ラインナップ解説

キヤノン(2022年冬)

フルサイズ最上位機「EOS R3」、APS-C機「EOS R7」など

レンズ交換式デジタルカメラの主役となって久しいミラーレスカメラ。ラインナップの拡充が続く各社のミラーレスカメラをまとめました。

ミラーレスカメラ市場への参入が大手ではもっとも遅く、しかもスロースタート感も濃厚だったにもかかわらず、今やシェアトップを争うまでの急成長ぶりを誇るキヤノン。

参入当初はAPS-CサイズのEF-Mマウントだけだったが、2018年からはフルサイズに対応するRFマウントを採用。2022年にはAPS-Cサイズ機も登場している。

EOS R3(RFマウント・35mmフルサイズ)

2021年11月27日発売

概要

現行ラインナップでは最上位となる縦位置グリップ一体型モデル。同社初の裏面照射積層CMOSセンサーを搭載し、電子シャッターで最高30コマ/秒のブラックアウトフリー連写を実現している。

また、かつてフィルム一眼レフ時代に「迷機能」とも揶揄された視線入力を最新技術でリファイン。快適なAF撮影を実現しているのも特徴だ。

センサーとエンジン

高感度に有利で処理速度が速く、動体歪みも少ないのが強みの裏面照射積層型CMOSセンサーはフルサイズ有効2,410万画素。画像処理を受け持つ映像エンジンにはDIGIC Xを搭載する。

静止画撮影時は1.6倍クロップが可能。このときは約930万画素記録となる。

常用感度はISO 100〜102400。拡張感度としてISO 50相当、ISO 204800相当が設定できる。

手ブレ補正

手ブレ補正はカメラ側と交換レンズ側を併用する。補正効果は最大8段分で、現行ミラーレスカメラでは最強のスペックだ。

ちなみに、フルサイズ対応のRFレンズ29本のうち、22本が手ブレ補正機能を搭載している。

AFと連写

撮像センサーの画素の受光部を2分割にして全画素で位相差検出を可能にしたデュアルピクセルCMOS AF IIを搭載。画質劣化なしで画面全域をカバーしている。

ピントを合わせたい部分を見つめることでAFフレームを移動させられる視線入力機能を搭載。さらに、人(顔、瞳、頭部、胴体)、動物(犬、猫、鳥)、乗り物(自動車、バイク)に対応する被写体認識を組み合わせることで、自由度の高いピント合わせが可能となっている。

連写最高速はメカシャッターで12コマ/秒。電子シャッターでは30コマ/秒のAF/AE追従撮影が可能。連写中もライブビューが途切れないブラックアウトフリーとしている。

また、ファームウェアVer.1.2.1以降を適用するとピントと露出は固定となるものの最高195コマ/秒という超々高速連写も選択できる。

動画

動画は6K RAW(6,000×3,164)・59.94fpsをカメラ単体で実現。クロップなしの4K記録時は6Kデータから高画質な4Kデータを生成する6Kオーバーサンプリングプロセッシングを行なう。

連続記録時間を最長6時間に延ばしたほか、6K RAW+MP4同時記録など、プロの使用にも耐えるハイスペックとしている。

外部マイク、ヘッドホン端子を備えるほか、マルチアクセサリーシュー対応マイクも用意されている。

電源

使用バッテリーは大容量のLP-E19(10.8V・2,700mAh)。パフォーマンス重視の「なめらかさ優先」でファインダー撮影の場合は440枚、モニター撮影時で760枚の静止画撮影が可能だ。

付属の充電器LC-E19は2本のバッテリーを順次充電できる仕様で、フル充電には2時間50分かかる。なお、単品のLP-E19は税込2万2,000円で購入できる。

また、別売のUSB充電アダプターPD-E1(税込1万4,300円)を使うとUSB Type-C端子経由で本体充電が可能となる。複数のバッテリーを短時間で充電したい場合には導入を検討するといい。

