イベントレポート

FUJIFILM GFX100Sの進化点を整理する

1月27日配信のX Summitより 新フィルムシミュレーションの由来も

富士フイルムは1月27日、有効約1億200万画素の大型センサーを搭載するミラーレスカメラ「FUJIFILM GFX100S」およびAPS-Cセンサーを採用するXシリーズよりX-Eシリーズ4世代目となる「X-E4」を、ライブ配信イベント「X Summit GLOBAL 2021」を通じて発表。同配信中では、交換レンズもGFXシリーズ用の1本と、Xシリーズ用の2本も発表された。本稿では、同日付で実施された製品説明会とX Summit GLOBAL 2021より、GFX100Sについてお伝えしていきたい。

大型センサーならではのメリットとは

1億画素センサー搭載という大きなインパクトをもって登場したGFX100から、およそ1年半。同一センサーを搭載しながらも、大幅な小型化とIBISの強化を伴って、1億画素機の第2弾となる「GFX100S」が登場した。GFX100では、およそ100万円超えの価格設定も大きなインパクトとなっていたが、GX100Sではおよそ税別70万円という戦略的な価格設定に。X Summit GLOBAL 2021中で登場した製品の特徴を伝える映像でも、小型軽量・防塵防滴耐低温対応の魅力が伝えられた。

GFX100S。キーワードは「MORE THAN FULL FRAME」

厳しい寒さを感じさせる吹雪が舞う状況や、浜辺で砂塵を巻きあげながら疾走するロードバイクを撮影するシーンなど、大型センサー機という既成概念を大きく覆そうとするかのような映像とともに登場した。

GFX100Sのコンセプトを「MORE THAN FULL FRAME」と位置づける同社。43.8×32.9mmの大型センサーを搭載することのメリットおよび意義を、取りこむことができる光の量や、ひろいダイナミックレンジ特性、階調再現性の高さにあると言及。そのポイントを、解像(More Resolution)・トーン(More Tonality)・ボケ(More Bokeh)の3つの側面から説明した。

1つ目のポイントとなった「解像」については、センサーフォーマットの優位性を強調。現状で1億画素以上でしっかりとした解像を得るためには、大型センサーを用いる必然性があると説明した。

2つ目のポイントとしたトーンについては、1億画素ながらも、センサーサイズ自体が大きいため1画素あたりの飽和電子量のキャパシティが有利になるとして、S/N比やダイナミックレンジに優れるため、繊細な色・グラデーションが得られるとした。

3つ目のポイントはボケ。被写界深度の浅さによって大きなボケ量が得られるという、大型センサーならではのメリットを強調。立体的な被写体表現に優れる点もポイントだと説明した。

大型センサーだからこそ実現した新フィルムシミュレーション

GFX100Sでは、新しいフィルムシミュレーション「ノスタルジックネガ」が追加された。1970年代にカラーフィルムによる表現を生み出したアメリカンニューカラーを想起させる色再現で調整したというもので、柔らかな階調再現や、アンバーよりのハイライト描写、シャドウ部でディテールを残したまま色ノリのよい再現性が得られることなどが特徴となっているという。

この新しいフィルムシミュレーションの実現にあたっては、前記したような大型センサーならではのメリットが大きく作用しており、APS-Cセンサーで展開しているXシリーズに搭載するためには、イチからつくり直さなければならないほど、難しい調整が行われているのだという。

PROVIAとノスタルジックネガの描写比較(製品説明会スライドより)

このほかGFX100Sでは、GFX100のVer.3.00ファームウェアアップデート(2020年11月)で盛り込まれたピクセルシフトマルチショットにも対応。約4億画素相当の静止画記録が可能となってる。

ピクセルシフトマルチショットについては、こちら
[ニュース]「FUJIFILM GFX100」に約4億画素の画像を生成する新機能

内部機構を大幅に刷新。シリーズ中最も小型に

GFX100Sは、ボディ内手ブレ補正機構を搭載しながらもGFX 50Sよりも小型なボディを実現している。この小型化実現の背景について、同社は内部機構の全面的な刷新によるところが大きいと説明した。

