20周年企画

デジタルカメラニュースの20年を振り返る/第18回(2021年)

各社ミラーレスカメラのフラッグシップが登場 APS-C機も門戸が広がる

ご覧いただいている「デジカメ Watch」は、9月27日(金)にサイト開設から20周年を迎えることになりました。長らくのご支援・ご愛読に感謝を申し上げます。

20周年を記念し、各年の印象に残るニュース記事をピックアップして紹介する企画を連載しています。

今回は2021年の記事を取り上げます。コロナ禍に翻弄されたカメラ業界の2020年ではありましたが、この年には新製品も各社から発表されており、明るい話題も多くありました。

デジタルカメラニュースの20年を振り返る
https://dc.watch.impress.co.jp/docs/column/20th/

ミラーレスカメラのハイエンドモデルが続々と

1月27日に、ソニーとして初めて「フラッグシップ機」を謳うミラーレスカメラが発表されました。α9シリーズのスピード、α7Rシリーズの高解像、α7Sシリーズの高ダイナミックレンジを集約したという「α1」です。

有効約5,010万画素のフルサイズセンサーで、約30コマ/秒のブラックアウトフリー連写を可能としました。電子シャッターながらローリングシャッター歪みを抑えた点を「アンチディストーションシャッター」と読んでいます。

当時のインタビューでその製品名について、「プロが“This is the one”と言ってくれるカメラ」を目指したと語られています。唯一無二、オンリーワン、これからの一歩、を意味する「1」。そこから今に至るまで、歩みを止めないソニーの強さは皆さんもご存じのとおりでしょう。

ニコンからは3月にミラーレスカメラ「Z9」が発表されています。ニコンZマウント機として初となるフラッグシップモデルです。35mmフルサイズの積層型CMOSセンサーを新開発し、静止画および動画ともに過去最高の性能を目指して開発が進められました。

ハイスピードフレームキャプチャ+を使えば、AF/AE追従で約120コマ/秒の静止画撮影が可能となります。また、EVFは「Real-Live Viewfinder」と名付けられ、その見心地はとてもクリアで高い評価を得ました。「ミラーレスカメラのファインダーもここまで来たか……」と耳目を集めたのは記憶に新しいところです。「Z9」はその後、2021年内ぎりぎり、12月に発売されました。

4月にはキヤノンがミラーレスカメラ「EOS R3」の開発を発表しています。こちらはEOSデジタル初の「3」を冠した新しいラインのカメラ。フラッグシップのポジションとはなりませんでしたが、当時ミラーレスカメラの最上位機だった「EOS R5」の上に立つ存在として登場しました。

イメージセンサーに同社の自社開発という、フルサイズ裏面照射積層型CMOSをEOSで初めて採用。画像処理エンジンにはDIGIC Xを搭載し、電子シャッター時には最高30コマ/秒のAF/AE追従撮影を実現しました。

ファインダーをのぞいた瞳の動きを検知する「視線入力」を搭載したことでも話題を呼びました。同じ年の11月に発売しています。

前出の3機種と同じフルサイズフォーマットのカテゴリーでは、シグマから「SIGMA fp L」が登場しました。2019年発売の「SIGMA fp」(2,460万画素)と異なる、有効約6,100万画素のベイヤーセンサーを搭載した高画素機です。外観デザインなどはそのままに、「fpシリーズ」に新たな選択肢を追加する1台と位置付けられました。

このSIGMA fpシリーズは現在でも根強い人気を誇り、「売れ続けている」モデルだとのこと。同社の山木社長が「こんなカメラが欲しい」とノートにスケッチしたところから始まった企画で、毎日カバンに入れて持ち歩けるフルサイズのカメラであるという、社長自身のニーズがユーザーにも受け入れらました。

12月には、ソニーから「α7 IV」が登場しました。キーワードとして掲げられたのは「次代の、新基準へ(Beyond Basic)」。静止画および動画撮影をするユーザーを意識しており、従来機で有効2,420万だった画素数を、有効3,300万画素に向上した裏面照射型CMOSセンサーを新開発して搭載しました。海外では一足早く、10月に発表されています。

APS-C機のラインアップも拡充

盛り上がりを見せるフルサイズ機ですが、APS-Cフォーマットのカメラたちも負けていません。

1月には、富士フイルムから「X-E4」が発表されています。フラットトップを採用し従来機からグリップも廃したデザインは、そのボディにより洗練された印象を植えつけました。イメージセンサーおよび画像処理エンジンには、Xシリーズの第4世代デバイスを搭載しています。

X-E4はとにかく人気で、すぐに買えなくなったことを覚えています。購入を迷っていた筆者もそのひとり。そして今はすでに生産終了になっていますから、人気でありながら短命だったということですね。後継機を待ち望んでいるユーザーも多いのではないでしょうか。迷っている暇はないということを学びました。

