ミニレポート

無料公開中の写真編集ソフト「Luminar 3」の実力を検証

自然な効きのAI画像解析 最新版"4"との違いは?

SKYLUM社の写真ソフト「Luminar 4」(2019年発売。ダウンロード販売で1万560円)は、基本的なRAW現像と画像管理・編集機能に加え、AI(人工知能)技術による画像解析とパラメータ調整を実装した独自性が話題となっている。

実は今、そのLuminar 4の前バージョンとなるLuminar 3が無料でダウンロード出来るようになっているのだ。最新バージョンではないものの、正規の製品版が試用期間なく無料で使用できるとなったら、試さない手はないだろう。今回はその実力を検証してみたい。

Luminar 3のライブラリ画像

Luminar 3を無料ダウンロードする方法

Luminar 3の無料ダウンロードサイト(https://skylum.com/jp/luminar-3-for-free)にアクセスしたうえで、指定の枠内に氏名とメールアドレスを入力してSubmitボタンを押す。

届いたメールに表示された「Yes,subscribe me to this list.」ボタンを押すと再びリンク先のページへと移動するが、そのサイト画面はそのまま閉じてしまってよい。

先ほど登録したメールアドレス宛にダウンロードサイトのリンクとアクティベーション用のコードが記載されたメールが届く。使用するパソコンのOSに合わせリンク先のサイトにアクセスするとLuminar 3のインストーラーがダウンロードされるので、そのファイルを開いて指示に従いインストールを行う。

インストール後Luminar 3を起動してアクティベートを行う。画面左上の「今すぐ購入」ボタンを押すと購入プランの選択ウインドウが表示されるので、画面右下にある「アクティベート」ボタンを押す。

先ほど届いたメールに記載されていたアクティベーションコードを入力して「アクティベート」ボタンを押せばLuminar 3のアクティベーションが完了する。これで製品版を無料で使用することができるようになる。

いざ、Luminar 3を使ってみよう

Luminar 3には露出・コントラスト・色味など、RAW現像における基本的な調整機能が揃っている。これらはアドビのLightroom Classicなどに搭載されているRAW現像機能とも近い感覚で操作できるものだ。この機能だけでもRAW現像ソフトとしては十分に強力なのだが、Luminar 3には更にAIを活用した画像調整の自動パラメータ設定機能も搭載されている。

また、Luminar 3のRAW現像機能は多くのカメラに対応していると思われるが、この記事の制作時にはすでに対応機種の情報が公式サイトから削除されている。今回の作例ではオリンパスOM-D E-M1 Mark II、E-M1 Mark III、E-M1Xのそれぞれで撮影したRAWデータを現像してみた。すでにLuminar 3は無料で手に入れられるので、ぜひご自身の使用するカメラでも試してみてほしい。

Accent AIフィルター

Luminar 3に搭載される「Accent AIフィルター」は、ひとつのスライダーを動かすことで、露出・コントラスト・シャドウ・ハイライト・黒レベル・白レベル・トーン・彩度・明瞭度といった画像調整の基本的なパラメータを一括で調整してくれるというもの。通常は経験による微妙な操作が求められるが、これをAI技術を用いた画像解析によって絶妙なバランスで自動調整する。なお強度は0〜100までの間で任意に設定が可能だ。

Accent AIフィルターで仕上げた作品例。

AIスカイエンハンサー

この画像では空が白く霞んでしまっているので、「AIスカイエンハンサー」を使用して空のコントラストを上げてメリハリを出すとともに青空を強調した。これもAIによる解析で地上などには影響を与えずに空のみに効果を当てることができる。通常、Photoshopなどでこれを行うには空だけを選択したうえで画像調整を行う必要がある。

AIスカイエンハンサーで仕上げた作品例。

被写体ごとの設定パネルが並ぶ「ワークスペース」

Luminar 3には風景写真やポートレート写真など、それぞれの被写体に合わせた設定パネルがまとめられたワークスペースが用意されている。それらをフィルターとして適用することで、画像を最適に仕上げられるようになっている。

女性ポートレート作品を仕上げるため「ポートレート」ワークスペースを選択。まずは露出やコントラスト、彩度といった基本的な調整を行い、そのうえでソフトグローをかけてわずかに滲ませ肌の肌理を整えた。それにより明るく透き通った肌の女性ポートレート作品に仕上げることができた。

