新製品レビュー

FUJIFILM GFX100S

1億画素+軽量化の革新性をチェック ノスタルジックネガの魅力にハマる

富士フイルムから、1億画素機の第2弾「GFX100S」が登場しました。富士フイルムには既にGFX100という、ボディ内手ブレ補正機構(以下IBIS)や像面位相差AFを搭載した1億画素機第1弾が2019年に登場していますが、本機はこの基本性能を踏襲しながら小型化を実現したモデルとなっていて、位置づけとしては、2017年2月に登場したGFX 50Sの上位モデルということになります。

外観

外観はAPS-Cセンサー機「X-H1」や先発の「GFX100」の流れを汲むエルゴノミクスに配慮したデザインを採用。左肩のモードダイヤルにはAPS-Cセンサー機「X-S10」にも搭載されているカスタム設定が割り振られました。これは最大6つまで任意の設定を保存できるというもので、フィルムシミュレーションなどの設定も登録できるため、使い勝手の面でGoodなポイント。

全体的な印象は、一般的な一眼レフカメラ(DSLR)のようなカタチ。と言うか、サイズ感も含めてまるで35mm判フルサイズ一眼レフカメラのよう。実際にDSLRのEOS 5D Mark IVに近いサイズ感と重量です。

ちなみにGFX100Sの「S」には“Shooting(GFX 50Sと同じ)”、“Second(100MPの2機種目)”、“Small”の3つの意味がこめられています
参考:35mm判フルサイズ一眼レフカメラのキヤノンEOS 5D Mark IV(約150.7×116.4×75.9mm、約890g[バッテリー+CFカード+SDメモリーカード])

実際に本機と向き合ってみると、スペックや写真から受ける印象よりも小さく感じました。が、比較的コンパクトなボディとはいえマウント径の大きさからも想像出来る通り、基本的にレンズは35mm判フルサイズ用よりも巨大になりますし、システムを組もうとすると大型センサー機らしい、中判カメラに迫るボリュームになります。

その他、詳しいスペックは以下にまとめられています。
・製品ニュース:富士フイルム、税別約70万円になった1億画素機第2弾「GFX100S」
・X Summit GLOBAL 2021レポート:FUJIFILM GFX100Sの進化点を整理する

使用感

ラバーの質感とグリップ形状が良く、持った感じは好印象。レリーズボタンの押し感はX-H1と似ていてクリック感のないタイプ。ストロークは一般的に言ってもやや浅め。

レリーズ感はフェザータッチを標榜しているとおり、軽く静かでX-H1と似た感触でした。GFX 50Rと比べると隔世の感があるフィーリングですが、X-Pro3とX-T4の関係性にも相通じることで、この仕様上の違いは「コンセプトの違い」と理解すべきでしょう。

ボタンやダイヤル類の操作感はGFX 50系と比べて明らかに改善されていて、押下時の“パコパコ"という安い感触が改善された一方で、レリーズボタンについては斜め押ししたり、同軸にある電源スイッチを押す(上から見て9〜11時の間辺り)と“カコカコ”とガタツキがあり、製品価格を踏まえると「もう少し頑張って欲しい」の感は否定出来ませんでした。このガタはX-H1にもあり、GFX100Sで根治されていないことは残念です。X-E4は比較的良い質感を持っていましたが、それでもなお富士フイルムの課題はこういった「官能性」にありそうだ、というのが筆者の印象です。

今回組み合わせたのは本機と同時に発表された「GF80mmF1.7 R WR」です。本レンズは絶対的には大きく重い(約795g)レンズではありますが、その体躯のワリには軽く感じる重量バランスとなっており、GFX100Sに装着して構えた時の収まり感も良いので、印象としては「結構軽い」になります。

AF速度は、像面位相差AFを持たないGFX 50Rとの組み合わせでもチェックをしてみましたが、特に遅いとは思わなかったので、“まずまず高速”なAF性能を持つレンズであることは確かです。ただし、高速かつハイレスポンスなLM(リニアモーター)を採用しているGF50mmF3.5 R LM WRやGF32-64mmF4 R LM WRなどと比べると、確かに速度やレスポンス面で劣ることは事実。駆動音もそれなりにありました。

