ラインナップ解説

ニコン(2022年冬)

最新フラッグシップ「Z 9」、動画向け装備の「Z 30」など

レンズ交換式デジタルカメラの主役となって久しいミラーレスカメラ。ラインナップの拡充が続く各社のミラーレスカメラをまとめました。

2011年にNikon 1シリーズでミラーレスカメラ市場に参入したニコン。センサーサイズの小ささもあって苦戦を強いられたが、2018年にフルサイズのZシリーズを投入した。

2020年に改良型のZ 7II、Z 6IIを、21年にはフラッグシップのZ 9を発売。プロユーザーを中心に高い評価を得ている。APS-Cサイズ(DXフォーマット)も3機種をラインナップ。

2強のキヤノン、ソニーの後塵を拝しているのが現状だが、長い歴史と伝統を誇るだけに、今後の巻き返しを期待するファンも多い。

Z 9

2021年12月24日発売

概要

Zシリーズのフラッグシップに位置づけられるプロ仕様モデル。有効4572万画素の裏面照射積層型CMOSセンサーに最新鋭の画像処理エンジンEXPEED 7を搭載。120コマ/秒連写が可能な「ハイスピードフレームキャプチャ+」や8K動画、すべての瞬間が見られるReal-Live Viewfinderなど、ハイエンドのスペックを備えている。

センサーとエンジン

Z 7IIの12倍の高速読み出しを実現した有効4571万画素の裏面照射積層型CMOSセンサーを搭載。解像感の高い描写が得られるローパスフィルターレス仕様だ。画像処理エンジンは最新のEXPEED 7で、Z 7II(デュアルEXPEED 6)の10倍の高速処理を可能にしている。

センサーとエンジンのスピードのおかげで電子シャッターでの動体歪みを抑制しているのが大きな特徴。起動時間も0.4秒にまで短縮した。

感度の設定範囲は常用でISO 64〜25600。ISO 32相当の減感、ISO 102400相当までの増感も可能だ。

手ブレ補正

5軸補正のボディ内手ブレ補正機能を搭載。レンズ側の手ブレ補正機能と連携する「シンクロVR」により最大6段分の補正効果を得ている。

電源オフ時に撮像センサーを固定するVRロック機構を装備。移動中の振動などによるダメージから撮像センサーユニットを保護できる。

AFと連写

AFは493点のハイブリッド。ディープラーニング技術を用いた被写体検出により、人物(顔、瞳、頭部、胴体)、犬・猫・鳥(頭部、瞳、全身)、自動車、バイク、自転車、列車、飛行機(全体、先端部、コックピット)に対応する。被写体の種類が変わっても設定変更なしでピントを合わせられる被写体検出「オート」設定も備えている。

一眼レフで高く評価されていた「3D-トラッキング」を同社のミラーレスカメラで初めて搭載したのも見どころだ。

連写最高速は20コマ/秒。CFexpress Type Bカードのスピードのおかげで、JPEGはもちろん、高効率RAWなら1,000枚以上の連写が可能だ。

また、最高120コマ/秒でAFとAEも追従する「ハイスピードフレームキャプチャ+」も搭載。画質モードがJPEG Normalで固定され、画像サイズ(120コマ/秒時はSサイズ・11MP固定)も制限されるものの、全押し1秒前の瞬間まで残せる「プリキャプチャ」機能とも組み合わせられる。

動画

動画は8K(7,680×4,320)・30pに対応。縦位置グリップ一体型ボディで効率よく放熱できることもあって、内部記録で125分もの長時間撮影を実現している。また、N-RAW形式では8.3K(8,256×4,644)・60pでの内部記録も可能だ。

4K(3,840×2,160)時は8Kオーバーサンプリングによる60p記録、クロップなしでの4K・120p記録にも対応している。

また、手持ち撮影で威力を発揮する電子手ブレ補正も備えている。

電源

バッテリーは大型のEN-EL18d(10.8V・3,300mAh)を使用。静止画の撮影可能枚数はファインダーで700枚、モニターで740枚となっている。

付属の充電器MH-33と本体充電ACアダプターEH-7Pを併用して充電する。ゼロ→フルの所要時間は4時間とやや長めだが、EH-7Pのみでカメラ内充電を行なう場合は3時間40分に少し短くできる。

