ミニレポート
SIGMA fpで、レンズ交換式Web会議に挑戦
14mmから200mmまでやってみた 接続・設定の手順解説も
2020年5月12日 00:00
昨今、インターネットを利用したオンラインミーティングのニーズが拡大していることは皆さんもご存知だろう。これをパソコン上で行うには、専用のソフトウェアをインストールし、映像を送るためのWebカメラ、音声を送るためのマイクといった準備が必要となる。ただ、現在は需要の急増によってWebカメラが品不足とも言われている。
そのなかで、SNSにてシグマのミラーレスカメラ「fp」をWebカメラに転用しているユーザーがいるという話題が流れてきた。しかもUSBケーブルを1本繋ぐだけで、映像も音声も配信することができるという。そこで今回はこのfpを実際にWebカメラとして使用する方法や、fpならではの利点について考えてみることにしよう。
※この記事内におけるカメラ、パソコン、ソフトウェアの設定・使用法等は筆者環境での検証によるもので、公式な動作保証ではありません。試される場合は各々の自己責任において安全に行ってください。
改めて説明しておくと、fpは有効約2,460万画素の35mmフルサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラだ。Lマウントを採用することでシグマレンズに加え、ライカ製、パナソニック製のLマウントレンズを使用することもできる。また、スチル撮影に加えてシネマクオリティの4Kムービーも撮影可能と、写真と動画のハイブリッドなカメラとなっているのが特徴。
ファインダーは光学式・電子式のいずれも搭載されておらず、背面の液晶モニターを使用して撮影・再生確認を行う。これに伴い外観はシンプルかつコンパクトな直方体となっているのがこのfpの特徴の一つでもある。
SIGMA fpをパソコンに繋いで「Zoom」を使ってみる
今回、Web会議ソフトはZoomビデオコミュニケーション社の「Zoom」を使用して検証を行うことにする。Windows、MacOS、Linuxといったパソコンやスマートフォン、タブレットPCなどで幅広く利用できるうえ、最大100人までが同時にWeb会議に参加可能だ。その際でもアカウント登録が必要なのはホストユーザーのみで、参加者はホストからの招待メッセージを受け取ることで、アカウント登録をせずともWeb会議に参加できるといった手軽さが人気となっている。また機能制限はあるものの、基本的には無料で使える点もメリットとして大きい。
fpとパソコンとは、1本のUSBケーブルで繋ぐだけだ。今回はfpのUSB Type-C端子とパソコンのUSB3.0/TypeAポートを、fpに付属しているUSBケーブルで接続した。その上でfpをCINEモードに切り替えて電源をONにすると、背面モニターにUSBモードの選択肢が表示される。
ここでは「ビデオクラス(UVC)」を選択するのだが、これはビデオカメラやWebカメラなど、主にUSBカメラの通信方式であり、これに対応したカメラであればホストドライバを必要とせずに映像を転送することができる。実はこのビデオクラス(UVC)に対応していることが、fpがWebカメラとして簡単に使えるメリットでもある。
編集部より:Web会議ソフト関連記事
・オンラインビデオ会議サービス「Zoom」の背景をお気に入りの写真に変えてみよう
・無料公開中のWeb会議用背景まとめ(企業編1)
いろんなシグマレンズで試してみよう
一般的なWebカメラとfpのいちばん大きな違いは、ミラーレスカメラならではの自在なレンズ交換だ。そこでいくつかのレンズに換装して撮影してみることにした。比較対象として、MacBook Airに内蔵されたWebカメラでの映り具合も掲載している。
テスト環境は以下となる。室内環境光は天井の蛍光灯(色評価用蛍光灯)と、逆光用にデスクライト(昼白色蛍光灯)を使用。画像はいずれもZoomサーバを経由した実際のWeb会議のパソコン画面をキャプチャしたものだ。いずれも人物(モデル:筆者)からおよそ1mの位置に、三脚に取り付けたfpと、比較用のMacBook Airを並べて撮影している。なおここでは、fpのカラーモードは人肌が明るくなるPortraitに設定してある。
・Web会議ホスト:Windows10搭載デスクトップパソコン+SIGMA fp F2.8・1/60秒・ISO 1600で固定(画像内で右側の画面)
・Web会議参加者1:ノートパソコンMacBook Air+内蔵Webカメラ 画角は固定 露出はMac任せ(画像内で左側の画面)
・Web会議参加者2:デスクトップパソコンMacPro Webカメラは非接続 Zoom画面キャプチャ用としてWeb会議に参加
汎用性の高い「24-70mm F2.8 DG DN|Art」
広角端の24mmで撮影。画角はMacBook Airの内蔵Webカメラ(左側の画面)のものに近い。背景の写り具合を比べると、fpで撮影した画像の方がMacBook Airの内蔵Webカメラの画像よりボケているのが判るだろう。また逆光用に入れたデスクライトの光の滲みが少なくゴーストも出ていない。おでこのハイライトの白飛びも少ないことがわかる。筆者としてはこれだけでもfpを使うメリット高し。
