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【2021年版】今年もあとわずか! 話題のカメラ新機種を振り返る

デジカメ Watch アワード 2021の投票開始に寄せて、2021年に登場したデジタルカメラ新製品の中から、特に話題となった機種を駆け足で振り返る。新型コロナウィルスの影響により発売が今年に延びてしまった製品があるとも聞く。外出自粛によりユーザーの撮影機会も減ったが、カメラを作る側としても苦難の年だっただろう。

デジタルカメラ市場の縮小ゆえなのか、レンズ交換式のエントリー機や低価格なコンパクトデジタルカメラは影をひそめた一方、数は少ないながらフラッグシップ機などハイスペックなモデルや、尖った製品の新発売が多い年だった(以下、掲載は発表日順)。

富士フイルム X-E4(1月27日発表・2月25日発売)

センサーはX-Trans CMOS 4、画像処理エンジンはX-Processor 4を搭載。これでレンジファインダースタイルのX-Eシリーズも、Proシリーズ/Tヒトケタ/Tフタケタ同様に最新のデバイスになった。トップカバー部のデザインがX-E3から変更になったり、グリップがなくなったりと、よりスッキリしたイメージに変更されている。背面モニターは固定式からチルト式になり自撮りにも対応。USB Type-C端子の搭載や、DCI 4K対応、撮影可能枚数の増加もポイント。発売時の価格はX-E3よりも抑えられている。

富士フイルム GFX100S(1月27日発表・2月25日発売)

2019年に発売されたGFX100の兄弟・姉妹モデル。43.8×32.9mmで1憶200万画素の裏面照射型CMOSセンサーや、画像処理エンジンX-Processor 4は同じ。35mm判フラッグシップ一眼レフのような縦位置グリップ一体型だったGFX100から、小型軽量化を実現。ファインダーは脱着式から固定式になっている。手ブレ補正効果は0.5段アップの6.0段分に向上。価格が100万円超えのGFX100から70万円台と大幅に抑えられたのが一番の見どころかもしれない。

ソニー α1(1月27日発表・3月19日発売)

フルサイズミラーレスαシリーズ初のフラッグシップ機。αの源流であるミノルタ時代にもなかった「1」を冠した。メモリー内蔵積層型CMOSセンサーは有効5,010万画素。約30コマ/秒の連写性能、感度はISO 100-32000(拡張で102400)、動画も8K/30P 4:2:0 10bitのボディ内記録に対応し、高解像度のα7Rシリーズ、高感度のα7Sシリーズ、動きものに対応するα9シリーズの上に君臨する。電子シャッターのローリングシャッター歪みはα9より抑え、メカシャッターでは1/400秒のフラッシュ同調に対応する幕速のシャッターユニットを搭載している。

リコーイメージング J limited 01(2月25日発表・4月30日発売)

同社フルサイズ機PENTAX K-1 Mark IIをベースにした受注生産のカスタムモデル。基本性能に違いはない。マウント部にはデュラテクトゴールド・コーティング加工による独特の輝き。ペンタプリズム部に装着するアイテムとして、トップカバーB(樹脂製)に加え、さらにトップカバーA(真鍮製)を重ねることで、見た目の印象をガラリと変えられる。ボディカラーは、ブラック&ゴールド/スカーレットルージュ/ビリジアン/LX75メタリックの4色。木製のグリップは、北米産ウォールナットの削り出しに9層のコーティングが施されている。

ニコン Z 9(3月10日開発発表・12月24日発売)

ニコンミラーレスZシリーズのフラッグシップ機。上位モデルで最初にメカシャッターを取り払うのがニコンと予想した人は少なかったのではないだろうか? これは有効4,571万画素の積層型CMOSセンサーを搭載し、Z 7II比で約12倍という高速読み出しを実現したため。連写はAF/AE追従で約20コマ/秒、約11MPのJPEGであれば約120コマ/秒に対応する。動画も8K/30pや4K/120pで撮影可能。0.5型・約369万ドットのファインダーはスペック値から受ける印象以上の見えで、被写体の動きを常にそのまま表示するReal-Live Viewfinderを謳っている。

シグマ fp L(3月25日発表・4月16日発売)

ライカLマウントのフルサイズミラーレス機。先行するfpの約2,460万画素に対して、fp Lは現在のLマウント機で最多の約61,00万画素。今回もFoveonセンサーではなく、通常のベイヤータイプ。ファインダーがない(外付けで対応)だけでなく、メカシャッターや光学式の手ブレ補正機構もなく、すっきりとコンパクトであるなど基本的な部分は同じで、性能面もセンサーが変更になったことによる機能の変化が中心。像面位相差検出によりAF性能が向上した一方で、連写速度は約18コマ/秒から約10コマ/秒へ、ストロボ同調速度は1/15秒になっている。USB端子による給電にも対応した。