なお、EN-EL18dを予備として購入する場合の価格は税込2万6,400円。MH-33は税込1万2,100円で、別途EH-7P(税込5,500円)が必要となる。

その他

GPS機能を内蔵したボディはマグネシウム合金製で、プロ用一眼レフのD6と同等の防塵・防滴性能を備えている。

EVFは369万ドットのOLEDで、倍率は0.8倍。ファインダー表示用のライブビューデータと記録用の静止画画像データを個別に処理するデュアルストリーム技術により、連写中にもリアルタイムの映像が見られる。激しい動きや速い動きでも的確にとらえつづけられるのは大きなアドバンテージだ。

液晶モニターは3.2型・210万ドット。縦位置でのハイ/ローアングルに対応できる4舳チルト式なのも特徴だ。

Z 7II

2020年12月11日発売

概要

2018年に登場したZ 7の後継にあたる多画素モデル。有効4,575万画素CMOSセンサーはそのまま、画像処理エンジンを2基に増強してパワーアップをはかっている。また、記録メディアがデュアルスロット化やバッファメモリーの増量などの改良も加えられている。

センサーとエンジン

撮像センサーは先代のZ 7と同じ有効4,575万画素のローパスフィルターレス裏面照射型CMOSで変わりはない。

一方、画像処理エンジンは、Z 7はEXPEED 6が1基だったのに対して、本機では2基を搭載。画質面での変更はないが、処理速度の向上によってAFの強化や連写可能な枚数の増加といったメリットがある。

感度の設定範囲は常用でISO 64〜25600。ISO 32相当の減感およびISO 102400までの増感も可能だ。

手ブレ補正

ボディ内手ブレ補正の効果は5段分。カメラの揺れを検知するジャイロセンサーからの情報と、撮像センサーから得られる画像解析による情報を独自のアルゴリズムを使って演算を行ない、高精度なブレ補正を行なう仕組みだ。

また、電源オフ時に手ブレ補正ユニットを固定するVRロックを備え、振動やショックなどからダメージを受けにくい構造としている。

AFと連写

画面の水平、垂直90%をカバーする493点のハイブリッドAFを搭載。

被写体認識は人物(瞳、顔)と動物に対応。Z 7ではオートエリアAFでしか使えなかったが、本機ではワイドエリアAFでも利用できるようになった。

また、電源をオフにする直前のピント位置を記憶させられる「フォーカス位置の記憶」機能を使うと、電源をオンにしたときにピントを合わせなおす必要がなく、シャッターチャンスを逃がしにくい。

高速連続撮影(拡張)モードでの連写最高速は10コマ/秒(14bit RAW時は9コマ/秒)。JPEG(FINE・Lサイズ)で113枚、12bitロスレス圧縮RAWで77枚まで連続で撮れる。

また、4K画質(800万画素)で30コマ/秒、フルHD画質(200万画素)で120コマ/秒連写をAF/AE追従で撮影可能な「高速フレームキャプチャ」も備えている。

動画

動画はフルサイズ領域を使うFXベース、APS-Cサイズ領域を使うDXベースが選択でき、解像度とフレームレートは4K(3,840×2,160)・60p。

また、動画撮影時は電子手ブレ補正も設定可能。ボディ内手ブレ補正機能と連携することで高い効果が得られる。

そのほか、外部レコーダーを接続して12bit RAW動画記録を可能にする有償設定(税込3万3,000円+送料)も用意されている。

電源

バッテリーは容量がアップしたEN-EL15c(7V・2,280mAh)を使用。パワーセーブ機能がオンの状態ではファインダー撮影時380枚、モニター撮影時440枚の撮影が可能だ。

