20周年企画

デジタルカメラニュースの20年を振り返る/第19回(2022年)

高解像モデルの盛り上がり メーカー各社の新しい取り組みも

ご覧いただいている「デジカメ Watch」は、9月27日(金)にサイト開設から20周年を迎えることになりました。長らくのご支援・ご愛読に感謝を申し上げます。

20周年を記念し、各年の印象に残るニュース記事をピックアップして紹介する企画を連載しています。

今回は2022年の記事を取り上げます。メーカー各社はコロナ禍を経て、ユーザーとの関わり方について大きく舵を切る必要があったようです。伝統的な名称の変更や、拠点の変更、オンラインでの対応などその動きは様々なものとなりました。

デジタルカメラニュースの20年を振り返る
https://dc.watch.impress.co.jp/docs/column/20th/

新製品と各社の動き

ライカカメラ社が年明けに発表したのは、デジタルレンジファインダーカメラの「ライカM11」でした。「ライカM10」以来5年ぶりとなるモデルチェンジで、撮影性能を向上させつつ、“フィルムライカ並みに軽くなった”点を訴求しています。

11月にはフィルムカメラの名器「ライカM6」を復刻。オリジナルを忠実に再現しつつ、パーツを刷新するなど随所に新しい要素を入れ、1984年から再び姿を現したことに多くのファンから歓迎されました。

スマートフォンの分野でも歩みを止めないライカ。5月にはシャオミとの共同開発を発表し、7月には「バリオ・ズミクロン 13-120mm F1.9-4.1 ASPH.」(3眼構成)を搭載した「Xiaomi 12S Ultra」をグローバルで発表しています。シャオミの“ライカスマホ”が日本に上陸するのはもう少し先のことになりますが、その撮影性能の高さはとても話題となりましたね。ライカ監修のスマートフォン第2弾「LEITZ PHONE 2」も、前モデルからさほど期間を開けることなく登場しました。

新会社となって走り出したOMデジタルソリューションズは、待望のフラッグシップカメラを2月に発表しました。「OM SYSTEM OM-1」です。その写りはこれまでマイクロフォーサーズに抱いていたイメージを一新するもので、業界内からは大変高い評価を持って迎えられました。

10月に発表された「OM SYSTEM OM-5」は、ペンタ部への記載に“OM SYSTEM”のロゴが初めて採用されました。小型・軽量の機動性を追求したモデルですが、5軸の手ブレ補正やOM-1と同等の防塵防滴を備えたほか、約5,000万画素の画像を生成する「手持ちハイレゾショット」を搭載するなどコンピュテーショナルフォトグラフィ機能も充実。本格的な撮影体験が得られるモデルとなっています。

このほかの動きとしては、オリンパスプラザ東京が2月に「OM SYSTEM PLAZA」に名称変更。会員プログラムは「OM SYSTEM MEMBERS」として新たに始動しています。

2021年に「LUMIX GH5II」を発売したパナソニックですが、2022年に入って2月には「LUMIX GH6」が登場しています。実はGH5II発表のタイミングで2021年内の発売がアナウンスされていたのですが、2022年にずれ込んだ形となりました。動画撮影に強みをもつGHシリーズですが、パナソニックはかなり力を入れている印象がありますね。約1億画素の記録が可能になるセンサーシフトを使った「ハイレゾモード」も搭載しているなど、静止画撮影性能も抜かりありません。

キヤノンは5月に、APS-Cミラーレスカメラをなんと2台同時に発表しました。「EOS R7」と「EOS R10」です。性能や価格帯できちんとすみわけされており、ユーザーの選択肢を豊富に用意してくる点に「キヤノンさん、さすがです」と脱帽しました。ハイエンド側の競争が激しくなりがちなこの世界ですが、エントリー側に入り口を増やしてくれる動きは本当にありがたいことだと思います(EOS R10のほう)。

11月にはフルサイズミラーレスカメラ「EOS R6 Mark II」を発表しました。EOS Rシリーズにおいては“スタンダード”に位置づけられる「6」の後継機ですが、従来機からセンサーを刷新し、連写やAF性能など高レベルに正常進化を果たし、隙のない1台となりました。

同社はこのほか、遡って1月にEOS R5をベースとしたデジタルシネマカメラ「EOS R5 C」も発表しています。CINEMA EOS SYSTEMの高い動画機能と、EOS R5の静止画機能を併せたハイブリッドモデルを謳っています。EOS R5関連では、タカラトミーとのコラボレーションでロボットトイが登場していたことにも触れておきたいと思います。

あともうひとつ、11月にデジタルカメラ関連ソフトウェア「Digital Photo Professional」(DPP)用のツールとして「Neural network Image Processing Tool」を発表しています。ディープラーニング技術の活用により、撮影画像をより“高画質”にするもので、その機能の一部は後に「EOS R5 Mark II」(2024年登場)のカメラ内にも搭載される流れとなりました。

富士フイルムにも大きな動きがありました。イメージセンサー「X-Trans CMOS」と画像処理エンジン「X-Processor」がそれぞれ第5世代に入り、それらを搭載したモデルが次々に登場しました。

