ラインナップ解説

OMデジタルソリューションズ(2022年冬)

マイクロフォーサーズのフラッグシップ機「OM-1」など

レンズ交換式デジタルカメラの主役となって久しいミラーレスカメラ。ラインナップの拡充が続く各社のミラーレスカメラをまとめました。

OMデジタルソリューションズは、オリンパスのカメラ事業を分社化して誕生。2021年1月から事業を開始している。

ミラーレスカメラのスタートは、オールドカメラテイストを残しつつ今風の操作系に仕上げたPEN E-P1(2009年)。一眼レフのフォーサーズをベースにフランジバックの短縮などを盛り込んだマイクロフォーサーズ規格を採用する。

現在は一眼レフ風のスタイルを持つOM/OM-Dシリーズに軸足を置いたラインナップとなっており、小型軽量システムで高画質と機動性のよさを売りにしている。

OM SYSTEM OM-1

2022年3月18日発売

概要

同社のフラッグシップモデルで、1972年に発売されたフィルム一眼レフの名を受け継いでいる(混乱を避けるために「デジタルの」という枕詞が付けられることもある)。

E-M1 Mark IIIの後継に位置づけられ、撮像センサーに同社初の裏面照射積層型Live MOSを搭載するなど、高性能化がはかられている。

センサーとエンジン

有効画素数はE-M1 Mark IIIなどと同じ2,037万画素ながら、同社初の裏面照射積層型の撮像センサーとしているのが大きな特徴。ダイナミックレンジの拡大や高感度画質の向上に加えてローリングシャッター歪みも大幅に低減している。

画像処理エンジンは従来の約3倍の演算処理能力を持つTruePic X。画像処理アルゴリズムを刷新したこともあって、センサーサイズの小さなマイクロフォーサーズながら、常用感度上限を従来のISO 6400からISO 25600に向上させているのも見どころだ。

手ブレ補正

手ブレ補正はボディ単体で7.0段分、レンズ側と協調する「シンクロ手ぶれ補正」で最大8.0段分。スペックも十分に高いが、数字以上の補正能力があるとも言われるとおり、10秒程度の長時間露光が手持ちでOKだったという報告も見られる。

AFと連写

AFには新開発の「クアッドピクセルAF」を採用。撮像センサーの画素の受光部を4分割にして縦横で位相差検出を行なう1,053点オールクロスというハイスペックを実現している。

新エンジンと新アルゴリズムによって被写体認識も進化。自動車/バイク、飛行機/ヘリコプター、鉄道、鳥に加えて、ペットとして一般的な犬と猫も対象となった。

連写最高速はメカシャッターのブラックアウトありで10コマ/秒、電子シャッターではブラックアウトフリーの「静音連写SH2」で50コマ/秒までAFが追従する(ただし、対応レンズはかぎられる)。ピントと露出が固定となる「プロキャプチャー連写SH1」なら最高120コマ/秒連写が可能だ。

動画

解像度は4K(3,840×2,160)、フレームレートは59.94p。外部レコーダーを接続することでRAW動画記録も可能としている。また、後処理を前提としたOM-Log、HDR動画撮影が可能な動画ピクチャーモードのHLGを備えている。

フルサイズ機で主流になりつつある8Kには対応していないが、強力な手ブレ補正機能を活かした軽快な動画システムが組めるのが強みと言える。

電源

電源は新型のBLX-1(7.2V・2,280mAh)。手ブレ補正オン、フラッシュ非装着状態で520枚、低消費電力撮影モードでは1,100枚の撮影が可能だ。予備バッテリーが必要な場合のコストは税込1万1,000円とやや高めとなる。

付属のACアダプターを使った本体充電での充電時間は2時間30分。別売の充電器BCX-1(税込1万4,300円)を使うと2本同時に充電できる。この場合の充電時間は2本同時でも2時間30分だ。

その他

ボディ外装はマグネシウム合金製。576万ドットのEVFと162万ドットの3型バリアングル式モニターを備える。IP53の防塵・防滴性(対応レンズ装着時)に加えてマイナス10度の耐低温性のタフネス仕様としている。そのほか、縦位置グリップ機能を備えた「パワーバッテリーホルダーHLD-10(税込4万1,800円)」が用意されている。

