フィルター活用術

身近なところで桜を撮ろう!公園・団地・河川敷で役立つテクニック

ちょっとの工夫でここまで変わります

今年も桜の季節がやってきました。一年に一度の花盛り。ぜひ写真に収めたいものですね。

日本各地にはたくさんの桜の名所があり、〇〇桜などと名前がついた銘木もあります。それぞれ人気の撮影スポットです。しかし、桜のピークは短いので、満開を迎えた桜は大勢の人で溢れ、撮影のポジションを取るのも大変。しかも、年度の変わり目でもあるこの時期は何かと忙しくて、遠出が難しい方もいるでしょう。

そこで今回は「身近な場所で桜を撮る」テーマに、それに沿った撮影テクニックをご紹介します。近所に咲いている桜でも狙い方次第で素晴らしい作品にすることができますよ。

近所の公園だってきれいに撮れる!

皆さんの近所に、桜の木が植わっている公園はないでしょうか。意外に立派な木があったりしますが、考えなく撮るだけだと人や人工物が入ってしまいます。それも悪くはないのですが、レンズワークと背景選びを工夫することで、自然の中で撮ったかのような桜の写真にできます。

レンズは望遠系がおすすめ。広角や標準に比べて画角が狭い分、背景の写る範囲が狭いので、背景をすっきりさせることができます。

背景はくっきり写さずに、大きくぼかすのが基本。背景には周囲の桜のほかに、空や街路樹といった自然の被写体を入れると作品の雰囲気に変化も出せます。特に空を背景にしたアングルは応用が利くので挑戦してみてください。

桜の花だけをクローズアップしよう

桜自体は美しいのですが、背景にマンションやフェンスなど、いろいろな人工物が写り込んでしまいました。

NG!
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL 12-40mm F2.8 PRO / 12mm(24mm相当) / 絞り優先(1/100秒・F11・+1.3EV) / ISO 200

望遠レンズでクローズアップすれば大きなボケが得られやすく、背景の写る範囲も狭いので画面をすっきりさせることができます。主役、背景ともに桜だけでフレーミングしつつ、主役は白い桜、背景にはピンクの桜と色の差をつくり、主役を引き立てました。

OK!
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 150mm(300mm相当) / 絞り優先(1/1,000秒・F2.8・+1.7EV) / ISO 200

広角系のレンズでも手前の花に近づいて、絞りを開ければ、背景をほんのりぼかすことができます。主役と背景の花が離れている場所を選ぶのもポイントになります。望遠にはない広角特有の遠近感が生じるので、力強さも特徴になります。

OK!
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL 12-40mm F2.8 PRO / 12mm(24mm相当) / 絞り優先(1/640秒・F2.8・+2.7EV) / ISO 200

背景の色をすっきりさせよう

桜のような木に咲く花は、枝の処理がポイントとなります。写真のように、枝が背景に入ると目障りになります。また、茶色い地面も彩りに乏しく、避けたいものです。広角系の画角は背景の写る範囲が広くなり、ボケも少ないので、背景に色々な要素があると煩雑に感じられます。

NG!
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL 12-40mm F2.8 PRO / 15mm(30mm相当) / 絞り優先(1/160秒・F5.6・+1.3EV) / ISO 200

桜を見上げると空が背景になり、すっきりと見えます。見上げてしまえば人工物が入りにくいので、広めに写すことができます。これが近所の公園とは思えないですね。

OK!
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL 12-40mm F2.8 PRO / 12mm(24mm相当) / 絞り優先(1/320秒・F5.6・+1.0EV) / ISO 200

背景に桜、空以外の被写体を入れるならば、街路樹の緑が考えられます。川沿いの桜なら水面を入れてもいいですね。主役は桜なので、桜の面積を多く取り、淡い桜の色を引き立てるアクセントとして左に緑を入れました。

OK!

前ボケで人を隠そう

名所でなくても見頃の桜には多くの人が集まります。画面に人を入れずに写すのは難しいもので、周囲の菜の花も入れて写そうとするとこの通り。桜の部分だけを狙えば切り取れますが、せっかくの花の彩りを取り入れたいものです。

NG!
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 70mm(210mm相当) / 絞り優先(1/500秒・F2.8・+1.3EV) / ISO 200

同じ桜ですが、しゃがんだ状態の低いアングルから狙うと、菜の花で人を隠すことができました。手前の菜の花との距離が近づいたことで大きな前ボケとなり、やわらかな雰囲気を出しながら、黄色を添えることができました。

OK!
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 79mm(158mm相当) / 絞り優先(1/1,000秒・F2.8・+1.3EV) / ISO 200

団地の桜並木も狙い目

駅前の通りや団地の敷地などで見かける桜並木。桜が重なり合って美しいものですが、全体を見ると、建物や電線など、人工物が見えるので撮影には不向きに感じるかもしれません。しかし、うまくそれられ避けることできれば、ボリューム感のある写真に仕上げることができます。

住宅街の中にある桜並木。濃淡の違う桜が交互に植えられていて、左右から枝が伸び、まるで桜のアーチのようです。人の手で植えられているので、自然の桜にはない密集感がありますが、全体をただ撮っただけでは平凡です。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 40mm(80mm相当) / 絞り優先(1/50秒・F9.0・+1.3EV) / ISO 200

並木道を望遠で

望遠レンズを使うことで、手前の花と奥の花との距離が近くに感じられ、密集感が出るという特徴があります。これを圧縮効果と呼びます。つまり望遠レンズで桜並木を狙うと、見た目以上のボリューム感を出すことができます。広角では圧縮効果が出ないので、あえて離れた位置から望遠で狙いましょう。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 150mm(300mm相当) / 絞り優先(1/200秒・F4.5・+1.7EV) / ISO 200

