赤城耕一の「アカギカメラ」

第6回:もはや不変と呼びたいキヤノンEFマウント

キヤノンEOS R5にお越しいただいてずいぶんと時が経つというのに、いまだに思い切り活躍させる場を与えてあげることができない。オーナーとしてはたいへん申し訳ないと思っております。

新型コロナウイルスのおかげで、いまだ半年間以上ペンディングになっている仕事案件があったり、当初の予定より大幅に規模が縮小、撮影予算がグッと削られてショボくなったりした仕事があったりと、なんだかモチベーションが大幅に低下中のアカギです。こんにちは。

従いまして、今に到るまでEOS R5のポテンシャルをフルに見たぜという感じがないわけですわ。これは困るなあ。もっともオーナーの怠惰というか営業努力不足もなきにしもあらずなんだけどさ、導入は早くて気張りすぎたかしら、モトが取れるのはずいぶん先になりそうだしなあ。なんて今ごろになって思うわけですわ。これはいけませんねえ、後ろ向きな考え方で。

ちなみに静止画の性能でも持て余しているのだから、8Kの動画なんて、次元的に違うんじゃないかと思うくらいなんだよね、私なんか。動画撮影にしても何としても4Kで撮って納品してくださいね、なんてことはこれまで言われたことはないですもんね。だいたいにして編集すらおぼつかないからなあ。

そんな感じですから、設備投資的に最新のRFレンズの拡充にまで手が回らないわけです。もともとはEOS一眼レフから脱却するぜ、ということでEOS Rの登場とともに速攻で走った私なのだけど、いざRFレンズは買おうと思ってもすごく高いわけですよ。それにデカいし重たいレンズが多いことで萎えてしまったわけ。お忘れですか? かの木村伊兵衛は1kg以上のカメラは人殺しだと言ってました。まもなく還暦を迎える私としてはこの意見に賛同しないわけにはいきません。

EF24-105mm F3.5-5.6 IS STM

EOS 5D登場以降、長いこと愛用してきたEF24-105mm F4L IS USMがガタついてきたので、ここはRF24-105mm F4 L IS USMに買い換えるかなあと考えたけど、予算が足りずになぜかこのレンズに。Lレンズじゃないが写りは満足。鏡胴は長いけど525gは許容。DLOのレンズ情報もある。
24mm時。散歩していて見かけた花をさらっと最短撮影距離にてスナップ。明るいレンズではないからボケ味には期待しない。24mmの画角は都市での撮影に適していると思う。DLOのデータを反映させると歪曲収差に思い切り手を入れる感じ。
EOS R5 EF24-105mm F3.5-5.6 IS STM(F5.6・1/1,000秒)ISO 400
105mm時。もともと像の均質性はとても優れている。明るいレンズではないからボケ効果というより、きっちり性能を出し尽くし、ディテールを徹底して再現してゆくようなモチーフを選びたくなるわけだ。
EOS R5 EF24-105mm F3.5-5.6 IS STM(F11・1/500秒)ISO 400

EF24mm F2.8 IS USM

平凡な明るさの単焦点レンズだが、IS(手ブレ補正)付きというアドバンテージがあるから個性的だ。小型軽量でEOS R5との相性もとてもよし。町歩きで本レンズの一本勝負をしたいものだ。DLOのレンズ情報もあるので、描写が気に食わなければ収差補正を追い込むという手もあり。
旧EF24mm F2.8をずっと使ってきたが、地味な存在のレンズがまさかフルモデルチェンジしてISまで搭載してリリースされるとは思わず、本レンズには敬意を表して発売日に来ていただいた。感動的によく写るし突っ込みどころがない。
EOS R5 EF24mm F2.8 IS USM(F8・1/200秒)ISO 200

大口径レンズって、アサインメントだとよほどの意図とか注文でもない限り、そんなに必然性ないんですよね。それにしても、なんで一眼レフと同じスペックのレンズのくせにデカくなるのかが不思議ですね。フランジバックが短くて余裕の設計ができるなら、もう少し大きさ重さもなんとかならんのかなあ。それに性能ばかりをそんなに追求しなくてもいいんじゃないのかなあ。デカくすれば画面の隅々までよく写って当たり前なんじゃないかなあと素人は嫌味の一つも言いたくなるわけですよ。中心はバリっと写って、周辺は少しくらい落ちてもいいんじゃねえの? 後は表現によって工夫するからさ。私にはとにかくレンズ性能を均質化したいと追求する姿勢こそが最大の謎なんですわ。ミラーレスはボディもレンズも小型軽量は正義だと思いますけどね。

