インタビュー
ソニーは「Xperia PRO-I」でどのようなユーザー体験を描こうとしているのか
1.0型センサー搭載のコダワリをメーカーに聞いていった
2021年11月30日 11:00
ソニーより12月15日に発売されるXperiaシリーズの最新モデル「Xperia PRO-I」(XQ-BE42)。製品名にイメージング(=Imaging)の頭文字「I」をとったことからも分かるように、写真体験に注力したモデルとして位置づけられている。今、特に写真体験をスマートフォンというデバイスを通じて提示する意図とはどのような点にあるのか、開発を指揮した濱口氏に開発意図を聞く機会を得た。ソニーストア各店舗で実機の展示も始まっているが、ぜひ製品理解の役に立てていただければと思う。
Xperia PRO-Iのコンセプトとは
――Xperia PRO-Iの発表会映像を見た際に、個人的な感想としてXperia 1の発表時に示された原点に回帰し、改めてそれを押し進めた機種という印象を抱きました。まずは本機の開発コンセプトからお話いただけますか?
濱口 :ソニーでモバイルコミュニケーションズ事業本部の事業部長を務めております濱口努です。現在モバイル端末の製品開発を統括しているのですが、実はこれまでにα7シリーズやα6000シリーズの立ち上げに関わり、またレンズ一体型カメラのRX100(IV〜VII)やRX10(II〜IV)、RX0、RX1などを担当してきました。そうした経緯もございますので、もともとはイメージング畑からきている、ということをまずお伝えさせてください。
濱口 :そうした来歴もありますから特にイメージングに振り切った製品をつくりたい、という想いが強くありました。発表会の映像でもお伝えしているように、Xperia PRO-Iで目指したのは「本物のカメラ」と言われる側面とスマートフォンとしての側面を融合することにありました。これが本モデルの開発コンセプトです。
――ということは1.0型センサーの搭載は開発の初期段階から決まっていたということですか?
濱口 :はい。初期段階というよりも1.0型センサーを搭載することがスタート地点になっています。
ご存知のとおりスマートフォンのカメラに搭載されているセンサーは、年々そのフォーマットサイズが大型化する傾向にあります。もちろんスマートフォンとしての「厚み」という枠の中で、カメラ専用製品と同等のセンサーを搭載しようというわけですから、物理的な制約からくる苦労も多くありました。
濱口 :ただ、当社ではセンサーを自社で手掛けていますので一日の長というわけではありませんが、自負している部分はあります。αシリーズの開発部隊との連携もあり、約8.9mmという「スマートフォン」として違和感なく手にすることができるサイズ感で製品化することができました。
――撮影体験に特化させながらもスマートフォンの利便性も追求した、ということでしょうか。
濱口 :スマートフォンのカメラ性能向上には、これまでも注力してきていますが、本モデルではセンサーサイズのメリットをいかして“撮影専用機としてのカメラ”に遜色ない画質実現を目指しています。
その意味でも、まさに2 in 1。撮影機であり通信端末でもあるということです。発表映像では「All in One Device」という表現でお伝えしていましたが、スマートフォンとしてのメリットに撮影性能を融合したということが、本モデル最大の特徴となっています。
カメラとスマートフォンの融合を目指す
――スマートフォンならではの利便性やメリットとは、どのような点にあるのでしょうか?
