デジカメアイテム丼

本格登山カメラザックを風景写真家が試す 果たして使い心地は?

ハクバ「GW-ADVANCE トレイル33バックパック」

日本人に合った作りで背負い心地良好

山で写真を撮るにあたって一番大事なもの、それはカメラではない。山はちょっとしたことでも危険につながるのできちんとした登山装備がもっとも大切なものになる。

一般的なカメラザックはカメラ機材はしっかりと収納できるが登山となると話は別で、山用品の収納力はほとんどゼロに近い。

また、カメラザックでも近年は身体へのフィット感が良いものが多くなってきたが、重い荷物を1日何時間も背負って歩き続ける登山ザックのフィット感とは別次元だろう。

では登山用のザックにカメラ機材を入れればいいじゃないか、と言われそうなものだが、登山ザックはカメラバッグではないので、いざ撮影しようとなったら使い勝手が悪いし、機材保護もベストとは言えないものがほとんどだ。

上記のようなことに悩んでいる山岳フォトグラファーは少なくないだろう。もちろん山岳に限らず、重い荷物を長時間背負って歩くフォトグラファーも同じ悩みを持っているはずだ。

そんなフィールド派フォトグラファー達に紹介したいのが、登山ザックのフィット感とカメラバッグの収納力を持つハクバの「GW-ADVANCE トレイル33バックパック」だ。

本格的な山用カメラバッグ「GW-ADVANCE」シリーズ

GW-ADVANCEシリーズはハクバ写真産業株式会社が販売する本格的な山行に対応するカメラバックパックシリーズで、今回紹介するトレイル33バックパックを含めて全4サイズ展開している。

トレイル33バックパックは「GW-ADVANCE ALPINE40バックパック」の弟分にあたる中型モデルとなる。

ALPINE40バックパック(右)と並べたところ

トレイル33バックパックの見た目は登山ザックそのものと言っていい。サイズは日本人向けに作られており、身長165cmの筆者にもぴったり。

カラーもカメラバッグにありがちな黒一色などではなく、明るめのグレーの生地にオレンジをアクセントにしており、いかにもカメラザックといった感じはほとんどしない(ブラック&レッドのモデルもあり)。

背負い心地は極めて良く、さすがは“山用”を謳うバックパックである。

背面部分は中央が一段低い立体構造で空気の流れ道が確保されており、汗による蒸れを軽減してくれる。クッション部も目の大きなメッシュ素材で汗のベタつきもない。

肩のラインにフィットするショルダーハーネスは柔らかすぎず適度な剛性があり、バックパックがきちんと身体に引き寄せられる感覚がある。

また、ヒップハーネスが2本ベルト構造の幅広タイプであることが一般的なカメラバッグとの大きな違いだ。重量を肩だけでなくしっかりと腰に分散して背負うことができ、機材重量が半分くらいになったかと思うほど軽く感じる。歩行中のバックパックの揺れも防げて脚の疲労軽減にも役立つ。

背面パネルはスプリングスチールフレームを内蔵しており、身体にフィットするS字曲線を維持してくれる。フレーム素材は軽く剛性も高く柔軟性もいい。

重量は1,600gと平均的な重さだが、身体へのフィット感がすこぶる良いので、バッグ単体で背負ってみると重さをほとんど感じない。

多くの荷物を詰め込める収納部

一般的な登山ザックが1気室から2気室構造になっているのに対し、トレイル33バックパックは上中下の3気室に分かれていて、中央の気室がカメラ収納部になっているのがカメラバッグである証といえるだろう。

重たいものはバッグ中央の背面側、という登山ザックのパッキングの基本も、重量のあるカメラ機材を中央の気室に収納することできちんと守られている。

中央に重さを集めることでバッグの重さが肩、背中、腰にバランス良く分散される。カメラはバッグ側面から収納するサイドアクセス式で、バッグを地面に降ろさず素早い機材の出し入れができるのがカメラバッグとしての大きな特徴になる。