AFやMFの微調整時にAFモーターや光学系が「コココ……」と動く感じが手に伝わってくるのが質感という点では少しマイナスに思いましたが、その一方で重いレンズを頑張って動かしている様子を想像すると微笑ましい気持ちにもなる筆者は、きっと変態なのでしょう。

実写を通じて見えてきたこと

35mm判フルサイズDSLRと同等のサイズに像面位相差AFとIBISの効果もあり「この気楽さで中判デジタル使えるのはヤベーぞ」というのが第一の感想。

GFX100の時も「こんなにイージーに1億画素が扱えて良いのか?」という感想を持ちましたが、あちらのサイズ感はDSLRのフラッグシップモデル、つまりニコンD6やキヤノンEOS-1D X Mark IIIと同等サイズなので持ち歩くには相応の気合が必要ですが、本機はEOS 5D Mark IVやD850クラスの気持ちで持ち出すことが出来ます。

参考:GFX100(156.2×163.6×102.9mm[EVF装着時]、約1,400g[EVF装着+バッテリー2個+メモリーカード時])

GF80mmF1.7 R WRについては「ベラボーに写る」という感想。絞り開放から不安や不満のない素敵な描写が楽しめます。初めて1億画素に触れた人なら、画像チェックで感嘆の声を上げる事になると思います。

1億画素(高画素機という意味です)のメリットとして、トリミング耐性に対しては言及は不要かと思います。個人的にはより細かく解像できるので結果的に階調性が豊富になる、という点にも目を向けて欲しいと思いました。同じ面積をより細かく描写できれば、再現はより滑らかになるから、という寸法です。ただ、それが写真のクオリティを左右するの? と言われるとそれほど大きな影響を持っているワケでもない、ということもまた事実です。

デメリットとしては、GFX 50シリーズに対して大きく絞り込んだ際に被写界深度が稼げないという特徴があります。これは画素ピッチの狭さ(高画素機全般に当て嵌ります)が影響しています。さらに35mm判フルサイズ機などのより小さな撮像サイズを持つカメラと比べて、画角に対して焦点距離が長いというフォーマットの特性が加わりますので、フォーマットが持つ特徴を知らないまま使おうとすると「こんなハズでは……」というネガティブな印象につながる懸念があります。

また画素ピッチが狭いということで、絞り込みによる回折現象の影響が生じやすい(画素数が多いので出力時の拡大率が低く回折が目立ちにくい、という差し引きは存在します)ので理解や工夫が必要です。本機の画素ピッチはフルサイズ機で言えばα7R IV、APS-C機で言えばX-T4とほぼ同等になります。

ともあれ、本機が申し分のないビックリ画質をもたらしてくれるのは確定的な事実になります。

作例

ノスタルジックネガの調子を掴むために撮影を繰り返していたところ、EVFや背面モニターからはそれほどアンバーなトーンを実感として感じることはなかったのだけれど、不思議とスクエアフォーマットで撮りたくなるというか、フィルムの中判カメラを使っているような気になった。フィルムっぽく見えるようにちょっと甘い方が良いかと考えてAFは背景にあわせた。

GFX100S / GF80mmF1.7 R WR(35mm判換算:63mm相当) / 絞り優先AE(F3.2・1/1,900秒・±0EV) / ISO 200 / ノスタルジックネガ

センターファインダースタイルなので、レンジファインダースタイルのGFX 50Rと比べてこうした作画をするのがかなり楽。本機のEVFは覗き心地がよく距離感も掴みやすい。

GFX100S / GF80mmF1.7 R WR(35mm判換算:63mm相当) / 絞り優先AE(F3.6・1/1,400秒・±0EV) / ISO 200 / クラシックネガ

絞り開放かつ最短撮影距離近くで撮影。こうした撮り方をしてもベラボーに写る。ノスタルジックネガは普段使いしてもそれほど違和感がないというか、デフォルト設定では全くもって自然に扱えるフィルムシミュレーションという感触がある。

GFX100S / GF80mmF1.7 R WR(35mm判換算:63mm相当) / 絞り優先AE(F1.7・1/420秒・+0.3EV) / ISO 200 / ノスタルジックネガ