え?「オマエさ、レンズのレビュー記事ではうるさいこと言うくせに」ですか? そう言われてもね、それはそれ、これはこれで、お仕事ですからね、ひとつの基準を示すのは。もちろん最新のミラーレス機のポテンシャルを生かし、最上級の画質を追求するには最新のミラーレス専用純正レンズを使いましょう。これは当然のことです。最新のカメラとレンズの組み合わせにおける最高の画質を見ておかねば、純正、非純正に関係なく"オールドレンズの味わい"なんてことは語れませんからねえ。でもね、自分の依頼仕事に使うレンズは、超絶な性能を有しなくてもそこそこにきっちり写るレンズならばオーケーなわけです。

で、手元に残されたEOS一眼レフ用のEFレンズをもう少しEOS R5にも流用しようと、ここにきて大きく考え方を変えてみました。EOS R導入時に、未来志向のオレにはもうEFレンズなんかイラナイぜ、と思ってそれなりの本数を処分したのだけれど、代わりになる同スペックのRFレンズをすべて購入するには至っていません。

処分したぶんのお金はどこに行ってしまったのかなあ。生活費かな。残ったEFレンズたちは、売り飛ばしても晩酌代くらいにしかなりそうにないものが多くて、あとはRFレンズでは当面は出てこないだろうなあというスペックのEFレンズは残しておいたほうがいいだろうなという、それらしい理屈はあるんですけどね。なんだかあまり説得力がないですねえ。いつものことか。

EF100mm F2 USM

登場からまもなく30年、オーソドックスな中望遠レンズ。6群8枚構成で、重量は460g。個人的な描写への信頼はデジタル時代になっても変わらない。明らかにEF85mm F1.8 USMより優れていると思いますけどね。35mmフルサイズフォーマットでは100mm前後の焦点距離は設計しやすいと聞いたことあります。
西東京市の仕事場近くにある、筆者行きつけの酒保「花岡商店」のご主人と道端でばったりお会いしたのでさくっとポートレートを撮らせていただく。レンズの存在は目立たないがシャープネスとボケのバランスがとれている名玉。DLOデータもあるけど使用する必然がない。
EOS R5 EF100mm F2 USM(F2.2・1/400秒)ISO 100

EF50mm F2.5 コンパクトマクロ

EOS黎明期から存在する標準マクロレンズ。どういうわけか同じスペックの後継レンズが現れず。正統派の50mmという焦点距離がいいし、F2.5というF値も頑張っている感がよく、重量も280gというのは感激。最大撮影倍率は0.5倍。USMじゃないからフルタイムMFはできません。8群9枚構成。
黄色くなったゴーヤに肉薄。マクロレンズにしては少し線が太めか。フローティング機構は採用されている。等倍までいけるに越したことはないのだろうが、製品名の通り可能な限りコンパクトにという思想があるのだろうな。
EOS R5 EF50mm F2.5 コンパクトマクロ(F2.8・1/40秒)ISO 1600
通常撮影。この夏は東京でも魅力的な形の雲が頻繁に見られた。これまでの撮影ではヌケが今ひとつ厚ぼったい写りという印象あり。ところが階調再現性も悪くないし、DLOを通すと像が締まる感じがする。
EOS R5 EF50mm F2.5 コンパクトマクロ(F14・1/1,600秒)ISO 400

EF135mm F2.8 ソフトフォーカス

EOS一眼レフ黎明期にラインアップ。ノーマルと、2段階のソフトフォーカス描写に切り換え可能。4枚目の非球面レンズを移動させ、球面収差をコントロールすることで効果を得る。390gと小型軽量。個人的にはソフトフォーカスレンズは嫌い。なんか、ざーとらしいじゃないすか。どうしてもソフトフォーカスにしてくれという要望があって仕方なく購入した記憶あり。古いレンズだけどDLOのデータがあるのはエラい。それなりに愛用者がいるということだろう。
ソフトフォーカスレンズはピンぼけするレンズではなく、球面収差をコントロールしてソフト効果を得るためのもの。ハイライトがじんわりと滲むがDLOを通すとよりピントの芯がはっきりとしてくる。SOFT2に設定。
EOS R5 EF135mm F2.8 ソフトフォーカス(F2.8・1/2,500秒)ISO 100