その他

記録メディアはCFexpress Type BとSD(UHS-II対応)のデュアルスロット。内蔵EVFは576万ドットOLED(有機EL)で、倍率は0.76倍。一眼レフに近い見え方を再現するOVFビューアシスト機能も備える。背面モニターは3.2型、415万ドットのバリアングル式だ。

デジタル端子を備えたマルチアクセサリーシューを装備。対応するスピードライトのほか、指向性ステレオマイクロホンDM-E1D(税込3万7,500円)やスマートフォンリンクアダプターAD-P1(税込8,780円)が利用可能。また、ティアック社製のXLRマイクアダプターにも対応している。

ボディ外装はマグネシウム合金製で、各部のシーリング部材やOリングなどによって防塵・防滴構造。また、ファインダー部にGPSを内蔵している。

EOS R5(RFマウント・35mmフルサイズ)

2020年7月30日発売

概要

名前のとおり、一眼レフのEOS 5Dと同じクラスとなるフルサイズ機。新開発の撮像センサーとDIGIC X、RFレンズの性能が合わさったことでEOS史上最高の解像性能を実現している。

また、EOS初のボディ内手ブレ補正や8K動画といったハイスペックも見どころだ。

センサーとエンジン

撮像センサーは自社開発・自社生産の有効4,500万画素CMOSで、ローパスフィルターあり仕様。映像エンジンには最新スペックのDIGIC Xを搭載する。

多画素ながら、常用感度はISO 51200まで、拡張感度ISO 102400まで設定できる。

手ブレ補正

キヤノンでは初となるセンサーシフト式の手ブレ補正機能を内蔵。長らくレンズシフト式に固執してきたのが一転。世界最強レベルの8段分という補正効果を達成した。

RFレンズの多くに搭載されているレンズシフト式補正と協調制御することで、それぞれの弱点をカバーし合う仕組みだ。ただし、一眼レフ用のEFレンズ装着時は協調制御は行えない。

AFと連写

AFは全画素で位相差検出が可能なデュアルピクセルCMOS AF II。EOS iTR AF Xによる被写体認識機能を備える。

対応被写体は犬、猫、鳥で、瞳、顔、全身の検出が可能。ファームウェアVer.1.5.0で乗り物優先が追加され、自動車やバイクの検出が可能となった。人物に対しては瞳、顔に加えて後ろ姿にも対応する頭部検出が可能になった。

連写最高速はメカシャッターで12コマ/秒、電子シャッターで20コマ/秒と、多画素機としては高いスペック。書き込みが速いCFexpressカードを使えばJPEG(ラージ・ファイン)で350枚、RAWで180枚の連写が可能だ(メカシャッター時)。

動画

動画は8K DCI(8,192×4,320)・29.97fps。カメラ単体で12bit RAW記録にも対応する。ただし、センサーやエンジンの発熱の関係で8Kで20分、4K・59.94fps(クロップ)で25分までという制限がある。

外部マイク端子、ヘッドホン端子なども備えている。

電源

バッテリーは従来のLP-E6Nより容量が265mAh増したLP-E6NH(7.2V・2,130mAh)を採用。撮影可能枚数は「なめらかさ優先」設定時で220枚(ファインダー撮影時)と少なめだが、「省電力優先」設定とエコモードを併用すると700枚となる。

予備のバッテリーは用意しておいたほうが安心だが、単品のLP-E6NHは税込1万2,100円とやや高めに感じられる。

PDF版の詳細ガイドには充電時間は「約2時間30分」と記載されているが、同じバッテリーと充電器を使用するEOS R6 Mark II、EOS R7の詳細ガイドでは「約3時間」に変更されている。充電時間を短縮したい場合は単品でLC-E6(税込6,050円)を追加するといい。

なお、別売のバッテリーグリップBG-R10(税込3万6,300円)を装着すると、2本のLP-E6NHを装填でき、撮影可能枚数も2倍にできる。

その他

ボディ外装は堅牢で放熱性の高いマグネシウム合金製。防塵・防滴構造を採用している。

EVFは576万ドットのOLED(有機EL)。ファインダー倍率は0.76倍。バリアングル式の液晶モニターは3.2型で210万ドット。

RFマウント初号機のEOS Rではサブ電子ダイヤルが上面に移動したが、本機では背面にホイール型のサブ電子ダイヤルも追加。一眼レフEOSに慣れた人にあつかいやすい操作系としている(これはEOS R3も同じ)。