濱口 :一番大きいメリットは、スマートフォンに搭載されているSoCが利用できるということですね。カメラ機能だけでなくゲームをはじめとした様々なアプリやOSを制御する必要がありますから、チップの性能自体が非常に強力です。カメラ製品に搭載されているプロセッサーよりも優れている面がありますから、いわばカメラとスマートフォンのいいところを互いに採り入れていくことが可能になる、というわけです。
濱口 :先ほどもお伝えしましたように本モデルでは「本物のカメラ」としての撮影体験を提供することを目指しています。その一方で、あくまでもスマートフォンというカテゴリーに属する製品となりますから、その役割という点からも、やはりサイズ感が重要になってきます。本モデルの厚みを約8.9mmに抑えている理由もそうした考え方があるためなのです。撮影体験に重きをおいた製品ではありますが、“通常のスマートフォンとして遜色なく使っていける”ことを目指しました。
そうした基礎的な部分に加えて今回RX100 VII相当のセンサーを搭載することが実現できたことで、像面位相差AFによる高速なAF動作や2.4umの大型ピクセルの恩恵である飽和特性による広いダイナミックレンジおよび低照度下での高い受光感度特性によるノイズ耐性といった、撮影の根幹を支える性能を確保することができました。
言わばSoCの活用とセンサーメリットの合わせ技ですね。この「カメラとスマートフォンの融合」によりお客様へ提供できる価値の向上につなげることができていると考えています。
――スマートフォンという枠組みの中で、「カメラ」であることを追求したわけですね。ユーザーに提示できる価値には、他にどのようなものがあるのでしょうか。
濱口 :今お伝えしたカメラとスマートフォンの融合を一つ目のポイントとすると、二つ目は撮った後ですぐにシェアができるというスピード感となります。
今や撮影した写真や動画をSNSなどを通じてシェアすることは当たり前になってきていますが、カメラ製品では撮った後にスマートフォン側に画像を転送して編集作業などを経てアップロードする、というように複数のステップを踏む必要がまだあります。
ですが、スマートフォンは常にネットワークにつながっている分、こうした使い方の面で大きなアドバンテージばありますし、やはり全ての操作をスマートフォン単体で完結できる強みが際立ってきます。また手順自体が簡便であることも大きいですね。
そうしたスピード感と両輪となるようにしっかりとした画質も担保しているということ。通信とカメラの融合という部分ですが、これをスマートフォンという枠組みの中で実現できているということが、ひいてはユーザーに対する大きなメリットの提供につながっているものと考えています。
濱口 :三つ目のポイントは価格面です。現在プレミアムクラスのスマートフォンというと、10万円以上、15万円前後のクラスが、その主要なレンジを占めています。こうしたクラスのスマートフォンに比肩する基本性能に加え、15万9,500円(税込。ソニーストア価格)にて販売しているRX100 VIIのセンサー性能も利用できる、という2つの価値を融合しています。
通信端末とカメラを融合させていますから、ぜひ1台持ちで使っていただきたいと考えています。どうしてもカメラ性能で尖らせた製品なのでそちらに目がいきがちですが、スマートフォンとしての基本性能にも抜かりはありませんので、例えば旅行先で写真や動画を撮るという使い方に加えて、映画等のコンテンツ再生に使っていただいたり、ゲームを楽しんでいただく、といったように様々な場面で使っていただきたいですね。
PROラインを担う2つの製品、その違いとは
――Xperiaシリーズはフラッグシップモデルとしての1からはじまって、5、10と、大きく3つの柱で構成されています。これとPROラインシリーズは別物という理解でいいのでしょうか。
濱口 :Xperiaシリーズは「好きを極める」というキーコンセプトは共通していますが、ご指摘のとおりフラッグシップを冠する「1」とプレミアムレンジを担う「5」、ミッドレンジの「10」でそれぞれ機能や使い勝手を振り分けています。そのため、製品をお届けしたいユーザー像にもそれぞれの製品ごとに違いがあります。
濱口 :では「PROシリーズはどのようなお客様にお届けしたいと考えているのか」ですが、これもPROとPRO-Iでは少しづつ異なっています。
2月に発売しましたXperia PROで追求したのは「通信を究める」ということでした。Xperia 1 III(国内SIMフリーモデルは5G ミリ波には非対応)も同じく5Gのミリ波に対応したデバイスですが、Xperia PROでは4カ所にアンテナを配することで通信の安定化を図っています。
5G ミリ波とは
アップロード480Mbps、ダウンロード4.0Gbps(ともに理論値)の高速通信が可能な帯域。5G sub6の通信速度(理論値)がアップロード182Mbpsでダウンロード3.4Gbpsであるのに対して、特にアップロード速度に優れている。ただし、4G(理論値:アップロード75Mbps、ダウンロード1.8Gbps)と5G Sub6が壁や人、木、草といった障害物があっても電波が届きやすい特性を有するのに対して、5G ミリ波は電波指向性の面で直進性が強い特性があるため、障害物があったり端末の角度によっては電波が届きづらいという側面がある。
濱口 :5G ミリ波を安定的に捉まえて高速通信回線のメリットを最大限にいかすということが、いわばXperia PROをご使用いただくメリットであり、最大の特徴となっています。別の言い方をすれば、この特徴そのものがご質問へのお答えとなってきます。
――なるほど。Xperia PROはあくまでも通信に注力していて、機器間のハブとしての役割が強いということなのですね。ユーザー像についてもう少し詳しく教えていただけますか?
