新製品レビュー

FUJIFILM X-E4ファーストインプレッション

小型フラットボディに最新機能を凝縮 X-S10との違いは?

富士フイルムからX-Eシリーズの最新版が登場しました。Xシリーズの最新機種と言うワードから「26MPのX-TransCMOS 4とX-Processor 4の組み合わせだな?」とアタリをつけることが出来れば、あなたはもう富士フイルムの術中に陥っているといっていいでしょう。今回はこの最新世代となったX-E4と、同時に登場したXF27mmF2.8R WRについて、ファーストインプレッションをお伝えしていきます。

X-Eシリーズ4世代目

上述の通り、裏面照射型となる最新世代の有効約2,610万画素X-Trans CMOS 4と画像処理エンジンX-Processor 4との組み合わせなので、X-T4やX-S10などと同じくグレイン・エフェクトに粒度が選択出来たり、フィルムシミュレーション:ETERNAブリーチバイパスやクラシックネガを選択出来るのが嬉しいポイント。X-T3とX-T30も同じ世代のセンサーとエンジンを搭載していますが、どちらも未だ対応していませんので、両機のユーザーは少し悔しい思いをするかもしれません。また、残念ながら本機にはIBIS(ボディ内手ブレ補正)は搭載されていません。ですが、その代わりに魅力的な小型ボディを手に入れています。

本機を手にして最初に感じた感想ですが、X-T30やX-S10などの魅力的な小型機が既にあり、棲み分けが難しくなっているところによくブッ込んできたな、という思いを抱きました。それに加えまして、色々なメーカーさんによると、海外市場では小型機の需要が低いという共通見解が聞かれます。なのでX-E4の登場には「相当なリスクを覚悟した戦略」という印象を持ちました。

個人的な気持ちを述べれば、他社機になりますがパナソニックのLUMIX GMシリーズをとても恋しく思っていたので、こうした小型カメラの登場を歓迎しています。

同時に登場したレンズ「XF27mmF2.8R WR」ですが、これは既存製品であるXF27mmF2.8の後継版という位置づけとなります。光学系はそのままに防塵・防滴、そして-10度での動作に対応する耐低温仕様となり、さらに絞りリングが追加されています。またドーム型のフードも新たに用意(同梱)されていて、従来のレンズにも装着可能です(フードおよび対応レンズキャップは個別に販売もされます)。

レンズ自体は光学系が同じなので基本的な写りは同じですが、従来のレンズで絞りリングが無いことを不満に感じていた人や、防塵防滴・耐低温仕様に魅力を感じる人にとって、魅力的な提案がつまったリニューアル仕様になっていると思います。

ミニマルデザインをさらにブラッシュアップ

外観デザインは、シンプルかつミニマルデザインを特徴としていた従来機X-E3よりもさらにシンプル度がアップしています。従来機でボディ前面にあったグリップとAFモードレバーが廃されていて、背面側からはボタンが3つ、ダイヤルが1つなくなっています。

ボタンが増える傾向にある昨今ではユニークな手法で戦略がハッキリしていて良いと思いますし、シンプル化が功を奏しているのか、先日紹介した中華レンズ特集でとりあげていた、例えばTTArtisanのレンズなどと組み合わせたりしていると「あれ? フィルムカメラ??」という佇まいにもなります。

このように前面にはグリップがなく、背面側にも指を引っかけるような突起が排除されていることもあり、素の状態だとホールド性は低め。なので、組み合わせるレンズとの相性問題はハッキリしていそうですが、純正のオプションとしてサムレストとグリップが別売で用意されています。

フルオプション装備状態

手に持った感じはマグネシウム合金製のトップカバーが利いているのかとても高品位。剛性感だけで言えばX-Pro2より明らかに上です。ダイヤル類の操作感触も良いですが、ボタン類の押下感はイマイチ。特にメニューボタンとDISPボタンはストロークがとてもショートで曖昧。あまり使ってほしくないような印象すら受けました。

作例

AFの駆動音が少しウルサイというか相変わらずチープな感じのする新XF27mm。そこはお手入れして欲しかった感ありでした。X-E4との組み合わせだと、AFは迅速で全く不満ありません。写りは絞り開放からパキッと写る系。好き嫌いは分かれそうな気がしますが、よく写ります。

X-E4 / XF27mmF2.8 R WR / プログラムAE(F4.5・1/350秒・±0EV) / ISO 320

脚色のない写りって言えば良いでしょうか。手ブレ補正がついていない組み合わせなので、1/250秒に近いシャッター速度でも気を抜いて撮影すると簡単にブレてしまいます。表現力というか再現性は、同世代のセンサーとプロセッサーのため、X-T4やX-S10、X-Pro3などと全く同じです。