EOS R6 Mark II(RFマウント・35mmフルサイズ)

2022年12月15日発売

概要

EOS R6(2020年8月発売)の後継となるモデル。フルサイズのスタンダード機として標準的な2,400万画素へのスペックアップのほか、AFの被写体認識の強化や連写スピードの高速化など、さまざまな部分で大きく進化している。

センサーとエンジン

撮像センサーは新開発の有効2,420万画素CMOS。スタンダードタイプのフルサイズ機で標準的な画素数となった。映像エンジンは引き続きDIGIC Xを搭載する。

シャープネス処理の変更も相まって、一眼レフのEOS 5D Mark IVをしのぐ解像性能を達成している。

多画素化しているものの、感度の上限は先代EOS R6と同じ。常用ISO 102400、拡張ISO 204800まで設定できる。

AFと連写

AFは画面全域をカバーするデュアルピクセルCMOS AF II。EOS R6よりもAFスピードを向上させている。

被写体認識機能が強化されているのが見どころのひとつ。動物優先では犬、猫、鳥に馬が追加、乗り物優先は自動車/バイクに鉄道と飛行機が追加された。人物と動物の瞳検出では新しく「右目優先」「左目優先」が選べるようにもなった。

また、検出する被写体をカメラが選んでくれる「自動」が追加。複数の種類の被写体が混在しない条件ではあらかじめ被写体を指定する手間を省けるのがメリットだ。

連写最高速は、メカシャッターの12コマ/秒は従来どおりだが、電子シャッターでは20コマ/秒から40コマ/秒に向上。もちろん、AFやAEも追従する。

ただし、バッファメモリーの容量の問題だろう、連写可能な枚数がJPEG(ラージ・ファイン)で190枚、RAWで75枚とやや物足りない数字となっている。

動画

カメラ単体では4K(3,840×2,160)・59.94pに対応。6Kオーバーサンプリングによって高画質化をはかっている。

EOS R6では29分59秒までの制限付きだったが、本機では6時間までに延長。長時間の連続撮影も可能となった。

また、外部レコーダーと組み合わせることで6K RAW・59.94p記録も可能だ。

RAWバーストモード・プレ記録

フルサイズEOSでは初となるRAWバーストモードを搭載。ファイル形式はRAW限定となるが、全押しの約0.5秒前の瞬間を記録できるプリ連写が可能となる。このときの連写スピードは最高30コマ/秒でAFも追従可能だ(露出は1枚目で固定となる)。

また、動画でも記録開始前の映像(3秒または5秒から選択できる)を保存できるプレ記録機能を装備した。

どちらも、撮りこぼしができないドキュメンタリー、スポーツや野生動物などのジャンルで活躍が期待できる。

電源

バッテリーはEOS R5と同じくLP-E6NH(7.2V・2,130mAh)を使用。ファインダー撮影時の撮影可能枚数は、パフォーマンス重視の「なめらかさ優先」で320枚、「省電力優先」で450枚となる。EOS R6よりもスペックアップしつつ節電もはかられている。

付属の充電器LC-E6や別売のバッテリーグリップBG-R10(税込3万6,300円)などはEOS R5と共通だ。

その他

上位モデルと違ってボディ外装は樹脂(ポリカーボネート)製。内部シャーシにはマグネシウム合金が使われている。とは言え、実売価格が税込み40万円弱のカメラが樹脂ボディなのはさびしい。

手ブレ補正はEOS R5などと同じく、センサーシフトとレンズシフトを併用する協調制御で、補正効果は最大8段と強力だ。

EVFは369万ドットのOLED(有機EL)で倍率は0.76倍。一眼レフの見え方に近づけたOVFビューアシスト機能を備えている。液晶モニターは3型・162万ドットのバリアングル式だ。

