新製品レビュー

キヤノン EOS R3

視線入力AFの出来栄えは? カメラとしての完成度が高いミラーレス最上位モデル

キヤノンEOS R3は、キヤノンのフルサイズミラーレスの最上位機種にあたるカメラです(記事執筆時)。昨年(2021年)の11月に発売された時には、大きな話題を呼びましたので、皆さん良くご存知のことと思います。

話題となったのは、縦位置グリップが一体化した威容と、何といっても「視線入力AF」機能の搭載によるものではないでしょうか? 視線入力AF、懐かしい。視線入力AFが搭載されたフィルム時代の一眼レフカメラ、「EOS 55」や「EOS 7s」なんかは筆者も愛用していたものです。でも結局、視線入力AF自体はほとんど使わずじまいでしたね……

何を言ってるのかわからない、という方! ぜひ最後までお読みくださいませ。

ボディサイズ・質量

もはやフラッグシップと言っていいのでは? と言う程の威容を誇る、EOS R3のサイズは、幅が約150mm、高さが約142.6mm、奥行きが約87.2mmとなっています。

質量は本体のみで約822g、バッテリーとメモリーカードを含めると約1,015gとなっています。

これは正直に言って、大きくて重いです。キヤノンが公称でフラッグシップ(プロフェッショナルモデル)に定めている「EOS 1D X Mark III」程ではないにせよ、それに迫るほどの圧があります。さすが超高性能かつ縦位置グリップ一体型。

それでも、EOS 1D X Mark IIIよりサイズが抑えられたのは、本機があくまでミラーレスカメラであることによるものでしょう。

撮像センサー・映像エンジン

撮像センサーは自社開発、約2,410万画素のフルサイズ裏面照射積層CMOSセンサー。

裏面照射積層型になったことで、優れた受光効率に加え、回路領域を拡張して信号読み出しの高速化が実現されています。

ちなみに、「EOS 1D X Mark III」や「EOS R5」でも、撮像センサーは裏面照射積層ではありませんでした。

撮像センサーとタッグを組む映像エンジンは、先進のDIGIC Xを搭載。

裏面照射CMOSセンサーと最新のDIGIC Xの両者が協調することで、何が起こるかというと、高感度性能が明確に向上します。

常用最高感度はISO102400。10万、2千、4百ですよ。

ISO 102400
EOS R3/RF24-105mm F4 L IS USM/24mm/絞り優先(1/640秒・F4.5・±0.0EV)/ISO 102400

ただし、この常用最高ISO102400は、EOS R6ですでに実現されていました。そうはいっても、約2,010万画素のEOS R6と、約2,410万画素のEOS R3では同じISO感度でも結果が異なるでしょう。

また、表面照射型CMOSセンサーのEOS R6と、裏面照射型CMOSセンサーのEOS R3では、やっぱり同じ常用最高感度でも結果は異なるのではないかな? と思うところがあります。

こちらは、EOS R5の常用最高感度と同じISO51200で撮影したものです。

ISO 51200
EOS R3/RF24-105mm F4 L IS USM/24mm/絞り優先(1/200秒・F4.5・-0.7EV)/ISO 51200

A4プリント程度ならまったく問題なく、荒れやブレを意識したモノクロ表現ならむしろ物足りなさを感じてしまうくらい、綺麗に整った質感描写能力を備えていると思います。

EOS R3/RF24-105mm F4 L IS USM/79mm/絞り優先(1/500秒・F5.6・±0.0EV)/ISO 100

有効画素数が約2,410万画素で、「EOS R5」や「EOS R」に比べると画素数が少ないなあ、なんて思うかもしれませんが、ハッキリいって2,000万画素以上あればほとんどの用途で不足を感じるようなことはありません。

実際に、本機EOS R3からでてくる画は、一見してハッとする程鮮明で、解像感が高く、適度で好ましいコントラストがあり、それでいて飛んでしまいそうなハイライトまで上手く表現してくれています。一言でいえば高画質。やはり本機のために設計された最新の撮像センサーとDIGIC Xの組み合わせが効いているのでしょう。

