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解説:キヤノン「EOS R5」と「EOS R6」の違い

スペックから読み解く2機種+EOS Rの個性

7月9日、フルサイズミラーレスカメラ「EOS R5」「EOS R6」の2モデルが発表された。初代モデルEOS Rや、小型・軽量エントリー機のEOS RPも継続販売なので、EOS Rシステムは合計4機種となる。キヤノンによると、今回のEOS R5とEOS R6は、EOS Rより上位に位置するという。そして「6」といっても、EOS 6Dのような廉価モデルとしての位置づけではなく、スタンダードなモデルに変更してきた。

ボディ内手ブレ補正の搭載が最大の注目点という人も多いだろうが、それ以外の部分も当然大幅な進化を遂げている。ここでは、新登場のEOS R5とR6、そしてEOS Rとの違いを、公開されている仕様から読み解いていきたい。

EOS R5EOS R6EOS R
発売日2020年7月下旬2020年8月下旬2018年10月25日
実売価格(税別)46万円30万5,000円22万円(発表時23万7,500円)

撮像素子

最初に言ってしまえば、EOS R5とEOS R6の仕様はかなり近い。おそらく電子的な部分では共通部分も多いのだろう。しかし撮像素子は異なる。この違いが、後述する機能・性能の差に繋がっている部分も多い。

もちろん、いずれも35mm判フルサイズだ。単純に画素数の多さで並べれば約4,500万画素のEOS R5、約3,030万画素のEOS R、約2,010万画素のEOS R6の順になる。

一眼レフEOSには、約5,060万画素のEOS 5Dsやそのローパスフィルター効果をキャンセルしたEOS 5Ds Rがある。画素数だけ見ればEOS R5は劣るものの、この新開発の撮像素子とレンズや画像処理とあわせ、キヤノンでは「EOS史上最高解像性能を実現」としている。

画素数としては、パッとしないEOS R6だが、その撮像素子のベースはEOS-1D X Mark IIIと同じもの。ちょっと期待したくなってしまわないだろうか? ただし、4枚のローパスフィルターを使い16点に分離し解像力を引き出すというGDローパスフィルターではなく、2枚を使って4点に分離する通常タイプのものとするなど、変更が加えられている。その他チューニングも異なるようで、これが画質にどこまで影響するかは発売を待ちたい。

EOS R5EOS R6EOS R
撮像素子・画素数約36.0×24.0mm
有効約4,500万
約35.9×23.9mm
有効約2,010万
約36.0×24.0mm
約3,030万
記録画素数
[3:2]
8,192×5,4645,472×3,6486,720×4,480

ファインダーや操作部材

2年前のEOS Rの登場時、新しい操作性というのも話題になった。指で左右に触れたりタップすることで、AFや感度などの任意に割り当てたパラメータを扱えるマルチファンクションバーを搭載しつつも、本体背面のサブ電子ダイヤルは廃止し、上面にダイヤルが移されていた。この新しい操作方法に戸惑いを覚えた人も多かったのか、EOS R5/R6では一眼レフEOSと近い操作性になっている。

EOS R5やEOS R6では、そのマルチファンクションバーは廃止され、一眼レフEOSと同様、背面右手側にサブ電子ダイヤルが搭載された。さらに、上面右手側のサブ電子ダイヤルもそのまま残ったので、合計3つのダイヤルがあることになる。これはキヤノンが、一眼レフからの乗り換えを強く意識していることにほかならない。また、流行りのジョイスティック型のマルチコントローラーも搭載。このグリグリがあるとAF測距点の移動が容易になる。

EOS R5の背面
EOS R6の背面

なお、EOS Rで軍艦部に搭載されたドットマトリクス表示の液晶パネルはEOS R5に継承されている。EOS R6では代わりにモードダイヤルが鎮座する。

EOS R5の上面
EOS R6の上面

背面モニターはバリアングル式で、静電容量式のタッチパネルなのは変わらないが、大きさや解像度に差がつけられている。EOS R5はEOS Rと同等のドット数で少しだけ大きくなったが、EOS R6は少し小さく、解像度も低くなっている。2機種とも同じでもよかったのでは? と思うのだが、差別化とコストダウンのためだろうか。

