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シグマの新コンセプト機「SIGMA fp」詳細レポート

山木社長が説明 追加の実機写真も掲載

シグマが今秋発売予定と発表した「SIGMA fp」。外観の速報後に試作機を試せたため、同社の山木和人社長によるプレゼンテーションの内容と合わせて追加情報をお届けする。

SIGMA fp
「45mm F2.8 DG DN | C」を装着。

fpは「シグマ初のベイヤーセンサーカメラ」として、フルサイズミラーレス用交換レンズなどを発表した後のサプライズとしてお披露目された。

SIGMA fpは「シグマ初のベイヤーセンサーカメラ」として発表。

搭載するのは有効2,460万画素の裏面照射型CMOSセンサー(35.9×23.9mm)。ローパスフィルターレスで、設定感度はISO 100-25600。後述の拡張でISO 6相当(静止画のみ)からISO 102400相当まで選べる。

デジタルカメラ市場全体を見れば、ベイヤーではないセンサー(シグマのFoveon X3や、富士フイルムのX-Trans CMOS)のほうが圧倒的に珍しいわけだが、Foveon X3センサーに根強いファンを持つシグマがこうした"普通のセンサー"を積むとなると事情が違う。アップルが長年ライバル関係を演出してきたIntelプロセッサーを突如Macに積んだ時を思い出した人もいたのではなかろうか。そういえば、このfp自体も山木社長直々の「One More Thing...」として発表された。

かつてのアップル風な演出に「一度やってみたかったんですよ」と照れ笑いの山木社長。

しかしこれはFoveonセンサーの行き詰まりではなく、fpという新コンセプトの多用途カメラにはベイヤーセンサーが最適との判断。山木社長は「美しい静止画のために最適なのはFoveonセンサーだと信じている。(2020年発売予定のフルサイズFoveon機は)静止画撮影用のオーセンティックなカメラになる予定」と話した。

開発中のFoveonカメラに搭載される、フルサイズFoveonセンサーのスペック。「Foveon X3 1:1:1」(フォビオン エックススリー ワンワンワン)と呼ばれており、サイズはきっちり36×24mm。画素数は5,520×3,680ピクセル(約2,031万画素)の3層で6,090万画素とされた。

SIGMA fpが醸す本質は、小さいフルサイズ機であることではなく、シグマのベイヤー機であることだけでもなく、カメラの要素を再構築することを目指している点にある。既存のカメラはスマートフォンからシネマカメラまでそれぞれにシステムとしての一長一短があり、各カメラに固定された特徴にとらわれない構成をとれるカメラのコンセプトを「脱構築」というキーワードで説明した。

ハードウェア的に見ると、ポケッタブルなフルフレーム機であり、Lマウントを採用するミラーレスカメラで、マウントアダプターとの組み合わせによりキヤノンEF用やシグマSA用シグマレンズを使うことも考えられる。

また、Mマウントアダプターでライカの小型レンズを楽しむこともできるし、動画用リグに組み込んでシネマレンズを装着し、本格的なシネマカメラのように扱うこともできる。シグマが脱構築の先に見出した可能性について、いくつかのデモ展示があった。

DJI Ronin-Sに搭載
シネマレンズとの組み合わせ例
ドローンへの搭載例
ハンドグリップ。ボディ側面のストラップ環を外すと現れる三脚ネジ穴に取り付ける。
ハンドグリップ(大)。こちらは底部に取り付けるタイプ。大きめのレンズに合う。

動画記録は最大12bitのCinemaDNGに対応し、HDMIスルー出力による外部レコーダー記録や、カメラ内のUSBホスト機能を使って外部SSDに記録することもできる。シネマカメラの画角や見え方をシミュレーションできる「ディレクターズビューファインダーモード」は、これによりfpが映画撮影の必携アイテムになると自信を見せた。

ディレクターズビューファインダーモードの対応フォーマット。後日ファームアップで実装予定の機能としている。

また、静止画/動画のHDR撮影や、写真の一部が動き続けるようなGIFアニメーション「シネマグラフ」を生成できる機能もファームアップで追加予定だとしている。

背面モニターは3.15型約210万ドット。撮影画面ではダブルタップでピント拡大となる。これは三脚撮影を想定した操作。AF測距枠の選択や、再生画面での拡大/縮小も可能だ。

