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ソニーに聞いた「VLOGCAM ZV-E10」一問一答(その1)

近年のαで“国内最多予約” 企画背景やα6400との違いは?

ソニーが9月17日に発売したミラーレスカメラ「VLOGCAM ZV-E10」の、仕様表だけでは読み取れない“気になる”部分について、ソニーから得られた回答を元にお届けする。本稿では、ZV-E10のコンセプトから従来モデルとの違い、同じくAPS-Cセンサーを搭載するαカメラ「α6400」との違いについて伺った。なお、外観デザインの狙いやボディの特徴などについては「その2」としてお届けする。

質問事項(その1)

・ZV-E10の開発コンセプトを教えてください。
・「VLOGCAM」シリーズはどのような経緯で立案・商品化されたのでしょうか?
・どんなユーザーに向けて訴求していますか?
・9月17日に発売されましたが、反響はいかがですか?
・従来モデル(ZV-1)との棲み分けについて教えてください。
・従来モデルから、美肌効果機能などの画質設計面で変更はありますか?
・動画撮影面での特徴を教えてください。
・静止画撮影面での特徴はありますか?
・同じくAPS-C機「α6400」との違いについて教えてください(動画について)
・同じくAPS-C機「α6400」との違いについて教えてください(静止画について)
・従来モデルから搭載されている「背景ボケ切り替え」はどういった経緯で着想されたのでしょうか? また、搭載における難しさ、苦労などはあるのでしょうか?
・「商品レビュー用設定」についてはいかがでしょうか?

——ZV-E10の開発コンセプトを教えてください

Vlog向けカメラとして従来機の「ZV-1」が市場から好評をいただいておりますが、より幅広い映像表現を求めるお客様に向けてレンズ交換式のAPS-Cカメラを発売致しました。

ZV-1(1型センサー)より大きなAPS-Cセンサーを搭載したことで、大きく背景をぼかした表現が可能になります。また、それを素早く切り替えられる「背景ボケ切り換えボタン」や「商品レビュー用設定」、顔が明るくきれいに映る撮影性能を備えております。

合計65本のEマウントレンズによる多彩な映像表現、伝えたい音をクリアに収音できるマイク、ドラマティックなスローモーション撮影にカンタンに切り替えられるボタンなど、動画撮影に最適な使い勝手と性能を兼ね備えた、コンパクトなレンズ交換式カメラです。本機により、多彩な表現による憧れの投稿動画映像を誰でも簡単に撮影することができます。

——「VLOGCAM」シリーズはどのような経緯で立案・商品化されたのでしょうか?

若者のなりたい職業としてYouTuberの人気が高くなっているように、動画を投稿する人や、映像クリエイターが増えており、動画市場は拡大していると想定しています。

昨今、SNSなどを通じて自分の考えや思いを動画で発信する人が増えていますが、その中には映像表現によりこだわった動画を投稿するケースが増えています。併せて、高画質・高音質映像への意識も高まっています。そうした状況を受けて、ソニーは本機を発売することで、Vlogなど動画撮影に特化したカメラのラインアップを充実させ、Vloggerを含む幅広いユーザーの創作意欲に応え、映像制作活動と動画発信を支援するという意図で企画・開発しました。

商品企画部プロダクトプランナー 吉原英里氏

——どんなユーザーに向けて訴求していますか?

レンズ交換式カメラで、憧れのクリエイターのようなアーティスティックな映像表現で撮影し、SNSへ投稿したいと思っているお客様を想定しております。普段スマートフォンで撮影しているお客様にも、簡単に憧れの映像を撮影して頂けます。

——9月17日に発売されましたが、反響はいかがですか?

国内・海外ともにご好評をいただいております。また、若年層や女性層・ファミリー層など、幅広いお客様にもご好評いただいております。

国内においては、近年のαシリーズでは最多の予約数を記録しております。

——従来モデル(ZV-1)との棲み分けについて教えてください。

一番の相違点はレンズ交換式であることです。Vlog専用設計(綺麗な顔映り制御、音質など)は踏襲しつつ、多彩なレンズラインナップから、シーンや際立たせたい表現に最適なレンズを選んでいただくことで、表現の幅が広がります。

また、ZV-1より大きなAPS-Cセンサーを搭載し、より大きく背景をぼかすことができ、暗所でもよりきれいに撮影できます。静止画/動画/スローモーションもクイックに切り替えられる専用ボタン、一眼カメラによる高画質のライブストリーミング、長時間の撮影を可能にする大容量バッテリー・USB-Type-C端子を小型軽量ボディに凝縮しています。

このほか、臨場感の高い収音を可能にするデジタルオーディオインターフェースに対応しています。ワイヤレスマイクやラベリアマイクとの組み合わせにより、離れた被写体の声もクリアに録れます。

左が「ZV-E10」、右が「ZV-1」

——従来モデルから、美肌効果機能などの画質設計面で変更はありますか?