操作系

操作系に目を移します。シャッターボタン周辺は安定のスプーンカット。他の追従を許さない素晴らしい押しやすさがあります。キヤノンユーザーの特権とも言えますね。

一体型の縦位置グリップもスプーンカット。何かと便利な「M-Fn」ボタンも同じ位置にあります。

いわゆるリアコマンドダイヤルをもたないキヤノンのカメラは、縦位置でも横位置でも、同じ背面のサブ電子ダイヤルに親指が届くようにしているわけです。縦位置グリップ一体型のEOS R3だと、この有難みがとても分かりやすいです。

縦位置、横位置と言えばですが、背面のボタン類はEOS Rシリーズに慣れ親しんだ人に違和感を覚えさせることなく、既存の配列を守りながらも、上手い具合に縦位置用ボタンを配置しているのも好感です。

マルチコントローラーやAF-ONボタンの位置を見ると、なかなかに感動してしまいます。

AF-ONボタンには「スマートコントローラー」という機能が併設されています。後からまた出てくるので覚えておいてくださいね。

電源/マルチ電子ロックスイッチがこの位置にあるのは、キヤノンにおいて、最上位機種の証とも言えますね。フラッグシップではありませんが。

「再生」、「拡大/縮小」、「消去」のボタンがこの位置にあるのも、キヤノンのフラッグシップ機を彷彿とさせますね。

背面モニターはバリアングル式。3.2型で約415万ドットのクリアビュー液晶IIを搭載しています。

EOS R3は優れた防塵防滴構造を採用しているとのことですが、背面モニター可動部にまでキッチリと防塵防滴構造を採用しているのはさすがです。

当然のように、タッチセンサーを備えて、タッチによるAFポイントの指定や、タッチAF、タッチシャッターが出来るのですが、これも後からまた出てくるので覚えておいてください。

MODEボタンとそれを取り巻くサブ電子ダイヤル2、および表示パネルの存在は、初代「EOS R」からつづく伝統。下位機種では普通のモードダイヤルになります。

MODEボタンを押して、電子ダイヤル2をクルクル回すと、表示パネル(および背面モニター)に撮影モードが表示されるので選びやすい。

「シャッター速度」、「絞り値」、「ISO感度」、それぞれのオートと任意設定、および露出補正を自由に組み合わせて撮影することができる、「フレキシブルAE(Fv)」もEOS Rからの伝統として、しっかり搭載しています。慣れるとなかなか便利なキヤノン独自の撮影モードです。

カードスロット

カードスロットは、SDメモリーカードおよびCFexpressカード(Type B)に対応し、それぞれ1枚ずつのスロットを備えています。

普及率の高いSDメモリーカードは、しっかりとUHS-IIに対応しています。UHS-IIの理論上の最大転送速度は312MB/秒です。

一方で、CFexpressカード(Type B)の理論上の最大転送速度は2,000MB/秒と圧倒的です。実際の速度はそこまでいかないと理解していても、撮影をこなすうえで、さまざまな恩恵がCFexpressカードを使う方にあることは容易に理解していただけることと思います。

カードもカードリーダーも現状まだまだ高額なので、導入するとなると躊躇することになると思いますが、せっかくEOS R3手に入れるのなら、その性能をいかんなく発揮させるためにも、カードはぜひ奮発するべきでしょう。

バッテリー

立派な一体型縦位置グリップには、立派なバッテリーが付いてきます。充電式リチウムイオン電池のバッテリーパック「LP-E19」。

質量約185g、容量2,700mAhの堂々たる大型バッテリーで、「ミラーレスだからって軽くみるんじゃないぞ!」といったところの一因になっていると思います。

撮影可能枚数の目安は、公称でファインダー撮影時に約620枚、モニター撮影時に約860枚、動画撮影可能時間は合計約3時間10分となっており、さすがの大容量っぷりです。

