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Xperia 5 III実機をハンズオン。Xperia 1 IIIとの違いから見えてきた「5 III」のポイント

ソニーAndroidスマートフォン「Xperia」シリーズの“フラッグシップレンジ”を担うモデル「Xperia 5 III」がNTTドコモ、au(KDDI株式会社)、ソフトバンクの各社から11月中旬以降に発売される。発売に先駆けて実機に触れる機会を得たので、Xperia 1 IIIとの違いを整理しながら、その特徴をお伝えしていきたい。

カメラの仕様はXperia 1 IIIと同等

Xperia 5 IIIはXperia 1 IIIの発表と同時に海外展開が報じられていたモデルで、基本スペックはフラッグシップモデルのXperia 1 IIIに準じた内容でまとめあげられている。SoCはQualcommのSnapdragon 888 5G Mobile Platformを採用。望遠カメラに70mmと105mmの屈曲光学系採用の切り替え式レンズ(ペリスコープ構造)を採用し、超広角16mmと広角24mmレンズを組み合わせた3眼構成とするなど、カメラ部も上位機譲りの性能を有している(各焦点距離は35mm判換算したもの)。

望遠側は105mmに切り替えることでデジタルズームで最大300mm相当の画角が楽しめる

各カメラ部のセンサーは24mmが1/1.7型を採用。16mmは1/2.5型、70/105mmは1/2.9型をそれぞれ採用している。画素数はいずれも12MPで統一。どのカメラで撮影しても同じように画像データを扱えることを重視するという、これまでの考え方に沿った仕様となっている。

またすべてのカメラにZEISSレンズを採用しているほか、Dual PDセンサーも全てのカメラに搭載。高速なAF動作を実現するとともに、特に24mmカメラでは秒間60回のAF演算処理によるリアルタイム瞳AFに対応。上位機のXperia 1 IIIと同じく風景からポートレートまで、幅広い撮影シーンに対応できることをポイントとしている。

カメラアプリ「Photography Pro」の操作画面。焦点距離は“日常で使いやすさ”を重視した設定。同社αシリーズ譲りの撮影性能を普段づかいのデバイスで楽しめることが大きな魅力となっている

実機外観

Xperia 5 IIIの海外モデルはグリーンとピンクの2カラーでの展開となっているが、国内版ではこれら2色に加えて、フロストブラックとフロストシルバーの2色が加えられている。4色すべてを選択できるのは、NTTドコモとauの2キャリア版。ソフトバンク版ではピンクを除いた3カラーが選択できる。

国内版限定のフロストブラックとフロストシルバーは、側面部のメタルフレームが艶消しで仕上げられているほか、背面ガラスもフロスト仕様となっている。

オプションとして各カラーにあわせたスタイルカバーもラインアップしている。少しザラつきを感じる表面仕上げで握り込んでも滑りにくさが実感できた。スタンドを用いることで、テーブル等に直置きする際にも見やすい角度で設置が可能だ。

さすが純正というべきか、背面メインカメラ部のクリアランスも見事な仕上がりだ。曲線にぴったりフィットしており美観が損なわれないところも嬉しいポイント。ある程度の深さもあるため、簡易的なフードとしての役割も期待できそうだ。

ボタン類は右側面に集中している。写真左側から音量調節ボタン、電源ボタン、シャッターボタンが並ぶ。シャッターボタンはツルリとした感触で、Xperia 1 IIIとは仕上げが異なっている。側面に丸みをもたせたボディデザインとのマッチングは高いが、独立シャッターボタンとしての使い勝手も気になるところ。このあたりは試用レビューに譲りたい。

Xperia 5 IIIのボタン配置
Xperia 1 IIIのシャッターボタン。凹凸のある綾目模様のパターンが施されている

左側面上部にはSIMおよびmicroSDカードトレイが配されている。直近で発売された Xperia 10 III LiteではeSIMへの対応が盛り込まれていたが、本モデルではeSIMは非対応となっている。

外部コネクタはUSB Type-Cを採用。このほか3.5mmオーディオジャックを備え、変換ケーブルなしで有線ヘッドホンを接続できる。充電しながらの有線接続によるオーディオ体験にも対応できる点は、同社のコダワリがよく表れている。

Xperia 1 IIIとの違いを整理

Xperia 1 IIIとXperia 5 IIIを並べてみた。両機ともにアスペクト比21:9の有機ELディスプレイを採用しているが、Xperia 1 IIIが約6.5インチであるのに対してXperia 5 IIIでは約6.1インチとなっており、その差の分長さが異なっていることが外観から見てとれる。

