イベントレポート

萩原俊哉さんのニコンD850セミナーに密着 晩秋の志賀高原を撮る

GANREFメンバー8名が参加した1泊2日の撮影行

去る11月3日と11月4日に、インプレスが運営する写真SNS「GANREF」が主催するニコンD850の志賀高原撮影セミナーが開催された。ここではその模様をお伝えする。

現在GANREFでは「注目製品レビュー ~ニコン D850編~」という企画を行っている。これはGANREFメンバーから選ばれた8名がD850の体験レポートを投稿する企画だ。

その企画の目玉として、志賀高原での撮影セミナーが行われた。この1泊2日のセミナーには8名全員が参加し、講師を務める写真家の萩原俊哉さんの指導の下、撮影や講評会が行われた。

レビュー企画の開始に合わせて、参加メンバーにはD850と希望のレンズが無償で貸し出されている。メンバーは応募によってGANREFクラブメンバーから選ばれているが、今回は応募資格がGOLDランク以上となっており、いずれのメンバーもレベルの高い作品を継続して投稿している方々だ。

D850

メンバーのうち、主にニコンを使っているのは4名。残り4名は他社のカメラを使っているとのことだった。

レビューの期間は10月28日~11月30日。GANREFには続々とメンバーの作品やレポートが投稿されている。

参加者による志賀高原での作品、レビュー、撮影記はこちら

https://ganref.jp/common/monitor/nikon/d850/#seminar

参加者によるD850のオリジナルレビューはこちら

https://ganref.jp/common/monitor/nikon/d850/#reviewMember

まずは座学でD850の使いこなしをレクチャー

初日の11月3日は、志賀高原にある「石の湯ロッジ」(長野県下高井郡山ノ内町)に14時集合となった。この宿を拠点にセミナーが行われた。

石の湯ロッジ

メンバーの自己紹介を経て、さっそく萩原俊哉さんからD850の使いこなしについての座学が行われた。

講師の萩原俊哉さん

D850は有効4,575万画素の35mmフルサイズ裏面照射型CMOSセンサーを採用したデジタル一眼レフカメラ。約7コマ/秒(別売のマルチパワーバッテリーパックMB-D18とバッテリーEN-EL18b併用で最高約9コマ/秒)の高速連写性能を備えている。9月に発売されるや、品薄になる人気のカメラだ。

4,575万画素とあって、その解像感を引き出すためには徹底したブレ防止策を講じる必要があるとのこと。三脚を正しく設置して、リモートコードと電子シャッターを使うサイレントシャッターでカメラブレを防ぐと良いとした。ミラーアップしてから撮影する露出ディレーモードも効果的という。

手持ちの場合は、ISO感度のオート機能を使ってシャッター速度が「1/焦点距離」秒以上になるようにし、例え超広角レンズであっても1/60秒以上のシャッターを切ることが必要とのこと。

夜景などの撮影では、D850の-3EV対応測光や-4EV対応AFが威力を発揮するので、夜の撮影で実感して欲しいと話した。高感度画質も向上しており、「D810も優れていたが、D850はISO6400やISO12800が格段に良くなった」とのこと。

また、ライブビュー時にAF枠を小さくしてピントを合わせるピンポイントAF機能を活用すると、花に止まった虫などに正確にピントを合わせられるのだそうだ。

ホワイトバランスに新たに加わった「自然光オート」も積極的に使って欲しいとのこと。オートホワイトバランスに比べて、より見た目に近い自然な色再現ができるため、紅葉や夕焼けなどに適するという。

連写して深度合成用素材の撮影を行う「フォーカスシフト撮影」機能の説明もあった。絞りすぎずにパンフォーカスが得られるので、小絞りボケの影響をなくせるという。

またチルト液晶モニターも便利で、「地面の小さなキノコなどを積極的に撮ろうと思わせます」と評価した。

座学の最後には萩原さん直伝の「風景写真お勧め設定」が披露された。ピクチャーコントロールは「オート」がよくできているので試して欲しいとのこと。ホワイトバランス「自然光オート」が推奨された。

メンバーからは、「普段使っているD700とどれくらい違うのか知りたい」「ニコンのレンズをいろいろ試したい」「自分にとって本当にD850が必要なのか考えてみたい」「他社カメラのユーザーだが、D850が出て気になって参加した」といった声が聞かれ、興味津々の様子だった。

