赤城耕一の「アカギカメラ」
第6回:もはや不変と呼びたいキヤノンEFマウント
2020年9月20日 09:00
キヤノンEOS R5にお越しいただいてずいぶんと時が経つというのに、いまだに思い切り活躍させる場を与えてあげることができない。オーナーとしてはたいへん申し訳ないと思っております。
新型コロナウイルスのおかげで、いまだ半年間以上ペンディングになっている仕事案件があったり、当初の予定より大幅に規模が縮小、撮影予算がグッと削られてショボくなったりした仕事があったりと、なんだかモチベーションが大幅に低下中のアカギです。こんにちは。
従いまして、今に到るまでEOS R5のポテンシャルをフルに見たぜという感じがないわけですわ。これは困るなあ。もっともオーナーの怠惰というか営業努力不足もなきにしもあらずなんだけどさ、導入は早くて気張りすぎたかしら、モトが取れるのはずいぶん先になりそうだしなあ。なんて今ごろになって思うわけですわ。これはいけませんねえ、後ろ向きな考え方で。
ちなみに静止画の性能でも持て余しているのだから、8Kの動画なんて、次元的に違うんじゃないかと思うくらいなんだよね、私なんか。動画撮影にしても何としても4Kで撮って納品してくださいね、なんてことはこれまで言われたことはないですもんね。だいたいにして編集すらおぼつかないからなあ。
そんな感じですから、設備投資的に最新のRFレンズの拡充にまで手が回らないわけです。もともとはEOS一眼レフから脱却するぜ、ということでEOS Rの登場とともに速攻で走った私なのだけど、いざRFレンズは買おうと思ってもすごく高いわけですよ。それにデカいし重たいレンズが多いことで萎えてしまったわけ。お忘れですか? かの木村伊兵衛は1kg以上のカメラは人殺しだと言ってました。まもなく還暦を迎える私としてはこの意見に賛同しないわけにはいきません。
大口径レンズって、アサインメントだとよほどの意図とか注文でもない限り、そんなに必然性ないんですよね。それにしても、なんで一眼レフと同じスペックのレンズのくせにデカくなるのかが不思議ですね。フランジバックが短くて余裕の設計ができるなら、もう少し大きさ重さもなんとかならんのかなあ。それに性能ばかりをそんなに追求しなくてもいいんじゃないのかなあ。デカくすれば画面の隅々までよく写って当たり前なんじゃないかなあと素人は嫌味の一つも言いたくなるわけですよ。中心はバリっと写って、周辺は少しくらい落ちてもいいんじゃねえの? 後は表現によって工夫するからさ。私にはとにかくレンズ性能を均質化したいと追求する姿勢こそが最大の謎なんですわ。ミラーレスはボディもレンズも小型軽量は正義だと思いますけどね。
え?「オマエさ、レンズのレビュー記事ではうるさいこと言うくせに」ですか? そう言われてもね、それはそれ、これはこれで、お仕事ですからね、ひとつの基準を示すのは。もちろん最新のミラーレス機のポテンシャルを生かし、最上級の画質を追求するには最新のミラーレス専用純正レンズを使いましょう。これは当然のことです。最新のカメラとレンズの組み合わせにおける最高の画質を見ておかねば、純正、非純正に関係なく"オールドレンズの味わい"なんてことは語れませんからねえ。でもね、自分の依頼仕事に使うレンズは、超絶な性能を有しなくてもそこそこにきっちり写るレンズならばオーケーなわけです。
で、手元に残されたEOS一眼レフ用のEFレンズをもう少しEOS R5にも流用しようと、ここにきて大きく考え方を変えてみました。EOS R導入時に、未来志向のオレにはもうEFレンズなんかイラナイぜ、と思ってそれなりの本数を処分したのだけれど、代わりになる同スペックのRFレンズをすべて購入するには至っていません。
処分したぶんのお金はどこに行ってしまったのかなあ。生活費かな。残ったEFレンズたちは、売り飛ばしても晩酌代くらいにしかなりそうにないものが多くて、あとはRFレンズでは当面は出てこないだろうなあというスペックのEFレンズは残しておいたほうがいいだろうなという、それらしい理屈はあるんですけどね。なんだかあまり説得力がないですねえ。いつものことか。
エライぞ、キヤノンの純正マウントアダプター
ここで気付いたんだけど、EF-EOS Rマウントアダプターって、この種のアクセサリーとして、かなりエライ位置にあるんじゃなかろうかと思うわけですよ。作り込みもそれなりで感触も悪くないし。
静止画なら「マウントアダプターEF-EOS R」もしくは「コントロールリング マウントアダプターEF-EOS R」を使えばいいと思うし、動画系ならドロップインフィルターが入るタイプを使えばいいのではないかと。ちなみにこれらのマウントアダプターって、2019年度グッドデザイン・ベスト100を獲得していたりするんですね、すげー。見落としていました。今まで知りませんでしたよ。
私が主に使っているマウントアダプターは「コントロールリング マウントアダプターEF-EOS R」で、絞り環が今も大好きな未練がましいジジイとしては、このマウントアダプターにあるコントロールリングをFnで絞りに割り当て、いじくり回して楽しんでいます。ちなみにシャッターボタンを半押しにしないと絞りは動きません。これだけでもEOS一眼レフではできなかった楽しみが得られるわけです。絞り環万歳!