充電は付属の充電器MH-25aで行なう。充電時間は2時間35分。別売の本体充電ACアダプターEH-7P(税込5,500円)を使うと本体充電や給電も可能となる。

2本のEN-EL15cを装填できるパワーバッテリーパックMB-N11(税込48,950円)も用意されている。

なお、EN-EL15cは税込7,260円、MH-25aは税込4,950円だ。

その他

ボディ外装はマグネシウム合金製で、防塵・防滴処理がほどこされている。

EVFは369万ドットのOLEDで、倍率は0.8倍。液晶モニターは3.2型で210万ドット。上下方向にだけ向きを変えられるチルト式だ。

Z 7はXQDカードスロットのみ(のちのファームアップでCFexpress Type Bカードにも対応した)だったのが、本機ではCFexpress Type BカードとSDカード(UHS-II対応)の2スロットに変更。バックアップ記録やJPEG+RAW振り分け記録などが可能になったのも新しい点だ。

Z 6II

2020年11月6日発売

概要

Z 7IIと同じボディの姉妹モデルでフルサイズZシリーズのスタンダードとなる。有効2,450万画素CMOS撮像センサーは先代のZ 6と同じだが、画像処理エンジンをデュアルEXPEED 6の搭載に加えて、CFexpress Type BとSDカードのデュアルスロット化などにより機能と性能を強化している。

センサーとエンジン

撮像センサーは裏面照射型の有効2,450万画素CMOSでローパスフィルターを装備する。画像処理エンジンは先代と同じくEXPEED 6だが2基構成とすることでAFまわりの機能の強化や連写可能枚数の増加などがはかられている。

感度の設定範囲は常用でISO 100〜51200。上限と下限に対して減感(ISO 50相当まで)、増感(ISO 204800相当まで)が可能だ。

手ブレ補正

ボディ内手ブレ補正は5段分の効果を持つセンサーシフト式。ジャイロセンサーの情報と撮像センサーからの画像解析による情報を併用する仕様なのはZ 7IIと共通だ。

カメラの電源オフ時に手ブレ補正ユニットを固定するVRロック機能を備えている。

なお、交換レンズにも望遠系を中心にレンズシフト式手ブレ補正機能が搭載されている。最上位のZ 9はレンズ内VRと連携するシンクロVRを備えているが、本機やZ 7IIの公式サイトのページやPDF版の活用ガイドにはそれに類する記述は見当たらない。

AFと連写

AFは画面の水平、垂直90%の範囲をカバーする273点ハイブリッド。人物のほか、動物の顔や瞳を検出してピントを合わせる瞳AFや動物AFを備えている。Z 6などではオートエリアAF時のみだったのが、本機ではワイドエリアAF時にも利用可能となっている。

連写最高速は高速連続撮影(拡張)モードで最高14コマ/秒(JPEGまたは12bit RAW時)。14bit RAW選択時は10コマ/秒となる。電子シャッターを使うサイレント撮影時はそれぞれ12コマ/秒、8コマ/秒に落ちる。

連写可能な枚数は、JPEGは画質や画像サイズによらず200枚まで、12bitロスレス圧縮RAW時は124枚、14bitロスレス圧縮RAW時は200枚(ファイルサイズが大きくなるが、連写スピードが落ちる分、撮影可能枚数が増える)となる。

また、Z 7II同様、4K画質(800万画素)で30コマ/秒、フルHD画質(200万画素)で120コマ/秒連写をAF/AE追従で撮影可能な「高速フレームキャプチャ」も装備している。

動画

動画の撮影範囲はフルサイズ領域を使うFXベースとAPS-Cサイズ領域を使うDXベースから選べる。FXベースでは4K(3,840×2,160)・30p、DXベースでは4K・60p記録が可能だ。

動画撮影時に電子手ブレ補正が設定できるのはZ 7IIと同じ。ボディ内手ブレ補正と連携して作動するので、より効果的に手ブレを軽減できる。

また、外部レコーダーを接続して12bit RAW動画記録を可能にする有償設定(税込3万3,000円+送料)も用意されている。

電源

バッテリーはZ 7II同様、EN-EL15c(7V・2,280mAh)を使用する。
パワーセーブ機能がオンのときはファインダー撮影で400枚、モニター撮影で450枚撮れる。