アングルを工夫すると……

並木の真ん中に立って桜を見上げると、中央に向かって枝が伸びるように見えます。左右に桜が並んでいるので、対称形にフレーミングしました。綺麗に並んでいるので、造形を意識したフレーミングをするのも面白いですね。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL 12-40mm F2.8 PRO / 15mm(30mm相当) / 絞り優先(1/160秒・F5.0・+2.7EV) / ISO 200

PLフィルターで青空&緑が⤴︎⤴︎

PLフィルターは偏光フィルターともいい、葉っぱや水面のテカリを除去したり、青空のコントラストを高めるアイテムです。反射をカットすることで、被写体本来の色を出すことができ、白っぽさがなくなるので画面が引き締まります。

これがPLフィルターです。使用したのはマルミ光機の「EXUS CIRCULAR P.L」。

2枚のガラスに偏向膜を挟んだ構造になっていて、前枠を回転することで効果を強弱することができます。

ファインダーやライブビュー画面を見ながら、程よい効果が得られたところで撮りましょう。

PLフィルターを指で回し、効果を変えているところを動画にしてみました。

偏光をカットするぶん、光量が減少するので、わずかにシャッター速度の低下、もしくは、ISO感度の上昇が起こることに注意してください。晴天昼間ならほぼ問題ありません。

桜が映える濃い青の空に

都市で撮った空ということで、空気中に漂うチリの反射によって空が水色に見えています。

PLフィルターなし
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL 12-40mm F2.8 PRO / 12mm(24mm相当) / 絞り優先(1/400秒・F5.6・+0.3EV) / ISO 200

PLフィルターを使うとチリの反射が取り除かれ、空の色を濃く写せました。桜の淡い色と空の濃い色とのコントラストが高まって、メリハリが出ています。

PLフィルターあり
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL 12-40mm F2.8 PRO / 12mm(24mm相当) / 絞り優先(1/640秒・F5.6・+0.3EV) / ISO 200

てかりを減らして背景をすっきりと

桜の花びらにてかりは見られませんが、背景に入れた葉の表面が白く反射し、うるさく感じます。

PLフィルターなし
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 150mm(300mm相当) / 絞り優先(1/250秒・F4.0・+0.7EV) / ISO 200

PLフィルターを使うと葉の表面の反射がカットされ、背景が暗くしまったぶん、桜の白さが際立ちました。

PLフィルターあり
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 150mm(300mm相当) / 絞り優先(1/250秒・F4.0・+0.7EV) / ISO 200

河川敷も、身近な桜を狙える場所の一つです。橋の上から河川敷の桜を狙いましたが、水面が白く反射しているため、桜が背景に溶け込みがちです。

PLフィルターなし
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 55mm(110mm相当) / 絞り優先(1/320秒・F5.6・+1.3EV) / ISO 200

PLフィルターを使って水面を落ち着かせ、さらに露出をわずかに下げました。背景が暗く締まり、桜が引き立つのがわかります。

PLフィルターあり
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 55mm(110mm相当) / 絞り優先(1/400秒・F5.6・+0.7EV) / ISO 200

「方効き」「逆光」に注意!

PLフィルターの効果は順光側で発揮されます。順光で使う分には空全体のコントラストが高まって効果的ですが、順光と逆光の間付近の空を狙うと、効果の効きの違いから濃度の差が極端になります。特に画角の広い広角系のレンズで写す場合に注意が必要です。

NG!
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL 12-40mm F2.8 PRO / 12mm(24mm相当) / 絞り優先(1/500秒・F5.6・+0.3EV) / ISO 200
OK!
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL 12-40mm F2.8 PRO / 12mm(24mm相当) / 絞り優先(1/320秒・F5.6・+0.7EV) / ISO 200

逆光ではPLフィルターの効果はほとんど見られません。逆光の空はもともと白っぽく見えますが、PLフィルターをかけても色が濃くなることはありません。PLフィルターをつけているとシャッター速度が遅くなるので、必要がない場合は外しておくといいでしょう。

PLフィルターなし
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL 12-40mm F2.8 PRO / 12mm(24mm相当) / 絞り優先(1/250秒・F5.6・+1.7EV) / ISO 200
PLフィルターあり
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL 12-40mm F2.8 PRO / 12mm(24mm相当) / 絞り優先(1/250秒・F5.6・+1.7EV) / ISO 200

まとめ

桜は公園や街路樹としても植えられているので、遠くに出かけなくても楽しむことができます。むしろ、生活の範囲で出会う桜ほど、つぼみが膨らんでからぽつぽつと花が咲き、やがて満開を迎えて、散るという一連の流れに立ち会えるのではないでしょうか。開花の様子を観察することができるので、旬も見極められることでしょう。

お気に入りの桜を見つけたら、レンズワークやアングル、フィルターを活用して、美しい姿を残しましょう。

制作協力:マルミ光機株式会社
撮影協力:大島小松川公園

吉住志穂

1979年東京生まれ。高校入学後から本格的に撮影を始める。2001年日本写真芸術専門学校を卒業後、写真家の竹内敏信氏に師事。自然の「こころ」をテーマに、主に花のクローズアップを撮影している。2016年には和紙にプリントし、掛軸に仕立てた展示「花時間」を開催し、好評を博す。また各地での講演会や写真誌での執筆を行う。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。