イベントレポート
4 Seasons 〜OM-D E-M1 Mark IIで撮る四季 夏編
4名の写真家が夏をテーマに撮影
2018年7月11日 07:00
オリンパスのミラーレスカメラ「OM-D E-M1 Mark II」を使うプロ写真家5名が、春夏秋冬、季節ごとに各々の写真を飾るグループ写真展「4 Seasons 〜OM-D E-M1 Mark IIで撮る四季」。6月22日(金)〜7月4日(水)には夏編の写真が展示された。
それに伴い、6月30日(土)にはスペシャルトークショーも開催された。今浦友喜さんと木村琢磨さん、吉住志穂さんと萩原史郎さんの2人ずつがペアとなり、学生時代や写真家として独立する前のエピソードも交えながら、今回の写真の見どころなどを語った。
“夏”をテーマに一工夫
最初に登壇したのは今浦友喜さんと木村琢磨さんの2人。
専門学校時代にバンドを組んでいた木村さんと、ギターを作る専門学校に在籍していた今浦さんという、意外なつながりがある2人。その後、木村さんはスタジオで広告写真でカメラを始め、趣味で風景写真を撮影しているうちに風景がメインになり、独立に至った。今浦さんは学校のパンフレットを作るために写真を撮り始めたことをきっかけにカメラに触れる。
そして、フリーランスとして初めて写真が載った紙媒体が、2人とも『デジタルカメラマガジン』という共通点も判明。前置きですでにかなり盛り上がりながら、本題の写真の解説に入っていった。
ここで表示される写真は、プリントされてギャラリーに展示されているものと、特設Webページに表示されているものの2種類。木村さんの写真と今浦さんの写真が交互に2枚ずつ表示されていった。
木村さんの写真は最初からインパクト大だ。緑が映える森の中に佇んでいるヒヨドリを、望遠レンズで捉えた一枚。広角レンズを使った作風が多い木村さんにおいては、ひときわ異色に見えた。
「家の裏が山で、初夏になるとヒヨドリが飛んでくるんです。僕にしてはめずらしく、望遠レンズで撮影しました。普段は広角ばっかりなんですけど、甥っ子の運動会を撮るという理由に奥さんからOKをもらって買ったレンズです(笑)。今まで自分が取ろうと思わなかった被写体も『撮ろう』と思うようになって、一日中山をうろうろしていました」
今浦さんからも「らしくない」と言われた1枚を、あえて最初に持ってきたようだ。
今度は今浦さんの番だ。今浦さんは展示写真を1枚目にセレクトした。
「『夏』というテーマをもらった時、うっそうとした絵を想像しました。生命力が溢れているような写真を表現したかったので、力強い根を見つけて撮影しました。埼玉県の荒川大麻生公園という、僕ぐらいしか撮影していないようなマニアックな場所ですね。この根は河川敷にそばにあって、増水すしたときだけ土が削られて、根が露出してるんです。もっと増水して、何年か後にこの木自体が倒れている可能性もあります」
複雑に入り組んだ根が薄茶色に光っており、木の上の葉とのコントラストが印象的な1枚。撮影の裏ではちょっとした苦労もあったそうだ。
「撮影日は晴れ渡っていて、根っこが乾いていたんです。濡れている方がかっこいいので、雨の日にもう一度訪れて、それでもまだ湿り気が足りなかったので、そばの川で水をくんで水をまきました。広角レンズを使ったので、一部が乾いていないだけでも気になるので、何往復もして水をかけていきました。撮影より水を運ぶ方が疲れましたね(笑)」
他にも美しい写真が次々と表示され、個々の解説が続いていく。
OM-D E-M1 Mark IIの強力な手ぶれ補正を利用して、シャッター速度0.4秒を手持ちで撮影した写真、防塵防滴機能を利用して、水面すれすれにカメラを構えた滝の長時間露光など、多種多様な「夏」が紹介された。
「打ち合わせなしのぶっつけ本番」(木村さん)とは思えないほどのスムーズなやりとりが続き、トーク時間が1時間を超えたところでバトンタッチ。吉住さんと萩原さんにマイクが渡された。
撮影時は楽な姿勢で
次の萩原史郎さん&吉住志穂さんのコンビも、まずは写真家として独立した経緯の話から入った。
