ニュース

キヤノン、積層CMOS搭載のミラーレス「EOS R3」を11月下旬発売。74.8万円

電子シャッターで最高30コマ/秒連写 AFの視線入力に対応

キヤノンは、ミラーレスカメラ「EOS R3」を11月下旬に発売する。価格はオープン。キヤノンオンラインショップでの販売価格は税込74万8,000円(ボディ単体)。

“プロスペックを実現したフルサイズミラーレスカメラ”として、シリーズ名にEOSデジタル初の「3」を冠した製品。動体撮影・動画撮影を行うユーザーを想定した機種で、電子シャッター撮影時に最高約30コマ/秒のAF/AE追従連写、動画では4K60pオーバーサンプリング/RAW 6K60pの内部記録、30分上限を廃して最長6時間の連続記録に対応するといった特徴を有している。

また、マグネシウム合金製の外装、プロ用一眼レフカメラのEOS-1D Xシリーズ同様という防塵防滴性能や、EOS -1D X Mark IIIと共通のLP-E19バッテリーを採用するといった信頼性もアピールしている。

外装はマグネシウム合金製
防塵防滴構造

積層CMOSセンサーを搭載

35mmフルサイズ・有効約2,410万画素の裏面照射積層CMOSセンサーを採用。EOS初の積層CMOSセンサーで、自社開発としている。映像エンジンはDIGIC Xを搭載する。感度はISO 100〜102400。拡張でISO 50相当とISO 204800相当も選べる。

イメージセンサー
メイン基板とDIGIC X
裏面照射積層イメージセンサーの構造

動画記録は最大で6,000×3,164(6K RAW)/59.94pに対応。ほかにも解像度は4K DCI、4K UHD、フルHDに対応する。4KおよびフルHDでは、119.88/100.00pのハイフレームレート記録も可能。

5軸のカメラ内手ブレ補正機構を搭載。レンズ内手ブレ補正機構を持たないレンズでも手ブレ補正効果を得られるほか、対応レンズではレンズ側の手ブレ補正と協調して最大でシャッタースピード8段分の補正効果が得られる。

センサーユニット
対応レンズのISと協調する手ブレ補正機構

連写/シャッター

メカシャッターで最高約12コマ/秒、電子シャッターで最高約30コマ/秒の撮影に対応する。ブラックアウトフリー撮影も可能。連続撮影には以下の3モードがあり、それぞれのコマ速は次の通り。

・高速連続撮影+:最高約12コマ/秒(メカシャッター、電子先幕)、最高約30コマ/秒(電子シャッター)
・高速連続撮影:最高約8.0コマ/秒(電子先幕)、最高約6.0コマ秒(メカシャッター)、最高約15コマ/秒(電子シャッター)
・低速連続撮影:最高約3.0コマ/秒(メカシャッター、電子先幕、電子シャッター)

連続撮影可能枚数は、JPEGラージ/ファインで1,000枚以上(CFexpress/UHS-II SDともに)。RAWはCFexpressで1,000枚以上、UHS-II SDで約290枚。RAW+JPEGラージ/ファインでCFexpressは1,000枚以上、UHS-II SDは約140枚。

シャッター速度は1/8,000〜30秒・バルブ(メカシャッター/電子先幕)。電子シャッターでは、最高1/64,000秒まで設定可能(Tv/Mモードのみ)。

シンクロ速度はメカシャッター時に1/200秒、電子先幕時に1/250秒、電子シャッター時に1/180秒。

シャッターユニット

AF

EOS R5/R6で搭載されたデュアルピクセルCMOS AF IIに対応。測距エリアは最大1,053分割。測距点移動には、既存のマルチコントローラーやメイン/サブの電子ダイヤル、タッチパネル入力のほかに、スマートコントローラーと視線入力が使える。

EOS iTR AF Xによる被写体追従は、EOS R5に比べてアルゴリズムが進化している。「人物」の撮影時は、顔や頭部を検出できない状況でのトラッキングを助けるという「胴体検出」を追加したほか、瞳検出の苦手シーン(横顔、顔の陰影、化粧、マスク装着時)に対する強化、冬季競技を意識した頭部検出の強化(ゴーグルやマスクで顔が検出できないシーンへの対応)を行ったという。いずれもディープラーニングを活用している。

また、新たにモータースポーツ(車、バイク)を対象とした「乗り物優先」を追加。対象となる被写体はフォーミュラカー、GTカー、ラリーカー、オンロードバイク、オフロードバイク。車とバイクを認識し、ヘルメットを検出するという。複数の車体を検出している場合は、マルチコントローラーで切り替え可能としている。