日が暮れ始めた空の再現は写真集に出てくる写真のような、少し独特の色合いになる。学生時代にPENTAXの645判カメラにSMC A 120mm F4 MACROをつけてプロビア100Fをつめて2段増感してよく遊んでいたが、その時のような感じがして懐かしく思った。思い出の話なので実際に今やってみると違う感想になるかもしれないが、どちらにしろ“ノスタルジック”な感情が呼びおこされた。

GFX100S / GF80mmF1.7 R WR(35mm判換算:63mm相当) / 絞り優先AE(F2.8・1/1,250秒・+1.3EV) / ISO 200 / ノスタルジックネガ

2020年11月に先輩の写真展を見て以来、水面が撮りたくて仕方がなかった。その想いをぶつけた1枚。オマージュと言えば聞こえは良いですが、マネしました。そうやって「あの人はこういう撮り方や表現をしていたからちょっと試してみよう」と好きな写真を撮る人のマネをして遊びたくなるというのは、個人的にはいいカメラの特徴だと思います。GFX 50Rと比べて、より「写る!」という感じがするシーンのひとつ。

GFX100S / GF80mmF1.7 R WR(35mm判換算:63mm相当) / 絞り優先AE(F5.6・1/90秒・-0.7EV) / ISO 200 / Velvia

日陰のトーンにネガプリントっぽさがある。というかそんなことがどうでも良くなるくらいに解像していて、ため息がでる。こうした細かい部分の再現が豊かなトーン表現につながっていると思います。

GFX100S / GF80mmF1.7 R WR(35mm判換算:63mm相当) / 絞り優先AE(F5.6・1/120秒・+0.3EV) / ISO 200 / ノスタルジックネガ

絞りを開放にして遠景を撮影したシーン。文句のない写りで、この描写を見ちゃうと35mm判フルサイズミラーレスの写りが少し人工的だと感じてしまう。

GFX100S / GF80mmF1.7 R WR(35mm判換算:63mm相当) / 絞り優先AE(F1.7・1/1,250秒・+1.3EV) / ISO 200 / ノスタルジックネガ

逆光耐性のチェックも兼ねて撮影。十分な逆光耐性があると思います。ノスタルジックネガはフレアとの相性も良い気がしました。季節の変わり目に使いたい感じ。撮影した画像を見返していると「何か良いなぁ」とジワッと沁みてくる魅力があります。

GFX100S / GF80mmF1.7 R WR(35mm判換算:63mm相当) / 絞り優先AE(F2.8・1/400秒・+2.7EV) / ISO 200 / ノスタルジックネガ

PROVIAやPRO Neg.系と比べて温調気味の仕上がりだけど、自然というか、言われなければ気づかない感じ。個人的にはハイライトトーンとシャドートーンはどちらも-1程度に調整したいと思いました。ちなみに、このカットも調整しています。こういったシーンではAF性能の差が露骨にあらわれるのですが、明らかにGFX 50系に比べて本機の方が快適に撮影出来ます。

GFX100S / GF80mmF1.7 R WR(35mm判換算:63mm相当) / 絞り優先AE(F2.8・1/640秒・±0EV) / ISO 200 / ノスタルジックネガ

背面モニターの色再現はキャリブレーションしたPCディスプレイと比べると若干のシアン寄り。個体差はあると思いますが、もう少し色味は揃っていて欲しい気がします。ただ、EVFとの差は小さいと思いました。ハイライトのアンバーがいい感じです。

GFX100S / GF80mmF1.7 R WR(35mm判換算:63mm相当) / 絞り優先AE(F2.8・1/150秒・+1.0EV) / ISO 200 / ノスタルジックネガ

何てことない感じに撮れてますが、階調性が素晴らしいし、メチャクチャ写ってます。GFX 50Rはモノクロで撮りたくなる事が多いのですが、本機はカラーで撮りたくなります。ノスタルジックネガがあるからでしょうか? あと、イチャモンに近いレベルですが、こういう撮り方をすると前ボケが少しグルグルして見えるみたいです。

GFX100S / GF80mmF1.7 R WR(35mm判換算:63mm相当) / 絞り優先AE(F1.7・1/1,900秒・+0.3EV) / ISO 200 / ノスタルジックネガ