サイドのジッパーを開くと中には巾着式の蓋が付いたインナーボックスがある。開口部は広くカメラの取り出しがしやすい。

インナーボックスの開口部は外に向かって広がっている立体裁断だが、折り目が入っているので折りたたみやすい。

機材収納部はそれほど大きくはないが、標準ズームレンズを取り付けた35mmフルサイズ一眼レフカメラと望遠ズームレンズ(または広角ズームレンズ)が入る。

上部の気室がもっとも容量が多い。食事や調理器具、レインウェアや防寒着などかさばるものを入れる。日帰りはもちろん、山小屋で1泊などの撮影にぴったりな収納力だ。

上部気室の開口部は巾着式になっており、口が大きく中が見やすい。ヒモの留め具が優れもので、開け閉めが非常にスムーズな上に自動でロックされる。

下部の気室はジッパーで開閉する。大きな収納部ではないが、着替えなどを入れるには十分なサイズ。2気室と違って3気室タイプは下段の開閉がしやすいので、すぐに取り出したいレインウェアなどを入れるのもいいだろう。

雨蓋にも収納部がある。レインカバーや行動食など軽く、簡単に取り出したいものを入れることができる。なお、すべてのジッパーは開け閉めのスムーズなYKK製で、グローブ操作でも指がかりのよい大きめのループコードが付いているのもうれしいポイントだ。

外側にはメッシュの大きなポケットが採用されている。地図やノートなど薄めのものを入れられるスペースとなっている。

ヒップハーネスにはポケットが付いている。右側はスマートフォンやコンパクトデジタルカメラなど小物が入るジッパーポケットになっている。

左のヒップハーネスポケットは、折りたたみ式のドリンクホルダーになっている。登山において物を落下させることは後続登山者の危険につながるが、ドリンクが不意に落ちないようにゴムのループが内蔵されており安心して使用できる。

ハイドレーションシステムにも対応。小まめな水分補給が可能だ。

同社の「くびの負担がZEROフック」も標準装備。カメラストラップをバックパックにかけることで首への負担が全くなくなる優れものだ。

三脚やトレッキングポールの取り付けも可能。横に飛び出さずに取り付けられるので狭い登山道で人とすれ違う際も安心だ。

使い勝手を向上させる周辺アクセサリー

登山では突然の雨はつきもの。耐水圧1,500mmの専用レインカバーが付属しているのである程度の雨ならは問題ないが、強い雨や長時間の雨ではバックパックへの浸水を完全に防ぐことはできない。

近年は高価なカメラ機材も多く、水浸しになっては大変だ。そこで本バッグと合わせて使いたいのが同社の「ドライクッションポーチW」だ。

豪雨でも安心な国際防水保護等級IPX4に合格したカメラポーチだが、これがなんとトレイル33バックパックのカメラ収納部であるインナーボックスと完全に同サイズにできているため、そのまま入れ替えることができるのだ。ぜひ活用したい。

また、カメラを首から下げて歩いているとぶらぶらしてお腹に何度も当たって痛い。特に登山では大きな動きもありカメラがぶらぶらしていては危険だ。

そんなときには「GW-ADVANCE カメラホルスターライト」を使用したい。ホルスターにレンズ部分を通して身体に固定するだけの単純なものだが、使ってみると快適そのもの。両手を空けておきたい登山では特に重宝するはずだ。

快適な登山撮影は背中から

主に登山用という視点からGW-ADVANCE トレイル33 バックパックをレビューしたが、もちろん登山以外にも使用できる。

たとえば尾瀬や上高地といった、山は登らないが長時間歩くようなフィールドでも身体へのフィット感に優れるトレイル33バックパックは最適なカメラバッグといえる。

またカメラバッグに見えないルックスや、収納力と速写性から、海外旅行用の撮影バッグとしても活躍できそうだ。

トレイル33バックパックのようにとてもしっかりと作り込まれているバックパックは快適さ故に背負うのが楽しくなってくる不思議さがある。どんどん歩いてサクサク撮影を楽しむ。そんなアクティブなフォトグラファーにぜひ背負ってもらいたいバックパックだ。

制作協力:ハクバ写真産業株式会社

今浦友喜

1986年埼玉県生まれ。風景写真家。雑誌『風景写真』の編集を経てフリーランスになる。日本各地の自然風景、生き物の姿を精力的に撮影。雑誌への執筆や写真講師として活動している。