EVF(電子ビューファインダー)のほうは、EOS R6はEOS Rと同等のパネルで、EOS R5は高解像度化されている。ただし、EOS Rでは59.94/29.97fps表示だったのが、新しい2モデルでは119.88/59.94fpsに倍速化されている。遅延も減って、動きの激しい被写体でも滑らかは表示で、シャッターチャンスに強くなったといえる。EOS R5/R6ともファインダー光学系は同じだが、新しくなっている。まだほんの少し触れた程度だが、従来よりファインダーの見えはよくなっていると思う。

いずれも防塵・防滴性能を有しているが、EOS R5は"EOS 5D系と同等の防塵・防滴性能"とのことで、まったく同じ性能というわけではないようだ。

EOS R5の防塵防滴構造
EOS R6の防塵防滴構造

重量は、新たにボディ内手ブレ補正機構が搭載されたにしては、それほど重くなっていない。EOS R6の外装はポリカーボネート製だが、EOS Rと同等のレベルの重さに収まっている。大きさは若干ではあるが、大きくなっている。なお今回の比較では取り上げていないが、EOS Rシリーズのエントリー機といえるEOS RPは約132.5×85.0×70.0mm・約485gで、小型・軽量という意味では圧倒的だ。

EOS R5EOS R6EOS R
EVF0.5型、約576万ドット0.5型、約369万ドット0.5型、約369万ドット
倍率・アイポイント約0.76倍、約23mm約0.76倍、約23mm約0.76倍、約23mm
視度調整約-4.0~+2.0m-1約-4.0~+2.0m-1約-4.0~+2.0m-1
背面モニター3.2型、約210万ドット液晶約3.0型、約162万ドット液晶3.15型、約210万ドット液晶
上面表示パネル128×128ドット-128×128ドット
マルチファンクションバー--
マルチコントローラー-
メイン電子ダイヤル
サブ電子ダイヤル(上面)
サブ電子ダイヤル(背面)-
ボディー素材マグネシウム合金使用ポリカーボネートマグネシウム合金使用
外形寸法約138.5×97.5×88.0mm約138.4×97.5×88.4mm約135.8×98.3×84.4mm
重量(電池/メディア含む、本体のみ)約738g、約650g約680g、約598g約660g、約580g

手ブレ補正

ついにボディ内手ブレ補正機構が搭載された。5軸の補正で、最大効果はシャッター速度8.0段分というのは、正直スゴイ数字だ。ボディ内手ブレ補正はキヤノン初なので、当然EOS Rには搭載されていなかった。手ブレ補正機構を持たないレンズでも、手ブレの心配が減るのはうれしい。マウントアダプターを使い、手ブレ補正機構を持たない一眼レフEOS用のEFレンズを装着したときもボディ内手ブレ補正は利用できる。

EOS R5の手ブレ補正ユニット
EOS R5EOS R6EOS R
ボディ内ブレ補正5軸補正5軸補正-

EOS R5/R6の手ブレ補正について詳しくは→解説:EOS R5・EOS R6で"最大8.0段"の手ブレ補正

AF性能

今回EOS R5/R6では、AFシステムが「デュアルピクセルCMOS AF II」になった。機械学習によるEOS iTR AF Xが加わり、より高い基準が設けられそれをクリアしたということのようだ。

一眼レフのEOS-1D X Mark IIIでもEOS iTR AF Xは採用されているが、測距エリアが縦横ともに100%でないためそれが名乗れないという。ただし、全画面でAFが効くのは自動選択時であり、任意に測距点を選択するときは、横方向のカバー域が約90%になる。

機械学習を用いた被写体認識性能は、犬と猫、鳥といった動物、ヘルメットをかぶった人物などにも自動でピントを合わせる。もちろん、瞳AFにも対応だ。世界最速という0.05秒のAFは、EOS Rのときから変わらない。

