交換レンズレビュー
M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro
絞り開放からシャープな描写 軽くて手のひらサイズなのも◎
2017年2月15日 07:00
オリンパスからマクロレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro」が登場した。手軽に使える標準クラスのマクロレンズで、初心者でもかんたんにクローズアップ撮影が楽しめる。全長は60mmで重量は128gと手のひらサイズ。
しかし、最大撮影倍率は1.25倍とマクロレンズの中でも群を抜く高さを誇る。私のライフワークである花のクローズアップ撮影において、どのような作品が撮れるのか、実際に使用してみた。
発売日 | 2016年11月18日 |
実勢価格 | 税込3万1,000円前後 |
マウント | マイクロフォーサーズ |
最短撮影距離 | 95mm |
フィルター径 | 46mm |
外形寸法 | 57×60mm |
重量 | 約128g |
デザインと操作性
オリンパスのレンズは「M.ZUIKO PRO」、「M.ZUIKO PREMIUM」、「M.ZUIKO」と3つのクラスに分けられているが、このレンズはM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroと同じ、M.ZUIKO PREMIUMに含まれ、作りはとてもしっかりしている。それでいて、軽量でコンパクト。
AFはスピーディーで迷いなく合う。幅広いピントリングの操作性はほどよい滑らかさで、マニュアルフォーカス時にもストレスはない。最短撮影距離がかなり短いためだろうが、純正でフードがないので強い光が射し込む時はフレアが生じることもある。手でハレ切りをするなどして対処しよう。
マクロレンズは焦点距離によって標準系、中望遠系、望遠系に分けられるが、本レンズはマイクロフォーサーズのカメラに装着すると60mm相当の標準マクロとなる。望遠系に比べると焦点距離が短いので、遠くの被写体は狙いにくいぶん、近距離にあるものをクローズアップするのに向いている。
さて、オリンパスユーザーはマクロレンズの選択肢が増えたことで、M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroとどちらを買うべきか迷うかもしれない。
同じマクロレンズといえども、違いはいくつもある。まず焦点距離の違いによって撮影距離が異なる。距離を保ちつつ迫るなら60mmマクロ、近距離なら30mmマクロとなる。30mmの最短撮影距離は95mmでレンズ前からでは14mmしかない。花に迫ると、手前の花びらにレンズが触れてしまうことがある。
焦点距離が長いマクロレンズに比べれば被写界深度は深めになるが、作品を見てわかる通り、クローズアップ撮影時はかなりボケが大きくなり、最大撮影倍率付近ではシャープな部分が1mmもないぐらいだ。ピント合わせがとてもシビアになるので撮影倍率が高くなるなら三脚を使ったほうが安心だ。
マクロレンズは撮影距離のほかに背景の写る範囲の違いで使い分けている。標準マクロは背景の写る範囲が広めなので、周囲の雰囲気を感じさせながらのクローズアップが得意だ。
また、絞りの開放値がF2.8とF3.5とわずかに差があるが、クローズアップするとどちらもかなりボケるので、この点はあまり気にするほどではないだろう。
最大撮影倍率は60mmが等倍、30mmが1.25倍と30mmの方が大きく写すことができる。小さな水滴を写す時は30mmの方が存在感を出すことができる。そのぶん、寄れば被写界深度は極めて浅くなる。
価格は30mmの方が手頃だが、60mmは防塵防滴なうえ、別売のフードもあるので雨の日も安心だ。それぞれメリットがあるので2本とも揃えるのがベストだが、まずは自分にとって使い勝手の良い方を選ぶといい。
このレンズの画質は絞り開放からキレがありF3.5、F4、F5.6と絞るにつれ若干シャープ感は上がるが大差ない、逆にF16、F22と絞り込んでいくとやや甘さが出てくるが絞り全域で解像感が高く、撮っていて気持ちがいい。また、シャープな部分からすっとボケに入っていく感じの描写だ。
絞り羽根枚数は7枚で円形絞りを採用している。マクロ撮影では背景に丸ボケを入れることがあるので、その形状が気になるところ。絞り開放で丸ボケを入れると、画面の端のボケがレモン型になりがちだが、絞り開放から1/3段ずつ絞りを変えて撮り比べたところ、絞り開放でも画面端のボケが丸みを帯びていた。端が丸くなるのはF5.6付近。逆に絞りF8では全体的にボケが角ばってくる。
共通設定:OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / +1EV / ISO200 / 絞り優先AE / 30mm
作品
マクロレンズとしては画角が広いので、背景の写る範囲も広めになる。ホトケノザをクローズアップしつつ、背景に山並みが入るので広がりが感じられる。
最大撮影倍率まで寄ると花の一部をクローズアップすることができる。花そのものを写すというより、色や造形の美しさに迫ることができる。
水滴に花が映り込んでいる姿がとても美しい。小さな水滴の存在感を引き出せるのは寄れて、ぼかせる、マクロレンズならでは。背景のボケを維持しつつ、映り込みのシャープ感を増すため、開放より少し絞り込んでいる。
チューリップの下部分をクローズアップした。被写界深度が浅いので、シャープな部分がわずかだが、ピント面がシャープなのでピンボケのようには感じられない。
花にとまったチョウに迫った。ワーキングディスタンスが短いので、逃げられないよう、そっと近づきつつ、翅とピント面が平行になるようなアングルを狙った。
小さなカマキリが花にちょこんと乗っていた。被写界深度が浅いので体が前後に1、2mmずれればピンボケだ。手持ちだったので、かなり多めにシャッターを切って、その中から選んだ1枚。
30mmの単焦点レンズとして、花をスナップ的に狙ってみるのもいいだろう。絞りの開放値が明るめなので背景もほどほどにぼかすことができる。
まとめ
よくマクロレンズの使い方がわからないと質問されるが、難しく考えずに、普通のレンズと同じように使えばいい。しかし、せっかくマクロレンズを使うのなら、マクロレンズの能力が活かせるようなシーンに使いたい。
マクロレンズは通常のレンズよりクローズアップが得意。また、被写体に近づくほどにボケが大きくなるし、もともと絞りの開放値が明るめだ。スナップやテーブルフォトにも使えるレンズだが、被写体に寄りたい時こそマクロレンズの出番だ。価格も手頃で、気軽に持ち歩けるマクロレンズの登場で、日頃の撮影にクローズアップの楽しみが加わることだろう。