濱口 :スマートフォンの「通信」に注目したXperia PROですが、同時にHDMIで接続したカメラ機器の映像を表示するモニターとしての運用もできるようになっています。端末単体でもお使いいただけるのですが、やはり他のカメラ機器等と連携させることで真価を発揮するのがXperia PROの本質的な部分だと考えています。
濱口 :Xperia 1 IIIで実現した部分も多くあり、あえてXperia PROを選択する必要はない、とお考えになる方もいらっしゃるかと思います。ただし、先ほどもお伝えいたしましたようにXperia PROでは5G ミリ波を安定して使用できることに注力していますし、モニターとしての使用にもお応えできるよう、出荷時のキャリブレーション体制も整えています。そうした点からXperia PROでは、より厳密な色合わせや安定した機器運用を求められるプロユーザーから、報道等に携わっているジャーナリストやフォトグラファー、ビデオグラファーなどを主なユーザー像と考えています。
スマートフォンであることを最大限に取り込んだ「カメラ」
――Xperia PRO-Iが担うユーザー像というと、どのようなイメージなのでしょうか?
濱口 :Xperia PRO-Iは、繰り返しになりますがイメージングに特に注力したモデルとなっています。「撮る〜送る」というワークフロー自体はシリーズ通して共通していますが、より撮る体験に重きを置いた製品だと理解していただけるといいのかなと思います。
コンシューマー向けのイメージング機器に携わっていた時から感じていたことなのですが、RXシリーズはとても多くのお客様にご愛用いただいているのですが、その多くがサブカメラとして使われている、という印象がありました。
濱口 :「なぜRXシリーズを併用しているのか」に目を向けていくと、やはり「どこでも綺麗な写真を撮りたい・残したい」という想いがあるのだろうというところに行き着きます。35mm判フルサイズシステムはレンズ交換式もラインアップしていますが、どうしてもレンズ交換式になってくると、持ち出す時にちょっと気合が入りますよね。それに対してRXシリーズであれば通勤カバンに収まってしまうサイズ感です。
でもよくよく考えていくと、そうしたユーザーの方々は、きっとスマートフォンも使っていらっしゃるよな、と。そういった意味からもスマートフォンとRXシリーズをひとつにまとめることができたら、グッと利便性を向上させることができるだろう、と考えたわけです。
濱口 :お仕事的な話になってきますと、カメラ性能に優れたスマートフォンがあれば、例えば機材を持っていない通勤途中などで何らかの報道すべきシーンに出くわした場合でも、良好な画質でかつリアルタイムで情報を発信することができると思います。その意味でも普段ハイエンドなカメラ製品を扱っているユーザーに対しても利便性に優れたツールとして通信機能とカメラ性能を提供できるはずです。まずは、これが一つ目のユーザー像です。
位置づけとしては、セカンドカメラ的な役割を果たすことになりますが、常時ネットワークにつながっていて、かつ肌身離さず持ち歩くことになるからこそ、そうした咄嗟のシーンでもユーザーの期待に応えられる、というアドバンテージがあるということです。
――よく理解できました。カメラを携えていることが難しいシーンでもスマートフォンはポケットにある、という場面は確かに多くあります。
濱口 :まさにそこが二つ目のユーザー像となってくる部分となっています。カメラは小型化してきているとはいえ、やはりトータルでみていくと大きく重くなりがちです。自然とより小型のシステムを求めていく流れが生まれてくるわけですが、そうした層に本モデルをお届けしたい、という考えがありました。
大きな機材を持ち運ぶことが難しかったり、より小型のデバイスで写真や動画の撮影を楽しんでいきたいと考えている層ですね。そうした方々もきっと画質面では妥協したくないと考えているはずですから、きっと本モデルのような製品が刺さるだろうと思っています。
濱口 :続けて三つ目は、比較的若い層です。カメラを持つことには抵抗があるけれども、スマートフォンで「カメラ」に比肩する画質や撮影性能で撮れるのであれば、そうしたツールを使っていきたいと考えている方に、ぜひ手にとっていただきたいですね。
昨今のSNSの動向を見ていますと、写真だけでなく動画を用いたコミュニケーションも活発です。「カメラ」をわざわざ用意するほどでもないけれども、良好な画質が得られて使い勝手の良いカメラが欲しいと考えているユーザーに対して、本モデルが提供できる価値がきっとあるだろうと考えています。