測距輝度範囲は、EOS Rに比べ高輝度側で2EV向上。撮像素子の違いにより、EOS R6は-6.5EV(F1.2レンズ)まで対応する。

ただし、ピントが一度抜けてしまったとき、被写体に復帰するまでの早さは、やはり専用の位相差AFセンサーの方が有利のようで、EOS-1D X Mark IIIのほうに分があるらしい。

EOS R5EOS R6EOS R
AFシステムデュアルピクセルCMOS AF IIデュアルピクセルCMOS AF IIデュアルピクセルCMOS AF
測距エリア
(自動、選択可能)
横縦100%、横90%/縦100%横縦100%、横90%/縦100%ともに横約88%/縦約100%
分割数
(自動、選択可能)
最大1,053分割、最大5,940ポジション最大1,053分割、最大6,072ポジション最大143分割、最大5,655ポジション
静止画の測距輝度範囲
(F1.2・ISO 100)
EV –6~20EV –6.5~20EV-6~18

記録メディア

EOS RのSDメモリーカードが1つだけというのは、ユーザーの不満点としても多かったようだ。今回はEOS R5、R6ともにデュアルスロット化された。ただし、その構成は異なるが、これもやはり撮像素子の違いによる影響ともいえるだろう。

EOS R5では、静止画は高解像度だし、8K動画も記録しなければならないこともあり、高速書き込みができるCFexpress(Type B)は不可欠だったようだ。もう一つのスロットは、UHS-II対応のSDメモリーカードだが、後述する連続撮影可能枚数でも差があるし、8KのRAWやALL-IではSDメモリーカードは基本的にサポートされない。CFexpressは、ニコンのZ 7/Z 6、D6、パナソニックのLUMIX S1シリーズ、キヤノンではEOS-1D X Mark IIIが採用している高速性が特徴のカードだ。なお、XQDと形状は同じだが、基本的に互換性はない(一部製品ではファームウェアにより両対応)。

EOS R5の記録メディアスロット

一方のEOS R6は、画素数的に書き込み速度をそこまで厳しく求めないようで、UHS-IIのSDメモリーカードのデュアルとなっている。シングルスロットでどれだけ困るシーンがあるか、デュアルスロットをどれだけ生かせるかは別として、"デュアルスロット"というだけで上位機という印象を受けるのは興味深い点だ。

EOS R5EOS R6EOS R
スロットCFexpress+SDメモリーカード(UHS-II対応)SDメモリーカード(UHS-II対応)×2SDメモリーカード(UHS-II対応)

シャッターと連写性能

連写性能に関するスペック値は、EOS Rとはクラスが違うと分かる。EOS R5とEOS R6ではセンサーが異なるものの、共にAF/AE追従のメカシャッター撮影時で最高約12コマ/秒を実現している。電子シャッターだと、約20コマ/秒だ。

EOS-1D X Mark III(ライブビュー時に約20コマ/秒を実現)と同等のセンサーであるEOS R6はまだしも、高解像度のEOS R5においても、高速なデータ読み出しにより実現したという。

なお、仕様からは電子先幕にしてもコマ速などの違いはないようだが、ストロボ同調速度が1/250秒に上がるというメリットが見える。

EOS Rでも最高1/8,000秒のシャッターを搭載していたが、耐久性は大幅にアップしている。EOS R5ではEOS-1D X Mark IIIと同じ50万回だ。

EOS R5のシャッターユニット

なお、EOS Rといえば電源オフでシャッターが閉じセンサーを保護する機能が話題となったが、シャッター幕に触れそうで怖いという声があったようだ。そのため、EOS R5/R6では開けておくのか閉じるのか選べるようになっている。