充電は付属の充電器MF-25aを使い、2時間35分で充電完了となる。本体充電や給電が可能となる本体充電ACアダプターEH-7P(税込5,500円)にも対応している。縦位置グリップの機能も持つパワーバッテリーパックMB-N11(税込48,950円)装着時は2本のEN-EL15cを装填できる。

その他

ボディはZ 7IIと共通で大きさも重さも同じ。外装にはマグネシウム合金カバーが使われており、各部に防塵・防滴処理がほどこされている。

内蔵EVFは369万ドットOLED。倍率は0.8倍。モニターは3.2型・210万ドットのチルト式で、画面を見ながらの自撮りには対応していない。

記録メディアはCFexpress Type BカードとSDカード(UHS-II対応)の2スロット仕様だ。

Z 5

2020年8月28日

概要

Z 6をベースに低価格化をはかったフルサイズZのベーシックモデルで有効2,493万画素CMOSセンサーとEXPEED 6を搭載する。沈胴式の新標準ズームNIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3との組み合わせで870gと、フルサイズの写りを軽快に楽しめるのが特徴だ。

センサーとエンジン

上位モデルと違ってオーソドックスな表面照射型CMOSセンサーを搭載。有効画素数は2,493万画素。画像処理エンジンはEXPEED 6だ。

常用感度の設定範囲はZ 6IIと同じくISO 100〜51200。ISO 50相当の減感は同じだが、増感側は1段低いISO 102400相当までとなっている。

手ブレ補正

ボディ内手ブレ補正の効果は5段分。ジャイロセンサーと撮像センサーからの情報を利用してブレ量を演算するシステムなのはZ 6IIなどと同じだ。

また、電源オフ時に手ブレ補正ユニットを保護するVRロック機構も搭載している。

AFと連写

AFまわりは基本的にZ 6IIと同じで、273点のハイブリッドAFを搭載する。

ただし、人物の瞳AFと動物AFについてはオートエリアAFモードに限定される。また、測距可能な最低輝度が、Z 6IIはマイナス6EV、Z 7IIがマイナス4EVなのに対して、本機はマイナス3EVまでとなっているのも違いだ(ちなみに、Z 9はマイナス8.5EVまで測距できる)。

連写スペックも違いがある。Z 6IIは高速連続撮影(拡張)で最高14コマ/秒連写が可能だが、本機は4.5コマ/秒までとかなりの開きがある。連続撮影可能な枚数はRAW(14bitロスレス圧縮)でも100コマまでとなっている。

高速フレームキャプチャもフルHD画質(200万画素)で60コマ/秒、4K画質(800万画素)で30コマ/秒となる。どちらもAFとAEが追従可能だ。

動画

Z 6IIなどと同様に撮影範囲はFXベースとDXベースから選べるが、このときはフルHD(1,920×1,080)・60pとなる。4K(3,840×2,160)・30p設定時は、撮像範囲がDXベースより少し狭い1.7倍クロップに限定される。

動画撮影時のみ電子手ブレ補正が利用できる。光学式の手ブレ補正と連携するハイブリッドVRとすることで高い補正効果を得ている。

電源

バッテリーは本機が初採用となるEN-EL15c(7V・2,280mAh)。フル充電での撮影可能枚数はファインダー使用で390枚、モニター使用で470枚だ。

充電器はMH-25aが付属している。別売でEN-EL15cを2本装填できるバッテリーパックMB-N10(税込3万3,000円)、本体充電ACアダプター EH-7P(税込5,500円)などが用意されている。

その他

ベーシックモデルながらボディ外装は上カバーと前カバーにマグネシウム合金を採用する。防塵・防滴処理もほどこされている。

内蔵EVFは369万ドットのOLEDで、倍率は0.8倍。液晶モニターは3.2型・104万ドットのチルト式。モニターの解像度以外はZ 6IIと共通だ。

XQDカード(ファームアップでCFexpress Type Bカードに対応した)のシングルスロットだったZ 6と違って、SDカードのデュアルスロットを装備。両スロットとも高速なUHS-IIに対応している。

