ラインナップ解説

パナソニック【35mmフルサイズ機】(2022年冬)

フラッグシップ「LUMIX S1R」、スタンダード機「LUMIX S5」など

レンズ交換式デジタルカメラの主役となって久しいミラーレスカメラ。ラインナップの拡充が続く各社のミラーレスカメラをまとめました。

ミラーレスカメラの歴史を開いたパナソニックは、先駆けとなったマイクロフォーサーズのGシリーズに加えて、ライカ・シグマとのアライアンスから生まれたフルサイズのSシリーズを擁する。

今回はLマウントを採用したSシリーズについて紹介する。Sシリーズは高解像仕様のS1R、静止画と動画のハイブリッドモデルのS1の2機種でスタート。少し遅れてS1ベースの動画特化モデルとしてS1Hが追加された。また、手ごろなサイズ感のS5も選択できる。

LUMIX S1R(DC-S1R)

2019年3月23日発売

概要

Lマウントを採用したフルサイズミラーレスカメラSシリーズのフラッグシップに位置づけられる多画素モデル。マグネシウム合金製の大柄なボディに、高性能EVFやDual I.S.2、30コマ/秒連写が可能な6Kフォトなどを搭載する。

センサーとエンジン

撮像センサーは有効4,730万画素のローパスフィルターレスCMOS。センサー表面に反射防止コーティングをほどこして逆光時のフレアを抑えている。

画像処理を受け持つヴィーナスエンジンは世代番号などがないため、どの程度のパワーのエンジンなのかがつかめないのはちょっとややこしい。

感度の設定範囲は常用でISO 100〜25600。拡張でISO 50相当とISO 51200相当も設定できる。

手ブレ補正

ボディ内手ブレ補正の効果はファームウェアVer.1.2以降を適用すると6段分。レンズ側の2軸補正を併用するDual I.S.2では7.5段分の効果が得られる。

動画撮影時のブレをより強力に補正する手ブレ補正ブースト機能のほか、手ブレの状態をわかりやすく表示する手ブレ状態スコープ機能なども備える。

センサーシフトのメカを利用して連写合成するハイレゾモードを備え、8回露光で1億8,700万画素相当の高精細画像を記録できる。動きのある部分は合成処理を行なわないモードも選択できる。

AFと連写

AFは225点のコントラスト検出方式。独自の空間認識技術を応用しており、旧来のコントラスト検出方式に比べると驚くほど高速なピント合わせが可能だ。

動体に対する追従性は残念ながら位相差検出に譲ると言わざるをえないが、位相差画素による画質劣化がまったくないというメリットは見逃せない。

被写体認識は人物(顔、瞳、頭部、人体)および動物(犬科、猫科、鳥類の顔、全身)に対応。人物は15人まで検出可能。基本的に近いほうの目にピントを合わせるが、タッチやジョイスティック押し操作でピントを合わせる目を変更できる。また、動物は3匹まで検出する。

連写はAF追従で6コマ/秒、ピント固定でも9コマ/秒と遅い。連写可能な枚数も公称値はJPEG(FINE)で50枚以上、RAWで40枚以上(いずれもXQDカード使用時)と多くない。

その代わり、1,800万画素で30コマ/秒連写の6Kフォトと800万画素で60コマ/秒連写の4Kフォトを装備。前者は10分まで、後者は15分までの長時間連写が可能なほか、プリ連写機能も併用できるため、鳥が飛び立つ瞬間などを確実に捉えられるのが強みだ。

動画

動画は4K(3,840×2,160)・60p記録を他社に先駆けて実現。とは言え、今ではもう珍しいものではないし、15分までの時間制限があるのも物足りなく感じる。

内蔵のステレオマイクはL/Rチャンネルに、ノイズキャンセリングマイクを追加。カメラ内部で発生するメカ音などを差し引くことでノイズの少ない音声が記録できる。

手ブレ補正ブースト機能を使うとフレーミングを固定して撮る際の手ブレを非常に強力に補正してくれる。使うレンズにもよるが、フィックス撮影なら三脚がいらないぐらいの安定感が得られる。

電源

バッテリーはボディ同様に大柄なDMW-BLJ31(7.4V・3,050mAh)を使用する。容量的には十分に高いが、静止画の撮影可能枚数はファインダー使用で340枚、モニター使用で360枚と、スペック上はあまり多くない。省電力ファインダー撮影設定時は1,100枚の撮影が可能になる(いずれもXQDカード使用時)。

付属の充電器はUSBケーブルとACアダプター、電源コードがセットになっていて、可搬性がよくないのは難点だ。この組み合わせでの充電時間は2時間10分。USBケーブルとACアダプター、電源コードの3点だけで本体充電および給電も可能で、この場合は2時間20分で充電完了となる。