そして富士フイルムは秋口に「X-T30 II」を投入しています。X-Tシリーズでは中位となる二桁番台ですが、こうしたリニューアルは歓迎されるべき動きといえるでしょうか。

X-T30 IIは、上位機種のX-T4と同等まで動画撮影性能とAF性能を高めたというモデル。価格がこなれていたため、ユーザーにとってはいい選択肢だったといえるかもしれません。2024年の振り返りで登場するであろう後継機は、価格面で悩ましさがあるのは否めない感じでした。

そのクラシカルなデザインで大きな注目を集めた「Z fc」は、2021年の7月に登場しています。フィルム一眼レフカメラ「ニコンFM2」(1982年)の象徴的なデザインを受け継いだというこのモデルは、往年のファンからエントリーユーザーまで広い層から支持を得ています。

擬革の張替サービスも話題となり、ひとえにZ fcユーザーといえど、それぞれに個性的なカラーのボディを首から下げているユーザーをよく見かけました。製品名の由来は「融合」をあらわす「f(Fusion)」と、ニコンの歴史を象徴する「f」、カジュアルの「c」だそう。

レンズ一体型カメラで不動の人気機種も、この年に派生モデルが登場しました。GRシリーズでメインとなる画角の“28mm相当”から、“40mm相当”のレンズに変更しています。GR IIIシリーズはファームウェアアップデートも頻繁にあり、今もなお人気が高く、現在は入手が困難になっていますね。こちらも、後継機が気になるところです。

このページで3度目の登場となったのはソニー。Vlog撮影用途を企図したVLOGCAMシリーズに、レンズ交換式となる「VLOGCAM ZV-E10」を投入しました。

レンズ一体型カメラで1型センサーを採用した従来機「ZV-1」から、ユーザーの選択肢を大きく広げた格好となりました。VLOGCAMシリーズは、このZV-E10にもいまや後継機が登場しているなど、そのラインアップの拡充は止まりません。今後も注目のシリーズといえるでしょう。

ラージフォーマットに注力する富士フイルム

APS-C機ではありませんが、富士フイルムはこの年にさらに2機種を投入しています。1億画素を誇る「GFX100S」と、5,000万画素センサーを搭載する「GFX50S II」のラージフォーマットモデルです。

いずれも同シリーズの“高画素”を踏襲しながら、デバイスの刷新などによりスピード性能や手ブレ補正の効果を向上させるなどして、その価値をより高めました。GFX機はこの後も、後継機の登場により進化し続けることになります。

マイクロフォーサーズの動きは?

マイクロフォーサーズでは、「LUMIX GH5II」と「OLYMPUS PEN E-P7」が登場しています。

特に後者は、オリンパスの映像事業がOMデジタルソリューションズに移ってから初となるカメラ新機種でした。OMデジタルソリューションズはオリンパス映像事業を分社化したもので、この年の1月より事業を開始しています。

このモデルでは「OLYMPUS」の名が残りましたが、その後に登場するカメラは新たな「OM SYSTEM」ブランドを掲げています。

その他のカメラも話題が豊富に

キヤノンは1月に新コンセプトカメラの「PowerShot PICK」を発表しました。当初はクラウドファンディングサイトのMakuakeでプロジェクトを開始したのですが、受付け開始から4日間で1億円を達成し、当時の最速記録を更新しました。

カメラ自身が人の顔を見つけ、映像の変化を判断してシャッターを切ったり録画をしたりするというもので、家族の思い出を切り取ってくれるカメラとしてアピールされました。レンズがクルクルっと動く様子がとても可愛らしく、印象に残っています。キヤノンのこうしたチャレンジングな製品は、今後も楽しみにしているところです。

「ライカ監修」というのはヒキの強いワードですよね。5月にシャープから、スマートフォン「AQUOS R6」が登場。1型センサーと、19mm相当F1.9のズミクロンレンズを搭載した点がトピックとなりました。

そして6月には、そのライカ自身がスマートフォンを発表。「Leitz Phone 1」は、ライカの血を継いだその高級感あふれる外観デザインなど、多くの注目を集めました。

CP+は新しいカタチに

昨年、新型コロナウイルスの影響により中止となった「CP+」は、オンラインイベントという新しい形態をもって開催されました。CP+事務局は、イベント終了後にオンライン会場への参加者数を発表しています。

こうしたイベントの醍醐味は、もちろんリアルな場で実際に製品を手に取ってみたり、スタッフと直接コミュニケーションをとれることにあるでしょう。しかしリアルの場は持たずとも、各社の熱い思いを感じることはできるのだと思いました。

このイベントは、この後“リアル+オンライン”というさらに新しいカタチへと発展していきます。誰かの熱い思いと工夫によって、大事な場所が続いていくのだと痛感した出来事となりました。

本誌:宮本義朗