EOS R3 AFトラッキング 紹介動画① 【キヤノン公式】
EOS R3 AFトラッキング 紹介動画② 【キヤノン公式】

トラッキングの手順としては、1点AFやゾーンAFを使って被写体の一部を掴むようにしてAFするだけで、カメラが最適な追尾位置を判断して瞳検出AFや頭部検出AFに移行するという。

引き続き、「動物優先」も搭載。犬、猫、鳥を対象とした設定で、こちらはEOS R5と同性能だという。

視線入力

開発発表時に話題となった機能のひとつに「視線入力」がある。初搭載の「EOS5 QD」(1992年)では5点のAFポイントを選ぶのに使用したが、EOS R3では領域拡大AFやトラッキングとの組み合わせで、複数被写体を素早く切り替えたい場合や、AFフレームを頻繁に動かしたい場合に有効としている。

黄色い丸が視線入力のポインタ。被写体を掴んだところ
EOS R3 視線入力 紹介動画【キヤノン公式】

出荷時設定では、視線確定(AF対象の選択)はシャッターボタンの半押しに連動。追尾被写体としたい被写体を注視することでポインタが移動し、シャッターボタンの半押しでAFの対象が確定。カメラが最適な追尾を開始するという。

視線入力の利用にはキャリブレーションが必要。横位置、縦位置でそれぞれ複数回実施することが推奨されており、ユーザーごとに番号をつけて登録できるという。眼鏡と裸眼を使い分ける場合は、それぞれを異なる番号に登録する必要がある。また、撮影環境によって瞳孔の状態が変わるため、その場合は同じ番号で再度キャリブレーションすることを推奨している。

サングラスや、ミラー加工されているレンズ、遠近両用レンズの眼鏡では視線検出ができない場合があるという。また、ハードコンタクトも同様に視線検出できない場合があるとしている。

標準のアイカップ「ER-h」(カメラ同梱品)。EOS R5のアイカップより柔らかい素材だという。
視線入力用の大型アイカップ「ER-hE」(別売)。眼鏡装用時や、横などから光が入ってくる場合に視線入力精度を保つためのアイテム。360度のレボルビングに対応。
大型アイカップER-hEの装着イメージ

ファインダー/背面モニター

EVFは約576万ドット。倍率は約0.76倍。アイポイントは約23mm。

背面モニターは3.2型・約415万ドット。バリアングル式で、タッチ操作にも対応している。

バリアングル式の背面モニターを装備
一眼レフファインダーの見えを再現するという「OVFビューアシスト」も搭載

記録メディア/インターフェース

CFexpressスロットとSDカードスロット(UHS-II対応)を1つずつ搭載。動画撮影時には、同一書き込みでのバックアップや、「CFexpressにRAW動画、SDカードに4K/FHD動画を同時記録」といった使い方も可能としている。

アクセサリーシューは新規格を取り入れ、データ通信や電源供給といった本体との通信機能を拡張。対応製品として、ケーブル接続が不要のデジタルマイク「指向性ステレオマイクロホンDM-E1D」、電池不要で動作する「スピードライトトランスミッターST-E10」、外部ケーブル不要で有線接続できるスマートフォンホルダー「スマートフォンリンクアダプターAD-P1」のほか、TEACとの協業によるXLRアダプターが予定されている。

新規格のマルチアクセサリーシュー
指向性ステレオマイクロホンDM-E1Dの通信イメージ
スマートフォンリンクアダプターAD-P1の通信イメージ

なお、防塵防滴設計の既存アクセサリー(スピードライト上位機など)は、別売の「マルチアクセサリーシューアダプターAD-E1」を介してEOS R3に取り付ける必要があるという。

本体にモノラルマイクを内蔵。外部ステレオマイク端子を備える。

通信機能

Wi-Fi機能はIEEE 802.11b/g/n/a/acに対応。Bluetoothにも対応している。EOSミラーレスとして初めて、有線LAN端子も備える。GPS機能も搭載。

電源

対応バッテリーパックはLP-E19。ACアダプターとDCカプラーを組み合わせることでAC駆動も可能。

撮影可能枚数(14日20時追記)

ファインダー撮影時(なめらかさ優先表示・常温23度。以下同)で約440枚、背面モニター撮影で約760枚。

サイズ

外形寸法は約150.0×142.6×87.2mm。重量は約1,015g(バッテリー、カード込み)、約822g(本体のみ)。高さはEOS-1D X Mark III比で約15%低くなっているという。

EOS R3(左)とEOS-1D X Mark III(右)
「RF600mm F4 L IS USM」の装着イメージ
EOS R3紹介動画【キヤノン公式】
本誌:鈴木誠