OM SYSTEM OM-5

2022年11月18日発売(レンズキットにより12月10日)

概要

E-M5シリーズの後継モデルで、外見はE-M5 Mark IIIと大差ないものの、スペック的には上位のE-M1 Mark IIIに迫る内容となっている。

センサーの画素数以上の高精細撮影を可能にするハイレゾショットなどを「コンピュテーショナルフォト」として統合している。

センサーとエンジン

撮像センサーと画像処理エンジンは有効2,037万画素Live MOS、TruePic IXの組み合わせ。ISO感度の設定範囲も含めてOM-1の前身となるE-M1 Mark IIIと同じスペックだ。

コンピュテーショナルフォト

ボディ単体で6.5段分(対応レンズとの協調動作で7.5段分)の効果を持つ手ブレ補正機能を活かした「ハイレゾショット」は従来どおりの三脚ハイレゾショットに加えて手持ちハイレゾショットも装備。高精細撮影が可能なシーンが広がった。

そのほか、明るいシーンで低速シャッターが使える「ライブND」、夜景や星景撮影で活躍する「ライブコンポジット」「ライブバルブ」などの多彩な機能が楽しめる。

AFと連写

AFは121点オールクロスのハイブリッドAFで、こちらもE-M1 Mark IIIと同等のスペック。顔優先/瞳優先AFはあるが、それ以外の被写体認識機能はない。

連写スピードはE-M1 Mark III並みとはいかなかったところ。AFが追従するのはメカシャッターで6コマ/秒、電子シャッターで10コマ/秒までと低めのスペックとなっている。

動画

動画はC4K(4,096×2,160)・24p、4K(3,840×2,160)・30pなど。SNSなどでポピュラーになりつつある縦位置動画に対応しているのがユニークな点だ。

電源

電源はコンパクトサイズのBLS-50(7.2V・1,210mAh)で、付属のACアダプターからカメラのマイクロUSB端子経由で充電する。この場合の充電時間は4時間と長いのは気になる。

予備バッテリーが多めに必要なら別売の充電器BCS-5(税込5,280円)を用意するといい。充電時間は3時間30分と少しは早くなるし、本体充電と併用すれば2本同時に充電できる。なお、BLS-50単品の価格は税込6,160円だ。

手ブレ補正オンでの撮影可能枚数は310枚。低消費電力撮影モードにすると660枚に伸びる。

その他

ボディ外装は樹脂製だが、そこはOM SYSTEMらしく、IP53の防塵・防滴性を誇る(対応レンズ装着時)。また、マイナス10度の耐低温性もあるので、アウトドアシーンにはすこぶる強い。

重めのレンズと組み合わせる場合は、別売の「カメラグリップECG-5(税込1万9,800円)」がおすすめ。しっかり握れるうえ、小指あまりも軽減できる。

OM-D E-M1X

2019年2月22日発売

概要

ミラーレスカメラでは初となった縦位置グリップ一体型ボディのハイエンドモデル。また、同社初の被写体認識機能を備えたAFシステムを搭載している。

2019年の発売当初は税込36万円強だったが、2020年11月に税込19万5,800円に改定されている。

センサーとエンジン

撮像センサーは有効2,037万画素のLive MOS。画像処理エンジンはTruePic VIIIを2基搭載することで演算処理能力を高めており、被写体認識AFや手持ちハイレゾショット、ライブNDなどの新機能を実現している。

5,000万画素記録(JPEG時)が可能なハイレゾショットは8回の連写合成を行う三脚ハイレゾショットのほか、16回の手持ちハイレゾショットも備えている。

GPSのほか、電子コンパス、加速度センサー、気圧センサー、温度センサーを内蔵。多彩な情報を記録できるところは本機ならではの特徴だ。

AFと連写

AFは121点オールクロスのハイブリッド。被写体や撮影シーンに合わせて測距エリアの形状を変えられる「カスタムAFターゲットモード」を備える。

被写体認識は、自動車/バイク、飛行機/ヘリコプター、鉄道に、ファームウェアVer.2.0で鳥が追加された。

AFとAEが追従できる連写最高速は、メカシャッターで10コマ/秒、電子シャッターで18コマ/秒。いずれもブラックアウトありとなる。ピントと露出が固定でよければ電子シャッターで最高60コマ/秒連写も可能だ。