まず最初は5月に登場した「FUJIFILM X-H2S」。フラッグシップモデルに位置づけられるX-Hシリーズの、さらにハイスピードモデルを意味する“S”が付されたモデルとなりました。最高40コマ/秒のブラックアウトフリー連写が可能となってます。で、9月には兄弟機の高解像度モデル「FUJIFILM X-H2」が登場するわけです。この流れは、2022年の中でも特に印象深い出来事だったように思います。

しかしそれでは終わらなかったわけでして、11月にはX-Tシリーズに新モデルとなる「FUJIFILM X-T5」が登場します。イメージセンサーには高解像機X-H2と同じX-Trans CMOS 5 HRを採用しました。富士フイルムらしい“3ダイヤルオペレーション”も健在で、翌年には受注が一時停止するほどの人気を博しました。

ニコンからは、ファインダーのないミラーレスカメラ「Z30」が発売されました。「Vlog with Nikon」をキーワードとした、まさに動画撮影を意識したモデルです。同じくAPS-C機のZ50をフラットトップにしたような出で立ちでありながら、動画記録時も瞳AFと動物AFを使えるようにした点など機能を一部強化しており、使いやすさはGOODな印象でした。描写性能に定評のあるZマウントレンズが存分に使えるので、静止画のサブ機として導入するユーザーもいたことでしょう。

同社はこの年から、Webサイトでの「チャット」サポートも開始しています。担当スタッフの有人チャットによる問い合わせサービスで、ユーザーからの問い合わせ窓口を増やした格好です。

Vlog向けカメラといえばソニー。2022年もVLOGCAMシリーズを更新しています。10月に登場した「VLOGCAM ZV-1F」は1型センサーを搭載するレンズ一体型カメラですが、35mm判換算24-70mm相当のズームレンズを備えた従来モデル「ZV-1」から、35mm判換算20mm相当の単焦点レンズに刷新しました。よりワイドな画角となり、自分撮りのニーズにこたえた形です。

フルサイズ機の「α7R V」が同じく10月に発表されています。αシリーズで初めて「AIプロセッシングユニット」を搭載し、被写体認識精度を大きく高めたモデルです。有効約6,100万画素の裏面照射型CMOSセンサーを採用し、“α史上最高の解像性能”で訴求しました。

9月に発売したハッセルブラッドの中判ミラーレスカメラ「X2D 100C」は、イメージセンサーを従来機の5,000万画素から1億画素に刷新したフラッグシップモデル。ボディ内手ブレ補正や、1TBの内蔵SSDの搭載、CFexpress Type Bの採用など使いやすさがブラッシュアップされました。

Z9のアップデートがすごい

新カメラの投入はZ30の1機種にとどまったニコンでしたが、前年に登場したフラッグシップカメラはファームウェアアップデートを重ねていきました。当サイトでもすべてを追えているのか不安になりますが、細かい修正だけでなく、大きな機能追加も果たしています。ニコンに限った話ではありませんが、購入後もカメラが進化していくというのは、ユーザーにとってもうれしいところですよね。

またZ9については、アドビとの連携も話題になりました。コンテンツ認証イニシアチブ(CAI)とのパートナーシップによって、カメラ機器としてはじめて「来歴記録機能」(いつどこでどのように撮影されたかを含む、画像の来歴情報を撮影時に写真に付与する機能)の実装に向けた取り組みが発表されています。

PENTAXの“フィルムカメラプロジェクト”が始動

年の瀬に突如として発表されたのはPENTAXの「フィルムカメラプロジェクト」でした。若年世代を中心に再燃しつつあるというフィルムカメラの盛り上がりをうけて始動したもので、当初は各方面からいろんな反応がありました。

プロジェクトは当然この発表の前から動いていたものと思いますが、それが2024年に入ってようやく製品化。かつての開発担当者などへのヒアリングを繰り返しながら、相当な苦労を重ねて開発を進めてきたそうです。フィルムカメラという文化が今後どうなっていくのか、その行方を左右する重要な動きとなったことは間違いないでしょう。

リコーイメージングの動きとしてはこのほか、新拠点となる「PENTAXクラブハウス」が7月にオープンしました。従来のリコーイメージングスクエアにかわる場所で、「お客様とつながる情報発信の場としての機能を加えつつ、修理受付窓口としてもご活用いただける新拠点」となっています。

GRのファンイベント「GR meet」は、「GR meet 47」と名前を変えて新たな全国行脚が始まりました。この時から現在に至るまで、各地を巡り続けています。昨今のGR人気は、こうした継続的な取り組みによるところも多分にあるでしょう。

ビデオ通話による「PENTAXオンライン相談室」も開設されました。メーカーとユーザーにおける双方向のコミュニケーションを強化することを目指した取り組みです。

CP+のトーク駅伝は語り草に

リアル会場での開催を模索していたCP+2022でしたが、ついにそれは実現しませんでした。2年連続でオンラインのみでの開催となりました。

その中で、後世に語り継がれるであろう「これをお見せするはずでした!新製品トーク駅伝」が開催されたのです。リアルイベントを開催するはずであったパシフィコ横浜のがらんとしたホールで、各社が工夫を凝らして製品の魅力を伝えました。この催しものはもう2度と見られることがないであろうと思うと、貴重な瞬間に立ち会ったなという気がします。

本誌:宮本義朗