「ポートレート」ワークスペースで仕上げた作品例

豊富な調整プリセットを試す

被写体に合わせた調整プリセットが多く用意されているのもLuminar 3の特徴の一つだ。これらを選択し画像に割り当てるだけで劇的な効果を与えることができる。ただし、このプリセットは往々にして効果が強すぎる傾向があるため、実際には適用量を調整しながら最適な設定値を探る必要があるだろう。

AI Landscape Enhancer

高台から撮影した海の画像に、風景向けのプリセット「AI Landscape Enhancer」を割り当てた。空気のかすみ具合が低減され空と海の青さがより強調される。ただし効果が強いので、ここでは適用量を調整して50%とした。

AI Landscape Enhancerを50%適用
プリセットの再調整+正方形トリミング

多くあるプリセットのなかから作品イメージに近い効果を持つものを選んだ上で、LUTマッピングで露出やコントラスト、彩度のパラメータを再調整することで最終的なイメージに仕上げてある。最後にツール内のクロップ機能を使用して正方形にトリミングした。

プリセットの再調整とクロップを適用した作品例

このようにLuminar 3は基本的なRAW現像ソフトの機能はもちろんのこと、豊富なプリセットやAI技術による自動パラメータ設定など、強力な画像編集機能を備えたソフトである。すでにひとつ前の旧バージョン製品ではあるが、これだけのことが出来るソフトが無料で手に入り、しかも期限なしで使用できるというのはなんとも太っ腹な話ではないだろうか。

でも、ちょっと気になるLuminar 4の新機能

さて最後に、参考までに最新版のLuminar 4の機能について少しだけ解説しておこう。Luminar 4ではLuminar 3に搭載されていた基本的なRAW現像機能はそのままに、AIによる自動処理を強化することでより効果的な画像処理を行えるようになった。

AIスカイ・リプレースメント

Luminar 4で新たに搭載された「AIスカイ・リプレースメント」では、画像内の空をAIで識別したうえで別の空の画像に差し替えることができる。たとえば曇が空一面を覆っている画像を青空に差し替えるといったことも簡単にできてしまうのだ。

オリジナル
オリジナル画像。夏の海水浴場だが雲が多く夏のイメージには物足りない。
曇り空を、夏の青空に差し替え
AIスカイ・リプレースメントで曇った空を、青空と夏の雲に差し替え。まさに夏の海水浴場のイメージとなった。
夏の夕暮れ時のような演出も
さらにAIスカイ・リプレースメントで夕空に差し替えた。これで夏の夕暮れ時のイメージとなる。

AIポートレート・エンハンサー

ポートレート画像においても、Luminar 4では更なる強力な編集が可能となった。Luminar 3の作例でも使用した女性ポートレート画像を、Luminar 4のAIポートレート・エンハンサーを使用して調整を行った。

新機能のAIポートレート・エンハンサーでは顔の明るさのみならず、顔の大きさを変えて小顔にしたり目の大きさや唇の赤さなどまでもが調整可能だ。もはやこれは画像修正の域にまで踏み込んだものだが、これをAI技術による最適化を行いながら適用することで、結果的にとても自然な仕上がりとなる。適用前と比較すればその差は明確だが、完成後の画像だけを見れば、その変化に気づくことは難しいほどの仕上がりだ。

基本的な補正を行った上でAIポートレート・エンハンサーを適用した。
左が基本補正のみ行った画像、右がAIポートレート・エンハンサーを追加適用したもの。並べて見比べると、その効果の高さは一目瞭然だ。

AI技術による、作品作りの新たな選択枝

今回は無料公開されたLuminar 3を試用し、その実力とメリットを体感してみた。AI技術によって統計的に分析・判断したものが仕上がりを左右するなど、定番のLightroom Classicなどとは異なるアプローチで、とても興味深いソフトだ。

もちろん最新版であるLuminar 4の方が機能的には上位だが、せっかくの機会なので、まずはLuminar 3を無料で手に入れ、色々と試してみてはいかがだろうか。その上でより強力なLuminar 4を使ってみたくなった時には、購入を検討してみると良いだろう。

モデル:MANA

礒村浩一

女性ポートレートから風景、建築、舞台、製品広告など幅広く撮影。「人の営みが紡ぎだす日本の日常光景」をテーマに作品制作を行い全国で作品展を開催するとともに、撮影テクニックに関するセミナーへの出演やワークショップ等を開催する。デジタルカメラの解説や撮影テクニックに関する執筆も多数。(公社)日本写真家協会正会員、EIZO公認ColorEdge Ambassador。シグマ公式サイト「SIGMA Station」にてCP+2020で公開を予定していた「シグマfpで撮る小笠原の魅力 国境離島の旅」が公開中