動画

動画はC4K(4,096×2160)・24p、4K(3,840×2160)・30pに対応。後処理前提のOM-Log、外部レコーダー併用でのRAW動画記録も可能だ。

また、マイク端子とヘッドホン端子、リモート端子はケーブルが接続された状態での防塵・防滴・耐低温性を確保。同社ならではのタフネスぶりが動画撮影でも活用できる。

電源

バッテリーはE-M1 Mark II、IIIと共通のBLH-1(7.4V・1,720mAh)×2本を使用する。撮影可能枚数は手ブレ補正オンで870枚。低消費電力撮影モードでは2,580枚(バッテリーが1本だけのときは半分になる)。

充電器(BCH-1)も2台同梱されている。充電時間は2時間と早め。USB-C端子からの給電および充電も可能だ。

その他

ボディはマグネシウム合金外装。縦位置グリップ一体型ながら1kgを切る軽快さが持ち味だ。

防塵・防滴性はスペックとしてはIPX1だが、社内テストはさらにきびしい条件で行っている。また、マイナス10度の耐低温性も備えている。

OM-D E-M10 Mark IV

2020年9月18日発売

概要

OM-Dシリーズのローエンドモデル。キットレンズ込みで500gを切る軽快さとスペック以上の実力を持つボディ内手ブレ補正が魅力だ。

ライブバルブやインターバル撮影といった特殊な撮影テクニックに気軽にチャレンジできるアドバンストフォトモードを備える。

センサーとエンジン

有効2,030万画素のLive MOSセンサーとTruePic VIIIの組み合わせ。本機を含めて現行モデルはすべてローパスフィルターレス仕様で、キレのいい描写が持ち味となっている。

感度の上限は常用ISO 6400、拡張ISO 25600(明確には区分されてはいないが)と低めで、センサーサイズの小ささが弱点になっているのは明白だ。

手ブレ補正

初代のE-M10は上下左右の角度ブレと回転ブレの3軸補正だったのが、Mark IIから上下左右のシフトブレにも対応した5軸補正に進化。本機ではさらに補正効果がMark IIIの4段分から4.5段分に強化されている。

スペックとしてはもうひとつな印象だが、実際に使ってみると数字以上の実力が感じられる。カジュアルに撮影を楽しみたいときにはありがたいし、特に手持ちでの動画撮影の際にはおおいに威力を発揮する。

AFと連写

AFは121点のコントラスト検出。測距点のカバーエリアはやや狭めだ。スピードは速いので静止被写体なら不満は感じにくいが、動く被写体への対応力は低い。

連写最高速はピント固定で15コマ/秒(電子シャッター時)。ピントと露出が追従するのは5コマ/秒までとこちらも低い。

動画・APモード・セルフィー

動画は4K(3,840×2,160)・30p。外部マイクには対応していない。

連写合成といった特殊な撮影手法を「AP(アドバンストフォト)モード」に集約。HDR撮影やデジタルシフト、ライブバルブ/ライブタイム、ライブコンポジット、インターバル撮影(ライムラプス動画生成が可能)などに気軽にチャレンジできるよう配慮されている。

液晶モニターはチルト式で、下向きに180度まで開くと自動的にセルフィー(自分撮り)モードに切り替わる。画面上のボタンにタッチして静止画、動画の撮影や再生操作が簡単に行える。

電源

バッテリーはOM-5と共通のBLS-50(7.2V・1,210mAh)。充電方式も同じ。付属のACアダプターを使ってマイクロUSB端子経由で、フル充電まで4時間かかる。

撮影可能枚数は360枚。日常使いには十分かもしれないが、旅行などで大量に撮る場合は予備バッテリーもほしくなる。BLS-50単品の価格は税込6,160円。その場合は単体の充電器BCS-5(税込5,280円)の導入も検討したい。本体充電と併用できるので、トータルの充電時間を大幅に短縮できる。