もともとEFマウントは1987年の誕生時からフルに電子化されているから、絞りを動作させるような邪魔なピンもありませんよね。純正品同士なのだからマウントアダプターを使用してEOS R系カメラに使用してもスムーズにスパスパ動作するわけで、そこにストレスがないわけ。これがキヤノンのエンジニアが大いに自慢する「通信の拡張性」ってやつでしょうか。
マウントアダプターとは関係ないけど、最新のEFレンズを手元にある古いEOS-1NとかEOS RTに装着してみてもノーストレスで動作します。これも楽しいですね。普通は「古いレンズのことは面倒みますけどね、古いカメラでの動作とかは知らんな」というメーカーが多いわけです。古いカメラの面倒は誰が見るのかと突っ込まれると困るからだろうけどね。しかし、EOSは新旧互換性の維持も素晴らしいわけですね。登場から33年も経つわけですから、そろそろ「不変のEFマウント」と銘打ってもおかしくはない歴史があるわけですよ。
ちなみにですが隣国の一部メーカーでは、各種メーカーのレンズとカメラの信号を解析し、異なるメーカー同士のレンズとボディの組み合わせでもAEやAFが使えちゃうマウントアダプターを用意していたりしますね。たとえばEFマウントレンズを富士フイルムのXシリーズに使ってしまうとか。実際に試してみるとほぼ問題ないもんね。
こんなことをされたらカメラメーカーはすっごくイヤだろうけど、ユーザーにとってはすごく嬉しいよなあ。異なるメーカー、異なるシステムのカメラとレンズに互換性が生まれ、機能的な制約が少なければ、現場で共用できるもんね。ロケに異なるメーカーのカメラを持っていっても専用レンズを用意するが必要ないから、荷物を減らせて楽ですもん。
メーカー純正至上主義の方も少なからずいらっしゃいますが、この時代、そんな堅苦しい考え方もどうなのかなあと思うぞ。いまだに純正レンズを使用してもカプラー方式のレンズではAFが動作しないマウントアダプターしか用意していないメーカーもあるというのになあ。あ……。また余計なことを言いそうになりました。忘れてください。
ユニバーサルマウントはもはや夢なんでしょうけど、互換性を生み出す優秀なマウントアダプターがあれば、つまらない制約から解放され自由になった自分を見つけることができるわけです。
一眼レフ用レンズ+ミラーレスのAF=ピントの信頼感アップ
そんなことで今回はうちで生き残ったEFレンズ、いやサードパーティ製のEFマウントレンズもあるので正確には"EF互換マウント交換レンズ"たちをコントロールリングアダプターEF-EOS Rを使ってEOS R5に取り付けてみました。かつてはEF50mm F1.0L USMとかEF300mm F2.8 II IS USMとかも所有していたんだけどなあ。
気を取り直していきます。まず実際の使い心地はどうだったか。先のコントロールリングでの絞り環の割り当てのようなUIの変化を利用するのも面白いけれど、とくに広角から標準あたりまでの大口径レンズたちが開放でもピントがピシパシと合うのが気持ちいいですねえ。
またF値を無理しない廉価版の単焦点レンズの相性もいい感じですね。デュアルピクセルCMOS AF IIが古いEFマウントレンズ使用時にどのくらい性能を発揮してくれるのかは知りません。AFスピードはRFレンズには当然かなわないんでしょうけど、より一層信頼できるAF制御が行われることは間違いない。
もっとも、私の撮影対象のほとんどは正直なところAFスピードなんて多少遅くてもまず問題ないわけで、うちで長く使っているEOS 5D Mark IIIの位相差AFでは、「ピントが少し怪しくね、キミ?」ということが頻繁に起こる信頼感のないレンズでも、EOS R5ではその怪しさはほとんど解消されてしまうわけです。そりゃそうだよね、デュアルピクセルCMOS AF IIは撮像面でAF測距しているんだから高精度だし正確なことは間違いありませんからね。
また古めのEFマウントレンズを使っても、デフォーカス時からの復帰が思いのほか速いですね。これ、けっこう意外でした。動いている被写体をAFで追いかけて撮影するような場合、大きくデフォーカスしちゃうと、おおっとこれはいくらなんでももう間に合わねえだろうなあと思っても、「ほら、間に合いましたぜダンナ」と、フォーカスがググっと追いかけてきて、帳尻を合わせてくる感じがします。これがすごくいいわけです。たまたまかもしれないけど、使っていてそんなに不安がありませんでした。
EOS Rシステムは、私にとってはほぼ完全な「お仕事カメラ」という立ち位置なので、今回は古いEFマウントレンズの味わいを試すなどという情緒的なユルい遊びはしていません。RAW設定で撮影し、キヤノンの純正ソフトDPP(Digital Photo Professional)で現像、DLO(Digital Lens Optimizer)でレンズデータのあるものはすべて当てはめて収差補正を画像に反映させてみました。周辺光量の補正など、私が必要ないと考える補正はオフにしてあります。あくまでも古いEFマウントレンズに実用性があるかどうかを試したかったわけで他意はないわけですが、ここまでやるならDLOには過去のEFレンズはすべてデータを入れてもらったほうがいいよなあ。不可能ではないと思うぞ。
結論をいえば、古いものでもまったく使用に耐えないというEFレンズは手持ちのものでは1本もありませんでした。DLOによる歪曲の補正とか、色収差補正、周辺域のやや乱れた画質を落ち着かせた描写を見てしまうと、私にはそれで十分に思えましたね。正直なところ相当な大伸ばしでもしない限りは元画像との差異などを気にする必要はないと思いますし、DLOをすべての画像に使うと「レンズ本来の力はどこにあるのかね?」と言われてしまいそうだけど、仕事に耐えうるだけの画質になるならそれでいいじゃないですかねえ。ダメかな。
というわけで、これでまたRFレンズの新規導入が遅れてしまいそうな気がします。ありがたいような困ったような。キヤノンさん申し訳ありません。