記録メディアはSDカードのデュアルスロット。両スロットとも高速なUHS-IIに対応している。

電源スイッチが右手側に移動したのが新しい点。電源を入れ忘れたまま構えたときもスムーズにスイッチ操作ができるようになったのはありがたい。

EOS R(RFマウント・35mmフルサイズ)

2018年10月25日発売

概要

キヤノン初のフルサイズミラーレスカメラシステムとして登場したEOS Rシリーズの初号機。大口径かつショートバックフォーカスのRFマウントを採用し、交換レンズとの通信システムも刷新した。

有効3,030万画素CMOSセンサーと映像エンジンDIGIC 8の組み合わせを搭載。初の試みとしてタッチ操作のマルチファンクションバーを備えている。

センサーとエンジン

撮像センサーは自社開発・自社生産の有効3,030万画素CMOS。モアレや偽色を抑える効果のあるローパスフィルターを装備している。画像処理を受け持つ映像エンジンはひと世代前のDIGIC 8だ。

感度の設定範囲は常用ISO 100〜40000。拡張時は下限がISO 50相当、上限がISO 102400相当となる。

AFと連写

AFはデュアルピクセルCMOS AF。全画素で位相差検出が可能だが、測距点のカバーエリアは左右がやや狭い88×100%となる。

ファームウェアVer.1.2.0以降で顔+追尾優先AF時に設定できる瞳AFを搭載。人物以外の被写体認識は備えていない。

連写最高速はピント固定で8コマ/秒。AFが追従するのは5.0コマ/秒までとなる。JPEG(ラージ・ファイン)で100枚まで、RAWは47枚まで連写可能(UHS-II対応カード使用時)。スポーツ系の撮影にはかなり物足りないスペックだ。

動画・手ブレ補正

動画は4K(3,840×2,160)・29.97pをカメラ単体で記録できる。ただし、4K動画の撮影範囲はAPS-Cサイズ相当となる。

RFレンズ装着状態での動画撮影時は絞り値を1/8段ステップに細分化できる。通常(1/3段ステップ)よりも細かく露出を調整できるのがメリットだ。

手ブレ補正はレンズに依存するが、動画撮影時はカメラ側で電子手ブレ補正が可能。このときは回転ブレも含めた5軸補正が行なえる。

電源

電源は一眼レフのEOS 5D Mark IVやEOS 6D Mark IIなどと共通のLP-E6N(7.2V・1,865mAh)。撮影可能枚数は370枚。LP-E6N単体の価格は税込9,350円だ。

大容量化した新型のLP-E6NH(7.2V・2,130mAh)も使用でき、付属の充電器LC-E6はLP-E6NHにも対応しているので、パフォーマンスを優先したいなら新型を購入するのがおすすめだ。

その他

ボディの外装と内部構造にマグネシウム合金を採用。各部のシーリングなどによって防塵・防滴構造としている。

一眼レフEOSでは背面にあったホイール型のサブ電子ダイヤルを上面に移動。測距点選択用のジョイスティックがない代わりに、タッチ式のマルチファンクションバーを装備。スライド操作とタップ操作でISO感度やホワイトバランス、AF方式などを素早く変更できる。

EVFは369万ドットOLED。倍率は0.76倍。液晶モニターはバリアングル式で3.15型、210万ドット。

別売で縦位置撮影機能藻備えたバッテリーグリップBG-E22(税込3万8,290円)などが用意されている。

EOS RP(RFマウント・35mmフルサイズ)

2019年3月14日発売

概要

わずか485gの軽快ボディに握りやすいグリップやEVFも装備。有効2,620万画素のフルサイズセンサーを搭載しながらAPS-Cサイズのエントリークラスに迫るお手ごろ価格を実現したカジュアルユーザー向けモデル。

センサーとエンジン

撮像センサーは一眼レフのEOS 6D Mark IIと同等の有効2,620万画素CMOS。映像エンジンはEOS Rと同じくDIGIC 8を搭載する。今となっては古さを感じるが、EOS 6D Mark IIのDIGIC 7、EOS 5D Mark IVのDIGIC 6+に比べればハイパワーと言える。