その他

ボディの外装部材は樹脂製で、OM/OM-Dシリーズで唯一防塵・防滴性がない。標準ズームのM.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZとの組み合わせで476gと軽快なのは強みと言える。

エントリークラスながら前後2つの電子ダイヤルを装備。カメラに慣れた人には使い勝手がいい。内蔵のEVFは解像度が236万ドットのOLED(有機EL)。倍率はAPS-Cサイズ一眼レフに匹敵する0.62倍相当というスペックだ。

PEN E-P7

2021年6月25日発売

概要

オリンパスから分社化したOMデジタルソリューションズから登場した最初のモデル。

PEN E-Pシリーズらしい2つの電子ダイヤルによる操作系と、PEN-Fに採用されていたプロファイルコントロール機能が盛り込まれている。

センサーとエンジン

撮像センサーと画像処理エンジンはE-M10 Mark IVと同じローパスフィルターレスの有効2030万画素Live MOS、TruePic VIIIの組み合わせ。ISO感度の設定範囲なども同じだ。

機種名的には上位のシリーズだが、心臓部の構成は下位のE-PLシリーズの流れであり、実質上はE-PとE-PLの両シリーズが統合されたかっこうと言える。

AFと連写

AFは121点コントラスト検出で、E-M10 Mark IVと同等のスペック。カメラ自体も動体撮影向けとは思えないので妥当な割り切りかもしれないが、2021年発売モデルで位相差検出がないというのは不満に感じる点だ。

連写最高速はピント固定で15コマ/秒(電子シャッター時)とまずまずだが、AFに足を引っ張られる関係で電子シャッターで6.3コマ/秒、メカシャッターで5コマ/秒と振るわない。

手ブレ補正・動画・セルフィー

ボディ内手ブレ補正の効果は4.5段分。スペック的にはおもしろみはないが、数字以上に粘り強いという評価が多いように思う。

動画は4K(3,840×2,160)・30p。外部マイクやヘッドホンには対応していないのはカジュアルユーザー向けモデルだからという割り切りなのだろう。

モニターは上向き80度から下向き180度の範囲で動かせるチルト式。対面状態にすると自動的にセルフィー(自分撮り)モードに切り替わる。

プロファイルコントロール

PENシリーズのトップモデルに位置づけられていたPEN-Fの特徴でもあったプロファイルコントロール機能を装備。前面のプロファイルコントロールスイッチで「カラープロファイルコントロール」と「モノクロプロファイルコントロール」が楽しめる。

「カラープロファイルコントロール」では特定の色だけを強調でき、「モノクロプロファイルコントロール」ではモノクロ写真でコントラストなどを調整できるカラーフィルター効果などを調整できるなど、こまやかな画像調整が簡単な操作で楽しめる。

電源

バッテリーはOM-5、E-M10 Mark IVと同じBLS-50(7.2V・1,210mAh)を使用する。撮影可能枚数は360枚。

充電は付属のACアダプターからマイクロUSB端子を使って行なう。フル充電までの所要時間はやはり4時間と長い。必要に応じて予備バッテリー(税込6,160円)や別売の充電器BCS-5(税込5,280円)を用意してほしい。

その他

ボディのカラーバリエーションはブラックとホワイトの2色。いずれもボディ部はシルバーで貼り革が黒または白となる。ちなみに、OM-5とE-M10 Mark IVはボディ部がブラックとシルバーの2色、貼り革は黒のみとなっている。

上面に2つの電子ダイヤルを備えているところはE-Pシリーズから継承した操作系で、絞りやシャッタースピード、露出補正を素早く操作できる。カメラに慣れた人にはあつかいやすいだろう。

北村智史(きたむらさとし)滋賀県生まれ。大学中退後、カメラ量販店で販売員として勤務しながらカメラ専門誌にて記事執筆を開始。その後編集者兼ライターとしてメカ記事等の執筆にたずさわる。1997年からはライター専業となる。現在は北海道札幌市在住。