭、株式会社リコーの山下代表取締役が、同社発のスタートアップ企業であるベクノスについて説明した。

OAメーカーからデジタルサービス事業への転換を進めているというリコーは、360度カメラ「THETA」を一般のコンシューマー向けに展開する一方で、「THETA 360.biz」という法人向けクラウドサービスも提供している。山下氏は、非接触型のビジネスシーンにおいて、「THETA」の活用方法を利用者である企業側が開発してくれている状況にあると語り、今後データビジネスの場に、360度という価値をもっと提供していけるのではないかと考えているという。

一方でベクノスには、これまで以上に幅広い一般コンシューマーに向けて、驚きの映像体験を提供する製品サービスを期待するという。また、山下氏がベクノスに対してできる最大のサポートは“いちいち口を出さないこと”だと語った。

株式会社リコー 代表取締役 社長執行役員・CEO 山下良則氏

全天球カメラ「IQUI」

IQUIで目指すこと

続けて登壇したベクノス株式会社の生方代表取締役兼CEOは、同社の360度カメラの第一弾となる製品——IQUIの開発について「世界一美しくて、生活の中に溶け込むもの」を目指したと言及した。生活に溶け込むとは、一つは“シンプルなデザインとしてのカタチ”が生活の中にマッチすること。二つ目は“ユーザー体験”として普段の生活に自然に溶け込むことだと説明した。

ベクノス株式会社 代表取締役 CEO 生方秀直氏

生産を行う中国とは、すでにお互いのエンジニアの行き来ができなくなっており、フルリモートでの製作を進めていったという。試作品を作っては中国から送ってもらい、その微妙な感触をリモートで伝えるという作業を繰り返した。特に、生産設備も独自設計としており、現地工場の技術者と、同社の技術者による“経験のある職人同士の勘のすり合わせ”に助けられたと、製作時の苦労について振り返った。

「手に取って感動してもらえるモノは、自らも触らないと作ることができない」。微妙な感触の違いをリモートで伝えるのは大変な作業だったという。

スリムなペン型デザイン

“生活に溶け込むカタチ”の検討から入った同社は、コンパクトなペン型をベースにするという結論を出したという。しかし、当初はそのペン型を実現するための技術基盤は何もなく、特に一番重要な光学系を決めるために何度も構想をやり直したという。最終的に、上に1つ、周りに3つという独自の4眼光学系にたどり着いた。この方式でないと美しいフォルムに収まらず、4眼光学系の開発に成功したことで、全体の先行きが見えてきたのだと語った。

ゴールドのカラーは、各国へのヒアリング結果も踏まえ、一目でIQUIとわかる色として選んだという。
“ペン型“のサイズに収めるため、画像エンジンの開発も苦労を重ねたという。

本体は徹底的にシンプルなデザインとしている。外装にはブランドのロゴすらなく、操作部は、電源ボタン、シャッターボタン、撮影モード切替ボタンの3つが配されているのみ。充電用のUSB端子も本体には非搭載としている。充電する際には付属のUSBコネクターを使用する。

上部が電源ボタン。下部がシャッターボタン。撮影はフルオート。
静止画モードと動画モードもワンタッチで切り替えができる。
USBコネクターは、付属の簡易スタンド(ゴム脚)を装着することで自立可能になる。
付属品一式。USBコネクター、簡易スタンド、USB Type-Cケーブル、専用ケースがある
コネクターの底部にUSB Type-C端子を備えている。

ショートムービー作成ができるスマホアプリ「IQUISPIN」

スマートフォン用アプリ「IQUISPIN」(イクイスピン)は全天球カメラで撮影した写真に、「エフェクト」や「モーション」をつけてショートムービーを簡単に作成できるというアプリ。Equirectangular Projection Formatで1:2比率のJPEG画像に対応しており、他メーカーの全天球カメラで撮影した画像にも対応している。このほどの「IQUI」の発売を受けてバージョンアップも実施し、写真の色調を変更する「フィルター」機能や、IQUI専用の「エフェクト」を新たに追加するという。

同アプリは、「もっと気軽に全天球写真を楽しんでもらいたい。その場、その空間に彩りに与えたい」というコンセプトで開発したという。これまで全天球写真については、Equirectangular形式をサポートしているサービスが少なかったため、送る相手にその環境がないと共有しづらいという状況があったという。同アプリはMP4形式での出力のためSNSなどにも簡単に投稿できる。全天球写真というユーザー体験を、より共有しやすくしたいという想いがあったと説明した。

同アプリのターゲットユーザーとして、InstagramなどのSNSをよく使う、旅行が好き、友達と集まってパーティーをするのが好き、という人に対して特に使ってほしいという。生方氏も「数秒のショートムービーがループしているのは見ていて気持ちがいい。全天球写真がグルグルと回転すれば、それを受け取った人には驚きが生まれる」と語り、SNS上で“バズる”ことで同アプリの広まりを期待していると語った。

撮影してからアプリでエフェクトを付けるまでを実演
カメラとアプリはWi-Fiで接続。
アプリ側でシャッターボタンを押すこともできる。
撮影した画像は、「クリエイト」ページに転送される。
画像を選択し、クリエイトボタンを押すと編集開始。
編集作業は、テンプレートから好きなエフェクトを選ぶだけ。
エフェクトを選んだら自動で編集される。あとは完了ボタンを押すだけ。
簡単にSNSに投稿できる。

アクセサリー

別売りで、収納して持ち運びに対応するバッテリーチャージャーケース「BCC-1」も用意している。11月発売予定としており、価格は税別8,800円。

IQUI本体の約2.5回分の充電に対応するという。シンプルなデザインとしており、蓋を開けるだけでIQUIがポップアップして取り出しやすい仕様としている。

バッテリー残量も確認できるが、なるべく目立たないデザインにしているという。

IQUIに関わるデザイナーとともに、Tシャツやマスク、コースターなどを製作。今のところ発売の予定は決まっていないという。

イメージキャラクターのイクスピ子ちゃんがプリントされている。

IQUIの主な仕様

撮影距離:約40cm~∞
露出制御モード:プログラムAE
露出補正:なし
F値:F2.5
ISO感度:ISO 100~1600
ホワイトバランス:オート
シャッタースピード:静止画(オート)1/60000~1/8、動画(オート)1/25,000~1/30
記録媒体:内蔵メモリー(14.4GB)
記録可能枚数(静止画):約1,500枚
記録可能時間(動画):最大30秒(1回の記録時間)、約30分(合計記録時間)
静止画解像度:5,760×2,880ピクセル(Stitching後)
動画解像度/フレームレート/ビットレート:3,840×1,920/30fps/約45Mbps(Stitching後)
マイク:モノラル
無線準拠企画:IEEE802.11 b/g/n(2.4GHzのみ)、Bluetooth v4.2(Bluetooth low energy)
電源:リチウムイオンバッテリー(内蔵、720mAh)
撮影可能枚数(静止画):約100枚
撮影可能時間(動画):合計約30分
外形寸法:139×19.7mm(グリップ部は16mm)
重量:約60g

本誌:宮本義朗