ZV-1と同様にVlogger向けに顔映りを重視しています。イメージセンサーがZV-1より大きくなることにより、ダイナミックレンジやノイズ耐性が向上しています。

——動画撮影面での特徴を教えてください。

フルHDでの高画質スローモーション撮影にボタン一つで簡単に素早く切り替えることが可能です。

電源スイッチの下に撮影モードを切り替えるボタンが配置されている

手持ちによる歩き撮りや、被写体が頻繁にフレームイン・アウトするような動きが大きい撮影においては、αシリーズならではのオートフォーカス性能により、高速・高精度・高追従で人やモノなど動く被写体を捉え続けます。

また、AIを活用した物体認識アルゴリズムにより、色や模様、被写体との距離などの空間情報を高速処理し、高精度に認識、自動追尾し続けるリアルタイムトラッキングを搭載しています。高い精度を実現しながら高速性と追従性に優れたファストハイブリッドAFシステムにより、被写体が次々と変わるシーンでも被写体にピントを素早く移し、被写体を捉え続けることができます。これにより、フォーカシングはカメラに任せ、撮影者はフレーミングとトークに集中できます。

プロダクトコミュニケーション部マーケティングプランナー 林隆文氏

——静止画撮影面での特徴はありますか?

Vlogカメラとしての動画撮影機能だけでなく、レンズ交換式一眼カメラαシリーズならではの優れた静止画撮影機能も兼ね備えています。

レンズ交換による多彩な映像表現や、APS-CサイズのCMOSセンサーによるボケを活かした印象的な映像表現を実現しています。また、高速・高精度・高追従のAF性能により、撮りたい瞬間を逃さず撮影することが可能です。

撮像エリアの約84%をカバーするAFセンサーを高密度に配置し、世界最速0.02秒の高速AFを実現し、素早く動く被写体も瞬時に捉えることができます。さらに、AF/AE追従最高約11コマ/秒の高速連写が可能です。

また、今回新たに、狙った被写体を追い続けるリアルタイムトラッキングをデフォルト機能に設定しました。

——同じくAPS-C機「α6400」との違いについて教えてください(動画について)

α6400と比較して、本機はVlogger向けモデルとして“顔映り”をより重視しています。具体的には顔の色味や階調の滑らかさ、明るさを最適化しています。静止画についても、肌の血色が良く健康的に見えるようにしています。

音声面については、カメラに向かって語りかけるVlog撮影に適した前方指向性3カプセルマイクを搭載することにより、前方からの集音性向上とノイズの低減を実現し、話し手の声をクリアに捉え音声を高音質に収録できます。

また、アクティブ手ブレ補正(電子)を搭載し、手持ちや自撮り、歩きながらの動画撮影でも、安定した映像を撮影することができます。

左が「ZV-E10」、右が「α6400」

——同じくAPS-C機「α6400」との違いについて教えてください(静止画について)

静止画撮影においては、α6400と同等の高い静止画撮影機能を引き継いでおります。

今回、ZV-E10では新たに狙った被写体を追い続けるリアルタイムトラッキングをデフォルト機能に設定しています。これにより、静止画撮影時はシャッターボタンの半押しでリアルタイムトラッキングが発動するので、フォーカスはカメラに任せて、撮影者はフレーミングに集中できます。

一方、α6400はEVFやモードダイヤル、内蔵フラッシュを搭載しており、ファインダーを覗きながらの撮影スタイルで静止画撮影を楽しむことができます。

左が「ZV-E10」、右が「α6400」

——従来モデルから搭載されている「背景ボケ切り替え」はどういった経緯で着想されたのでしょうか? また、搭載における難しさ、苦労などはあるのでしょうか?

「背景ぼけ切り換え」は、スマートフォンではなくカメラで撮影される方の多くが、キレイな背景ボケによる印象的な映像を求めていらっしゃいます。背景をぼかすことで撮影者自身にフォーカスを当てたい、部屋での撮影の際に周りを映したくない、といったお声を受けています。

一方で、旅行時や外出先では、自分の今いる場所や風景をくっきりと映したい、というニーズもあります。背景のボケ感は、F値の設定により変更することが可能ですが、カメラを使ったことのないスマートフォンユーザーの方にも簡単にVlogカメラならではの背景ボケを楽しんで頂きたい、という思いがありました。

また、撮影中のふとした瞬間に背景までくっきり映したくなったときや、複数人で映したいと思った際には、一瞬でボケをなくして全体をはっきりと映せるよう、ボタン一つで素早く切り替えができる機能として搭載しました。

搭載にあたっては、くっきりさせるためのF値を決めるのに苦労しました。背景をくっきりさせつつ、暗くなりすぎない、バランスの良い値を、検証を繰り返して決めていき、また、なるべく自然にボケ感が切り替わるよう、細かい調整を行いました。

RECボタンの右側に配された「背景ボケ切り替え」ボタン

——「商品レビュー用設定」についてはいかがでしょうか?

「商品レビュー用設定」は、商品レビュー動画などで商品をカメラにかざすような撮影をする際に、商品にすぐピントが合うように、フォーカスの動きを最適化した機能です。

開発当初は商品をカメラにかざしても数秒待たないと商品にピントが合わず、Vloggerの方々は商品の後ろに手をかざして背景を隠すなどの工夫をしていました。それでも時間がかかってしまうので、ピントが合わない部分をカットするなど、編集の手間がかかっていました。

ソニーのカメラはAFが速いと言われている中で、なぜ出来ないのかを分析し、AF速度や対象などの設定を工夫しながら、商品をかざせば素早くピントが合うように、設計・企画の二人三脚で作り上げていきました。

本誌:宮本義朗