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シグマの新コンセプト機「SIGMA fp」詳細レポート
山木社長が説明 追加の実機写真も掲載
2019年7月16日 07:00
シグマが今秋発売予定と発表した「SIGMA fp」。外観の速報後に試作機を試せたため、同社の山木和人社長によるプレゼンテーションの内容と合わせて追加情報をお届けする。
fpは「シグマ初のベイヤーセンサーカメラ」として、フルサイズミラーレス用交換レンズなどを発表した後のサプライズとしてお披露目された。
搭載するのは有効2,460万画素の裏面照射型CMOSセンサー(35.9×23.9mm)。ローパスフィルターレスで、設定感度はISO 100-25600。後述の拡張でISO 6相当(静止画のみ)からISO 102400相当まで選べる。
デジタルカメラ市場全体を見れば、ベイヤーではないセンサー(シグマのFoveon X3や、富士フイルムのX-Trans CMOS)のほうが圧倒的に珍しいわけだが、Foveon X3センサーに根強いファンを持つシグマがこうした"普通のセンサー"を積むとなると事情が違う。アップルが長年ライバル関係を演出してきたIntelプロセッサーを突如Macに積んだ時を思い出した人もいたのではなかろうか。そういえば、このfp自体も山木社長直々の「One More Thing...」として発表された。
しかしこれはFoveonセンサーの行き詰まりではなく、fpという新コンセプトの多用途カメラにはベイヤーセンサーが最適との判断。山木社長は「美しい静止画のために最適なのはFoveonセンサーだと信じている。(2020年発売予定のフルサイズFoveon機は)静止画撮影用のオーセンティックなカメラになる予定」と話した。
SIGMA fpが醸す本質は、小さいフルサイズ機であることではなく、シグマのベイヤー機であることだけでもなく、カメラの要素を再構築することを目指している点にある。既存のカメラはスマートフォンからシネマカメラまでそれぞれにシステムとしての一長一短があり、各カメラに固定された特徴にとらわれない構成をとれるカメラのコンセプトを「脱構築」というキーワードで説明した。
ハードウェア的に見ると、ポケッタブルなフルフレーム機であり、Lマウントを採用するミラーレスカメラで、マウントアダプターとの組み合わせによりキヤノンEF用やシグマSA用シグマレンズを使うことも考えられる。
また、Mマウントアダプターでライカの小型レンズを楽しむこともできるし、動画用リグに組み込んでシネマレンズを装着し、本格的なシネマカメラのように扱うこともできる。シグマが脱構築の先に見出した可能性について、いくつかのデモ展示があった。
動画記録は最大12bitのCinemaDNGに対応し、HDMIスルー出力による外部レコーダー記録や、カメラ内のUSBホスト機能を使って外部SSDに記録することもできる。シネマカメラの画角や見え方をシミュレーションできる「ディレクターズビューファインダーモード」は、これによりfpが映画撮影の必携アイテムになると自信を見せた。
また、静止画/動画のHDR撮影や、写真の一部が動き続けるようなGIFアニメーション「シネマグラフ」を生成できる機能もファームアップで追加予定だとしている。
背面モニターは3.15型約210万ドット。撮影画面ではダブルタップでピント拡大となる。これは三脚撮影を想定した操作。AF測距枠の選択や、再生画面での拡大/縮小も可能だ。
小ささが特徴になっているカメラではあるが、それでもコンパクトカメラに比べれば絶対的な面積があるため、各ボタンはちゃんと独立している。加えて感触もしっかりしているため、操作感にはストレスがないと思う。
モードダイヤルの代わりにMODEボタンを押すと画面下部にP/A/S/M……といった項目が並び、そこから露出モードを選択する。TONEとCOLORのボタンは、それぞれトーンコントロールとカラーモードの選択メニューを呼び出す。
設定画面に入るにはMENUボタン。再生ボタンの右にあるのがいわゆるDISPボタンで、2軸の電子水準器も表示できた。QSメニューや設定画面もシンプルで見やすい。
撮影画面は、ライブビュー像の歪みが気になることもなく、いい意味で普通に使える。試作段階のため動作のレスポンスや安定感はまだ評価できないが、人物の顔を検出して顔→瞳、と枠が表示される様子も確認できた。
fpは静止画/動画がシームレスなカメラと表現されたが、筆者の印象としては、メカシャッターを省略しても防塵防滴構造と放熱用ヒートシンクを譲らなかった部分や、TONE/COLORの設定をワンボタンで呼び出せるといったUIにおいて、どちらかというと静止画より動画用途の比重が大きいと感じられた。
ただ、ここでメカシャッターを残そうとか、外付けEVFも用意しよう、SNS時代だからスマホ連携も入れておこう、などと集まる声のままに構築すると、結局はすでに店頭にあるようなカメラがまた1つ増えるだけだろう。この大胆なまでの削ぎ落としを断行できるところが、カメラメーカーとしてのシグマの強みだと見せつけられた発表会だった。