フィルター活用術

イルミネーションの季節到来!クロスフィルターを徹底活用しよう

定番アイテムも使いこなしでここまで差が出る

今年もイルミネーションの季節が到来! イルミネーションといえばクロスフィルターの出番です。上の画像のような光の輝きを強調した表現、見たことがありますよね。これがクロスフィルターを使うことで可能になります。

このページでは、クロスフィルターのついこなしを解説します。やってみると意外と簡単で、どんどん撮影したくなるのがクロスフィルター。今年こそチャレンジして、イルミネーションを個性豊かに表現しましょう。

マルミ光機のクロスフィルター「DHG 8Xクロス」

クロスフィルターとは?

クロスフィルターとは、プロテクトフィルター、PLフィルター、NDフィルターなどと同じように、レンズの前に装着するレンズフィルターの一種。ほとんどのレンズの先端には溝が切ってあり、そこにねじこんで装着します。

レンズの口径にあわせて様々なサイズが用意されているので、お持ちのレンズにあわせた口径のものがきっと見つかるはず。

今回の撮影でもレンズに合わせて、2種類のサイズのクロスフィルターを準備しました。

左が62mm径、右が72mm径のものです。

クロスフィルターの表面を見てみましょう。細かい溝が刻まれています。

この溝が、光源を伸ばして筋にしてくれるのです。後で説明しますが、製品によって溝の本数や角度が違い、それによって光の筋のパターンも決まるのです。

キラキラ成分が増してぐっときらびやかに

さっそくクロスフィルターを使ってみましょう。

クロスフィルターなし

クロスフィルターあり
クロスフィルターなし(左)、クロスフィルターあり(右)

光のひとつひとつに筋がつき、キラキラした見た目になるのがわかります。きれいなイルミネーションがさらに華やかに、ゴージャスになりました。また、作例のような遠景では、全体的に光が柔らかく太くなり、ふわっと明るく表現されます。

注意して欲しいのは、レンズの絞りです。絞りすぎると、光の筋が太く短くなってしまいます。

F2.8
F8
F2.8(左)、F8(右)

せっかくのキラキラ効果が台無しですね。撮影意図によってはあえて絞り込んで光の筋を短くすることはありますが、光の筋を伸ばしてキラキラ感をパワーアップしたいなら、なるべく絞りは開放で撮影しましょう。

効果を変えよう:回転させる

クロスフィルターは前枠と後枠で構成され、前枠を回転させることで、光の筋の角度を変えられます。

DHG 6Xクロスの側面。前枠と後枠で構成され、前枠が回転します。
前枠を回して光の筋の角度を変えます。

赤の強い光が印象的なイルミネーション。クロスフィルターの前枠を少しずつ回転させてみました。

DHGスタークロスの光の筋を90度から45度まで回転

少し斜めに回転させたほうが自然な感じで、私は好きです。

DGH 8Xフィルターを回転させながら動画を撮りました。角度が変化しているのがわかるとおもいます。

効果を変えよう:フィルターをチェンジ

クロスフィルターにはいくつか種類があります。光の筋の本数が変化するのです。

今回用意したのは3種類。

DHGスタークロス
1つの光源に対して光の筋が4本出ます。

DHG 6Xクロス
1つの光源に対して6本の光の筋が出ます。

DHG 8Xクロス
1つの光源に対して8本の光の筋が出ます。

どれが正解というわけではありません。何点か用意して、表現したいものに変えてみるのも良いでしょう。

DHGスタークロス
DHG 6Xクロス
DHG 8Xクロス
(左から)DHGスタークロス、DHG 6Xクロス、DHG 8Xクロス

こんなテクニックも

クロスフィルターを使うだけでもイルミネーションの華やかさはグッとアップしますが、別のテクニックを併用することで、素敵な効果が得られます。

デジタルソフトフィルターを掛け合わせる

おすすめなのが、ソフトフィルターと一緒に使うこと。クロスフィルターのみではメリハリのある輝きになりますが、そこにソフト効果を加えることで、やわらかさをプラスできます。レンズフィルターの一種、ソフトフィルターをクロスフィルターに重ねるか、カメラ内デジタルフィルターのソフト系の機能を選んでください。

下の作品は、デジタルフィルターを使って、ソフト効果をかけたものです。明るい部分ほど効果を強く感じるので、露出を明るめに設定しました。クロスフィルターで作られた前ボケでやわらかな雰囲気が増しています。

望遠レンズを使って、奥へと並んだイルミネーションを狙いました。すると、ピント面の光のみにクロス効果が生じ、前後に大きなボケが生まれました。ソフト効果をかけることで画面全体が明るく感じられ、ボケのもつふんわりとしたイメージにマッチしています。

多重露光

クロスフィルターにソフト効果を加える手法の一つとして、多重露光や画像合成を使って見ましょう。

1枚目はクロスフィルターをかけたまま、普通にピントを合わせて写します。2枚目はクロスフィルターを外し、同じ構図でぼかします。2枚の画像を重ねれば、芯はあるのに滲んだような仕上がりになります。

ボケ量を変えればソフト感が変わります。注意したいのはぼかす時にフィルターを外すこと。装着したままだと、ぼけに溝の影が出てしまうためです。

1枚目
2枚目
完成

人物

イルミネーションを背景にした人物ポートレートにも活用できます。キラキラの光に包まれてとても素敵ですよ。点光源から光が伸びてきますが、顔の近くに点光源があると、顔に光がかかってしまいます。特に瞳に光がかからないように、人物と背景のポジション選びを行ってください。モデルが手に持っているのは、東京ドイツ村で販売していた「光るアメ」です。こうした小物を使うのも楽しいですよ。

前ボケにクロスの光を

イルミネーションにピントを合わせるのではなく、遠くの建物にピントを合わせ、手前をぼかしました。

クロスフィルターをかけていても、大きくぼかせば円いボケになりますが、小さめのボケならクロス効果があらわれます。そのため、焦点距離は短めにして撮りました。

まとめ

クロスフィルターはレンズに装着するだけで、イルミネーションの輝きを簡単に美しく見せることができます。しかし、光源の強さで効果の強弱があったり、角度を変えることもできます。効果を活かしながらぼけを作り出すこともできるし、ソフト効果と重ねるのも素敵ですね。

これからの季節はいろいろな撮影スポットが登場しますので、みなさんも、自分だけのイルミネーション写真を目指して、このフィルターを使いこなしてみてください。

今回イルミネーションを撮影したのは……

今回、作例のほとんどを撮影した場所は、千葉県袖ヶ浦にある「東京ドイツ村」です。3月31日までは、関東三大イルミネーション認定の「ウインターイルミネーション大冒険〜☆Doki☆Doki☆Smile〜」が開催中。園内各所が約250万個のLEDや電球で飾られ、さながら光の国にまよいこんだような美しさです。詳しくは下のページで。
http://t-doitsumura.co.jp

制作協力:マルミ光機株式会社

吉住志穂

(よしずみ しほ)1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業後、竹内敏信事務所に入社。 2005年4月に独立。自然の「こころ」をテーマに、花や風景の作品を撮り続けている。