電源オフ時にシャッターを閉じられる。マウント面からセンサー面が近いミラーレスカメラにおいては、レンズ交換時の不安を減らすとして、EOS R登場時に歓迎の声があった。
EOS R5EOS R6EOS R
シャッター速度(メカ)1/8,000~30秒、バルブ1/8,000~30秒、バルブ1/8,000~30秒、バルブ
シャッター耐久回数50万回30万回20万回
電源オフ時シャッター開閉の選択可開閉の選択可
ストロボ同調最高速度メカで1/200秒、電子先幕で1/250秒メカで1/200秒、電子先幕で1/250秒1/200秒
メカシャッター時の連続撮影速度最高約12コマ/秒最高約12コマ/秒最高約8.0コマ秒
電子先幕時の連続撮影速度最高約12コマ/秒最高約12コマ/秒最高約8.0コマ秒
電子シャッター時の連続撮影速度最高約20コマ/秒最高約20コマ/秒最高約5.0コマ/秒
連続撮影可能枚数JPEGSDで約350枚、CFeで約350枚1,000枚以上約100枚
連続撮影可能枚数RAWSDで約87枚、CFeで約180枚約240枚約47枚
連続撮影可能枚数RAW+JPEGSDで約79枚、CFeで約160枚約160枚約39枚

※SDでの連続撮影可能枚数は、UHS-II対応カード使用時の値に統一。

感度と測光

感度については、画素数が少なく画素ピッチの大きいEOS R6が最も高い感度を選べる。とはいえ、EOS R5も画素数がアップしながら常用感度をわずかだが向上させている。常用・拡張の基準は変わっていないだろうが、どこから拡張にするのかはメーカーのさじ加減なので、実機での実写が待たれるところである。

測光輝度範囲は変わらずだが、スペックを見比べて気づいたのが、部分測光とスポット測光の画面の範囲の違い。一応表にはしたがわずかな違いであり、よほどピンポイントにその部分に輝度差がなければ、実際の撮影では大きな差にはならないだろう。

EOS R5EOS R6EOS R
感度(推奨露光指数)ISO 100~51200ISO 100~102400ISO 100~40000
拡張感度L(50)、H(102400)L(50)、H(204800)L(50)、H(51200)、H2(102400)
測光分割384分割384分割384分割
測光輝度範囲EV-3~20(ISO 100)EV-3~20(ISO 100)EV-3~20(ISO 100)
部分測光の画面の範囲約6.1%約5.8%約6.1%
スポット測光の画面の範囲約3.1%約2.9%約2.7%

無線LAN(Wi-Fi)やBluetooth

EOS R5では、IEEE802.11aとacの5GHz帯に対応した。高帯域になるため、障害物には弱くなるが、2.4GHzのように電子レンジをはじめ利用者が少ないぶん干渉が少ないという利点がある。複数の人が同じ帯域を使っているほど、速度が低下するのが無線LANだから、プロの用途としては当然といったところだろう。FTP転送も可能で、FTPSの暗号化にも対応する。

なおEOS R5の通信機能の強化は、これにとどまらず、有線/無線LAN機能を搭載した専用バッテリーグリップWFT-R10Bも用意される。有線は1000BASE-T対応だし、無線LANも最大で150mの長距離の通信が可能になる(IEEE802.11ac/n 2x2のMIMO)。またFTP転送ではSFTPの暗号化も可能になる。EOS-1D X Mark IIIのような報道用途などの使い方を想定しているのだろう。バッテリーは2個装着できるが、片方はカメラ駆動に、片方は通信に利用するとのこと。

WFT-R10Bを装着したEOS R5

意外だったのが、Bluetoothの対応バージョンの違いだ。EOS R5では5.0だが、EOS R6では4.2にとどまる。Bluetoothの規格としては、Low Energyでの転送速度が異なり、4.2までは1Mbps、5.0では2Mbps〜125Kbpsが選べるようになっている。ここでも、R6は差をつけられてしまっている。たしかに、5GHz帯の無線LANがどうしても欲しい、FTP転送したい、Bluetoothでも高速/遠距離で使いたいというのは、一部のプロに限られるだろう。しかし、通常のバッテリーグリップBG-E10が共用なだけに、EOS R6で非対応なのは残念に感じてしまう。

BG-E10を装着したEOS R5。
EOS R5EOS R6EOS R
無線LAN周波数帯域2.4GHz帯および5GHz帯2.4GHz帯2.4GHz帯
準拠規格IEEE802.11b/g/n/a/acIEEE 802.11b/g/nIEEE 802.11b/g/n
BluetoothBluetooth 5.0Bluetooth 4.2Bluetooth 4.1