左からXperia 5 III、Xperia 1 III

参考までに外形寸法(約)を整理すると、以下のようになる。

Xperia 1 III:W71×H165×D8.2mm・約188g
Xperia 5 III:W68×H157×D8.2mm・約168g

どちらのディスプレイも120Hzでの駆動とHDR表示に対応しているが、Xperia 1 IIIは4K、Xperia 5 IIIではFHD+と、解像度に違いがある。また、Xperia 1 IIIでは出荷時にディスプレイの色ずれを個別に調整するなど品質管理にひと手間がかけられている点もポイント。より高い解像度を求めていたり、厳密に色を見たいという場合はXperia 1 IIIに分があるということになる。

両機ともに5Gに対応しているが、Xperia 1 IIIが5Gミリ波に対応しているのに対して、Xperia 5 IIIではSub6までの対応となっている。ミリ波の理論値がアップロード480Mbps、ダウンロード4.0Gbpsであるのに対して、Sub6の理論値はアップロード182Mbps、ダウンロード3.4Gbpsとなっているように、通信速度にも違いがある。もっとも5G通信対応エリアはまだまだ拡充が進められている段階のため、使用エリアによってはその差を明確に感じられない可能性もある。将来的なことはわからないが、現状では両機ともに5Gの高速通信をいかせる端末だと認識しておいても問題ないだろう。

カメラ部の性能も細かな点で違いがある。Xperia 5 IIIでは3D iToFセンサーが非搭載となっているのだ。AF/AE追従で最高約20コマ/秒の連写性能を備えている点は変わらないものの、Xperia 1 IIIと比べると暗所等でのAF性能を一歩譲ることになる。

Photography Proで撮影設定をしているところ。ドライブモードも高速側と低速側でそれぞれ選択することが可能となっている。なお、24mmカメラ以外では高速連写モードは選択できない。これはセンサー性能に依存するためなのだそうだ

α譲りのUIが使いやすいPhotography Pro

カメラアプリはXperia 1 IIIと同じくPhotography Proに統一されている。操作や設定のインターフェースは同社αシリーズやRXシリーズなどを使用したことのあるユーザーにはお馴染みの構成が引き続き採用されている。設定メニューはα1やα7S IIIなどで採用された色分けが採り入れられており視認性にも配慮されているほか、階層自体も深くないため、セッティング内容を把握しやすいところもポイント。通常のカメラ操作に慣れている人であれば迷うことなく操作できるだろう。

主要な設定は都度設定メニューを開くことなく変更が可能。AFモードのほか、ホワイトバランスやISO感度、アスペクト比、記録モードの変更などをタッチひとつで変えることができる。撮影画面も水準器や分割線の表示ができるなど、「カメラ」としての使い勝手に配慮したインターフェースとなっている。

静止画はRAWでの保存にも対応。ファイル形式はDNGを採用している。RAWとJPEGの同時保存にも対応している。

カメラアプリはPhotography Proに統合された。これにあわせて一般的なカメラアプリのシンプルなUI表示になるBASICモードが撮影モードから選べるようになっている。デフォルトではBASICモードで起動するが、もちろん各モードで起動するように設定を変更することもできる。

Xperia 5 IIIとはどのようなモデルなのか

フラッグシップモデルのXperia 1 IIIの基本性能を色濃く継承しつつ、ひとまわり小型化されたXperia 5 III。エッジ部が丸みを帯びたボディデザインや光沢調またはマット調のカラーデザインが選べることなど、常に持ち歩くデバイスなだけに、上位機譲りの基本性能とデザイン選択の幅が本モデルの嬉しいポイントだ。

特にボディデザインは角張ったタイプよりも柔らかくラウンドしているほうが手への馴染みが良いという人にとって、積極的に本機を選ぶ理由にもなりそうだ。

バッテリー容量についてみても、どちらも4,500mAhで同じ。メモリとストレージ容量はXperia 1 IIIのほうが強力(1 IIIはメモリ12GBでストレージ256GBの構成。5 IIIはメモリ8GBでストレージ128GB)だが、ゲーミングシーン等でそこまで求めない場合は、ディスプレイも120Hz駆動で共通しているため、Xperia 5 IIIで十分という人も出てくることだろう。

また音楽体験等の面でも、さまざまな音源を高音質で再生できるとする同社LDAC(エルダック)やDSEE Ultimate対応なども特徴。ソニー独自の立体音響再生技術「360 Reality Audio」を楽しめる点もポイントだ。

ネックになる要素としては5Gミリ波非対応の点が挙げられるが、現実的には利用できるエリアが限られるため、Sub 6との体感差を明確に得られるシーンの多寡はユーザー次第ということになる。自身の活用範囲が対象エリアに含まれているかどうかも機種選択のポイントになることだろう。

残る懸念材料は価格。本稿執筆時点でNTTドコモ版のXperia 1 IIIの支払総額は税込15万4,440円だ。Xperia 5 IIIの具体的な発売日と価格は未だ詳細が発表されていないが、価格差次第でその魅力は倍増していくことだろう。細かな使い勝手等については、稿をあらためてレビュー検証等にてお伝えできればと思う。

本誌:宮澤孝周