関連アクセサリーで撮影体験を補完
――Xperia PRO-Iでは関連アクセサリーも充実していますが、これもSNSなどの撮影体験の底上げを狙ったものなのでしょうか。
濱口 :はい。スマートフォンのフロントカメラは、背面のメインカメラに比較するとまだまだ画質・性能面で劣ったものとなっています。スマートフォンによる自撮りというと、このフロントカメラを用いるのが一般的でしたが、私どもとしては、ぜひ自撮りも本モデルの1.0型センサー搭載カメラで楽しんで欲しいと考えました。
1.0型のイメージセンサーを苦労して搭載したということもありますので、私自身、ぜひこの24mmカメラで撮っていただきたいと思っていますし、その良さをまず実感していただきたいと思っています。
ですので、本モデルならではの取り回しのしやすさを活かして撮影を楽しんでいただけるように、との想いでモニターやグリップをご用意させていただいております。
濱口 :どうしても外づけのグリップというと持って歩く際の荷物が増えてしまいますが、やはり動画の撮影を考えると必要なアクセサリーになってきます。安定化という意味ではジンバル等を使用するのが一番とはなってきますが、それですと本モデルのコンセプトからズレてきてしまいます。
本モデル自体、カメラ側にも手ブレ補正機構を備えていますので、今回RXシリーズ向けに展開している三脚グリップに対応させたというわけです。広角での撮影となることもありますから、本モデルで動画撮影を楽しみたいと考えているユーザーニーズには、ある程度応えられるものと思っています。
細かなセッティングができるカメラアプリ
――本モデルも含めてなのですが、Xperiaシリーズは2019年4月に「1」を冠する製品として発表されたモデルから、10シリーズを除いて独自のカメラアプリを育ててこられています。「Photography Pro」と「Cinematography Pro」がそれですが、こうしたアプリ側も整っていなければ「カメラ」を名乗ることはできないと、個人的に考えています。そうした意味でも本モデルで「THE Camera」を宣言されたことは非常に象徴的なことだと感じました。
濱口 :ありがとうございます。まさにおっしゃるとおりで、ハードとソフトが双方備わってこそのXperiaだと考えています。
濱口 :Xperia 1 IIIで標準のカメラアプリをPhotography Proに統合しましたが、本モデルでも同じスタンスを継承しています。また、より表示やUIを簡略化したBASICモードも引き続き搭載しながらも、撮影意図や目的にあわせてカメラを細かくコントロールされたい方はもちろん、手軽に使いたい方にも応えられるよう、間口をひろくしています。
――Photography ProのUIはαシリーズユーザーにとっても馴染みのあるメニューとなっていますが、一方で初見でもあまり迷うことなく使えるインターフェースに仕上げられていると感じました。
濱口 :そう仰っていただけると我々としても嬉しいです。Photography Proの設計自体もXperiaシリーズを手にとっていただきたいお客様を常にイメージしながらつくりあげていきました。また設計自体もαシリーズと同じ部隊がつくっているとお考えいただければと思います。実際にXperiaのカメラ部分はαシリーズのエンジニアたちが手掛けています。
――同一のエンジニアたちが手がけられているとのことですが、画質設計などもこれまでの機種を参考にされているのでしょうか。本モデルならではのアプローチなどもあるようでしたら教えてください。
濱口 :画質面では忠実な再現性を重視した設計としています。これはαシリーズでも同様の方向性ですので、Xperia≒αというイメージが近いですね。
クリエイティビティをもっているユーザーに特に使用されることを想定していますので、それぞれのユーザーにとって使いやすい色再現性を重視しているというわけです。
――今回は動画撮影アプリのほうでルックが搭載されています。静止画のほうでも、例えば被写体別の画づくりモードであったり、Xperiaならではの画というのを見せていただける楽しみもあるのかなと思いました。
濱口 :ありがとうございます。これからのご意見として参考にさせていただきます。
これからの展開によせて
