新製品レビュー
Panasonic LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6(後編:SIGMA fp編)
オールマイティに使える20mmスタートのズーム 重量バランスの良さも魅力
2020年7月6日 14:31
パナソニック「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」は、Lマウント規格に準拠した35mm判フルサイズセンサー対応の交換レンズである。前回はパナソニックのミラーレス一眼LUMIX S1(DC-S1)との組み合わせで、このレンズの特徴や基本性能を検証した。今回はその後編として、同じくLマウント規格を採用するシグマのミラーレス一眼「SIGMA fp」との組み合わせで、その使い勝手やメリットなどについて考えていく。
LUMIX S1によるレビュー記事はこちら:Panasonic LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6(前編:LUMIX S1編)
SIGMA fpとのマッチングは良好
シグマのミラーレス一眼SIGMA fpは、35mm判フルサイズミラーレス一眼としてはとてもコンパクトなボディサイズであるが、このLUMIX S 20-60mm F3.5-5.6(以下、本レンズ)との組み合わせでは、ボディの高さとレンズ鏡筒の太さが非常に近く、見た目も手に持ったサイズ感もとてもよくマッチする。
SIGMA fpと組み合わせた際の質量はおよそ772gと、フルサイズミラーレスカメラの標準ズームレンズセッティングとしては、とても軽量な組み合わせとなる(シグマ24-70mm F2.8 DG DN|Artとの組み合わせは、およそ1,257g)。
なお注意しておきたい点として、本レンズとSIGMA fpは、ともに防塵防滴構造を採用しているものの、製造メーカーが異なる組み合わせであるため、本来の防塵防滴性能が十分に発揮できない可能性がある、ということが挙げられる。また、本レンズもSIGMA fpも、どちらも手ブレ補正機構は搭載していない。したがって、撮影時の手ブレにも注意が必要だ。ただしJPEGのみを記録する設定にしている場合に限り、SIGMA fpでは電子手ブレ補正機能が使用可能となっている。
下の写真は、ズーム操作によってレンズ鏡筒がどれくらい伸長するのかをみたものだ。繰り出し量はそれほど大きくはないため、重量バランスが極端に悪くなるということもない。
現在ラインナップされているシグマ製Lマウント用レンズのうち、本レンズと近い焦点域をカバーするレンズとしては、「24-70mm F2.8 DG DN|Art」がある。しかし、同レンズは開放F値がF2.8ということもあり、SIGMA fpとの組み合わせではレンズの方が大きくなり、すこしアンバランスに感じる場合もある。
その点、本レンズとSIGMA fpとの組み合わせは、大きさ・重さともにとてもバランスが良く、カメラを長時間持ち歩くスナップ撮影にも適している。そこで、ここではSIGMA fpと組み合わせた場合のスナップ撮影における使い勝手を中心に検証していった。
作例
漁港に停泊している漁船を広角端20mmで撮影。F11まで絞り込み、被写界深度を深くして近景から遠景までフォーカスを合わせる。絞り込みによる解像力低下も見られず、画面全域において画質が高い。
山に咲く花に近寄り広角端20mmで撮影。手元の被写体を大きく写しながら背景の山並みを画角に捉えることで、遠近感のある画作りを行うことができる。
立体的な人道橋(歩行者が川、海、道路などを越えるために架けられた橋のこと)の構造を、20mmの画角で収める。構造物のソリッドな質感や細かい網目などもきちんと描写されていることがわかる。また歪曲や収差が見られないので、構造物の形状を正しく捉えることができる。
初夏の明るい日差しの下、樹木の枝の下から静かなローカル線の駅舎を覗く。見上げた葉の一枚一枚もしっかりと解像されており、明るい空の逆光による滲みもみられない。
岬の突端に繋がる真っ直ぐな一本道の奥行きを表現する為、広角端20mmの縦位置撮影で空間の広がりを捉える。画面内に直接太陽を入れて撮影しているがゴーストも発生せず、またコントラストの低下も見られない。耐逆光性能がとても高いレンズだ。
湖を見下ろす高台に鎮座する古社。石段を上ると深い緑の森に守られた朱塗りの美しい社が現れる。絞りをF8まで絞り、画面全域で解像感が高くなるように撮影。清らかに張り詰めた空気感までもが写真に写るようだ。
最近化粧直しされたという社は、鮮やかな朱色と共に鮮やかな装飾が施されており、参拝者の目を楽しませてくれる。撮影を行うと共に疫病退散を願う。
神社の由来を記した石碑。森に差し込む日の光が石碑に施された装飾を照らす。刻まれた文字が克明に描写されており、レンズの高い解像力が実感できる。
湖畔にそびえる、30m近い高さの展望台。かつてこの地域を流れる河川から水を汲み上げるために用いられていた、水車を動力とした揚水機を模したものだ。少しだけ離れた位置から、その巨大な姿を広角側で画面に収める。焦点距離20mmが使えると大概のものを画面に収めることができる。
輝く海面に描かれた船の軌跡と空を駆ける大型ヘリの姿。画面全体が輝度の高いもので占められているが、滲みやハレーションなど不自然な描写は見られない。
まとめ
今回取り上げたLUMIX S 20-60mm F3.5-5.6はLマウント規格に準拠したミラーレスカメラ用の交換レンズだ。ライカによって規格化されたLマウントは、パナソニック、シグマのLマウントアライアンス参画により共通規格となったことで、メーカーの枠を超えてカメラとレンズを組み合わせて使用することができるようになっている。ユーザーは、各メーカーの特色を活かした製品を自在に組み合わせることができるようになったのだ。
Lマウント用のレンズには、すでにそれぞれのメーカーから様々な製品が発売されているが、いずれも高品位であるがゆえ、比較的大きく重い製品が、その多くを占めているのが現状だ。そうした中でパナソニックから登場した本レンズは、高い画質をキープしながらも軽量かつコンパクトなサイズを実現している点で、とても魅力的な製品だ。開放F値がF3.5〜5.6と、少々暗いのでは、といった印象を抱くかもしれないが、機動性という面でみれば、これまでにないメリットを感じることができるはずだ。
また、20〜60mmという焦点距離の設定についても、最初は若干中途半端に感じるかもしれないが、使いこむに従って広角側の余裕と撮影画像のダイナミックさに魅力を感じられるようになるはずだ。特にSIGMA fpとの組み合わせでは、同カメラのコンセプトでもある“スケーラブル”(ちょうどよい大きさ)に鑑みて、最適なバランスが得られるレンズの有望な選択肢のひとつとなることだろう。SIGMA fpはもとより、Lマウント採用カメラユーザーにとって、積極的に選びたいと思わせるレンズの登場だといえる。