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ハッセルブラッド「X1D II 50C」詳報 Vシステム用デジタルバックも

発表会で3名の写真家がインプレッションを披露

発表会でX1D II 50Cのインプレッションを語った上田晃司さん、佐藤健寿さん、うちだなおこさん(左から)

ハッセルブラッド・ジャパン株式会社は6月20日、ミラーレス中判デジタルカメラ「X1D II 50C」の製品発表会を都内で開催した。

製品の詳細スペックは既報のとおりだが、同時にアップデート内容が発表となったソフトウェア「Phocus Mobile 2」や詳細情報がまだ公開されていないデジタルバック「CFV II 50C」についても、実際の製品を確認することができた。

会場では3名の写真家がX1D II 50Cのインプレッションを披露。作品とともに製品のポイントが語られた。発表会の模様とともにお伝えしていきたい。

動作レスポンスが大幅に改善されたX1Dシリーズ最新機

新しく発表となった「X1D II 50C」は、3つのポイント“COMPACT”、“POWERFUL”、“ENHANCED”を軸に前機種の「Hasselblad X1D-50c」と同サイズでアップデートされた中判ミラーレスカメラだ。

X1D II 50C。同時に発表されたXCD 3,5-4,5/35-75を取りつけた状態。

撮像素子は43.8×32.9 mmの有効約5,000万画素でスペック的には前機種と同じだが、今回のアップデート版では起動時間の短縮やモニター表示のリフレッシュレート向上、アプリケーション連携の強化など、より快適な撮影を実現するための改善が施されたという。

これらの改善は機能面やレスポンス、ユーザビリティ面で寄せられていた声に応えた結果だという。前機種はファームウェアのアップデートで対応してきたが、ハードウェア面での限界もあり、今回のアップデートとなったのだという。

そうしたハードウェア面での改善が顕著な部分として、前機種で3型だった背面モニターは3.6型に大型化。EVFは液晶から有機ELパネルとなり、ドット数も236万ドットから369万ドットに増えて、より高精細な表示ができるようになった。倍率も0.87倍と大きめ。

トピックスでとりあげられているように、リフレッシュレートの高速化もポイント。37fpsだった前機種から、本モデルでは60fpsに進化。実に62%の向上を見せている。

写真家が登壇して、その使用感を語る場面があったが、いずれの登壇者も大型かつ直感的な操作が可能な背面モニターを高く評価。撮影後のピント確認なども高い精度でおこなえるというコメントがあった。前モデルでも背面モニターはタッチ操作に対応していたが、フォーカスポイントの選択も可能となったこともり、より直感的に操作できるモデルに仕上がっている。

画像の拡大して確認するときもピンチイン・アウトといった直感的な操作が可能。

このほかUSB Type-C端子の採用、GPSの内蔵、Wi-Fiに対応している。USB Type-Cは同端子を採用したiPad Proに対応。iOS用の「Phocus Mobile 2」を使用してカメラコントロールや編集作業をおこなうことができる。

USB Type-C端子は左側面カバーの下側。近傍にマイク端子とリモートケーブル用の端子を備える。

記録メディアはSDカードを使用する。スロット数は2つ。規格はUHS-IIに対応している。

バッテリーはリチウムイオンタイプを採用。前モデルと形状となっているが、3,400mAhに容量がアップしている。付属のUSB充電器による充電時間は約2時間。

操作ボタン、ダイヤル類はグリップ右側に集中している。シャッターボタン、電源ボタン、モードダイヤル、WB/ISOボタン、AF/MFボタン、背面側に操作ダイヤルが配されている。

モードダイヤルはポップアップ式となっており、押し下げることで天面がフラットになるデザイン。説明員によれば誤操作防止のためとのことだった。

操作ボタンは背面モニター右側に集中している。ボタン自体も大型で操作がしやすいものだった。一番下、電源ランプが光っているわきのボタンがメニューボタン。モニターはタッチ操作に対応しているが、×や★ボタンで上下の選択移動も可能。ファインダーわきにはAF-LやAF-Dボタンが備わっている。

