交換レンズレビュー
フォクトレンダーMACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 E-mount
圧倒的な描写力を誇る中望遠マクロレンズ
2018年7月2日 12:00
花のクローズアップ撮影において、使い勝手の良いマクロレンズの焦点距離は中望遠でしょう。各メーカーともに頻繁にリニューアルされる、人気のある焦点距離です。
今回紹介するコシナの「フォクトレンダーMACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5」はソニーEマウントに対応し、35mmフルサイズ機において中望遠マクロレンズとなります。
花とほどよく距離を保つことができ、背景の雰囲気を残したボケ具合が得られます。特徴は「高解像力の等倍マクロ」。まるでそこに被写体が存在するかのようなリアルさです。ぜひ、作例画像を拡大して、このレンズの実力を確かめてください。
発売日:2018年8月(7月30日追記:発売延期になりました)
希望小売価格:税別14万8,000円
マウント:ソニーE
最短撮影距離: 0.35m
フィルター径:58mm
外形寸法:約78.4×99.7mm
重量:約771g
デザイン
レンズを手に取った時、ずしりと重みを感じました。金属製で黒光りし、フードも金属製でねじ込み式。外見だけでもしっかり写りそうと思わせます。
撮影倍率を上げるほどに全長が伸び、最大6cm伸びます。今回使用したα7R IIIに対しては重くて、太く感じますが、レンズとの重量のバランスは取れていました。
レンズ名にもなっているAPO-LANTHAR(アポランター)とは、フォクトレンダーのレンズの中でも高性能な製品に与えられる称号。APOはアポクロマート設計されたレンズで、軸上色収差、倍率色収差を抑える特徴を持っています。鏡胴先端部に見られる光の三原色である赤、緑、青の3本線はクラシックカメラのAPO-LANTHARに施されていたラインへのオマージュだとか。
操作性
ピント合わせはMFのみなので、ピントリングの操作性は重要です。レンズ全体の中で、ピントリング部が最も太くなっていて、幅は2cm。等間隔で細かな溝と凹みが施されています。
回転させる時は適度な重みを感じますが、動きはスムーズです。無限遠から最短撮影距離まで繰り出すにはピントリングを1と1/4ほど回転させます。
MFでのピント合わせに不安を感じる方も多いと思いますが、ピントの山はとても掴みやすかったです。イメージとしては普通のレンズがなだらかな山なのに対して、このレンズはとても尖った山。画質の高いレンズはピントが合ったのがはっきりわかるので、手動でのピント合わせがしやすいものだと実感しました。
また、カメラのカスタムボタンに拡大機能を割り当て、画面の一部を拡大するとより確実に合わせることができるというのはデジタルカメラの利点です。
MFなので、三脚を使ったほうが安定しますが、手ブレ補正がカメラ側に備わっているので手持ちでもブレを抑えることができます。ただ、前後の揺れはピントのずれにつながるので、被写界深度が極めて浅いクローズアップでは通常よりもしっかり構えて撮影しましょう。
絞りは開放のF2.5からF22まで1/3段ずつ変えることができ、カメラ側のダイヤルではなく、レンズ側の絞りリングを回します。ソニーEマウントαは実絞りになるのでボケ具合がモニター画面上に反映し、仕上がりのイメージが掴みやすいのが嬉しいところ。
絞り込んでも画面は暗くならないので、画面は見やすかったです。電子接点が搭載されているので、絞りの情報はExif情報に反映されます。
マクロレンズなので撮影倍率の高さが最大の特徴でしょう。最大撮影倍率は1:1の等倍。等倍でもシャープ感が高いのはマクロレンズならでは。等倍時でもレンズ前からピント面の距離は17cmなので、花にレンズ先端がぶつかることはなく、ほどほどの距離が取れます。
そして、もっとも訴えたいのが画質の高さです。絞り開放から全域でシャープ感がありました。絞りを変えて比較しましたが、F2.5からF11までは大差はありません。F16までしぼると少し甘くなり、F22まで絞ると回折が拡大してわかる程度に出てきました。
あとはぜひ作例をご覧ください。花や昆虫を写したものが主ですが、細部の形状まで滲むことなく写し出しています。
作品
等倍で撮影。中央部分を拡大してみると、花粉の丸い粒がひとつひとつはっきり見えるのに驚きました。
等倍で撮影。花だと撮影倍率がわかりにくいので、直径1.7mmのボタンを写しました。F5.6でも被写界深度は極めて浅いです。
絞り開放のF2.5で撮影。開放からシャープ感が高く、花の細かい形状まではっきりと描写されているのに驚きます。
絞り開放F2.5で撮影。絞りの開放値が明るいので、背景ボケもなだらかで綺麗ですね。花の美しい色や形が切り取れるのはマクロレンズならでは。
絞りの開放値の明るさ、中望遠という焦点距離により、花に寄らずとも大きなボケが作れます。アップよりも、引いて一輪目立たせる方が可憐さを感じますね。
絞り開放のF2.5で撮影。地面にカメラを据えて、手前の草をぼかしました。大きなボケで包まれ、やわらかな雰囲気がありますが、ピントを合わせた葉だけはとてもシャープ。
昆虫撮影では望遠マクロの方が距離を保てるメリットがありますが、トンボは逃げても戻ってきてくれるので比較的撮りやすい被写体です。体の細部をぜひ拡大してご覧ください。
アリも細部まで解像しています。動き回るのでISO800まで感度を上げましたが、綺麗に撮れています。
マクロレンズですが、ちょっと引いて写して見ました。近距離はもちろん、中距離、遠距離もシャープです。上から2つ目の節にピントを合わせています。
左目(向かって右側)にピントを合わせたのですが、拡大して見てください。まつげの1本1本、さらには瞳の毛細血管まで写し出しています。花や小物のクローズアップに限らず、ポートレートにも使えるレンズです。
絞り開放付近での周辺部の丸ボケの形状はレモン型になります。逆にF5.6になると角ばってきます。
まとめ
ソニーには純正の「FE 90mm F2.8 Macro G OSS」がありますが、本レンズも焦点距離が近く、最大撮影倍率も等倍と同じ。絞りの開放値もF2.8に対して本製品は F2.5と大差はありません。
ソニー純正はAFですが、本レンズはピント合わせがMFのみなので気楽に扱うことはできません。しかし三脚に据えて、じっくりと被写体に向き合うのはいいものですよ。画質の良さが液晶画面上からも伝わり、“いい写真が撮れる”気持ちが湧いてきて、撮影中はとても楽しかったです。