TS-E90mm F2.8L マクロ

EFマウントレンズで初めてアオリ機構を内蔵。しかも90mmという中望遠レンズに採用したことで商品撮影などでは飛躍的に利便性が向上。最短撮影距離は0.5m。作り込みは悪くないが、どこか古くささを感じさせるデザインだ。
ティルト機構を使用して、手前から奥までピントが合うように設定。ただ、シャープネスは細部までキリキリとはしてこない。現在は改良型の2代目となっていて、初代は画質的に少し見劣りします。
EOS R5 TS-E90mm F2.8L マクロ(F8・1/250秒)ISO 100
描写がユルめなんだから、じゃあ、不思議な雰囲気を作ってしまえということで、画面上方向にレンズをティルトして思い切りピントの合う範囲を狭めてみた。コントラストは低いが、この作例の効果としては良さそうだ。
EOS R5 TS-E90mm F2.8L マクロ(F3.2・1/1,000秒)ISO 100

エライぞ、キヤノンの純正マウントアダプター

ここで気付いたんだけど、EF-EOS Rマウントアダプターって、この種のアクセサリーとして、かなりエライ位置にあるんじゃなかろうかと思うわけですよ。作り込みもそれなりで感触も悪くないし。

静止画なら「マウントアダプターEF-EOS R」もしくは「コントロールリング マウントアダプターEF-EOS R」を使えばいいと思うし、動画系ならドロップインフィルターが入るタイプを使えばいいのではないかと。ちなみにこれらのマウントアダプターって、2019年度グッドデザイン・ベスト100を獲得していたりするんですね、すげー。見落としていました。今まで知りませんでしたよ。

私が主に使っているマウントアダプターは「コントロールリング マウントアダプターEF-EOS R」で、絞り環が今も大好きな未練がましいジジイとしては、このマウントアダプターにあるコントロールリングをFnで絞りに割り当て、いじくり回して楽しんでいます。ちなみにシャッターボタンを半押しにしないと絞りは動きません。これだけでもEOS一眼レフではできなかった楽しみが得られるわけです。絞り環万歳!

コントロールリング マウントアダプターEF-EOS R

もともとEFマウントは1987年の誕生時からフルに電子化されているから、絞りを動作させるような邪魔なピンもありませんよね。純正品同士なのだからマウントアダプターを使用してEOS R系カメラに使用してもスムーズにスパスパ動作するわけで、そこにストレスがないわけ。これがキヤノンのエンジニアが大いに自慢する「通信の拡張性」ってやつでしょうか。

マウントアダプターとは関係ないけど、最新のEFレンズを手元にある古いEOS-1NとかEOS RTに装着してみてもノーストレスで動作します。これも楽しいですね。普通は「古いレンズのことは面倒みますけどね、古いカメラでの動作とかは知らんな」というメーカーが多いわけです。古いカメラの面倒は誰が見るのかと突っ込まれると困るからだろうけどね。しかし、EOSは新旧互換性の維持も素晴らしいわけですね。登場から33年も経つわけですから、そろそろ「不変のEFマウント」と銘打ってもおかしくはない歴史があるわけですよ。

EF100-300mm F5.6L

1987年発売。10群15枚構成の望遠ズームレンズ。蛍石と低屈折・低分散のUDレンズを、それぞれ第1群と第3群に1枚ずつ採用する。ズーム操作は今では懐かしい直進式で、テレ側の設定では思い切り鏡胴が伸びる。開放F値が全域でF5.6。フィルム時代は厳しいスペックだけど、デジタルではものともせず。EOS R5ならファインダーも暗くならないし(笑)。DLOのデータはない。
プログラムAEで撮影すると絞りはすぐに開放になりたがるようだ。開放F5.6でレンズ自体にISは内蔵されていないから、手ブレのリスクを少しでも減らそうというプログラムラインか。テレ側の開放絞りでは周辺域は今ひとつのシャープネス。シャッキリさせるには一段ほど絞りたい感じ。
EOS R5 EF100-300mm F5.6L 300mm時(F5.6・1/160秒)ISO 800
絞り込んで撮影するとなかなかのシャープネス。コントラストや均質性も良い。DLO未使用でも歪曲収差補正は良好。不人気だったようで状態の良いレンズが残っていないが、手持ちの個体は奇跡的に曇りもなく維持されていた。
EOS R5 EF100-300mm F5.6L 135mm時(F13・1/1,000秒)ISO 400