スナップでのファーストショットがこちら。「写り方がエグい」というのがその感想です。フライパンの縁にAFさせていますが、拡大するとその意味が分かると思います(リンク先の拡大画像はすべてオリジナルサイズとなっています)。

GFX100S / GF80mmF1.7 R WR(35mm判換算:63mm相当) / 絞り優先AE(F1.7・1/420秒・-0.7EV) / ISO 200 / ノスタルジックネガ

結局ノスタルジックネガばかりで撮影し、自分としては珍しく黒白写真を撮りませんでした。どれだけの人に刺さるフィルムシミュレーションなのかは分かりませんが、少なくとも筆者はハマってしまいました。

色々なアスペクト比で撮影を楽しみたくなるカメラという印象があり、大好きなパノラマフォーマットにしても約50MPもあるので、余裕が違います。建物最上部の構造物にようやく擬色・モアレが出ていることが確認できます。ここまでの解像力があれば大体のシーンでは解像出来てしまうので、あまり偽色・モアレに悩まされることはないという感想です。

GFX100S / GF80mmF1.7 R WR(35mm判換算:63mm相当) / 絞り優先AE(F7.1・1/300秒・+1.7EV) / ISO 200 / ノスタルジックネガ

Goodポイント

例によって4時間程度握りっぱなしでスナップ撮影を行いましたが、その状況でも身体への負担は軽微。特にGF50mmF3.5 R LM WRのようなコンパクトなレンズとの組み合わせではミドルクラス以上のAPS-Cやフルサイズの一眼レフカメラを持って歩くのと遜色ない感覚で撮影を楽しめます。比較的軽量でコンパクトなボディということもありますが、グリップ形状の良さ(筆者の手に合っている)と、ラバーの質感の良さは、実際に触れてその感触を試して欲しいところのひとつです。

3軸チルト式の背面モニターは、やはり抜群に扱いやすいです。通常のチルト式モニターと比べてグリップ下となる縦位置撮影時に開く操作が出来、視認性もぐっと良くなるので、一度体験すると他の方式を敬遠したくなります。

また従来機(GFX100やGFX 50S)と比べて、カメラからの距離をとれるので背面モニターを上向き90度にした際に、EVFの出っ張りによって表示面を邪魔されないのも良い……、というか従来機を何故本機のようなつくりにしなかったのか、理解に苦しむところです。

IBISについては良好なグリップ性と低振動タイプに改良されたシャッターも効いていると思いますが、「貼りつく」と表現したくなるくらいの効果があり、スペック通りの実力があると感じました。

Badポイント

性能的な不満はありません。強いて言えば電子シャッター時に最新の高画素35mm判フルサイズミラーレス機(EOS R5など)と比べて、ローリングシャッター歪みが大きいこと。

公平に評価するなら、大型のセンサーを搭載する機種としては良好な部類だと思いますし、「カメラの性格的に考えても問題とはなりえないのでは?」というのが本音です。が、どうしても比較対象として35mm判フルサイズミラーレス機を引き合いに出したくなります。

使用感の項でも触れていますが、全体的にはGFX 50RやGFX 50Sと比べて感触は大きく改善されていると思いました。が、お値段に対して期待する質感にはまだ達していません。

また動体が撮れそうな雰囲気が公式サイトからは醸し出されていますし、GFX100S側には実際にその性能があるとは思いますが、レンズ側のAF速度やレスポンスを考慮すると、まだスポーツには対応出来ているとは言えない(APS-Cや35mm判フルサイズ用と比べて大きく重いレンズを動かさなければならないから)ので過度の期待は禁物です。

GFX 50Rとの違い

AF性能が全く異なり、スナップシーンであってもGFX100Sの方が迷うシーンが少なくAFが合焦するまでの時間が少し短いと感じました。またAF-Cの追従性については別次元で違います。コントラストAFのGFX 50Rに対して、GFX100Sは像面位相差AFなので当然といえば当然ですが、AF-Cに限った話をすれば、撮れる・撮れないという次元で違いがあります。

EVFモジュールはGFX 50Rと同じとのアナウンスですが、アイピース(接眼部)形状の違いからか、GFX 50Rよりも覗き易いし、晴天の日中下でも逆入光の影響が少なく視認性が良好です。もし叶うならGFX 50RもGFX100Sと同じ形状に改造対応して貰えると嬉しいです。

