20周年企画

デジタルカメラニュースの20年を振り返る/第20回(2023年)

現在進行形で活躍する注目モデルが続々登場

ご覧いただいている「デジカメ Watch」は、9月27日(金)にサイト開設から20周年を迎えることになりました。長らくのご支援・ご愛読に感謝を申し上げます。

20周年を記念し、各年の印象に残るニュース記事をピックアップして紹介する企画を連載しています。

今回はこの企画の締めくくりとなる2023年の記事を取り上げます。ここまでくると、もう昨年のことですから記憶に新しい話題が多いですね。現在進行形で業界をにぎわせているカメラがたくさん登場しました。

デジタルカメラニュースの20年を振り返る
https://dc.watch.impress.co.jp/docs/column/20th/

意外とたくさん出てました…今を時めく注目モデルたち

パナソニックは年明けに、フルサイズミラーレスカメラ「LUMIX S5II」を発表しました。LUMIXで初という、像面位相差AFを採用したモデルです。ハイエンドモデルのS1シリーズをコンパクトにした従来機「LUMIX S5」のコンセプトはそのままに、AF性能をはじめとして正統に機能向上を果たしており、多くのユーザーから高い評価を得ました。

面白いのは、より動画機能に特徴をもつ派生モデル「LUMIX S5IIX」も同時に発表したこと。こちらはボディのロゴ部分も黒く塗られているなど、不思議な魅力と存在感を携えておりました。今思えば、いずれもフルサイズ機でボディ単体30万円を切るわけですから、市況を鑑みるとかなりコスパの高いモデルではないかと……。

9月にマイクロフォーサーズ機の“静止画フラッグシップ機”と位置付ける「LUMIX G9PROII」が登場します。前出の像面位相差AFをLUMIX Gシリーズとしてはじめて採用しました。S5IIとの併用も考慮して、外観および各種操作部を共通のものとしたのは興味深い取り組みでした。

12月には、マイクロフォーサーズ機の「LUMIX G100D」を発表します。主にVlogg用途を見込んで企画された従来機の「LUMIX G100」でしたが、意外にも(?)スチール撮影に活用するユーザーが多かったとのこと。EVFの改良など、静止画機としての使い勝手を向上させたモデルとして登場しました。

2023年に入り、ニコンが最初に投入したのは“Z fcのブラックモデル”でした。プレミアムエクステリア張替キャンペーンなど特徴的な取り組みをしてきたカメラ。どうせ買うならお気に入りのデザインのカメラを選びたい、というシンプルな欲求に応えてくれています。

5月に登場した「Z8」は、フラッグシップカメラ「Z9」の機能を踏襲しつつ、そのボディを小型化させたとして大きな注目を集めました。HEIF記録にも対応し、10bitの諧調表現を可能としました。HDR静止画については、まだ見る環境を整えることにハードルがありますね。

そして11月には、“Z fcのフルサイズ版”のような「Z f」が登場します。クラシカルな見た目ではありますが、その撮影性能は最新機種そのもの。被写体検出や手ブレ補正など高い性能を確保したほか、6Kオーバーサンプリングの4K動画記録にも対応しました。このカメラに合うレンズ探しも、ユーザーにとっては大きな楽しみとなったでしょう。

フラッグシップカメラの「Z9」はこの年もアップデートを繰り返し、強化され続けています。また、2023年はNIKKOR レンズの発売90周年にあたり、記念ロゴも発表されました。

キヤノンは2月にローエンドモデルを拡充します。APS-Cミラーレスカメラの「EOS R50」です。ローエンドといっても、人物、動物、乗り物の認識に対応するなど、その撮影性能はさすがキヤノンといったところ。初心者におすすめできるカメラの候補です。

同日にはフルサイズミラーレスカメラの「EOS R8」も発表されています。「はじめてのフルサイズ」をコンセプトとした通り、小型軽量が特徴です。写真甲子園の取材時にお借りしたのですが、その軽快感はもはやフルサイズ機を使っている感覚ではなかったですね。

5月に登場した「PowerShot V10」は、キヤノンで初めて“Vlogカメラ”を標榜したモデルでした。キーワードは「スマホライク」。まさにスマートフォンのような感覚で扱えるのだけれども、本格的な撮影性能にもこだわって開発されました。Vlog向けとしたモデルは各社が趣向を凝らしているところですが、特に特徴的なこのシリーズの続編が気になるところです。

EOS Rシステムで最軽量を謳う「EOS R100」は、従来のEOS Kissシリーズのような役割を、RFマウントカメラとして担うことが期待されたモデルです。エントリークラスにRFマウント機の選択肢を増やすための位置付けとなっています。

そのほかキヤノンは、2月に「オンライン購入相談」を開始しています。直接ショップを訪れることが出来ない人でも、ビデオ通話スタイルによりスタッフのアドバイスが受けられるようになりました。EOS R5のロボットトイに続編が登場したことにも触れておきたいと思います。

ソニーは2月にレンズ一体型カメラ「DSC-HX99 RNV Kit」を発表しました。網膜に表示画面を直接投影することで、ビューファインダーが見えづらいロービジョン者でも撮影が楽しめるようにしたモデルです。2024年には全国の盲学校と視覚障がい者施設・団体に向けて、約200台を寄贈しました。寄贈式を取材したときに、カメラを受け取って撮影する子どもたちの笑顔が印象的でした。