UIはメニュー構造から見直したとのことで、深すぎることなくシンプルな構成となっていた。直感的な操作とともに目的の機能をすばやく探すことができると思われる。

基本のメニュー画面を表示した状態。文字主体ではなくアイコンで図示するデザイン。表示項目はカスタマイズが可能だ。
項目内容は、スクロール表示式となっていた。タッチ操作を意識した構成で、ページ式にはない直感的な選択が可能だった。

サイズやフォルムは前モデルX1D-50cと似通っている。ただし外装カラーが違う。X1D-50cはシルバーとブラックがラインアップしていたが、X1D II 50Cの外装はグラファイトシルバーといった趣きで仕上げられている。

左がX1D II 50C、右がX1D-50c。
左がX1D-50c、右がX1D II 50C。

製品の出荷開始時期は7月の予定となっている。価格は税別65万円前後になる見込みだ。参考までに、X1D-50cの発売時店頭予想価格は100万円前後だった。

現在開発中ながら、Xシステム初となるズームレンズ「XCD 3,5-4,5/35-75」の発表もあった。出荷開始時期は10月の予定で、価格は税別58万5,000円前後となる見込み。

XCD 3,5-4,5/35-75の登場により、同システムレンズは9本のラインアップとなった。

iPad Proでテザー撮影が可能に

Phocus Mobile 2は、X1D II 50Cおよびデジタルバック「CFV II 50C」で使用できるアプリケーション。RAW画像のインポート、編集、レーティングが可能。USB Type-CまたはWi-Fi経由でカメラと接続することで、画像の転送やテザー撮影、カメラコントロールをおこなうことができる。

対応するデバイスは、USB Type-Cを備えるiPad Pro、iPad Air(2019年モデル)となっている。

アプリ上での画像編集も可能となっており、JPEG/3FRフォーマットで画像(フルサイズ出力が可能)をエクスポートできるとしている。

アプリケーションの提供開始は7月からの予定だが、会場では実際にカメラと接続して使用できる状態だった。

写真家インプレッション

会場では3名の写真家が登壇して、X1D II 50Cを使用した際のインプレッションがX1D II 50Cで撮影された作品とともに披露された。

写真集「奇界遺産」で知られる佐藤健寿さんは、80〜90年代に台湾・沿岸部で建設されたモジュール型の住居を捉えた作品を披露。

佐藤健寿さん

「沿岸に住居がならぶ、奇妙な光景だった」と撮影時の状況を振り返りつつ、撮影時に大型の背面モニターにより確認時にフルサイズのカメラとは精細感が違うとコメント。16bitでの撮影が可能となっていることからも、白飛びやシャドウ部がつぶれてしまわずに、調整時にもちあげてもしっかりと像や色が残っていると、階調の再現性の高さを指摘した。

披露された作品には、夜の市場を捉えたものもあり、片手持ちでもレンズシャッターを採用しているためブレも少ないとコメント。高感度耐性についてもISO 3200、ISO 6400でも問題なく使用できると話した。

この夜の市場を捉えた作品をふりかえりつつ、HDRのような現代風の雰囲気に仕上げたとして、調整時にも破綻なくモダンな印象に仕上げることができたとコメントした。

台湾での撮影を通しての総評では、“中判であることを忘れることができるカメラ”だとコメント。三脚をたててしっかり撮るといった中判カメラのお作法のようなイメージに関係なく、夜市のような場面でもスナップで使用できると話した。“これまでできなかったことができるようになった”と、表現領域のひろがりを示唆した。

続けて登壇したのはモデルとしても活躍している、うちだなおこさん。

うちだなおこさん

コーティングなしのプラナーの描写に魅せられたと話す、うちださん。Vシステムでカメラとレンズを揃えて、一枚いちまい露出計で光を測りながら撮影をしていったのだそう。

今回のX1D II 50Cでは、フィルムで撮影することが多いと自身の撮影スタイルをふりかえり、“光を感じるということ”をテーマに撮影を進めていったと話した。組み合わせたレンズは90mmを主に使用したそうだ。