リコーイメージング PENTAX K-3 Mark III(2019年9月開発発表・3月31日詳細発表・4月23日発売)

同社APS-C一眼レフの最新にしてフラッグシップ機。2019年3月のファンミーティングで試作機をお披露目してから約2年の時を経てついに発売。こだわって開発したという光学ファインダーは視野率約100%、約1.05倍(35mm判で0.7倍相当)で、明るくピントの山をつかみやすい。センサーは有効約2,573万画素。感度はISO 100〜160万、ボディ内手ブレ補正も搭載。約12コマ/秒の連写とフラッグシップ機らしい性能。背面モニターは堅牢性を意図して固定式とした。タフに使いたい1台。なお、本稿執筆時点の実勢価格は、同社フルサイズ機のK-1 Mark IIを上回っている。

キヤノン EOS R3(4月14日開発発表・11月27日発売)

35mm判フルサイズミラーレスのEOS Rシリーズで、現時点の最上位モデル。デジタル一眼レフにはない「3」の名前を与えている。フィルム一眼レフ以来となる視線入力機能を搭載し、ファインダーで見たところにAFフレームが移動する。センサーは有効約2,410万画素の裏面照射積層型CMOSで、デュアルピクセルCMOS AFに対応。電子シャッターではAF/AE追従で30コマ/秒の撮影が可能。6KのRAW動画記録にも対応する。防塵防滴、縦位置用のグリップ一体型など、いわゆるフラッグシップ機と言われても不思議ではないが、キヤノンはEOS R3をフラッグシップとは謳っていない。これ以上の製品を用意しているということだろう。

パナソニック LUMIX GH5II(5月26日発表・6月25日発売)

動画カメラとしてYouTuberなどにも人気のLUMIX GH5の後継機。画像処理エンジンは最新のものに切り替わり、性能と使い勝手が向上。手軽に使える無線ライブ配信機能の搭載を特徴としている。GH5から継承したセンサーにはARコーティングを追加。手ブレ補正効果は1.5段分向上の6.5段分になった。リアルタイム認識AFが強化され、人体/動物/頭部の検出に対応している。また、PD対応のUSB充電や給電も可能に。同社は、より本格派の上位機として「LUMIX GH6」の開発も明らかにしている。

OMデジタルソリューションズ OLYMPUS PEN E-P7(6月9日発表・6月25日発売)

オリンパスの映像事業が分社化して最初に発売されたカメラ。名前からしてE-P5の後継機だが、6ではなく7。むしろスタイリングはPEN-Fのファインダーなし版といった趣だ。センサーと画像処理エンジンはファインダー内蔵のOM-D E-M10 Mark IVから継承。4.5段分の5軸手ブレ補正を搭載している。同社はOLYMPUSブランドを「OM SYSTEM」に切り替えると発表しているので、ひょっとしたらこれが最後のOLYMPUSの名前が付くデジタルカメラになるかもしれない?

Topic:カメラブランドのスマートフォン

・ライカカメラ Leitz Phone 1 / シャープ AQUOS R6

Leitz Phone 1、AQUOS R6

1型センサーを搭載した5G対応のAndroidスマートフォンの兄弟モデル。AQUOS R6から1カ月遅れてとLeitz Phone 1が発売されている。主な違いはライカ監修の外装とLEITZ LOOKSという専用モノクロモードが搭載されていること。カメラ部分には専用のレンズキャップを用意するなど、ライカらしさが溢れている。ちなみに共に日本国内向け。LEICAと記載されたスマートフォンは、パナソニック、ファーウェイに続く3社目。

・ソニー Xperia PRO-I / Xperia 1 III / Xperia 5 III

Xperia PRO-I

最近のソニーのスマートフォンXperiaは、α/サイバーショットの開発チームとの協力関係が向上し、カメラ性能に力が入っている。Xperia 5 IIIとXperia 1 IIIのカメラ性能は基本的に同一。16mm相当、24mm相当、70mm/105mm相当切り替えの3つのカメラを搭載。画面が大きくて、3D iToFセンサーがあって、外部モニター機能があって、メモリーもストレージも大容量なのがXperia 1 III。Xperia PRO-Iはカメラ性能に特化したモデルで、1型センサーを用いた24mm相当カメラのほか、16mm相当、50mm相当の合計3つのカメラを搭載。いずれも専用のカメラアプリPhotography Proで、カメラライクに細かく設定を変えて撮影できるようになっている。