動画性能

簡単にいえば、EOS R5では8K(クロップなし)に対応しているのが特徴。しかも、8K DCI(8,192×4,320)対応でRAW記録が可能なのだ。その時のビットレートは映像だけで2,600Mbpsにもおよぶが、CFexpressへの記録が可能だ。単純計算で325MB/秒。SDメモリーカードだとUHS-II(312MB/秒)では不可で、未だ製品は登場していないUHS-III規格が必要になる速度だ。

ちなみに8K DCIの解像度はおよそ3,538万画素になる。現状でパソコンでの編集環境が乏しいが、EOS R5の発売にあわせてキヤノンのDigital Photo Professional(DPP)とCinema RAW Development(CRD)、そしてアップルのFinal Cut Pro Xでの対応が予定されている。

EOS R6はEOS R同等、4K UHDまでの対応にとどまる。ただし4Kであっても、EOS R5では8.2Kのデータを、EOS R6では5.1Kのデータを生成した後に4Kとして処理されるため、より高画質な映像が得られるとしている。

EOS R5におけるオーバーサンプリングの概念図
EOS R5EOS R6EOS R
8K DCI(8,192×4,320)29.97fpsなど(RAW可)--
8K UHD(7,680×4,320)29.97fpsなど--
4K DCI(4,096×2,160)119.88fps、59.94fpsなど--
4K UHD(3,840×2,160)119.88fps、59.94fpsなど59.94fpsなど29.97fpsなど
フルHD(1,920×1,080)59.94fpsなど119.88fps、59.94fpsなど59.94fpsなど
HD(1,280×720)--119.9fps、59.94fpsなど
タイムラプス動画8K、4K、フルHD4K、フルHD4K、フルHD

動画記録時の仕様についてはこちらも→キヤノン、EOS R5/R6の動画機能について追加説明

まとめ

EOS R5とR6の大きな違いは撮像素子であり、高解像度のEOS R5、画素数を減らしたEOS R6という兄弟機の関係にあると言える。仕様を見比べても、それ以外の部分の差は一見小さい。しかし小さな違い積み重なれば、カメラとしての用途に違いを生じさせる。性格が異なる兄弟といえばいいだろうか。撮像素子違いといえば、現行機種ではニコンのZ 7とZ 6、パナソニックのLUMIX S1RとS1があるが、EOS R5とEOS R6ではそれ以上に差をつけているように見えるのだ。

それでも、EOS R6が単なる劣った弟といった存在ではないのも分かるだろう。6は廉価モデルではないというキヤノンの話にはうなづけるものがある。そして、5が上級機であることにも変わりはない。

EOS Rでの不満点をつぶしたというEOS R5やEOS R6は、仕様を見た範囲ではたしかに不満点は見つけづらい。EOS Rユーザーであっても、ボディ内手ブレ補正やデュアルスロットに魅力を感じる人も多いだろう。そうした使い勝手に直結する部分の向上も決して無視はできない。

とはいえ絶対的な価格は、決して安くない。もちろん今時40万円をこえるカメラもそう珍しいものではない。機能を考えれば、この値段になるのだろうとは思えるし、EOS 5D Mark IVが発売当初で43万2,500円だから、目くじらを立てるほどではないのかもしれない。ただし、EOS 5Dや5D Mark IIの登場時にプロやハイアマチュアがこぞって購入したのは、その性能に加えて、35mm判フルサイズでありながら当時としては安価だったという要因は否定できない。

一方で、仕様を見ただけでは実際の製品の魅力が分からないのもカメラの面白さといえる。その画質や使い勝手に関しては、製品の発売を待ちたい。

猪狩友則

(いがり とものり)フリーの編集者、ライター。アサヒパソコン編集部を経て、2006年から休刊までアサヒカメラ編集部。新製品情報や「ニューフェース診断室」などの記事編集を担当する傍ら、海外イベントの取材、パソコンやスマートフォンに関する基礎解説の執筆も行う。カメラ記者クラブでは、カメラグランプリ実行委員長などを歴任。