コシナ・フォクトレンダー MACRO APO-LANTHAR 125mm F2.5 SL

アポランターシリーズの初代レンズ。今では話題のアポランターだが当時はあまり知られておらず。9群11枚構成、異常低分散ガラス2枚使用。重量690g。フォーカスリングの回転角は大きいが緻密なフォーカシングが可能。単体で無限遠から等倍まで撮影できる。マウントは多種あるが、見つけたらどのマウントでもいいから買っておいたほうがいいと思わせるほどの高性能レンズですよ。
フィルム時代から、ここぞという時に持ち出すマクロレンズ。EOS R5でもその性能は如何なく発揮できる。少し硬いのではと思わせるくらいのキリキリとした再現で、狙った場所に対してフォーカスの頂点を極めると、驚くほど線が細く見事な描写をする。125mmという焦点距離が使いやすい。キリキリとしたシャープネスが好きなあなたのために。
EOS R5 MACRO APO-LANTHAR 125mm F2.5 SL(F2.8・1/640秒)ISO 100

コシナ・カール ツァイス Distagon T* 15mm F2.8 ZE

現行品は2017年からMilvus名になり、外観がモデルチェンジしている。使用したのは旧タイプのディスタゴン名のものだが12群15枚のレンズ構成は同じ。最短撮影距離は0.25m。大きなレンズだけど、重量バランスはとても良くて使いやすい。レンジファインダーカメラ用の15mmレンズは周辺光量がどすんと落ちるものが多いけれど、本レンズは問題なし。
超広角レンズの場合は律儀にフォーカシングするというよりも、被写界深度目盛りを見つつ、どう距離設定をするか考えて撮影することが多い。周辺域まで均質性が高い描写で、素晴らしくクリアな再現だ。ツァイスの設計を感じさせる逸品。
EOS R5 Distagon T* 15mm F2.8 ZE(F8・1/640秒)ISO 200

ちなみにですが隣国の一部メーカーでは、各種メーカーのレンズとカメラの信号を解析し、異なるメーカー同士のレンズとボディの組み合わせでもAEやAFが使えちゃうマウントアダプターを用意していたりしますね。たとえばEFマウントレンズを富士フイルムのXシリーズに使ってしまうとか。実際に試してみるとほぼ問題ないもんね。

こんなことをされたらカメラメーカーはすっごくイヤだろうけど、ユーザーにとってはすごく嬉しいよなあ。異なるメーカー、異なるシステムのカメラとレンズに互換性が生まれ、機能的な制約が少なければ、現場で共用できるもんね。ロケに異なるメーカーのカメラを持っていっても専用レンズを用意するが必要ないから、荷物を減らせて楽ですもん。

メーカー純正至上主義の方も少なからずいらっしゃいますが、この時代、そんな堅苦しい考え方もどうなのかなあと思うぞ。いまだに純正レンズを使用してもカプラー方式のレンズではAFが動作しないマウントアダプターしか用意していないメーカーもあるというのになあ。あ……。また余計なことを言いそうになりました。忘れてください。

ユニバーサルマウントはもはや夢なんでしょうけど、互換性を生み出す優秀なマウントアダプターがあれば、つまらない制約から解放され自由になった自分を見つけることができるわけです。

一眼レフ用レンズ+ミラーレスのAF=ピントの信頼感アップ

そんなことで今回はうちで生き残ったEFレンズ、いやサードパーティ製のEFマウントレンズもあるので正確には"EF互換マウント交換レンズ"たちをコントロールリングアダプターEF-EOS Rを使ってEOS R5に取り付けてみました。かつてはEF50mm F1.0L USMとかEF300mm F2.8 II IS USMとかも所有していたんだけどなあ。

気を取り直していきます。まず実際の使い心地はどうだったか。先のコントロールリングでの絞り環の割り当てのようなUIの変化を利用するのも面白いけれど、とくに広角から標準あたりまでの大口径レンズたちが開放でもピントがピシパシと合うのが気持ちいいですねえ。

またF値を無理しない廉価版の単焦点レンズの相性もいい感じですね。デュアルピクセルCMOS AF IIが古いEFマウントレンズ使用時にどのくらい性能を発揮してくれるのかは知りません。AFスピードはRFレンズには当然かなわないんでしょうけど、より一層信頼できるAF制御が行われることは間違いない。