ニコン Z fc(6月29日発表・7月27日発売)

銀塩一眼レフの「FM2」をオマージュしたヘリテージ(遺産や継承といった意)デザインのZ fcは、先行するZ 50をベースに開発されている。有効2,088万画素のAPS-C(DXフォーマット)センサーなど基本性能は変わらないが、シャッタースピードダイヤルや、ISO感度ダイヤル、露出補正ダイヤル、絞り値を表示する表示パネルがある。銘板のNikonも往時の“縦ロゴ”で、FM2と同時代のAiニッコールを模したZ fc 28mm f/2.8 Special Editionと合わせて楽しみたい。発売以来入手難の状態が続いている人気モデル。

ソニー VLOGCAM ZV-E10(7月27日発表・9月17日発売)

VLOG用途に特化した“VLOGCAM”の2機種目は、レンズ交換式のAPS-Cミラーレス機α6400がベースになっている。VLOGCAMがシリーズ化したのは、最初のモデルのZV-1(1型センサー搭載のコンパクトカメラ)が好評だったということだろうか。α6400と比べると電子ビューファインダーはなくなり、背面モニターがバリアングル式になっているのが外観上の大きな違い。使い勝手の面でも、より顔映りを重視した画作りや、動画撮影時に電子式のアクティブ手ブレ補正を使えるといった差がある。

富士フイルム GFX50S II(9月2日発表・9月29日発売)

富士フイルムの中判デジタルGFXシリーズ最初のモデルがGFX 50S。その後継となるのがGFX50S IIだ。センサーの有効画素数は50Sと共通の5,140万画素だが、X-ProcessorがProから最新の4になっている。ファインダー一体型になり、ボディ内手ブレ補正を搭載。仕様上の数値の差はそれほどでもないが、背面モニター部分のでっぱりも抑えられ、スッキリとした印象になっている。シャッター速度ダイヤルや感度ダイヤルは廃され、右手側はサブ液晶モニターだけに、左手側は露出モードダイヤルに変更された。

富士フイルム X-T30 II(9月2日発表・11月25日発売)

一眼レフスタイルのTフタケタシリーズで、X-T30のマイナーチェンジモデル。センサーと画像処理エンジンは共通で、最新のX-Trans CMOS 4とX-Processer 4。主にソフトウェア面での変更で、X-T4と同等のAF性能を実現した点が特徴となっている。また、フィルムシミュレーションにクラシックネガとETERNAブリーチバイパスが追加されている。ハードウェア面では、背面モニターのサイズはそのままながら、約104万ドットから約162万ドットに向上した。

リコーイメージング RICOH GR IIIx(9月8日発表・10月1日発売)

GRといえば28mmの画角でお馴染みだったが、40mm相当(実焦点距離は26.1mm)のレンズを搭載した。フィルム時代を含めても28mmよりも狭い画角はGR初登場。標準域という使いやすさもあってか、想像以上に前向きに受け入れられているようだ。レンズ以外の基本性能は28mm相当のGR IIIと同じ。最短撮影距離が6cm長く、鏡筒部分が2mm厚くなったぐらい。外観も見分けづらいほどに共通している。

ソニー α7 IV(12月2日発表・12月17日発売)

広ダイナミックレンジの“S”でも高解像度の“R”でもない基本モデルが4代目に進化。センサーは有効約3,300万画素になり、画像処理エンジンはα1やα7S IIIと同じ最新のBIONZ XRとなった。感度は100〜51200(拡張でISO 50/ISO 204800)。価格もα7 IIIの発売当初の約25万円から約33万円にアップしている。動画記録は4K60p/4:2:2 10bitに対応。背面モニターはα7 IIIがチルト式だったが、バリアングル式に変更。ここにも動画需要の高まりを感じられる。フルサイズミラーレスの“新しいスタンダード機”として期待がかかる。

猪狩友則

(いがり とものり)フリーの編集者、ライター。アサヒパソコン編集部を経て、2006年から休刊までアサヒカメラ編集部。新製品情報や「ニューフェース診断室」などの記事編集を担当する傍ら、海外イベントの取材、パソコンやスマートフォンに関する基礎解説の執筆も行う。カメラ記者クラブでは、カメラグランプリ実行委員長などを歴任。