特別企画

モノブロックストロボで動画撮影? 内蔵LEDが明るくなった「Profoto B10X」で動画を撮ってみた

プロ向けの照明機材というジャンルで高品質なイメージで業界をリードし、創業50余年の歴史があるのがスウェーデンに本社を置くProfotoだ。

スタジオ向けの大型ストロボの老舗ではあるが、近年はバッテリー駆動のポータブルな製品に注力しており、クリップオンタイプの「Profoto A1/A10」シリーズはアマチュア層にも馴染みが深いし、モノブロックながらバッテリー駆動の「Profoto B10」も、取材に持っていくストロボの定番としてプロカメラマンの間では定評が高い。

LEDモデリングランプがより明るく 動画用途でも活躍するProfoto「B10X」「B10X Plus」
https://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/1349552.html

Profoto B10X

今回は、この9月に発売が開始されたばかりのB10の新型モデル「Profoto B10X」を使い、実際の取材撮影の現場でどう使えるかをレポートしてみたい。

今回の撮影について

想定した撮影シーンはオープンしたばかりのカフェを紹介するWEB媒体用の撮影。あらかじめロケハン(現場の下見)をする時間的余裕はなく、営業時間の関係から撮影できるのは完全に陽の落ちた夜の短い時間だけ。写真に加え、短い時間の紹介動画の撮影も同時にというオーダーで、昼間の外観写真は店舗側で広報写真を用意してくれるとのことだ。

撮影のためお邪魔したお店(CAFELIFE)

東京・小伝馬町にある「CAFE LIFE」は、生ハムたっぷりのパニーニ、自家製のレモネードが自慢のお店です。食事だけでなく、オーガニックな食べ物や化粧品などの商品も扱っています。
https://cafelife.info/

Profoto B10Xを静止画撮影で使う

ここでまず、Profoto B10Xの紹介を簡単にしてみよう。250Wsという、一般的なクリップオンストロボの約5倍のパワーを持つモノブロックタイプのストロボだ。

全長は17.5cmと非常にコンパクトで、カメラバッグの大きめのレンズ用スペースにすっぽりと収まるサイズ。バッテリー装着時で約1.5kgと軽量でありながらフル発光で最大400発というスタミナがあり、色温度可変式のLEDライトをも内蔵している。

カメラとの連動はProfoto AirTTLという電波無線方式で、100mの距離からもTTLオート発光がコントロールできるという高い信頼性を誇っている。

ここまではB10も同じだが、新型であるB10Xではフル発光でのリサイクルタイムが2秒から1.3秒へと高速化。内蔵LEDも2,500lmから3,250lmへと、約30%もの光量アップが実現されているのだ。

僕個人もB10を発売当初から2台購入し、ほとんどの撮影で頼れる相棒として使って来ている。今回の撮影でパワーアップした部分を感じられるのを楽しみにしてきた。

店舗内観

まずは今回のミッション、ひとつめの写真撮影は店の内観だ。

撮影に伺ったのは店舗営業が終了した夜の時間帯だったので太陽光はなく、店内の照明を使っての撮影だった。

夜の撮影ということで早速B10Xを使いたいところだが、ここは状況を見て使わないと判断。店内照明が良い雰囲気で、あえて照明を加える必要がないという判断だ。

EOS-1D X Mark III / EF16-35mm F4L IS USM / 16mm / マニュアル露出(3.2秒、F11) / ISO 100
EOS-1D X Mark III / EF16-35mm F4L IS USM / 16mm / マニュアル露出(3.2秒、F11) / ISO 100

これも店舗や部屋の状況によってはストロボを使うこともある。その時、コンパクトでワイヤレスのB10Xならば、ちょっとした物陰やソファの下などに仕込んでアクセント的に光らすこともできるので便利。こういった場合にはものブロックストロボが明るすぎる場合もあったのだが、B10/B10Xは最小0.5Wsという、ごく弱い光まで絞り込んでいけるのも最近のストロボの良さだ。