実際に使ってみた感想としても、バッテリー持ちはかなり良いと感じました。仕事量が多いはずのEOS R3でこのスタミナがあることは心強ささえ感じました。

とは言っても、さすがにデジタル一眼レフの感覚で2〜3日の撮影を無充電で過ごそうとすると、何気にピンチに陥ることもあったりします。

やや蛇足になりますが、メニューで「電源オフ時のシャッター状態」を「閉じる」に設定すると、電源オフでシャッター幕が閉じた状態となります。

レンズ交換時に撮像センサーにホコリ等が直接付着する可能性が下がることが期待できます。この機能も最近はだいぶん定番となってきましたね。イイことです。

EVF

EVFが収められたペンタ部(風なカメラ上部中央)は前から見ると特徴的なデザインですが、後ろから見ると異様に大きな接眼部の存在感に驚かされます。

これは、倍率約0.76倍、視野率は約100%を実現した優れたファインダー光学系が内蔵されていることもありますが、視線入力のための検出機能を搭載していることも理由の一つになっているのではないでしょうか。ちなみに接眼部の広い枠には複数個の「裸眼検知用赤外線LED」と「眼鏡装着時検知用赤外線LED」が備えられています。

EVFの表示パネルは、約576万ドットの有機EL液晶が採用されています。

500万超ドットという数字は、並み居るミラーレスカメラのEVFのなかでも、かなりのハイスペックになります。900万ドットを超える、ソニーのフラッグシップ・ミラーレスカメラ「α1」は別格としても、少なくとも精細感においてはトップクラスにあると言って良いと思います。

EOS R3の連続撮影速度は、電子シャッターで最高約30コマ/秒、メカシャッター最高約12コマ/秒と、フルサイズミラーレスカメラの中でもトップクラスを誇っています。

そうなってくると、連続撮影中に滞りなく被写体を追えるかどうかが問題になってきます。ただ、精細であるというわけにはいかないのです。

EOS R3は、ブラックアウトフリー撮影が可能となっています。これは電子シャッターでの連続撮影時に、ファインダー/モニターでブラックアウトが起きず、高速で動く被写体でも動きを捉えやすいというもの。正確には、1枚目を撮影する直前に一度ブラックアウトが発生しますが、これは撮影開始のタイミングをはかるためのものだそうです。

また、EOS R3はローリングシャッター歪みも驚くほど少ないので、これまで電子シャッターを使うのを躊躇していたシーンでも、ためらうことなく使えます。

わずかな歪みでも気になる、少しでも歪みを少なくしたい、という場合には、メカシャッターを使えばいいわけで、ここにメカシャッターを排除してしまわなかったEOS R3に安心感を覚えることができると思います。

実際にファインダーで動きの速いものを追ってみても、筆者の目には完璧に被写体を捉え続けることができるだけの、凄まじい性能を感じ取ることができました。

ローリングシャッター歪みもほとんど気になりません(そもそもメカシャッターだって、歪みを完全に抑えることは不可能です)。

筆者レベルの動態撮影ならむしろオーバースペックであるかもしれません。トップクラスのアスリートを撮るジャンルのシビアなプロの方々だって、もはやEOS R3でいけるんじゃないか? そんな興奮を覚えさせてくれました。

視線入力AFとは

さて、いよいよ「視線入力AF」です。

と、その前に、キヤノンの視線入力AFとは何かを簡単におさらいしておきましょう。

視線入力AFとは、簡単に言えば「眼で見たところ(AFフレーム)にピントを合わせる」機能のことです。AFフレームを移動するため、マルチコントローラーやサブ電子ダイヤルを操作する必要はありません。

初めて視線入力AFを搭載したカメラが1992年発売の「EOS 5 QD」で、次が1995年発売の「EOS 55」でした。ただし、この2機種、AFフレームがわずか3点しかなく、おまけに選択速度は遅く、さらには精度もイマイチでした。

その後、1998年に45点のAFフレームを備えた「EOS-3」が、2000年にはAFフレームは7点ながら視線検出応答時間の短縮化に成功した「EOS 7」(2004年に「EOS 7s」)が登場したものの、結局のところ、ボタンやダイヤルでのAFフレーム選択のほうが分かりやすかったこともあり、筆者の場合は、視線入力AFの存在はないものとして撮影していました。

視線入力AFの実際

さて、そんな視線入力AF、結果から言えば、EOS R3に搭載されたそれは、非常に使える優れものでした。

知り合いの先輩カメラマンは「過去の視線入力とは全く別のモノ。本当に優秀な機能で、過去のカメラに搭載されていた視線入力と同じ名称なのが不自然に感じる!」と言っていたのですが、筆者もまったく同じ感想を得ることになりました。