X-E4 / XF27mmF2.8 R WR / プログラムAE(F4・1/220秒・-0.3EV) / ISO 320

善し悪しの話ではなく、逆光にはそこまで強い感じではありません。付属のフードについても検証してみましたが、効果的に光線をカットしているという感じではありませんでした。あった方が佇まいが良いので従来レンズユーザーは是非。

X-E4 / XF27mmF2.8 R WR / プログラムAE(F4・1/240秒・+0.7EV) / ISO 320

実を言うと、XF27mmF2.8ってよく写るんだけど、何となく好みではありませんでした。でも今回X-E4とともに使ってみて、このリニューアル版は「何か良いぞ!」と思っています。

X-E4 / XF27mmF2.8 R WR / プログラムAE(F5.6・1/680秒・±0EV) / ISO 320

トタニスト(波板愛好家)としては波板は撮らざるを得ない被写体ですが、実に良い感じに写っています。淡々と写す感じがX-E4の持っている雰囲気とマッチしている気がします。

X-E4 / XF27mmF2.8 R WR / プログラムAE(F5.6・1/800秒・±0EV) / ISO 320

不思議と普段撮らない被写体に目を向けたくなる感じが楽しいカメラです。少なくとも筆者が普段メインに使っているX-H1だとこういった撮り方はしません。狭すぎず広すぎることのない、35mm判換算で41mm相当になる27mmの距離感は、とてもアリです。

X-E4 / XF27mmF2.8 R WR / プログラムAE(F5.6・1/600秒・+0.3EV) / ISO 320

レンズとセットで500gを切る組み合わせなのに、撮影性能は本気仕様というのは実に痛快。この写真でそういう事言っちゃうの? という印象を持つかもしれませんが、「パッと構えて撮る」のルーティンでストレスがなく、例えば「あの時AFが上手く掴めなくてイライラした」みたいなネガティブな思い出がほぼありません。

X-E4 / XF27mmF2.8 R WR / 絞り優先AE(F4・1/450秒・-0.3EV) / ISO 400

作例とは関係ありませんが、セットアップメニュー、操作ボタン・ダイヤル設定からEVFタッチパネル有効範囲を設定しておくと、いわゆるタッチパッドAFが出来るようになります。EVF使用時はAFレバー操作よりずっと快適です。

X-E4 / XF27mmF2.8 R WR / プログラムAE(F5.6・1/200秒・-0.3EV) / ISO 320

先日のインタビュー(富士フイルムのフィルムシミュレーションはどのようにつくられているのか[後編])で教わったETERNAブリーチバイパスを銀残し100%にする設定をベースに少し自分好み(ハイライト+1 / シャドー+3 / カラー-2 / シャープネス -1)に調整してみました。かなり好みなので、対応ボディを所有していないことが悔やまれます。

X-E4 / XF27mmF2.8 R WR / プログラムAE(F4.5・1/480秒・-0.3EV) / ISO 320

カラークロームエフェクトを適用すると、「塗り」の感じに質感というかリアリティが出てきます。自己満足に近い部分ですが、やっぱり質感が出ると嬉しい。被写体に寄った時に実焦点距離27mmらしい距離感が出てきます。画面周辺部ではどうしてもパースが出ますが、それもまたフォーマットごとの特徴だと思います。

X-E4 / XF27mmF2.8 R WR / プログラムAE(F6.4・1/1,100秒・±0EV) / ISO 320

考察:実写からみえてきたこと

今回は基本的にXF27mmF2.8R WRとの組み合わせで試用していきました。パンケーキスタイルの薄く軽量なレンズだということもあり、オプションのサムレストやグリップをつけない素の状態でも、常時手持ちで楽しく撮影出来ました。

やはり小さい軽いは正義。試しにサムレストだけ装着した場合とグリップだけ装着した場合、拡張グリップを装着したフルアーマー状態も試しましたが、フルアーマーだとさすがにグリップ性だけで言えばXF16-55mmF2.8R LM WRのような大型のズームレンズを組み合わせても不満が出ない状態になりました。が、本機でそうした運用をすること自体にコレジャナイ感を抱く自分を否定出来ない時間も多かったです。ちなみにグリップ装着状態では三脚穴が丁度光軸上にくるので、三脚利用が多めの人にとっては相性が良いオプション運用となりそうです。

個人的に一番印象が良かったのはサムレストのみの状態。カメラのコンセプト的にも合致しているように感じましたし、XF27mmF2.8R WRや、F2シリーズの単焦点レンズであれば軽快に撮影出来そう。ただし位置の問題からQボタンの操作性が下がるので、ボタンのカスタマイズは必須になるだろうと思います。

