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SIGMA 35mm F2/65mm F2 DG DN|Contemporary

年内発売の2本を先行チェック マグネット式レンズキャップ/ホルダーも

シグマは12月1日、ミラーレスカメラ専用設計のDG DNシリーズに属する交換レンズ3製品を発表した。実機(Eマウント用)を拝見する機会を得たので、以下サイズや質感、新たなギミックについてお伝えしていきたい。

Iシリーズとは

今回新たに発表されたレンズは、24mm F3.5、35mm F2、65mm F2の3本で、いずれもContemporaryラインであることを示す名称が製品名に含まれている。

外観からもわかるように、2019年7月に発売された「SIGMA 45mm F2.8 DG DN|Contemporary」の流れを汲むデザインとなっており、同日付でライブ配信された映像では、同社代表取締役社長の山木和人氏により、この45mmと新たに発表された3本のレンズを、あらたに「I」シリーズとして展開していくという考えが示された。

新シリーズのコンセプトは、ミラーレスカメラに期待されている「システム全体を小型・軽量にできること」を最大限引き出すことと光学性能の追求、そして確かな品質としての“ビルドクオリティ”各要素の融合。これらによって「ミラーレスシステムに新たな価値を提案する」レンズシリーズとして展開していきたいとしている。

また繰り返し強調されたポイントがビルドクオリティの追求だ。同社ならではの品質を追い求める姿勢を製品に反映することで、価格をこえた品質により、モノとしての満足感を高めること。そうして“所有する喜びを追求”した製品を生み出すことで、ユーザーに選ばれるレンズであることを目指していくという。

最近の同社製品で度々目にし、耳にしてきた“ビルドクオリティ”が、より明確化されたのが、今回の「I」シリーズということでもあるわけだ。同日付で公開されたIシリーズのスペシャルコンテンツページでは、「I」シリーズについて「道具としての品質、扱う中で感じる感触、そして所有すること自体の喜びに至るまで熟考し、形にした」製品だと紹介している。

この新しいシリーズ展開によせて、同社は「I」シリーズはあくまでも新シリーズというわけではない、と明言している。Art、Sports、Contemporaryの3ラインによる製品展開の中で、前記したような光学品質やモノとしての魅力・品質などにこだわった製品が、今後も登場してくるということなのだろう。

「SIGMA I series Concept Movie」より

45mm F2.8|Cからの外観上の変化点

今回、実見することができた製品は、35mm F2と65mm F2の2本だった。さっそく両レンズの姿を、と言いたいところだけれども、あらためて両レンズのポイントをおさらいしておきたい。

ローレットパターンが施された金属製のフードや、同じく金属製でフードとはピッチの異なるローレット加工がほどこされたピントリング、数値刻みが刻印された絞りリングなど、意匠の多くは45mm F2.8|Cに準じたデザインとなっている。

だが、全く同じかというとそうでもない部分も多数見つけることができる。

まず、ピントリングと絞りリングの中間位置にある鏡筒デザインだが、最短撮影距離や生産国を表示している部分に段差を設けるようにして、カバーリングが配されている。この部分には各リングや鏡筒と同じように金属素材を用いながらも、ブラスト加工やヘアライン加工を施すことで、操作性とデザインの両立を図っているという。ちなみに両製品の絞りリングは、デクリック機構は備えていない。

また、AF/MFの切り替えスイッチも新たに設計したものだとしており、円弧形状に。この形状にしたことで、ストロークを長くとることが可能となっているほか、無電解ニッケルメッキ処理を施すことで、滑らかな摺動操作も実現しているという。

35mm F2 DG DN|Contemporary

小型かつ軽量で気軽に持ち歩けるサイズ感に抑えることで、狭い場所や大きなカメラを出しづらいシーン、スナップなどでの使い勝手で訴求している製品。

ソニーα7R IVと組み合わせたところ、小柄なα7シリーズのボディの“小柄さ”を強調しないサイズ感という印象。純正のEマウント用35mm単焦点レンズには、Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA(SEL35F14Z)、FE 35mm F1.8(SEL35F18F)、Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA(SEL35F28Z)がラインアップしている。F値が明るい方から列記してみたが、まさに大中小というサイズ感となっている。

本製品の外形寸法は全長67.4×最大径70mmで、重量325g(Eマウント用の数値)となっており、仕様上では真ん中のFE 35mm F1.8(全長73×最大径65.6mm・質量280g)に近い数値となっている。