まずAFフレームの守備範囲が違います。

過去の視線入力AF搭載機で最高峰だった「EOS-3」は45点と、当時としては驚きのスペックでしたが、それでもAFフレームは中央付近に偏りがち。

ところがEOS R3は画面全体が測距エリアになっています。しかも、画素のひとつひとつが全て、像面位相差センサーと撮像機能を兼ねたデュアルピクセルCMOS AF IIなので、AFフレーム間に全くスキがありません。

EOS R3の視線入力AFが特に威力を発揮するのが、ピントを合わせたい被写体が画面上に複数ある、下の写真のような状態。

EOS R3/RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM/343mm/絞り優先(1/500秒・F5.6・±0.0EV)/ISO 800

EOS R3の視線入力AFの素晴らしいところは、視線入力AFの機能が、ミラーレスカメラならではの高性能なトラッキング(被写体追尾)機能や被写体検出機能、および瞳検出機能などと、高度に連動しているところです。

つまりは、視線入力でピントを合わせたい被写体やその近くに「だいたい」視線入力のポインターが来れば、トラッキングや被写体検出、瞳検出のフレームが目的の被写体に表示されるので、そこでシャッターを半押しすればピント位置が確定されるというわけです。

例えば、この写真は1番手前のミーアキャットにピントを合わせて撮ったものですが……

EOS R3/RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM/400mm/絞り優先(1/500秒・F6.3・±0.0EV)/ISO 800

シャッターボタン半押しを解除して、視線を2番目のミーアキャットに移動。すぐに瞳検出の枠が表示されるので、そこでシャッターボタンを半押しすれば目的の場所にAFフレームが確定されます。

EOS R3/RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM/343mm/絞り優先(1/500秒・F6.3・±0.0EV)/ISO 800

同じように、シャッター半押しを解除してから下から3番目のミーアキャットに視線を移し、シャッターボタン半押しで捉えると、この間に要する時間は実にわずかなものでした。

EOS R3/RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM/343mm/絞り優先(1/500秒・F6.3・±0.0EV)/ISO 800

ファインダー内の視線入力ポインターや検出枠の動きをここでお見せできないのが辛い……

「AF-ON」ボタンに機能を割り当てれば、連写中でも視線入力でピントを合わせる被写体を移動・確定させることも可能です。

生まれ変わった視線入力AFは、なかなか話の分かる良い子なので、撮影者は自由にピント位置を決めうことができます。

視線入力のキャリブレーション

EOS R3の視線入力AFを正確に使うためには、使用者個人個人の瞳の特性に合わせるための「キャリブレーション」が必要です。

メニュー画面の視線入力設定画面です。ここで視線入力を「する」にすればそれで良しというわけではなく……

実際は、使用者個々の瞳の特性に合わせるためのキャリブレーションが必要になります。

キャリブレーションは、6種類まで登録できますので、使用者が複数いる場合や、眼鏡の有り/無し(重要)で、登録を振り分けると良いと思います。

キャリブレーションの登録番号をセットしたら、「キャリブレーション(CAL)」に入ります。

そのままキャリブレーションを始めるなら「実行」します。

すでに登録したキャリブレーションの「削除」や、「カードに保存・読込」もできます。

キャリブレーションを実行すると、後はファインダー内で処理が行われます。

ファインダーを覗きシャッターボタン横のM-Fnボタンを押すことで、キャリブレーション用のポインターが登場、何度か現れては消えるポインターを凝視すること数回を経て、使用者の瞳の特性に合わせたキャリブレーションが完了します。

この視線入力のキャリブレーションは、一度だけでなく何度も繰り返すことで、さらに精度が高くなります。縦位置にカメラを構えた状態でキャリブレーションも加えると、ますます精度が高まります。

さらに眼鏡利用者の場合、裸眼の時と眼鏡の時のそれぞれについてキャリブレーションを実行・登録する必要があります。

はっきり言って面倒くさい。しかし、それを踏まえてもEOS R3の視線入力AFは実用性が高いのは間違いないので、撮影前の準備を周到にすべきだと思いました。

視線入力AF以外のAF選択

視線入力AFがいかに優れものであっても、眼鏡ありのキャリブレーションで撮影中、たまたま眼鏡を外している時に突然シャッターチャンスが訪れて、慌てて裸眼で対応したけど、思ったように視線入力のポインターを動かせなかった……なんてことになったら困りますよね。