――特にPROラインに属する製品とはなっていますが、一方でXperiaシリーズの「核」になっていく製品なのではないか、という感想を抱きました。例えばXperia 1 IIIと同等の基本性能を有するという点でも、音楽体験やゲーム体験でも、Xperiaシリーズの届けたかった価値体験を集約しているのでは? と見ています。そうした捉え方でいえば、現時点でのXperiaシリーズの到達点、またはソニーからの回答のひとつ、とみることもできそうです。
濱口 :本モデルでは、本当にまっさらな気持ちでお客様がスマートフォンをどのように捉えられているのか、期待されているのか、といったことを見ていきました。そうした中で5Gへの対応といった高速通信というよりは、これも含めてだと思うのですが、本当にスマートフォンに色々なことを期待されているお客様が多いということが見えてきました。
そうした中でもカメラ性能は今、多くの方が求められているものだということを再認識いたしました。2010年代の頃は「カメラはソニー」と言っていただけるように、と切磋琢磨してきたのですが、今回モバイル事業に携わる中でデジャブというような感覚を覚えました(笑)。それもあって、「スマホのカメラでもソニー」と言われるようになりたいなと考えました。その意味で、本モデルではエポックメイキングな製品にしていきたいと考えました。
――到達点でもあり新たなスタートのはじまりでもある、というわけですね。常にワクワクさせてくれる製品を提示してくれるのはソニーという企業ならではですね。Xperia PROでもカメラ製品などとの連携させた運用というお話がありましたが、これからやっていきたいこと、目指していきたいことなどをお伺いしてもいいですか?
濱口 :今回、これまで育ててきたXperiaというスマートフォンのフォームファクターを崩す事なく1.0型センサーの搭載を実現できたわけですが、これはソニーの強みとしていたセンサーをはじめとしたイメージングの技術であったり、オーディオの技術、ゲームの技術などがあってこそだと思っています。
これからの製品展開に関する具体的な事をお伝えすることはできませんが、そうした核になっている技術とモバイル端末が強みとしてもっている通信を重ね合わせていくということを、更に推し進めていくことになろうかと思います。これらの技術や蓄積をひとつの製品やサービスに束ねていくということを、それこそ先ほどもお伝えしたように使命感として抱いています。
今回はモバイル側からの回答として本モデルを打ち出したわけですが、こういった商品やサービス展開は、今後もっと推し進めていかなければならないと考えています。
また新しい展開としては、SDGsの加速もグローバル企業に課せられた使命となっています。そこで本モデルでもプラスチックを使わないパッケージを採用しました。これはXperia 1 IIIのSIMフリーモデルでも取り入れている取り組みです。
――通信インフラも整備が進められているように通信を利用したサービスの展開はハードウェアの未来も拡張してくれているように思います。次はどのようなことができるようになるのか、個人的にも楽しみが多いです。
濱口 :本当に楽しくなってきていると思います。これまで電話機としての通信端末とカメラはある意味で分断されていましたが、やはりハードウェア側の進化により、それらが徐々にひとつにまとまってきています。
どこでも楽しめるエンターテインメント体験というのは、本当にたくさんあるな、と私自身も思っています。自分で考えただけでもワクワクする。それって色々なところにチャンスがあるということでもあるのだと考えています。
――カメラはカメラで、とカテゴリ分けしてしまうこと自体に可能性を狭めてしまう面があるわけですね。そういう意味ではカメラ製品も緊急用の記録領域を搭載するというのではなく、バッファメモリとは別にさらに高速かつ大容量のストレージを搭載することで撮影性能を拡げるといった未来も描くことができそうです。
濱口 :それは面白いでしょうね(笑)。
それにしても思うのは、昔やりたかったことが今、どんどん出来るようになってきている、ということです。高い品質の写真や動画を撮ってすぐにシェアできるワークフローをご提供できるようになりましたが、これまでは撮ってから、パソコン等に取り込んで、そこからブラウザなどを起ちあげて、さらに数ステップの手順を踏んでからでなければシェアはできなかったわけです。さらに以前に遡ると、そうしたシェアという行為自体が特別なものでもあったわけです。
そうした意味では、どんどん敷居を下げていきたいと思っています。手軽に、かつ簡便にやりたいことをサポートする製品やサービスを提供していく、ということですね。これもまた我々が使命と考えていることのひとつです。