参考:FE 35mm F1.8(実勢価格:税込7万4,000円前後)
参考:Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA(実勢価格:税込22万円前後)
参考:Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA(実勢価格:税込8万2,000円前後)

本製品では絞りリングを有していることから、絞り値をダイレクトに操作することが可能となっている。絞り操作を無音化するデクリック機構は備えていないものの、「A」ポジションにすることで、ボディ側での絞り操作が可能。動画撮影であったり配信での使用でも問題なく利用できそうだ。

一方、Lマウント用の35mmレンズに目を移すと、Lマウントアライアンス3社のミラーレス専用設計レンズでは、ライカ「APO-SUMMICRON-SL F2/35mm ASPH.」とシグマの「35mm F1.2 DG DN|Art」があるのみ。パナソニックが開発を報じているF1.8単焦点シリーズの35mmは、詳細が不明な状態にある。SIGMA fpやLUMIX S5運用時に軽量性であったりハンドリングの良い35mm単焦点レンズを求めている人にとっては有望な選択肢となりそうだ。

参考:APO-SUMMICRON-SL F2/35mm ASPH.(実勢価格:税込66万円前後)
参考:SIGMA 35mm F1.2 DG DN|Art(実勢価格:税込15万2,000円前後)

[2020.12.2追記]記事初出時、Lマウント用35mmで35mm F1.2 DG DN|Artが欠落しておりました。お詫びして訂正いたします。

そのほかのアングル

正面
背面側から斜め俯瞰
天面

65mm F2 DG DN|Contemporary

Eマウント、Lマウントともに、現行製品ではあまり例のみられない焦点距離の1本。同社は「古くから玄人好みで、映画用レンズでも選ばれる焦点距離」だと説明しており、スナップやポートレートなどでの利用に向くとしている。

組み合わせているボディは、35mm F2と同じくソニーα7R IV

描写面に関しては、球面収差による柔らかなボケが特徴だとしており、キレのある描写とボケ味の美しさを両立していると説明している。

Eマウント用の65mmレンズというと、コシナ・フォクトレンダーブランドの「MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical」が記憶に新しいところ。Lマウント用では、ライカ「APO-SUMMICRON-SL f2/75mm ASPH.」が近い焦点距離の製品ということになる。実質、EマウントおよびLマウントともにAF対応の焦点距離65mmのレンズとしては唯一といっていい選択肢になりそうだ。75mmでは長く、50mmでは短いと感じていた人であったり、ポートレートで85mmよりも、ちょい広めの中望遠レンズを探していたという人にとって、有望な選択肢となりそうだ。

参考:MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical(実勢価格:税込10万8,000円前後)
参考:APO-SUMMICRON-SL f2/75mm ASPH.(実勢価格:税込63万8,000円前後)

そのほかのアングル

正面
正面側から斜め俯瞰
天面

マグネット式のレンズキャップも

今回あらたに発表された、35mm F2および65m F2の両レンズには専用のマグネット式メタルキャップも同梱される。別売のオプション扱いとなっているものの、カラビナつきのキャップホルダーも展開。脱着をくりかえすことでバネやツメが劣化したり、紛失もしやすいキャップの扱いにおいて、新しい提案となっている。

35mm F2 DG DN|Contemporaryに装着した状態
中央部で少しくびれたデザインで、装着と脱着時の指がかりがよい

取り付け方法は各レンズのフロントリング部分に装着するというもの。マグネットはしっかりとした吸着具合で、多少ぶつける程度では外れない強度となっている印象。モノとしての品位も、滑らかな表面仕上げが施された金属製となっているためか、実に気持ちのいい仕上がりとなっている。

マグネットによるキャップ装着に配慮しているためか、レンズのフロントリングはレンズ名の刻印等もみられないプレーンなデザインとなっている

キャップの径は各レンズに応じたサイズ(62mm:65mm F2用と58mm:35mm F2用)となっている。ちなみにキャップホルダーはどちらの径のキャップにも対応する。

62mm径のキャップとキャップホルダー。ホルダーは銀色の面が装着面
キャップホルダーに装着した状態
キャップホルダー裏側。こちらは艶感のある黒色仕上げとなっている

メタルキャップの装着面は、金属同士が擦れあうことで傷つくことを防止するためだろう、別珍風の生地が貼り付けられており、ひじょうに丁寧な仕上げとなっている。こうした細部へのコダワリもまた、「I」シリーズのコンセプトを体現しているわけだ。

本誌:宮澤孝周