Z fc

2021年7月23日発売(キットによる)

概要

MF一眼レフのFE/FM系をそのまま復刻したかのようなデザインのボディに有効2,088万画素撮像センサー、画像処理エンジンEXPEED 6を搭載。昔ながらの物理ダイヤル式操作が楽しめる。バリアングル式モニターの採用でVlog用途にも使いやすい。

センサーとエンジン

基本スペックはベースとなったZ 50とほぼ同じ。撮像センサーは表面照射型の有効2,088万画素CMOSで、高い解像感が得られるローパスフィルターレス仕様。画像処理エンジンにはEXPEED 6を採用する。

感度の設定範囲は常用ISO 100〜51200。ISO 204800相当までの増感が可能だ。

手ブレ補正

ベースボディのZ 50同様にボディ内手ブレ補正機能はない。

その代わり、APS-Cサイズ専用のDXレンズは3本ともレンズ側に手ブレ補正機能が搭載されている。また、フルサイズ対応レンズにも望遠系を中心に手ブレ補正機能内蔵のものがある。

AFと連写

AFは画面の水平87%、垂直85%をカバーする209点のハイブリッド。オートエリアAFに加えてワイドエリアAFにも対応する瞳AF、犬と猫に対応する動物AFを備えている。

AFとAEが追従する連写最高速は高速連続撮影(拡張)で11コマ/秒。14bit RAWでメカシャッター時は9コマ/秒、電子シャッターを使用するサイレント撮影時は8.5コマ/秒となる。

JPEG(FINE・Lサイズ)で83枚、12bit RAWでは44枚まで連続で撮れる。

動画

クロップなしで4K(3,840×2,160)・30p動画に対応。フルHD(1,920×1,080)時は音声つきで120pのハイフレームレート撮影も可能。再生時のフレームレートを24pにすれば5倍のスローモーション動画として活用できる。

動画撮影時のみ電子手ブレ補正機能が利用できる。手ブレ補正機能を持たないレンズでも安定した映像が撮れる。

電源

バッテリーにはEN-EL25(7.6V・1,120mAh)を使用。ファインダーでは310枚、モニターでは360枚の撮影が可能だ。

充電には付属のMH-32を使用する。ゼロ→フルの充電時間は2時間30分。また、USB Type-C端子からの充電や給電にも対応している。

追加で購入する場合、EN-EL25が税込6,270円、MH-32は税込5,500円。ほかに、本体充電ACアダプターEH-7P(税込5,500円)も用意されている。

その他

ボディは上面と前面の一部にマグネシウム合金を、背面には炭素繊維複合材料のセリーボを採用する。防塵・防滴についての記述は見当たらない。また、Z 50にはある内蔵ストロボも省略されている。

上面の物理ダイヤルのほか、前後に2つのコマンド(電子)ダイヤルを備えており、1/3段ステップでのシャッタースピード選択などが行なえる。

内蔵EVFは236万ドットOLEDで倍率はフルサイズ換算0.68倍相当。液晶モニターは自分撮りにも対応できるバリアングル式。Z 50(3.2型)より少し小さな3型で104万ドットのスペックだ。

SDカード(UHS-I対応)スロットはバッテリーと同居で底面からアクセスする。

ボディカラーは現時点ではシルバーのみ(海外の一部でブラックが発売されている)。好みの色の擬革に貼り替える有償サービス(税込4,950円)がある。

なお、別売のエクステンショングリップZ fc-GR1(税込1万8,700円)を使用するとホールド性を向上させられる。

Z 50

2019年11月22日

概要

Zマウントで初のDXフォーマット(APS-Cサイズ)モデル。ボディ内手ブレ補正機能を省くなどしてボディを小型軽量化。標準と望遠の2本のDXレンズを沈胴式とすることで、トータルでコンパクトに仕上げているのが特徴だ。また、Z fcでは省略された内蔵ストロボやシーンモードなども装備している。