感度の設定範囲は常用でISO 100〜40000。拡張時はISO 50相当からISO 102400相当までだ。

AFと連写

AFは画面の横88×縦100%の範囲をカバーするデュアルピクセルCMOS AF。動く人物の目を検出してピントを合わせるサーボAF対応の瞳AFを備える。

連写スピードはピント固定で最高5コマ/秒。サーボAF時は4コマ/秒でAFが追従する。今どきのミラーレスカメラとしてはかなり物足りないスペックだが、カジュアルユーザー向けの低価格機であることを思えば妥当な割り切りと言える。

動画・手ブレ補正

動画はカメラ単体で4K(3,840×2,160)・23.98pまで。やはり4K動画の撮影範囲はAPS-Cサイズ相当となり、画像処理による4K出力となる。

EOS R動揺、手ブレ補正はレンズに依存する。動画撮影時のみカメラ側で電子手ブレ補正が可能となる。

また、静止画の手ブレ補正は画像情報も活用するデュアルセンシングISとしている(これはEOS Rも同じ)。

電源

電源はコンパクトサイズのLP-E17(7.2V・1,040mAh)。単品での価格は税込6,600円。フル充電での撮影可能枚数は250枚だ。

USB PD(パワーデリバリー)対応のモバイルバッテリーなどからも充電は可能だが、給電には非対応。ケーブル接続の手間などを考えると予備のバッテリーを用意したほうが便利はいいだろう。

充電は付属の充電器LC-E17で行なう。容量が小さいこともあってゼロ→フルで2時間と短めだ。

その他

ボディ外装は樹脂製。防塵・防滴処理がほどこされているが、あくまで「少量の水滴や砂塵」に耐えるレベルであって、上位モデルとは差があることを理解しておくべきだろう。

コンパクトサイズながらしっかりしたサイズのグリップのおかげでホールド性は良好。メインとサブの2つの電子ダイヤルを備えており、露出調整がやりやすい。

OLEDを採用したEVFは236万ドットで0.7倍。液晶モニターは3型、104万ドットのバリアングル式。スペックとしてはもうひとつな印象だが、実売価格から考えれば不満はない。

なお、メカシャッターは電子先幕のみ。サイレントモード設定時には電子シャッターが使えるが、最高速は1/4,000秒までとなる。明るいレンズの絞りを開けて撮りたい人には選びづらい。

EOS R7(RFマウント・APS-C)

2022年6月23日発売

概要

RFマウントを採用したAPS-Cサイズ機。同時に発表されたEOS R10の上位にあたる。

新開発の撮像センサーの搭載に加えて、ボディ内手ブレ補正を活用した自動水平補正機能、メカシャッターで15コマ/秒連写などのハイスペックを誇る。

センサーとエンジン

心臓部には新開発の有効3,250万画素CMOSセンサーとDIGIC Xを搭載。上位モデルと同じ映像エンジンのパワーを活かして高度な画像処理を行ない、APS-CサイズEOSで最高の解像性能を実現していると言う。

感度の設定範囲は常用でISO 100〜32000。拡張時はISO 51200相当が設定可能となる。

手ブレ補正

手ブレ補正は5軸対応のセンサーシフト式。RF/RF-Sレンズの手ブレ補正との協調制御ももちろん可能で、補正効果は最大8段と高い。

撮像センサーが小振りな分、ロール(回転)方向の可動範囲を広げられており、回転ブレに対する補正効果を高めている。

また、新しく自動水平補正機能も装備。カメラの微妙な傾きを自動的に補正してくれるので、風景撮影などでの水平出しの時間短縮がはかれる。

AFと連写

ピント合わせは全画素で位相差検出が可能なデュアルピクセルCMOS AF IIを搭載。組み合わせるレンズにもよるが、全画面でのAFを可能にしている。

被写体認識機能も装備。人物は瞳、顔、頭部、胴体に、動物優先は犬、猫、鳥、乗り物優先は自動車、バイクに対応する。

連写最高速はメカシャッターで15コマ/秒。UHS-II対応SDカードを使うとJPEG(ラージ・ファイン)で224枚、RAWで59枚の連写が可能。電子シャッター時は被写体によって動体歪みが出るものの30コマ/秒と高速化がはかれる。このときはJPEGで126枚、RAWで42枚までの連写となる。