今回はその場の光を活かすために三脚に据えて絞り込み、スローシャッターでの撮影。当然のように超広角レンズでの撮影となるので、カメラ位置の変化で随分と印象が変わってくる。特にカメラの高さに気をつけ、床と天井の面積の割合を計算しながら構図を考えるのがコツといえる。

お店の看板メニュー

飲食店取材などで必須と言えるのが看板メニューの撮影。料理の撮影にはそれだけで本が一冊書けるぐらいのノウハウがあり、セッテイングもさまざまだ。だがここではどんな料理もそれなりに美味しそうにかつ、ちょっと高級感の出る簡単なセッティングを紹介しよう。

照明はたったの1灯。B10Xに、別売りのOCFソフトボックス 60 × 90cmを取り付けて斜め後ろ約45度からの光が来るようにセット。被写体までの距離は40〜50cm程度とかなり近づけておく。これだけだと手前が暗く写るので、B4サイズ程度のボール紙を被写体の手前にかざし(この例ではカメラマン本人が紙を持ったまま撮影している)、レフ板代わりにしての撮影だ。

ストロボON
EOS-1D X Mark III / EF100mm F2.8L Macro IS USM / マニュアル露出(1/250秒、F11) / ISO 100
ストロボOFF

多くの場合、料理の背景の処理にはかなりの気を使わなくてはならないが、背景紙を使うとなるとこれを垂らすスタンドやポール類などの装備がかなり大変になる。ところがこのセッティングでは背景を考える必要がない。被写界深度を稼ぐために絞りを絞り込むことで背景がどんなものであっても1m程も離れてしまえば真っ暗になってしまって写らない。

コツとしてはスタンドの支柱が写らないよう、スタンドの先を曲げて使えるミニポールスタンドのマンフロット420Bを使っていること、背景の黒の部分を画面上で増やすためにテーブルの奥の方に料理を置いていることの2点だ。

これだけで真っ黒の中に被写体が立体的に浮かび、質感の再現もリアルな写真が簡単に実現できる。

今回写真撮影にB10Xを使って感じたのはまずその取り回しの良さ。出張撮影の時には機材をできるだけ軽くコンパクトにしたいものだが、バッテリー込みで1.5kgという軽さは思った以上に楽。というのも、これを超える重さの製品となると傘やソフトボックスといったライトシェーピングツールを含めるとかなりの重さになり、スタンド類もそれに比例して頑丈で重いものを用意する必要があるからだ。特に、風の影響を無視できない屋外撮影時には華奢なスタンドでも対応できるB10Xの軽量コンパクトさは本当に役に立つのだ。

さらにアシスタントが使えない撮影でのProfoto AirX機能の便利さ。スマホの画面で3台までのB10XやA10などのストロボのコントロールが手元でできてしまうのだ。モノブロックストロボの泣きどころはハイポジションや遠くに照明を組んだ場合、光量の確認や操作が本体背面部でしか見えないことだと思っているのだが、手元のスマホですぐに確認、調整できるこの機能が大きな味方になってくれる。

Profoto B10Xを動画で使う

そして動画撮影だが、多くの人が照明を明るく使おう、影を無くそうと正面左右に2灯を配置するようなセッティングを選びがちだが、これは立体感を著しく損なうし、人物の鼻の左右に影が出たりと何かと不自然な再現になりがち。そこで1灯は背面に、もう1灯は人物前に置くセッティングにし、光に方向性を持たせることで立体感を演出したい。

販売商品の紹介

ここではOCF ソフトボックス 90cm OctaをB10Xに取り付けてメインライト、斜め後方からのアクセントにB10Xを背面の壁に打ってみた。髪の毛の光沢などで立体感が演出できるライティングになる。ここではソフトボックスや壁の反射など、光量がどうしても落ちてしまうセッティングにすることで光を柔らかくしているのでB10Xの30%向上した光量がとても心強かった。

もちろん、映像用の専用ライトシステムではないのでこれだけの明るさで真っ暗の中でも明るく収録する、という使い方ではなく、あくまでもその環境にある光(この場合は店舗の常設照明)を活かしながら立体感やアクセントをつけるために照明を足していくという考え方でのセッティングとなる。店舗照明が電灯光に近い暖かな色の照明であったので、B10XのLED色温度変更機能がとても役に立った。