望遠端の70mmで撮影。画角が狭まり人物の上半身だけを映せるので、部屋の余分なものを見られずに済む。望遠になることで被写界深度も浅くなるため、背景がボケて人物が浮き立つような効果もある。服の色味やディテールがよく出ているのは、さすがミラーレスカメラ。
大人数でもはみ出さずに映れる「14-24mm F2.8 DG DN|Art」
広角端の14mmで撮影。MacBook Airの内蔵Webカメラとくらべると圧倒的に画角が広がる。カメラとの距離があまり取れないときや、家族など数人で一緒にカメラに映るといった用途に向いている。広角レンズ特有の遠近感が強調された画像になるので、手に持った物をドーンと迫力で見せるといった効果を狙うこともできるだろう。
ただし被写界深度の深さにより室内の様子までまるごと配信されてしまうので、見られては困る物などはあらかじめ隠しておくことをオススメする。あーあ、部屋が散らかっているのバレバレじゃん。
みんなの視線を独り占め「105mm F1.4 DG HSM|Art」
シグマファンにとても人気の「BOKEH-MASTER」こと105mm F1.4 DG HSM|Artをfpに装着して撮影してみた。そもそもポートレート撮影に最適なレンズだけに、無駄とも言えるほどに背景のボケ味がきれいになり立体感も生まれる。画角も大きく限定されるので(筆者の顔の大きさだと)ほとんどフレームいっぱいが顔になる。普通に考えればWeb会議で、どアップなおっさん顔でドヤっとされたらイラっとされてしまうかもしれないが、あえてfpを使うならこのくらいやってみても面白そう。
また、こうしたレンズを使う場合は、自分の顔を映さずにテーブルフォト的なものを映しておくという使い方も良いかもしれない。テーブルコーディネートや自作アイテムなどの説明や、オンライン撮影セミナーなどに活かす方法もあるだろう。それから、Webカメラとしてはあり得ない機材の大きさになるので、撮影風景そのものもネタとして笑いを取れると思う。
Zoomの画面もズームイン「70-200mm F2.8 DG OS HSM|Sports」
fpにはソニーEマウントレンズやシグマSAマウントレンズをLマウントに変換して装着できるマウントコンバーターMC-21が用意されている。これを使って70-200mm F2.8 DG OS HSM|Sportsを装着してみた。
さすがに望遠端200mmともなると室内での撮影は難しいので、ここでは自宅の庭にテーブルを出して「偽リゾートワーク風」にしてみた。画角が大きく狭められるので、庭木の明るい箇所が背景になるアングルを選んで撮影。背景も大きくボケるので非日常感を演出できる。すでに自宅待機が長引いていることから、たまにはこんな気分転換もいいでしょ。
コツは必要だが最高に遊べる"Webカメラ"。顔/瞳AFも大活躍
さて、今回はfpがWebカメラとして使えると聞きつけ、カメラらしく色々なレンズを組み合わせてみた。ご覧のようにレンズ交換式のミラーレスカメラならではの楽しみ方ができることがおわかりいただけただろう。
例えばfp以外のミラーレスカメラでも、HDMI出力をキャプチャーボードを経由させたり、パソコンとのリモート接続で表示させたライブビュー画像を仮想Webカメラの映像として配信するといった方法もあるが、USBケーブル1本だけでライブ映像を配信できるfpの手軽さは魅力的だ。
ところでfpをWebカメラとして使用する際のピント合わせの方法だが、当初は"置きピン"で撮影していた。しかし、fpカメラメニュー内の[SHOOT]-[フォーカス(CINE)]-[常時AF(CINE)]に加え、[顔/瞳AF]をオンにして試したところ意外にも(シグマに失礼)、ゆっくりな動きではあるが、AFで顔にピントを合わせてくれるのだ。
いくつかのレンズで試してみたところ、広角〜標準レンズであれば2〜3秒で合焦、中望遠〜望遠200mmであっても10秒程度で合焦する。Webカメラ用途であれば、この程度のAF速度でもさほど気にならないだろう。それまでは顔が来る想定の位置に置きピンをしては画像を見て修正を繰り返してしていたのだが、あの苦労はなんだったのか。ちょっと感動してしまったよ。
さらに意地悪にも、200mm F2.8で目の周辺をクローズアップしてみたのがこちらの画像である。AF動作は実にのんびりゆっくりではあるが、メガネ越しでもほぼ手前側の瞳に、きちんとピントが合わせられていることがわかる。fp、お主なかなかやるな。
一方、手順通りに接続したにも関わらず映像がパソコンに流れてこない場合があったり、配信途中で突然フリーズを起こすこともままあった。またこれも原因不明だが、映像の下辺の一部だけ映像が欠損する事象も発生している。Webカメラとして使い出してからは日も浅く、まだまだ検証が必要ではあるものの、すでに市場ではWebカメラとしてfpを買い求めている人も少なからずいると聞く。
奇しくも昨今のテレワーク需要でカメラの新しい活用法が見出されたわけだが、こうした用途も今後のデジタルカメラのひとつの方向性とも言えるのではないだろうか。