センサーとエンジン

撮像センサーは有効2,088万画素CMOS。ローパスフィルターレス仕様ならではのキレのいい描写が楽しめる。画像処理エンジンにはEXPEED 6を搭載する。

オーソドックスな表面照射型センサーながら感度の設定範囲は常用でISO 100〜51200と広い。また、上限感度に対して2段分の増感(ISO 204800相当)も可能となっている。

手ブレ補正

Z fcと同じくボディ内手ブレ補正は備えていない。

現在発売されているZ DX 16-50mm F3.5-6.3 VR、NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR、NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VRの3本には手ブレ補正機能が内蔵されている。また、フルサイズ対応レンズも望遠系には手ブレ補正機能を備えている。

動画撮影時のみ電子手ブレ補正が設定可能。撮像画面がやや狭くなってしまうものの、手持ちでの動画撮影時の画面を安定させることができる。

AFと連写

画面の水平87%、垂直85%をカバーする209点測距のハイブリッドAFを搭載する。オートエリアAF時は人物の顔認識、瞳認識が可能なほか、ファームウェアVer.2.0以降では動物認識も可能になり、犬と猫の目にピントを合わせられるようになった。

連写最高速は高速連続撮影(拡張)時で11コマ/秒。ただし、14bit RAWを選んだときは9コマ/秒となる。連続で撮れる枚数はJPEG(FINE・Lサイズ)で71枚、12bit RAWでは35枚、14bit RAWで30枚となっている。

動画撮影モードで「レリーズモード(フレーム保存)」が連続撮影のときはフルHD画質(200万画素)で120コマ/秒、4K画質(800万画素)で30コマ/秒の高速連写がAF/AE追従で可能だ(この点はZ fcも同じ)。

動画

動画のスペックはZ fcと同等。4K(3,840×2,160)解像度、フレームレート30pでクロップなしで撮影できるほか、フルHD(1,920×1,080)では音声つき120pのハイフレームレート撮影が可能だ。

別売でSmallRigトライポットグリップ3070 リモコンML-L7セットがニコンダイレクトで販売されている。動画撮影用のグリップとして使えるほか、テーブル三脚としても活用できる。価格は税込1万1,550円。ただし、自撮り時のモニターとの干渉を避けるには、SmallRig製のマウントプレートが必要となる。

電源

電源にはEN-EL25(7.6V・1,120mAh)を使用する。撮影可能枚数はファインダー撮影時で280枚、モニター撮影時で320枚(CIPA基準が内蔵ストロボ50%使用となるため、Z fcよりも少なくなる)。

充電器MH-32が付属しており、充電時間は2時間30分。別売の本体充電ACアダプターEH-73P(税込4,950円)を使用することでmicroUSB端子経由で充電できる(給電は不可)。ただし、充電時間は3時間30分と長いので、時間短縮をはかるならMH-32を追加購入する。

その他

ボディ外装は前面と上面にマグネシウム合金カバーを採用。一部に防塵・防滴のためのシーリングがほどこされている。握りやすいグリップを備えているので、重さのある望遠系のレンズを頻繁に使うのであればZ fcよりも本機のほうが安心感が持てるだろう。

前面のFnボタンがZ fcはひとつだけなのに対して本機には2つあるのも違い。操作性にこだわるかどうかも機種選びの目安になるだろう。

内蔵EVFはZ fcと同スペック。236万ドットのOLEDでフルサイズ換算0.68倍相当のファインダー倍率となる。

液晶モニターは上下チルト式。3.2型・104万ドット。下向きに180度まで開くと自動的にセルフィーモードに切り替わる。シャッターボタン以外の操作がロックされて誤操作を防げるようになっている。

Z 30

2022年8月5日発売

概要

Z 50をベースに小型軽量化と低価格化をはかったモデル。EVFを省いて、その代わりにバリアングル式モニターを装備。自撮り動画に対応しやすいほか、フルHD動画時に最長125分まで連続で撮れるなどVlogユーザーにもアピールする機能が盛り込まれている。