もっとも、私の撮影対象のほとんどは正直なところAFスピードなんて多少遅くてもまず問題ないわけで、うちで長く使っているEOS 5D Mark IIIの位相差AFでは、「ピントが少し怪しくね、キミ?」ということが頻繁に起こる信頼感のないレンズでも、EOS R5ではその怪しさはほとんど解消されてしまうわけです。そりゃそうだよね、デュアルピクセルCMOS AF IIは撮像面でAF測距しているんだから高精度だし正確なことは間違いありませんからね。

また古めのEFマウントレンズを使っても、デフォーカス時からの復帰が思いのほか速いですね。これ、けっこう意外でした。動いている被写体をAFで追いかけて撮影するような場合、大きくデフォーカスしちゃうと、おおっとこれはいくらなんでももう間に合わねえだろうなあと思っても、「ほら、間に合いましたぜダンナ」と、フォーカスがググっと追いかけてきて、帳尻を合わせてくる感じがします。これがすごくいいわけです。たまたまかもしれないけど、使っていてそんなに不安がありませんでした。

シグマ20mm F1.8 EX DG ASPHERICAL RF

なぜこのレンズを購入したのか記憶にないが、純正のEFレンズに代わりが務まるものが存在しなかったからだろうな。11群13枚構成、最短撮影距離も0.2mと頑張っている。うちのEOS一眼レフとなんとなく相性が悪く、完全に合焦する写真ができるのは稀だったが今回は真価をみた。当然DLOは反映できないけど、写りは悪くない。
デザインは今のArtラインのレンズを見てしまうと一時代前のもので野暮ったい。至近距離、絞り開放で狙ってみた。合焦点のシャープさは見事だけどかなり被写界深度は浅い。背景は思い切り二線ボケになって見苦しい。フィルムでの撮影よりクリアなイメージがあるのが謎。周辺光量低下もさほど目立たない印象である。
EOS R5 シグマ20mm F1.8 EX DG ASPHERICAL RF(F1.8・1/640秒)ISO 200

EF50mm F1.8 STM

"撒き餌レンズ"などと呼ばれたお手頃レンズも3代目である。基本的なレンズ構成は同じだけど、STMの採用で静かに素早く合焦するイメージ。コーティングも一新された。初代には距離指標があったが、2代目と本レンズでは省略された。小型軽量なので、ズームレンズと同時携行も苦ではない。
DLOを使うと、収差がグッと抑えられて画質が変わる。歪曲収差の補正が大きいようだ。少し絞ると、本レンズよりF値の明るい標準レンズと互角の勝負になる。
EOS R5 EF50mm F1.8 STM(F3.5・1/1,250秒)ISO 200

EOS Rシステムは、私にとってはほぼ完全な「お仕事カメラ」という立ち位置なので、今回は古いEFマウントレンズの味わいを試すなどという情緒的なユルい遊びはしていません。RAW設定で撮影し、キヤノンの純正ソフトDPP(Digital Photo Professional)で現像、DLO(Digital Lens Optimizer)でレンズデータのあるものはすべて当てはめて収差補正を画像に反映させてみました。周辺光量の補正など、私が必要ないと考える補正はオフにしてあります。あくまでも古いEFマウントレンズに実用性があるかどうかを試したかったわけで他意はないわけですが、ここまでやるならDLOには過去のEFレンズはすべてデータを入れてもらったほうがいいよなあ。不可能ではないと思うぞ。

結論をいえば、古いものでもまったく使用に耐えないというEFレンズは手持ちのものでは1本もありませんでした。DLOによる歪曲の補正とか、色収差補正、周辺域のやや乱れた画質を落ち着かせた描写を見てしまうと、私にはそれで十分に思えましたね。正直なところ相当な大伸ばしでもしない限りは元画像との差異などを気にする必要はないと思いますし、DLOをすべての画像に使うと「レンズ本来の力はどこにあるのかね?」と言われてしまいそうだけど、仕事に耐えうるだけの画質になるならそれでいいじゃないですかねえ。ダメかな。

というわけで、これでまたRFレンズの新規導入が遅れてしまいそうな気がします。ありがたいような困ったような。キヤノンさん申し訳ありません。

赤城耕一

写真家。東京生まれ。エディトリアル、広告撮影では人物撮影がメイン。プライベートでは東京の路地裏を探検撮影中。カメラ雑誌各誌にて、最新デジタルカメラから戦前のライカまでを論評。ハウツー記事も執筆。著書に「定番カメラの名品レンズ」(小学館)、「レンズ至上主義!」(平凡社)など。最新刊は「銀塩カメラ辞典」(平凡社)