萩原さんは隔月刊『風景写真』で編集長を務めたのち、写真家として独立。若かりし頃の写真を見せながら、「当時はまだ痩せていました」と笑いを交えつつ語っていた。
吉住さんは、風景写真家の大御所・竹内敏信さんに弟子入りしたのちに独立。当時は女性の弟子は採用していなかったが、人生で初めて髪の毛を短く切り、粘り強く志願して認めてもらったという根性の持ち主。そして数年アシスタントを務めたのち、独立した。
後半はそれぞれが写真の解説をしつつ、もう一人が質問をして深掘りしていくという形式。最初にメインで話したのは吉住さんだ。
前回の春編に引き続き、世阿弥の言葉を用いつつ、写真に対する心構えを語った。
「まずは『花は⼼ 種は態(わざ)』という言葉ですね。前回の春編でもお話ししました。『花』とは完成された理想形で、そこには自分の心が投影される。そしてその花を開かせる『種』とはテクニックであるという意味です。つまり、写真を撮るには心もテクニックもどちらも必要、という意味ですね」
「もうひとつは、『陰陽和する⼼』という言葉です。『陰陽』とは、対になるものです。明るいところと暗いところ、男女でさえも『陰陽』と言えます。その二つが融合した時に美しくなる、という意味の言葉です」
そして表示された写真は、ひまわりをあえて裏から撮影した一枚だった。
「例えば青空とひまわりの組み合わせは、元気な花と綺麗な空で『陽』と『陽』なんですね。とても綺麗ですが、意外性がない。そこで後ろ側に回ることで、ひまわりの持つ『陽』のイメージとは違う寂しさを表現し、意外性を出ています。向こう側にはひまわり畑を写すことで『陽』のイメージを残し、一枚の中に『陰陽』を出しました」
その後も吉住さんの解説が続く中で、萩原さんも大きく頷いていたのがライブビューを使う話。吉住さんは楽な姿勢を保って集中するために、普段はほとんどライブビューで撮影しており、萩原さんも「屈めば屈むほどここに邪魔なものがあるので」と、自分のお腹を指差して笑いを取りながらこれに続いた。
「楽な姿勢で撮るのはとても大事です。苦しい姿勢では集中も削がれますし、被写体に対する思考の深さもまったく違ってきます。楽な姿勢で撮れば息も苦しくないし、長時間の撮影ができて、色を変えてみよう、アングルを変えてみようと、試行錯誤ができるんです」
他にもいくつかの用語を紹介し、「萩原さんはもっと素敵な写真を見せてくれると思うので」とハードルを上げて、今度は萩原さんの番に。他の三人とは違い、スライドは用意せずに写真だけ見せていくスタイルだった。
最近の風景写真は手持ちで撮ることが多いという。それによって、作風にも変化が出てきたようだ。
「以前は三脚を使って1秒〜2秒のシャッター速度で、とろけるような水の流れを撮影していました。しかし、気づいたらその表現ばかりになっていたんですね。極端にいうと、長時間露光がルーティーンのようになっていました。そこで手持ちで撮影すると、水の流れもある程度残って表情が見えるようになり、滝が落ちる音も聞こえてくるんです。こういった写真は、意外と今まで撮っていなかったことに気づきました。当たり前のはずなのに新しいんです」
一方で、三脚を使う場合も2割程度あるという。それは「40Mハイレゾショット」を使う時だ。一度シャッターを押すだけで、0.5ピクセル単位でセンサーを動かしながら8枚を自動で撮影。それをカメラ内で合成して、より高画質な写真を撮影する。
「ハイレゾショットは、三脚を使わないと絶対に撮れない世界です。2,000万画素のカメラで5,000万画素の写真を撮れるという夢のような機能ですね。大きく印刷したい時にはハイレゾで撮影しています」
最後は吉住さんが「これはどうですか、これはどうですか」と質問を浴びせ、予定時間をオーバーしながらもう数枚の写真を紹介してこの日のトークは終了。ここで語りきれない話も多く、濃厚な計2時間のトークショーだった。
夏編の後も秋編、冬編と続く予定。次回は9月28日(金)〜10月10日(水)の展示予定だ。