【販売商品の紹介】
マネージャー石川さんによる販売商品の紹介。途中、マクロレンズで撮影した商品のアップも。Profoto B10Xのライティングは斜め上から1灯、斜め後ろから1灯(撮影:吉村永 編集:デジカメ Watch)

同じセッティングで静止画も

B10Xの最大のおすすめポイントが、こうして同じセッティングのまま写真と動画の撮影がおこなえるということ。下の作例はB10Xの瞬間光で撮影した。動画も写真も求められる現場・さらに時間と人手がない出張撮影ではこれは心強い。取材対象者に対しても動画と写真を連続して撮影できてしまうので負担をかけにくい。まさに一石二鳥な使い方が可能なのだ。

EOS-1D X Mark III / EF70-200mm F2.8L IS II USM / 102mm / マニュアル露出(1/80秒、F2.8) / ISO 200

商品棚を動画で撮影

そして今回のミッションの最後は商品棚の動画撮影。横に長い商品棚なので静止画ではあまりにも横長の写真になってしまうが、動画であれば横にゆっくり三脚のヘッドを振るパンで撮影してみた。

あくまでも店内照明の補助的に使いたいのでここでは天井にB10XのLEDをバウンス。

【商品棚を撮影】
ビデオ雲台で商品棚をパン、最後に紹介した商品。Profoto B10Xは天井に当てて光を拡散させている(撮影:吉村永 編集:デジカメ Watch)

パン撮影のコツはパンでカメラを振った最後の位置にカメラをまず向け、そのカメラポジションに合わせて自然に立てる位置にカメラマンが立ち、そこからパンの始点にカメラを回し、撮影を始めること。自然な位置からカメラをパンするのではなく、体をいちばん捻った位置から撮影をはじめ、体の捻りを自然に直しながらカメラを振ると落ち着いた動きの撮影がおこないやすい。

まとめ

今回、撮影した実感したのはB10Xの圧倒的な取り回しの良さ。カメラバッグのレンズ収納部にすっぽり収まるサイズでありながら大光量でProfoto共通の美しく、色の安定した光が得られること。さらにProfotoの150種類にも及ぶ豊富なライトシェーピングツールが使いこなせ、組み合わせるスタンドも小型軽量なものが選べること。そしてLEDは、大光量化によって動画照明に“使える”機能となった。

今回のシーンでは出番がなかったが、ヘアサロンのスタイル撮影など、人物をたくさん撮る撮影ではB10Xのチャージ速度のアップがとても心強い。僕個人的には人物の表情を追いながらたくさん撮影する時、チャージ速度は0.6秒を切るぐらいの速度が理想的。手持ちのB10で最大出力の10を使うとリサイクルに2秒かかってしまうので、出力を8くらいに絞ることでテンポ良く撮影するようにしていた。ところが最大出力で1.3秒のB10Xなら、これまでの約2倍の出力でもテンポ良く撮影でき、250Wsというカタログ上のパワーは変わらないのだが、実質的に使えるパワーが倍増したような使い勝手で人物撮影ができるのは大きなポイントだ。

ストロボというと、瞬間の光なので結果が読みにくく、今ひとつ難しいという感触が拭えない人にも、LEDモデリングライトが明るいB10XならばLEDライトを肉眼で確認してライティングを組み立てて、それからストロボで撮影ができる。また、動画撮影にもそのまま使える利便性を持ったProfoto B10X。スマートにさまざまな撮影をこなすのに最適なツールとして多くのカメラマンに手に取ってもらいたい。

【最初から再生】
Profoto B10Xだけでライティングした動画です(撮影:吉村永 編集:デジカメ Watch)

吉村永

東京生まれ。高校生の頃から映像制作に目覚め、テレビ番組制作会社と雑誌編集を経て現在、動画と写真のフリーランスに。ミュージックビデオクリップの撮影から雑誌、新聞などの取材、芸能誌でのタレント、アーティストなどの撮影を中心とする人物写真メインのカメラマン。2017年よりカメラグランプリ外部選考委員。