バッテリーDMW-BLJ31、充電器DMW-BTC14ともオープン価格で、大手量販店ではそれぞれ税込7,400円程度、税込1万500円程度で購入できる。

その他

堅牢かつ軽量なマグネシウム合金をボディ外装に使用。各部にシーリングをほどこすなどして防塵・防滴性を確保している。また、マイナス10度までの耐低温設計としている。

グリップの前後に2つの電子ダイヤル、背面にホイール型のコントロールダイヤルを備える。割り当て機能を変えられるボタンが多数あり、好みに応じて柔軟にカスタマイズできる。

EVFは576万ドットのOLED(有機EL)。倍率は0.78倍。外観からもわかるとおり、ファインダー部はかなり贅沢な設計がなされており、クリアで歪みのない視野が楽しめる。また、メガネをかけていてもケラレがほとんどないのも見どころだ。

液晶モニターは3.2型・210万ドット。3軸チルト式で、3方向に向きを変えられる。縦位置撮影時にもハイ/ローアングルに対応できるのはありがたい点だ。

別売で縦位置撮影用の操作部材を備えたバッテリーグリップDMW-BGS1(オープン価格。大手量販店で税込3万3,000円程度)が用意されている。グリップとカメラ本体の両方にバッテリーを装填すれば長時間の撮影にも対応できる。

LUMIX S1(DC-S1)

2019年3月23日発売

概要

Sシリーズの中核を担う「静止画・動画ハイブリッドモデル」。有効2,420万画素CMOSセンサーを搭載したマグネシウム合金ボディはS1Rと共通で、高性能なEVFやボディ内手ブレ補正、3軸チルト式液晶モニターなどを備える。

センサーとエンジン

S1Rとの最大の違いが撮像センサー。ローパスフィルターレス仕様で反射防止コーティングがほどこされているのは同じだが、有効画素数は約半分の2,420万画素となっている。

その分、高感度には強めで、常用感度の上限はS1Rより1段高いISO 51200、拡張感度の上限は2段高いISO 204800となっている。

なお、画像処理エンジンはヴィーナスエンジンだ。

手ブレ補正

ボディ内手ブレ補正の効果は6段分。レンズ側の手ブレ補正を併用するDual I.S.2では7.5段分となる。いずれもファームウェアVer.1.2以降の適用が必要となる。

S1R同様、動画撮影時の手ブレ補正ブーストや手ブレ状態スコープなどを備える。センサーシフトのメカを応用して8回の連写合成を行なうハイレゾモードでの記録画素数は9,600万画素となる。

AFと連写

やはりS1Rと同じく225点測距のコントラストAFを採用。独自の空間認識技術により、素早いピント合わせを実現している。

被写体認識は人物の顔、瞳、頭部、人体、動物(犬科、猫科、鳥類)の顔、全身に対応する(人物の頭部認識にはファームウェアVer.1.6以降が必要)。

また、ファームウェアVer.1.3からコンティニュアスAF時にフォーカスリングを回して手動ピント合わせを可能にするAF+MF機能が追加された。動体撮影中にピントが大きく外れた際に手動で合わせ直したりといった操作が可能になった(この点はS1Rも同じだ)。

連写最高速はAF追従で6コマ/秒、ピント固定でも9コマ/秒と遅い。XQDカードを使用した場合の連続で撮れる枚数はJPEGでは999枚以上、RAWで90枚以上となる。

また、動画機能を応用した6Kフォト(1,800万画素)で30コマ/秒、4Kフォト(800万画素)で60コマ/秒の高速連写も可能。プリ連写機能を使えば全押し前の瞬間も残せる。

動画

動画の解像度とフレームレートは4K(3,840×2,160)・60pでS1Rと同じだが、記録可能時間は29分59秒までとなる。4K・30pでの撮影であれば時間制限はないので安心して長時間撮影が可能だ。

また、アップグレードソフトウェアキーDMW-SFU2(パナソニックストアプラス直販価格:税込2万3,000円)とファームウェアVer.2.0を適用することで外部レコーダーに5.9K(5,888×3,312)・29.97pのRAWデータ出力が可能になったほか、6K(5,952×3,968)・23.98pや5.9K・29.97pをSDカードに内部記録できる。この点はS1Rと異なる部分だ。

電源

バッテリーはDMW-BLJ31(7.4V・3,050mAh)。静止画の撮影可能枚数はファインダー使用で360枚、モニター使用で380枚。省電力ファインダー撮影設定時は1,100枚となる(いずれもXQDカード使用時)。

付属の充電器はUSBケーブル、ACアダプター、電源コードの4アイテム構成で少々かさばってしまう。旅行などにはパソコンなどからUSB充電するのも手だが、その場合はあらかじめテストして充電時間がどの程度になるかを把握しておくといい。