センサーとエンジン

撮像センサーはZ 50と同じく有効2,088万画素のローパスフィルターレス仕様。画像処理エンジンのEXPEED 6も共通だ。

感度の設定範囲は常用でISO 100〜51200。最大2段の増感でISO 204800相当まで設定できる。動画撮影時はISO 100〜25600までとなる。

AFと連写

AFは209点測距のハイブリッド。人物の瞳AFと動物AFはオートエリアAFだけでなくワイドエリアAF時にも利用できる。

AFとAEが追従する連写最高速はメカシャッター、高速連続撮影(拡張)時の11コマ/秒。ただし、14bit RAW時は9コマ/秒となる。また、電子シャッターを使用するサイレント撮影時はJPEGおよび12bit RAWで11コマ/秒、14bit RAWで8.5コマ/秒となる。

連写可能な枚数は、JPEG(FINE・Lサイズ)で82枚、12bit RAWで44枚、14bit RAWで36枚だ。

動画モードでのレリーズモードが連続撮影の場合、画像サイズ/フレームレートの設定に合わせて高速連写が可能。フルHDでは最高120コマ/秒、4Kでは30コマ/秒となる。

動画

動画はクロップなしの4K(3,840×2,160)・30pで最長35分まで連続で撮れる。フルHD(1,920×1,080)・24pなら最長125分までの長時間録画も可能だ。

ただし、バッテリーがそこまで持たないので、モバイルバッテリーなどから給電する必要がある。

ボディ内手ブレ補正はないが、動画時には電子手ブレ補正が利用できる。画角はやや狭くなるものの、画面の安定感が増す。

動画向け機能・オプション

Z 50などとのいちばんの違いは内蔵マイクが大型化されていること。性能のよさもあるが、SmallRigから専用のコールドシューアダプター付きウインドシールド(税込1,490円)が発売されているのも有利な点。動画の音にこだわりたい人にはおすすめできる。

前面の「Nikon」のロゴ下に動画撮影中を示す赤いRECランプが装備されている。これもZ 50などにはない動画を意識した要素だ。動画撮影ボタンもほかのモデルより大きめで押しやすくしてある。

また、吊り環も同社では標準的な三角リング対応タイプではなく、スリットタイプに変更されている。三角リングは風などで揺れて音を立てる可能性があるためとのこと。

そのほか、ニコンダイレクトで販売されているSmallRigトライポットグリップ3070 リモコンML-L7セット(税込1万1,550円)も利用可能。動画撮影時にはハンドグリップとして、またテーブル三脚としても活用できる。

電源

バッテリーはZ 50、Z fcと同じくEN-EL25(7.6V・1,120mAh)を使用する。静止画の撮影可能枚数は330枚。動画の撮影可能時間は75分となっている。

めずらしく充電器は付属しておらず、充電は付属のUSBケーブルをパソコンなどにつないで行なう。PDF版の活用ガイドには、5V・500mAの端子の場合は7時間40分かかるとあるので、時間短縮を考えると別売の本体充電ACアダプターEH-7P(税込5,500円)を用意するのがおすすめだ。こちらを使えばゼロ→フルの所要時間は1時間40分ですむ。単体の充電器MH-32も選べる。

その他

ボディの外装素材や防塵・防滴についての記述は見当たらない。コンパクトボディながらグリップのサイズはしっかりめで指が深く掛けられる形状。グリップ前側と上面に2つのコマンド(電子)ダイヤル、前面に2つのFnボタンがレイアウトされている。

液晶モニターはZ fcと同じく3型・104万ドットで、三脚撮影時にも対面撮影が可能なバリアングル式。

Z fcと同じくUSB Type-C端子を備えており、モバイルバッテリーやPCなどから給電や充電が可能だ。

北村智史(きたむらさとし)滋賀県生まれ。大学中退後、カメラ量販店で販売員として勤務しながらカメラ専門誌にて記事執筆を開始。その後編集者兼ライターとしてメカ記事等の執筆にたずさわる。1997年からはライター専業となる。現在は北海道札幌市在住。