VLOGCAMシリーズに初めてのフルサイズ機となる「ZV-E1」が登場します。リアルタイム認識AFに対応する「AIプロセッシングユニット」も搭載。その被写体追従性能を生かして、認識した被写体の動きに合わせて自動的に画面をクロップして構図を作る「オートフレーミング」機能が備わりました。

続く5月には、またしてもVLOGCAMが投入されます。今度はレンズ一体型の「VLOGCAM ZV-1 II」です。搭載レンズを従来モデル「ZV-1」の24-70mm相当から、18-50mm相当に広角化しました。

7月にはAPS-Cミラーレスカメラ「α6700」が発表されました。画像処理エンジンにこれまでフルサイズαのみに採用されてきた「BIONZ XR」を、APS-C機として初めて搭載。AIプロセッシングユニットも備えたほか、α6000シリーズで初めて「前ダイヤル」も搭載しました。

まだまだソニーの話題は終わりません。8月に“フルサイズ×コンパクト”のコンセプトで人気を博したα7Cに後継機が登場します。しかもスタンダードモデル「α7C II」と高解像モデル「α7CR」の2台同時でした。

まだあります。最後に真打の「α9 III」です。全画素を同時に露光できるグローバルシャッター方式の採用、AE/AF追従で最高約120コマ/秒のブラックアウトフリー連写の実現、ストロボ全速同調に対応、といったトピックは大きな話題となりました。カメラグランプリ2024でも選考委員のほとんどが票を投じたことは、このカメラの存在感の高さを物語っています。

富士フイルムは5月に「FUJIFILM X-S20」を発表しています。前モデルの「X-S10」は大きなグリップを備えた小型軽量のボディデザインが人気となりました。新モデルでもそれを踏襲しながら、画像処理エンジンにXシリーズ第5世代「X-Processor 5」を採用するなどの進化を見せました。

ラージフォーマットのGFXシリーズにも、新しいフラッグシップモデルとなる「FUJIFILM GFX100 II」を投入しました。1億200万画素のイメージセンサーを採用しています。ディープラーニング技術を用いたAIによる被写体検出AFを、同シリーズとしては初めて搭載。従来モデルよりAFの追従性を大きく向上させたとしています。グリップ部の新テクスチャー「BISHAMON-TEX」の響きがなぜか頭に残ります。

“チェキ”ブランドから登場した「INSTAX Pal」は、非常に印象深いカメラでした。液晶モニターすら持たない、まるで小さな和菓子のようなデザインが特徴的。アプリを介して、写真を楽しむ仕掛けがたくさん用意されていました。

同社は9月に、「チェキシリーズの世界的な需要増に対応するため」として、チェキフィルムの生産ライン増設を発表しました。神奈川事業所足柄サイトに約45億円を投じるとしています。

リコーイメージングには面白い動きがありました。2021年4月に発売したK-3 Mark IIIに、モノクローム専用イメージセンサーを搭載した「PENTAX K-3 Mark III Monochrome」を発表したのです。同社ファンイベントに端を発した企画だそうで、それを製品化にまで繋げたのは脱帽でした。

コンパクトデジタルカメラ「WGシリーズ」にも新モデルが登場しました。「PENTAX WG-90」は、これまで本体にあしらわれていた「RICOH」のロゴを、「PENTAX」に変更しています。

続いてもモノクロの話題です。4月にライカが「ライカM11モノクローム」を発表しました。ライカMデジタルのモノクロ専用機としては4世代目となるモデルで、「11年目に突入したモノクロームシリーズのサクセスストーリーを受け継ぐモデル」と謳っています。余談ですが、腕時計「ライカWatch」にもモノクロームエディションが加わっています。これがとてもカッコいい。

5月にはレンズ一体型の人気シリーズに新モデルを投入します。「ライカQ3」はイメージセンサーを前モデルの4,730万画素から6,030万画素に刷新。AFにも位相差検出方式を追加して撮影性能をさらに高めました。この高級機を前に、筆者はただ指をくわえて見ていることしかできませんでした。

「ライカ ゾフォート」に2016年以来となる後継機が登場しました。カメラ部分はデジタルになり、背面モニターを見ながらの撮影が可能になりました。さらには、スマートフォンアプリとの連携により“チェキプリンター”としても使えるようになり、楽しみ方の幅が広がっています。

10月に発表した「ライカM11-P」は、来歴情報の記録に対応した世界初のデジタルカメラとなりました。アドビが主導するコンテンツ認証イニシアチブ(CAI)の規格に基づいた「Leica Content Credentials」(ライカコンテンツクレデンシャル)を搭載。撮影者の氏名、撮影日、使用したカメラの機種、どのような編集が行われたかの履歴を記録できるというものです。

OMデジタルソリューションズは、レンズ一体型デジタルカメラ「OM SYSTEM Tough TG-7」を9月に発表しています。15mの防水性能や高い耐衝撃性能が特徴で、従来モデルから基本性能は継承しつつ、USB Type-C端子からのバッテリー充電やBluetoothリモコンに対応するなど使い勝手が向上しました。

遡ること2月に、同社は「OMデジタルソリューションズ 生産技術センター」を開設しました。場所は同社の研究開発拠点に近い東京都八王子市内です。光学レンズの企画・開発、難易度の高いレンズの研磨、成型、コーティング、接合、外観塗装といった工程を検証する施設です。

CP+が4年ぶりに…

「CP+」がパシフィコ横浜に帰ってきました。この年より、リアルイベントとオンラインの“ハイブリッド開催”が実現しました。こ業界にとっては1年で一番大きなお祭りですから、この熱気を毎年感じることができるよう、期待するばかりです。

本誌:宮本義朗