AFポイントを選べる。
再生画面ではピンチイン/ピンチアウト可能。

小ささが特徴になっているカメラではあるが、それでもコンパクトカメラに比べれば絶対的な面積があるため、各ボタンはちゃんと独立している。加えて感触もしっかりしているため、操作感にはストレスがないと思う。

モードダイヤルの代わりにMODEボタンを押すと画面下部にP/A/S/M……といった項目が並び、そこから露出モードを選択する。TONEとCOLORのボタンは、それぞれトーンコントロールとカラーモードの選択メニューを呼び出す。

撮影画面でTONEボタンを押したところ。
COLORボタンを押すと、カラーモードを選べる。

設定画面に入るにはMENUボタン。再生ボタンの右にあるのがいわゆるDISPボタンで、2軸の電子水準器も表示できた。QSメニューや設定画面もシンプルで見やすい。

静止画(左)/動画(右)の撮影画面。本体上面のスライドスイッチで切り替わる。
QSメニューも、各モードに合わせた項目が表示される。

撮影画面は、ライブビュー像の歪みが気になることもなく、いい意味で普通に使える。試作段階のため動作のレスポンスや安定感はまだ評価できないが、人物の顔を検出して顔→瞳、と枠が表示される様子も確認できた。

いわゆる瞳AF機能も入っていた。
拡張の最高感度はISO 102400。
拡張の最低感度はISO 6(静止画のみ)。
ISO 100未満の拡張感度は「コンポジット低ISO拡張」という位置づけで、静止画のみ。複数枚の連写合成で実現している。高ISO拡張は動画でも使える。
「センサー温度」が表示できるのは興味深い。外部電源で本格的な動画撮影を行う場合、気にすべきはバッテリー残量より本体温度なのだろう。

fpは静止画/動画がシームレスなカメラと表現されたが、筆者の印象としては、メカシャッターを省略しても防塵防滴構造と放熱用ヒートシンクを譲らなかった部分や、TONE/COLORの設定をワンボタンで呼び出せるといったUIにおいて、どちらかというと静止画より動画用途の比重が大きいと感じられた。

防塵防滴構造のために施したシーリング。
本体背面部分にヒートシンクが備わる。4K動画を長時間撮影するための装備。fp本体のバッテリー容量にはあまり期待できないが、別売のDCコネクターを使ってAC電源やVマウントバッテリープレートなどから給電できる。
ヒートシンクがない場合(左)と、ある場合(右)の比較イメージ。筐体外装は前後カバーがアルミダイキャスト。ヒートシンク部分のみ、加工性からマグネシウムを採用しているという。
ポートレート撮影を想定したセット。なお、SIGMA fpのシンクロ速度は最高1/30秒。※7月16日13時30分追記:メカシャッターがないためハイスピードシンクロは原理的に不可能とシグマから連絡を受けたため、本キャプションを修正しました。
fp本体側面に別売のホットシューユニットを取り付け、その上にクリップオンストロボを装着。
背面から見たところ。HDMIケーブルの脱落防止機構も備えている。

ただ、ここでメカシャッターを残そうとか、外付けEVFも用意しよう、SNS時代だからスマホ連携も入れておこう、などと集まる声のままに構築すると、結局はすでに店頭にあるようなカメラがまた1つ増えるだけだろう。この大胆なまでの削ぎ落としを断行できるところが、カメラメーカーとしてのシグマの強みだと見せつけられた発表会だった。

発表会開始前にシグマスタッフがお揃いで着ていたTシャツ。dpのロゴっぽいような、何らかの画素配列のような、不思議なモザイク模様が気になった。
壇上でfpを発表後、そのモザイク模様のシールを剥がして「fp」のロゴを見せる山木社長。
山木社長のフォトセッション用に設置された背景ボードには、しっかりと「fp」のロゴ。レンズ発表後の"One More Thing..."と言いつつ、最初から主役はfpと決まっていたわけだ。

本誌:鈴木誠