動画

動画は4K(3,840×2,160)解像度。4K UHD Fine時はクロップなしの7Kオーバーサンプリングで最高29.97fpsまで。4K UHD時はクロップなしで59.94fps記録が可能。4K UHDクロップ時は59.94fpsで、画面中央部だけを使って撮影するため、より望遠効果を高められるメリットがある。

また、2枚のSDカードに同一内容を保存できるバックアップ記録、縦位置動画対応などの機能も備える。

電源

使用バッテリーはLP-E6NH(7.2V・2,130mAh)。ファインダー撮影時の撮影可能枚数は「なめらかさ優先」時で380枚、「省電力優先」時で500枚とまずまず。

付属の充電器はEOS R5などと共通のLC-E6。所要時間も同じだ。

その他

カメラ内部のシャーシにはマグネシウム合金やアルミニウム合金を、外装は高強度エンジニアリングプラスチックを使用。シーリングなどによる防塵・防滴構造としている。

EOSの伝統とも言えるサブ電子ダイヤルが、背面上部に移動しているのが特徴的。同軸にAFエリアの移動などに利用するマルチコントローラー(ジョイスティック)を備える。

内蔵EVFは236万ドットのOLEDで、倍率はフルサイズ換算で0.72倍相当。見え具合を光学ファインダーに近づけたOVFビューアシスト機能も備える。液晶モニターは3型・162万ドットのバリアングル式だ。

EOS R3、EOS R6 Mark IIと同じくマルチアクセサリーシューを備えており、対応マイクをケーブルレスで接続できる。

EOS R10(RFマウント・APS-C)

2022年7月28日発売

概要

EOS R7と同時に発表されたAPS-Cサイズのローエンドモデル。ボディ内手ブレ補正を省略するなどして実売価格を抑えつつ、映像エンジンにDIGIC Xを搭載。動物や乗り物に対応する被写体認識機能を備えているのが見どころだ。

センサーとエンジン

撮像センサーはAPS-Cサイズの有効2,420万画素。スペックは従来モデルと同じだが、新開発のものが使われている。

画像処理を受け持つ映像エンジンはEOS R7などとも同じDIGIC Xを搭載。エンジンパワーを活かした画像処理のおかげで、一眼レフのEOS 90Dなどよりも低ISO感度での解像性能が向上している。

常用感度の上限はISO 32000。拡張時はISO 51200相当まで設定できる。

AFと連写

AFはデュアルピクセルCMOS AF IIで、レンズなどにもよるが画面全域をカバーする。

被写体認識機能は、人物に対して瞳、顔、頭部、動体、動物(犬、猫、鳥)は瞳や顔、全身、乗り物(自動車、バイク)はドライバー/ライダーのヘルメットなどを検出する「スポット検出」機能も設定できる。

連写最高速はメカシャッターで15コマ/秒、電子シャッターでは23コマ/秒と速い。

ただし、バッファメモリーが小さいのは泣きどころ。JPEG(ラージ・ファイン)で15コマ/秒連写では460枚撮れるが、23コマ/秒連写だと70枚に減る。RAWの場合は15コマ/秒で29枚、23コマ/秒で21枚しか撮れない。いずれも高速タイプのUHS-II対応SDカードの数字だ。

動画・手ブレ補正

動画は6Kオーバーサンプリングの4K UHD(3,840×2,160)・29.97fpsに加えて、画面中央部だけを使う4K UHDクロップ・59.94fpsを選択可能。被写体や撮影シーンなどに合わせて切り替えられる。

手ブレ補正はEOS R7と違ってセンサーシフトの機能はなく、レンズ側に依存する。ただし、動画撮影時には電子手ブレ補正が利用でき、RF/RF-Sレンズとの協調制御が可能となる。