萩原さんのレクチャーを参考に、メンバーはさっそくカメラの設定を行っていた

※本記事の作例は撮影実習において筆者が撮影したものです。長編800ピクセルにリサイズしてありますが、トリミングやレタッチは行っておりません。ピクチャーコントロールは全て「オート」です。

1日目:石の湯ロッジ周辺→横手山ドライブインからの夜景

座学の終了後はさっそく石の湯ロッジの外で撮影実習となった。ここ石の湯ロッジは建物のすぐ前でも大自然を狙える。

撮影に先立ち、三脚の正しい設置方法も伝授された。またL型のブラケットを用意しておくと、横位置から縦位置に変更した際に構図のずれが少なくて使いやすいとのアドバイスもあった。

メンバーは早くも思い思いに撮影を楽しんでいた。この辺りは葉の落ちた木々が立ち並ぶ場所。こうした木々は細かい枝が無数にあり、それらをどれだけ描写できるか、高画素カメラの面目躍如といった被写体だろう。

D850 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 1/1.7秒 / F16 / -1EV / ISO 64 / 絞り優先AE / 120mm / ホワイトバランス:自然光オート

その後、夕方からはバスで横手山ドライブインへ。ここで夕景および夜景の撮影となった。当日は天候にも恵まれドラマチックな夕陽を見ることができた。

ここで、ホワイトバランスの「自然光オート」を試した。従来のオートや晴天に比べて赤みが残っていて、好ましい夕景になっている。

ホワイトバランス:オート。D850 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 1/2秒 / F16 / 0EV / ISO 64 / マニュアル露出 / 24mm
ホワイトバランス:自然光オート。D850 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 1/2秒 / F16 / 0EV / ISO 64 / マニュアル露出 / 24mm

横手山ドライブインからは、山ならではの刻々と変わる光と雲のダイナミックな様子を収めることができた。

以下の作例は明るめに写しているが、日没前後で実際はかなり暗い状況だった。D850では暗所でのAF性能が-4EVに拡大しているとあって、雲や山の稜線などピントを合わせたい場所に迷わず合焦できた。

D850 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 1/10秒 / F16 / -1.3EV / ISO 64 / 絞り優先AE / 24mm / ホワイトバランス:自然光オート
D850 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 1秒 / F16 / 0EV / ISO 64 / マニュアル露出 / 120mm / ホワイトバランス:自然光オート

初日の撮影はこれで終了。宿に戻り夕食となった。萩原さんを囲んでの席では、萩原さんに質問をしたり、メンバー同士で情報交換をしたりして有意義な時間が過ごせたようだった。

2日目:一沼→澗満滝展望台→坊平シラカバ園地

2日目は6時に石の湯ロッジを出発。旭山近くの一沼で早朝の風景を撮影することになった。

向かう途中はかなり霧が濃く、一時は「何も撮れないのでは?」と思われたが、撮影の段になると少し霧が晴れて近くは見えるようになった。

一沼に到着。このあと霧が少しずつ晴れてきた。

ここでもホワイトバランスの「オート」と「自然光オート」を比較した。オートでは全体的に緑がかるが、自然光オートでは青みがかり、晩秋の朝という雰囲気の表現としては「自然光オート」のほうが好ましい色になったのではないかと思う。

ホワイトバランス:オート。D850 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 1.6秒 / F11 / -1EV / ISO 64 / 絞り優先AE / 24mm
ホワイトバランス:自然光オート。D850 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 1.6秒 / F11 / -1EV / ISO 64 / 絞り優先AE / 24mm

結局、この朝霧が幻想的な雰囲気を醸しだし、作品にプラスの要素となったようだ。ここでは霧と沼のショットも多くのメンバーが押さえていた。

D850 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 1.3秒 / F16 / -1EV / ISO 64 / 絞り優先AE / 50mm / ホワイトバランス:自然光オート