縦位置グリップ一体型のボディを採用しているGFX100は、ボディ底部スロットにバッテリー「NP-T125」を2個装填する。これに対して、GFX100Sのバッテリーは、X-T4で新たに採用した、カマボコ形状の「NP-W235」を1個使用するかたちに変更された。また、装填位置をグリップ部にもってくる配置設計としたことが、まずボディサイズの小型化につながっているのだという。

バッテリーは小型化しているものの、撮影枚数はノーマルモード・EVF使用時でも約430枚となっている

内部レイアウトのほか、シャッターおよびボディ内手ブレ補正機構も小型化が盛り込まれている。

シャッター部は、メカニカルシャッターが4秒~1/4,000秒、電子シャッターは4秒~1/16,000秒に対応。どちらも最長60分のバルブ撮影に対応し、1/125秒以下のフラッシュ同調に対応する点はGFX100と同じ。GFX100から22%の小型化と16%の小型化を実現しながら、さらにメカシャッターのレリーズタイムラグも0.07秒に短くすることに成功しているという。

メカニカルシャッター動作時のショックを吸収するサスペンションを備える衝撃吸収構造も採用したとしており、耐久性能は15万回となっている。

センサーシフト式5軸補正のボディ内手ブレ補正機構は、GFX100から20%の小型化と10%の軽量化を実現。センサー支持機構の見直しに加えて、ジャイロセンサーの刷新とアルゴリズムの改善、手ブレ補正機構を備えるレンズとの強調制御に対応することで、最大で6.0段分の補正効果が得られるようになっているという。

ボディフレームにはマグネシウム合金を採用しており、ボディ単体での質量はバッテリー・メモリーカード込みで約900g。マウント面の厚みを1mm増にしたとしており、重量のあるレンズとの組み合わせる場合など、耐久性の向上も盛り込まれている。

操作まわりはGFX100ともGFX50系とも違うものに

操作系には軽快な撮影を目指したとして、任意の撮影設定を最大6つまで保存できるモードダイヤルを搭載。天面のサブ液晶モニターにより電源OFF時でも最後に使用した設定が確認できるようになっているという。

このほか、フォーカスポイントレバーの形状も刷新。これまではGFX・Xシリーズともに細身のスティック形状が採用されてきたが、平型のタイプに変更された。

他に、シャッターボタンをフェザータッチシャッターに。リアコマンドダイヤルも大径化して、節度感のある使い心地となるように調整しているという。

ボディは防塵・防滴・耐低温構造を採用。60点のシーリングを施しているという。

AF性能

AFはアルゴリズムを改善。瞳検出のフレームレートを高速化することで、顔・瞳検出の精度を向上させているほか、動体撮影時の位置予測精度の向上に伴い、特に遠ざかる被写体のトラッキング性能が向上しているという。

このほか、同時に発表されたGF80mmF1.7 R WRと組み合わせた際には、-5.5EVの低輝度AFも可能となっているという。

国内で組み立て

X Summit GLOBAL 2021中では、宮城県黒川郡の同社カメラ・交換レンズの生産拠点である富士フイルムオプティクス株式会社・大和工場が登場。GFX100Sの製造にはセンサーの取りつけ位置など、高い精度が求められるとして、同工場ならではの品質がフィーチャーされた。

映像では2月下旬の発売に向けて、組み立て・検品が進められている様子が紹介された。

また、今後の取り組みに向けたアナウンスもあった。取り組みの名称は「GFX Challenge Program 2021」。具体的な内容は不明ながら、若手の育成を進めていくとの説明があった。同社Webページには特設サイトとして、同社製品を使用している国内外の写真家(X-Photographer)によるインプレッションやレビューが紹介されているが、これとは異なる取り組みとなるようだ。

特設サイトは既にオープン。「Please stay tuned.」として公開へ向けた準備が進められている。

本誌:宮澤孝周