EVFはX-T30ではなくX-E3からの引き継ぎ。アイポイントが短いのでメガネを掛けていると周辺までひと目で見渡すのは困難でしたが、裸眼では問題ありませんし、そもそも論としてこのサイズを考えれば必要十分な性能を満たしていると思います。

Goodだったところ

では、良かったと感じたところと気になったところについて。

X-S10の時にも感じたことですが、AF性能など撮影快適性につながる基本的なカメラ性能はX-T4と同じなので、とても快適です。加えて操作に対するレスポンスが良いところも美点です。

新規要素としてシャッターダイヤルに「P」モードが新設されているところもポイントです。ダイヤルを「P」の位置にすると、Aモードと違って、レンズの絞りリングがどの位置であっても強制的にP(プログラムAE)モードに遷移するので、いつの間にか絞りリングがAから動いていた、みたいな状況でも失敗のリスクが減りそうな点は良いところでしょう。

カメラ全体の品質が高いのもマル。約10万円という価格で手に入るカメラとしては最良クラスの質感を持っています。

Badだったところ

X-E4にはX-S10にあったフルオートモードが搭載されていません。これはカメラのコンセプト的に採用されなかったのだと推測されますが、個人的に気に入っていたというか有用な機能だと考えているので少し残念です。

撮ってる感は上々ですが、シャッター音とフィーリングがやや甲高く感じられ、正直に言えば筆者の好みではありませんでした。

コンパクトなので操作性自体はやや窮屈になります。これはコンセプトの都合なので仕方のないことではありますが、X-S10の方が快適性では勝っています。視点を変えれば、Fnボタン設定等でカスタマイズを駆使して自分仕様にする楽しみがあるということですし、撮影時にアレコレ設定を変えたりするのではなく、少ない操作で撮影を完遂させるためのお作法を学べるカメラ、っていうのは言い過ぎでしょうか。

一番気になったのはLCDをチルト操作(LCDが少しでも上を向いていると)した状態でアイセンサーが反応すると、LCDの表示がセルフィーモード(鏡面表示)になってしまうこと。これは個人的に大きなマイナス点でした。筆者はよく腰だめに構えて撮ることがあり、そうした撮影ではアイセンサーが反応してしまいます。俯瞰撮影ではこのような振る舞いはしませんが、ローアングル撮影では反転表示されやすいので、操作時に少なからずストレスを感じました。

本件についてメーカー側に確認したところ、アイセンサーを完全に停止させたりセルフィー表示させないようにすることは現時点で仕様上出来ない、という回答でした。

背面モニターは可動幅の大きいチルト式になった

あとはバッテリー消費について。本機のバッテリーは従来のNP-W126Sとなっています。背面モニターとEVFの比率は9:1、単写のみ+コマメに電源操作をするという運用で消費傾向をみていったところ、バッテリー消費1%辺り約4.4コマという結果でした。冬の気温が低い状況での実施であることも少なからず影響しているとは思いますが、IBISつきのX-S10よりも明らかに省エネという印象でもなく、普段使っているX-H1とあまり変わらないのでは? という感じ。もう少し頑張ってほしい気持ちは否定出来ませんでした。

まとめ

本機を一言で表現するならば、コンパクトなボディに高い撮影性能を宿した実力派。小さなカメラに魅力を感じる人であれば無視できないカメラです。

可能性や自由度という意味ではボタンや機能が多いほど良いとは思いますが、自由度が高いことが必ずしもユーザーの利益になるわけではないので、こうしたミニマルな提案はとても良いと思います。が、昨今のカメラ事情を知る人間としては「これ、売れるのか?」という心配が頭から離れません。

個人的にはとても好みのカメラでしたが、撮影中にX100Vの存在がチラつきました。X100Vの方が撮ってて楽しかったような……。レンズ一体型とレンズ交換式を同列に比べるのもどうかとは思いましたが、X-E4に触れていると不思議とX100Vに思いを馳せてしまう自分がいました。

従来機からの買い替えは、既存X-Eシリーズ以外も含めて大いにアリだと思います。理由は撮影性能の高さと最新のフィルムシミュレーション。クラシックネガやETERNAブリーチバイパスは楽しいですし、カラークロームエフェクトの有用性を味わってしまうと、この機能を搭載していないモデルに不満を感じるようになってしまう、という魔性も宿しています。

価格帯の近いX-S10と本機を見比べると、コンセプトの面からも性格が全く異なる機種という関係となりますが、撮影している楽しさではX-E4が、頼もしさではX-S10がそれぞれ秀でていると感じています。

豊田慶記

1981年広島県生まれ。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープの写真に感銘を受け写真家を志す。日本大学芸術学部写真学科卒業後スタジオマンを経てデジタル一眼レフ等の開発に携わり、その後フリーランスに。黒白写真が好き。