浜辺で撮影された作品などが披露され、ピント面のシャープさや色の再現性が高いとコメント。先に登壇した佐藤さん同様に階調の豊富さを実感したとして、黒つぶれや白飛びといった露出ミスだと思えたカットでも、現像時に残っていることが確認することができて、現像作業が楽しかったとふりかえった。

色や画質についても、加工しなくても十分に綺麗だとして、その良さをいかしながら撮影できる、とコメントした。

続けて上田晃司さんが登壇。前モデルX1D-50cを愛用していることから、X1D II 50Cとの比較がまず語られた。

上田晃司さん

まずグリップは形は同じながら素材が違うとコメント。X1D II 50Cのほうが握りやすいとしつつも、初代はラバーの質がよいと、それぞれの製品の魅力を語った。

また、レンズシャッターを採用しているため、Profoto B10との併用でもフル発光で日中シンクロが使用できると、同機構の利点についてコメント。使用するレンズによってシャッター音が変わるところも面白いとして会場の笑いを誘った。

このほか、起動時間が速くなったことも利点だという上田さん。これまでは“撮りたい5秒前に電源を入れる”というお作法的な面があったものの、少し待つ必要は残るもののレスポンスが速くなったという。AF速度の向上やブラックアウトがなくなっていると、その進化点が実撮影に変化を与えるものだとコメントした。

先に登壇した佐藤さんやうちださんと同じく、階調の豊かさをポイントとして挙げた上田さん。16bitのRAW記録や、14段分のダイナミックレンジにより、調整の幅広さが利点だと話した。

ダイナミックレンジの広さを実演する場面もあった。白飛びしているかのようにみえる写真でも、RAW現像を通して雲のディテールを再現できると指摘した。

調整前
調整後

Phocus Mobile 2を使ったデモも披露された。画像の読み込み速度が速いため、読み込ませながらの画像閲覧も問題ないという上田さん。旅先にiPadだけ持っていくスタイルも可能になる、と話した。

撮影モードはアプリ側からも変更できるという。
画像の出力設定。JPEGの出力はフルサイズとミディアムサイズが指定できる。このほか、RAWファイルでの出力も可能となっている。

VマウントシステムとXCDレンズに対応したデジタルバック

X1D II 50Cと同時に、同じく約5,000万画素のCMOSセンサー(センサーサイズは43.8×32.9mm)を搭載したデジタルバック「CFV II 50C」も発表された。XCDレンズやVマウントシステムに対応した製品で、詳細は2019年下半期の発表が予定されている。

実際にXCDレンズをとりつけると、奥行きが短いため、ひじょうにコンパクトな構成となる。会場内では、ミラーボックスを持たない超広角レンズ固定式の中判カメラ「SWC」のような見た目になるとの形容もあった。チルト式モニターを起こすとウエストレベルでの撮影が可能となる。

XCDレンズを取りつける場合は、デジタルバックとレンズの間に電子接点つきのボディパーツ「907X」を介することになる。

レリーズボタンが500CなどのVシステム一眼レフカメラと同じ位置に配された。同軸のダイヤルはモード変更ダイヤルとして機能するとのこと。

側面プレートをひらくと、バッテリー室とSDカードスロットがある。カードスロットは2つ。

左側面にはUSB Type-Cポートがある。

GUIは、X1D II 50Cと同じ。説明員によれば機能面での違いはないとのことだった。

オプションとして光学ファインダーやグリッップを展開するとの紹介もあったが、実機の展示はなかった。

また、このデジタルバックは、ハッセルブラッドVシステムカメラにも対応しており、同社製レンズを幅広く使用することができるようになる。

詳細な機能は不明だが、カメラボディの選択メニューも用意されていた。503+Winder CWや、SWCといった名称が見られる。

本誌:宮澤孝周