その他

ボディ外装はマグネシウム合金製。防塵・防滴・耐低温性を確保しており、悪条件下での撮影にも不安はない。

EVFは576万ドットOLEDで倍率は0.78倍。液晶モニターは3.2型・210万ドットの3軸チルト式。対面しての自撮りには対応できないが、横位置でも縦位置でも素早くハイ/ローアングル撮影に移行できるのは強みだ。

縦位置グリップの機能を持つバッテリーグリップDMW-BGS1のほか、ステレオガンマイクロホンDMW-MS2(オープン価格。大手量販店で税込3万800円程度)やXLRマイクロホンアダプターDMW-XLR1(オープン価格。大手量販店で税込3万4,000円程度)などのアクセサリーも用意されている。

LUMIX S1H(DC-S1H)

2019年9月25日発売

概要

S1をベースに動画撮影向けの機能や性能を盛り込んだプロ仕様モデル。6K・24p動画の内部記録やデュアルネイティブISO、長時間録画を可能にする冷却ファン、チルトとバリアングルの両方の機能を備えた液晶モニターなどの特徴を持つ。

センサーとエンジン

撮像センサーは有効2,420万画素のCMOSセンサーで、ほかのSシリーズと違ってローパスフィルターあり仕様。動画撮影時に問題になりやすいモアレや偽色の抑制を重視したかっこうだ。画像処理エンジンはヴィーナスエンジン。S1やS1H、S5との違いは不明だ。

静止画の感度設定範囲は常用でISO 100〜51200。拡張でISO 50〜204800までで、S1と同じだ。

手ブレ補正

手ブレ補正はセンサーシフト式で効果は6段分。ジャイロセンサーと加速度センサーからの情報に加えて撮像センサーからの動きベクトル情報も加味して高精度なブレ量演算を行なう。

ボディの5軸補正とレンズの2軸補正を組み合わせるDual I.S.2も搭載。LUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.の望遠端では7.5段分の効果を実現している。

AFと連写

ほかのSシリーズ同様、225点のコントラスト検出AFを搭載。空間認識技術を応用することでコントラスト検出ながら高速かつ高精度なピント合わせを実現している。

一方、連写最高速はAF追従で6コマ/秒と遅く(ピント固定では9コマ/秒)、動画撮影時の挙動も含め、まだまだ改善の必要があると言える。

連写可能な枚数はJPEGで999枚以上、RAWおよびRAW+JPEGでは60枚以上となる(UHS-II対応カード使用時)。また、1,800万画素記録で30コマ/秒の6Kフォト、800万画素記録で60コマ/秒の4Kフォトも備えている。

動画

内部記録で3:2比率の6K(5,952×3,968)・24pや16:9比率の5.9K(5,888×3,312)・30pが可能。また、フルサイズの画面幅でC4K(4,096×2,160)・30p、Super 35mmでのC4K・60pなどにも対応している。

高感度撮影時の画質向上の決め手となるデュアルネイティブISOを搭載。2つのベース感度(ISO 100とISO 640)の選択が可能なほか、明るさに応じて自動的にベース感度を切り換えることも可能だ。

カメラ本体とモニターのあいだに冷却ファンが追加されているのが特徴。強制的に冷却することで動画撮影時間が無制限になったのは大きい。

また、上面と前面左手側の2か所に動画記録ボタン、前面と背面の2か所に動画撮影中を示すタリーランプを持つなど、動画カメラとしての装備も充実している。

電源

使用バッテリーはDMW-BLJ31(7.4V・3,050mAh)で共通。静止画の撮影可能枚数はファインダー使用で380枚、モニター使用で400枚。省電力ファインダー撮影設定時は1,150枚となる。

付属の充電器もS1R、S1と同じ。ゼロ→フルで2時間10分。USB Type-C端子からの充電や給電にも対応している。

その他

ボディ外装はマグネシウム合金で、防塵・防滴・耐低温設計。内蔵EVFは576万ドットOLED。倍率は0.78倍。大柄な分気持ちよくのぞけるファインダーに仕上がっている。

液晶モニターはS1R、S1と違ってチルト式とバリアングル式の両方のメカニズムを持つチルトフリーアングル式。構造上カメラの大型化につながるのは難点だが、ハイ/ローアングルへの対応力はもちろん、対面撮影が容易なうえに接続したケーブルと干渉しないメリットもある。

サイズは3.2型で同じだが、解像度はやや高めの233万ドット(S1RとS1は210万ドット)。バックライトの最大輝度が1.5倍に強化されて明るい野外での視認性が向上している。

ただし、複雑な構造のモニターと冷却ファンが加わった関係で、150g近く重さが増しているのは残念に思える。

LUMIX S5(DC-S5)