撮影中は萩原さんが巡回してメンバーの質問に答えたり、撮影のアドバイスを行っていた。講師から個々に指導を受けられるのは、こうした撮影セミナーの大きな魅力だ。

そのあと一旦宿に戻って朝食を摂り、澗満滝展望台とその周辺での撮影となった。展望台からはやや遠目となるが谷の奥に澗満滝を望むことができた。

D850 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 1/6秒 / F16 / 0EV / ISO 64 / 絞り優先AE / 44mm / ホワイトバランス:自然光オート

また、展望台の周辺では紅葉や落ち葉、炭焼き小屋の風景なども収めることができた。

この日は朝から小雨の天気となったが、葉や木々、苔などが雨に濡れて濃い色となり、写真映えする風情となっていた。

D850 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 1/320秒 / F4 / -0.3EV / ISO 400 / 絞り優先AE / 120mm / ホワイトバランス:自然光オート
D850 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 1/8秒 / F11 / -0.3EV / ISO 64 / 絞り優先AE / 120mm / ホワイトバランス:自然光オート

続いては、今回最後の撮影地となる坊平シラカバ園地に向かった。この辺りを知り尽くした萩原さんが、撮影スポットやそこでどう狙えば良いかを教えてくれるので、迷わずに撮影に挑める。

下の作例は、萩原さんがメンバーに教えてくれたものの1つ。二股に分かれたシラカバの木を両端に入れてフレーミングするというテクニックで、奥行きが感じられる写真になった。

D850 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 1/20秒 / F5.6 / 0EV / ISO 64 / 絞り優先AE / 92mm / ホワイトバランス:自然光オート

D850 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 1/50秒 / F5.6 / 0EV / ISO 64 / 絞り優先AE / 120mm / ホワイトバランス:自然光オート

ここは葉を落としている木々も多く、まさに晩秋といえる景色を撮影できた。

D850 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 1/4秒 / F16 / -0.3EV / ISO 64 / 絞り優先AE / 120mm / ホワイトバランス:自然光オート
D850 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 1/200秒 / F8 / +1EV / ISO 64 / 絞り優先AE / 24mm / ホワイトバランス:自然光オート

こうした林の中では、チルト式液晶モニターが役に立つ場面が多く、実際に多くのメンバーが活用していた。ローアングルだけでなく、上の作例のように見上げる状況でもチルト液晶が役に立った。

D850はタッチ操作に対応したのもトピックで、画像の拡大などをスマートフォン同様に行えるのが使いやすかった。今回のような風景撮影で三脚に据えた状態だと、チルト式液晶とタッチ操作のコンビが特に威力を発揮すると感じた。

最後はプリント&講評会

坊平シラカバ園地から宿に戻って講評会となった。1人2点の作品をセレクトし、現場のエプソン製プリンター「SC-PX5V II」でA3サイズにプリント。1人1人の作品を萩原さんが講評した。

セレクトはカメラで行ったほか、ノートPCを持ち込んで行ったメンバーも見られた。
エプソンSC-PX5V II

萩原さんからは1枚1枚の作品に対して、「背景と主題のバランスを考えて、背景がうるさくならないように絞りすぎないことも必要」「画角を広くすることで、視線の誘導を狙ってみるのもよい」「被写体と背景が重なってしまわないように注意する」といったアドバイスがあった。

また画質面では、「しっかりとディテールが残っているのが良い」(萩原さん)とD850を評価する場面もあった。講評会ではA3ノビと大きめにプリントしたが、撮って出しの作品ながらどれも精緻に景色を描き出しており、D850の解像力の高さを感じさせる結果となっていた。

今回のセミナーを振り返ると、現場で写真家に自由に質問できることが写真の上達にとても有効なのではないかと感じた。D850の使い方などについての疑問も併せて、萩原さんは質問に的確に回答しており、メンバーも納得の様子だった。

メンバーそれぞれもこのセミナーを楽しめたようで、投稿されたレポートからもそれが伝わってきた。その辺りも含めてD850に興味のある方は、ぜひメンバーのレポートをチェックしてみてはいかがだろうか。

参加者による志賀高原での作品、レビュー、撮影記はこちら

https://ganref.jp/common/monitor/nikon/d850/#seminar

参加者によるD850のオリジナルレビューはこちら

https://ganref.jp/common/monitor/nikon/d850/#reviewMember

制作協力:株式会社ニコンイメージングジャパン

本誌:武石修