EOS R3は視線入力AF以外にも、たくさんの優れたAFフレーム選択方法があるのでご安心ください。

まずは、背面のモニターを使った「タッチシャッター」。

スマートフォンが普及している今となっては、ある意味もっとも馴染みのあるAF選択方法かもしれませんね。

次に「マルチセレクター」。

こちらも多くのカメラメーカーが、多くのモデルで採用しているので馴染みがあります。

特に測距エリアが画面のほぼ全域に及び、測距点がますます細密化した、現代のミラーレスカメラにはなくてはならない機能と言えるでしょう。

そして、そのマルチセレクターのすぐ上に配置されているのが、今回ぜひとも紹介しておきたい「スマートコントローラー」です。AF-ONボタン(AFスタートボタン)上にある、丸くてツヤのあるセンサーがそれです。

マルチセレクターと少し似ていますが、異なるのはスマートコントローラーは、指の腹でなぞるだけで自由にAFフレームを動かすことができること。そのままAF-ONボタンを押し込めば、AFがスタートし、トラッキングが開始されます。

このスマートコントローラーを搭載しているのは、本機EOS R3とプロフェッショナルモデルの「EOS-1D X Mark III」だけ。

視線入力AFに注目が集まりがちですが、実はそれ以外にも、非常に高度なAF選択方式をたくさんもっているのですね。

花の蕊などのように、細かいところにピンポイントで合わせたいなんて場合は、視線入力AF以外の方が簡単で確実だと思います。

EOS R3/RF24-105mm F4 L IS USM/96mm/絞り優先(1/125秒・F4.0・±0.0EV)/ISO 100

動画記録

EOS R3はEOSシリーズとしては初めて、動画の連続記録時間が30分を超えました。設定や気温などの条件によって変わりますが、最長で6時間の連続記録ができます。

4K UHD(3840×2160)60Pや4K DCI(4096×2160)60Pなどのほか、スローモーション効果が得られる4K 120Pハイフレームレート動画や、6K 60PでのRAW動画なども内部記録ができます。

今回は、なかでも比較的一般的な4K(UHD)60Pで作例を記録してみました。

また、動画記録中も、静止画撮影と同じようにデュアルピクセルCMOS AF IIや、レンズおよびボディ内の手ブレ補正機能(IS)が使えます。

さらに、動画撮影では動画用の手ブレ補正機能である「動画電子IS」も他のISと併用して使えます。

いわゆる電子式手ブレ補正ですので、よく見ると効果を強くするほど映像が拡大(画角が狭く)なっているのが分かりますね。ジンバル不要とまでは言えませんが、いざというときかなり役に立ってくれそうです。

まとめ

機能、性能において最上級のカメラであると思います。

なかでも、視線入力AFは、過去のそれとはまったく異なり、最高に実用的で独創的なAF方式でありました。

また、視線入力AF以外にも、さまざまな使えるAF方式が用意されているところも素晴らしいです。もはや、これで撮れないものはない! のではと思えるほど。

ただ、視線入力AFは静止画撮影時のみで有効であったり、8K動画は未対応だったりと、ライバル機であるニコンZ 9に比べると、ミラーレス最上位機種としては、人によって、もう一歩踏み込んでほしいところがあったのも事実かもしれません。

しかしながら、EOS R3は、あくまでキヤノンのミラーレス機の最上位機種であって、プロフェッショナルモデルである「1」の称号は未だ与えられていません。今後もしも、「1」の称号をもったキヤノンのミラーレスカメラが登場するのかも? なんて考えると妄想が膨らみますね。

サイズ感はともかくとして、静止画を撮るならこれ以上ないくらいの最高性能を備えたカメラであることは間違いありません。動画を撮るにしても、これで不満を感じることはまずありえないと思います。

個人的な感想になりますが、ミラーレスカメラだから、スペックを遠慮しても軽く小さくあろうとする姿勢は不満でした。

EOS R3は、そんなミラーレスカメラの既成概念を破って登場した、超現代的なフルサイズミラーレスカメラのフラッグシップであると断言して良いと思います。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。