2020年9月25日発売

概要

S1の高い画質と性能を受け継ぎつつ小型軽量化をはかったスタンダードモデル。バリアングル式モニターを備えた軽快なボディに広角側を広げた標準ズームとの組み合わせで自撮り動画などにも対応できるのが強みだ。

センサーとエンジン

撮像センサーと画像処理エンジンははS1と同じくローパスフィルターレス仕様の有効2,420万画素CMOSとヴィーナスエンジンの組み合わせ。

センサー表面の反射防止コーティングも共通だが、センサークリーニング機能が超音波振動式からセンサーシフト式に変更されており、電源との連動もなくなっている。

感度の設定範囲は常用でISO 100〜51200、拡張でISO 50〜204800までで共通だ。

手ブレ補正

ボディ内手ブレ補正の効果は5段分。S1シリーズ(6段分)よりやや落ちる。レンズと連動してはたらくDual I.S.の効果はLUMIX S PRO 70-200mm F2.8 O.I.S.の望遠端で6.5段分と、こちらもやや低い数字となっている。

センサーシフトのメカを応用して8回の連写合成を行って高精細画像を生成するハイレゾモードを搭載。S1シリーズではファイル形式がRAWのみでシャッタースピード下限も1秒までという制限があるが、本機ではJPEG記録にも対応。シャッタースピード下限も8秒までに延長され、使い勝手が向上している。

AFと連写

空間認識技術を応用した225点測距のコントラストAFはS1シリーズと共通。人物に対しては顔、瞳、頭部、人体の認識が可能なほか、動物(犬科、猫科、鳥類)に対しては顔と全身を認識できる。

連写最高速はAF追従で5コマ/秒、ピント固定で7コマ/秒。スポーツ系の撮影には不向きと言わざるをえない。連続で撮れる枚数はJPEGでは999枚以上、RAWおよびRAW+JPEGでは24枚以上となっている(いずれもUHS-II対応カード使用時)。

1,800万画素記録の6Kフォトで30コマ/秒、800万画素記録の4Kフォトで60コマ/秒連写が可能。プリ連写を利用すれば全押し前の瞬間も記録できるのは便利な点だ。

動画

動画は4K(3,840×2,160)・59.94pを内部記録で実現。30分までの時間制限があるが、4K・29.97p(4:2:0、8bit)記録であれば時間無制限で撮影できる。

高感度撮影時の画質向上に寄与するデュアルネイティブISO、Sシリーズ初のスロー&クイックモードなども備えている。

電源

バッテリーはオーソドックスなサイズのDMW-BLK22(7.2V・2,200mAh)を使用する。静止画の撮影可能枚数はファインダー使用で470枚、モニター使用で440枚。容量のわりには多い。また、省電力ファインダー撮影設定時には1,500枚の撮影が可能だ。

充電はコンセントに直差しするタイプのACアダプターとUSBケーブル、充電器の3アイテムを使う。この状態での充電時間は3時間50分。ACアダプターとUSBケーブルだけを使って本体充電、給電も可能で、この場合の充電時間は4時間となる。

なお、別売の充電器DMW-BTC15(オープン価格。大手量販店で税込1万1,800円程度)はカメラに付属のものと仕様が異なり、充電時間が2時間55分に短縮できる。また、DMW-BLK22(オープン価格)は大手量販店で税込7,800円程度で購入できる。

その他

ボディ外装はマグネシウム合金製で防塵・防滴処理がほどこされている。が、S1シリーズのような耐低温性は省略されている。

前後2つの電子ダイヤルとホイール型のコントロールダイヤル、カーソル(十字)ボタン、ジョイスティックに加えて、ボタン類も多い。ほとんどが機能の割り当てを変更でき、柔軟なカスタマイズが楽しめる。

S1シリーズに比べて大きな不満を感じるのがEVF。倍率は0.74倍とまずまずだが、解像度は236万ドットと低いうえ、メガネをかけているとケラレが生じやすい。また、3型・184万ドットのバリアングル式モニターを開いた状態でも自動切り替えとなるため、ローアングル撮影時などにアイセンサーが反応してモニターが消えてしまうのも改善してほしい点だ(S1シリーズはモニター固定表示にできるのでストレスが少ない)。

記録メディアはSDカードのデュアルスロット。スロット1はUHS-IIに、スロット2はUHS-Iに対応する。

別売でバッテリーグリップDMW-BGS5(オープン価格。大手量販店で税込3万4,800円程度)やトライポッドグリップDMW-SHGR1(オープン価格。大手量販店で税込9,100円程度)などが用意されている。

北村智史(きたむらさとし)滋賀県生まれ。大学中退後、カメラ量販店で販売員として勤務しながらカメラ専門誌にて記事執筆を開始。その後編集者兼ライターとしてメカ記事等の執筆にたずさわる。1997年からはライター専業となる。現在は北海道札幌市在住。