描写の違いについては、普段使いでは基本的にはGFX 50Rと同じという理解で問題ないと思います。もちろんトリミング時の余裕という意味では50MPのGFX 50Rと比べても、なおGFX100Sには刮目すべきものがあります。マクロな話をすれば、ある特定のシーンではGFX100Sの方が立体的というか、“見た目以上にリアルに写る”ことがある、という感触を得ています。が、どちらかと言えば「そんな気がする」というレベルの話であり、優劣とは関係のない自己満足に近い領域です。

高感度画質については、実使用上でGFX100Sの方が上ですが、GFX 50Rも悪くないです。

また、現状でのもう一つの違いは、新たにフィルムシミュレーションに追加された「ノスタルジックネガ」の有無。撮り比べてみるとノスタルジックネガはややアンバー傾向で温調に見えることが分かります。

共通撮影データ:GFX100S / GF80mmF1.7 R WR(35mm判換算:63mm相当) / 絞り優先AE(F3.2・1/550秒・+1.3EV) / ISO 200
PROVIA
ノスタルジックネガ

富士フイルムの公式YouTubeチャンネルで開発者トークが公開されています。その中でノスタルジックネガについても触れられているのですが、開発にあたってはニュー・カラーの研究をするために、70年代の写真集を収集するところからスタートしたのだとか。その写真集の共通項を見つけ出すところに苦労があったといいます。動画では開発者オススメの設定値も公開されています。

【X lab #10】GFX100S開発秘話~後編~/富士フイルム」(富士フイルム公式YouTubeチャンネル)より
開発者トークの設定を適用すると「なるほどね!」と納得の再現に。個人的にはこの設定がデフォルトでもOK

まとめ

GFX 50RユーザーとしてGFX100Sのレビューを担当するのには、若干の逡巡がありました。しかも、「私はこれを買いました!」でもお伝えしている通り、GFX 50Rの購入は2020年の11月末日。購入したてのホヤホヤと言っても過言ではありません。購入から約2カ月でのスペック全部盛りカメラ登場に「心中穏やか」とはいきません。

が、実際に触れてみると、たしかにGFX100Sの素敵な撮影性能にクラっとはしましたが、「楽しさ」だけで言えばGFX 50Rの方が全然楽しいのでは? という発見がありました。

多少の贔屓目があるかも知れないと思い、念のため心の中で我が50Rを散々罵倒しながら使ってみましたが、それでも尚この黒いお弁当箱のようなGFX 50Rの方が、筆者にとっては撮っていて楽しい、という結論に達しました。この感覚はおそらく自動車でいうところのATとMTの違いのようなものかもしれません。

簡単に説明すると、車との対話を楽しむMTとドライブに集中出来るATの差に相当する部分です。慣れと経験の問題もありますが、アナログ寄りの操作デザインになっているGFX 50Rの方が、操作している感が強く、仮に撮影でミスがあっても素直に「自分が悪い」と思えることもあって、撮影者との距離感が近く感じられます。

ただGFX 50Sユーザーであれば話は違ってくると思います。GFX 50Sの不満が解消されている上、コンパクトで高性能。撮れる写真のクオリティという意味ではそこまで差があるとは考えていませんが、効率という意味では無視できない違いがあると思うからです。

ということで、最大効率を目指すならGFX100Sは圧倒的にオススメですが、カメラに道具としての情感のようなモノを求めたい人や、とりあえず大型センサー機ならではの世界を楽しみたいという場合であれば、GFX 50Rやハッセルブラッドの「X1D II 50C」などを選択肢に加えてみてもいいかもしれません。

最後にバッテリーの消費について。EVFと背面モニターを、おおよそ7:3の割合で使用し、こまめに電源操作をしながら、メカシャッター+単写のみの設定で何日か撮影してみたところ、バッテリー消費は約4.5コマ/%でした。

1981年広島県生まれ。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープの写真に感銘を受け写真家を志す。日本大学芸術学部写真学科卒業後スタジオマンを経てデジタル一眼レフ等の開発に携わり、その後フリーランスに。黒白写真が好き。