電源

バッテリーはEOS RPと同じくLP-E17(7.2V・1,040mAh)を使用する。内蔵ストロボ50%使用、ファインダー撮影での撮影可能枚数は、「なめらかさ優先」で210枚、「省電力優先」で260枚。モニター撮影時はそれぞれ350枚と430枚に増える。

充電は付属のLC-E17で行ない、所要時間は2時間となっている。

その他

ボディ外装は樹脂製。防塵・防滴性能はアピールしていない。エントリークラスという位置づけだが、前後に2つの電子ダイヤルを装備。背面にはマルチコントローラー(ジョイスティック)、AF-ONボタンなどもあって使い勝手はいい。前面右手側にフォーカスモードスイッチがあるのはEOS R7と共通だ。

EVFは236万ドットのOLEDで倍率は0.59倍相当。モニターは3型・104万ドットのバリアングル式。

これはEOS R7でも同じことが言えるが、原稿執筆時点では専用のRF-SレンズはRF-S 18-45mm F4.5-6.3 IS STMとRF-S 18-150mm F3.5-6.3 IS STMの2本しかないのが最大の弱点。望遠域はフルサイズ用のRFレンズも使えるからいいが、広角〜超広角域をカバーするレンズが登場するまではおすすめしづらい。

EOS Kiss M2(EF-Mマウント)

2020年11月27日発売

概要

APS-Cサイズミラーレス規格のEF-Mマウントを採用したエントリーモデル。小型軽量ボディに有効2,410万画素CMOSセンサーとDIGIC 8の組み合わせを搭載する。ボディカラーはブラックとホワイトの2色が用意されている。

センサーとエンジン

撮像センサーは先代のEOS Kiss Mと同じスペックの有効2,410万画素CMOSでローパスフィルターあり仕様。画像処理エンジンはひと世代前のDIGIC 8という構成。今となっては古さが気になるが、代わりに実売価格はうんと手ごろになる。

感度の上限は常用でISO 25600、拡張時はISO 51200相当が設定できる。

AFと連写

ピント合わせはデュアルピクセルCMOS AFで、測距点のカバーエリアは画面の横88×縦100%。人物の目にピントを合わせてくれる瞳AFを備え、動く被写体に追従するサーボAFでも利用できる。

連写はピント固定で最高10コマ/秒、AF追従時は7.4コマ/秒となる。

動画・手ブレ補正

動画は4K(3,840×2,160)・23.98fps。画面中央部をクロップする仕様なので、広角側が物足りなく感じられるかもしれない。また、4K動画時はAFがコントラスト検出となることもあって、おすすめはしづらい。

フルHD(1,920×1,080)ではフレームレートは59.94fpsになるし、デュアルピクセルCMOS AFも使える。

ボディ内手ブレ補正はないが、専用のEF-Mレンズ7本中5本には手ブレ補正機能がある。また、動画撮影時には電子手ブレ補正が利用でき、対応レンズを装着すると補正効果の高いコンビネーションISなどが可能となる。

電源

バッテリーは軽さ35gのLP-E12(7.2V・875mAh)を使用する。撮影可能枚数は内蔵ストロボ50%使用でファインダー撮影時250枚、モニター撮影時305枚。バッテリー容量から考えれば優秀と言える。

LP-E12単体の価格は税込6,050円。必要に応じて予備を用意しておくといい。

充電時間は付属のLC-E12で行なう。所要時間は2時間だ。

その他

ボディ外装は樹脂製。防塵・防滴性能は謳っていない。内蔵EVFは236万ドットのOLEDで、倍率は公開されていない。液晶モニターはバリアングル式。3型・104万ドットというスペックだ。

電子シャッターを使用して作動音を立てずに撮れるサイレントシャッターモードがあるが、それ以外のモードでは電子先幕シャッターのみとなる。

北村智史(きたむらさとし)滋賀県生まれ。大学中退後、カメラ量販店で販売員として勤務しながらカメラ専門誌にて記事執筆を開始。その後編集者兼ライターとしてメカ記事等の執筆にたずさわる。1997年からはライター専業となる。現在は北海道札幌市在住。