交換レンズレビュー
SONY FE 16-35mm F2.8 GM
Gマスターシリーズにふさわしい画質 高画素機にも余裕で対応
2017年7月5日 12:12
ソニーは今夏、2本のズームレンズをリリースする。いずれも超広角ズームで、第一弾は既報のとおり、7月7日発売のFE 12-24mm F4 G。ワイド端を12mmとした型破りな表現力が魅力の1本だ。
そして第二段は、オーソドックスなズーム域を持つFE 16-35mm F2.8 GM。こちらは超広角ズームとしては保守的なものになっている一方で、開放F値はズーム全域で2.8を確保。さらにGマスターシリーズの超広角ズーム版だ。このレンズによって、いわゆる大三元といわれる16-35mm、24-70mm、70-200mmの開放F2.8のGMシリーズが完成したことになる。
発売日:2017年8月
希望小売価格:税別29万5,000円
マウント:ソニーE
最短撮影距離:0.28m
フィルター径:82mm
外形寸法:88.5×121.6mm
重量:約680g
デザインと操作性
ボディには、Gマスターシリーズの象徴となってる「G」の赤いエンブレムが輝き、オーナーとなった所有者には特別の満足感を与えてくれる。質量は約680gなので比較的手応えのある重さだが、それがかえって高級感を演出している。また、手持ち撮影などの場合も、その手応えが、手ブレを抑えてくれる役割をはたすこともあって、友好的な重さと捉えてもよいかと思う。
フィルター径は82mmなので、当然レンズ自体はある程度大ぶりにできている。今回使用したコンパクトなα7R IIに装着すると、フロント側に重心があり、また見た目もレンズが大きいという印象を受けるが、極端にバランスを欠いた組み合わせという具合には見えない。
実際、使い慣れてしまえば、取り回しの際の不自由は感じないし、ザックへの収納性も悪くない。もともとαシリーズがコンパクトにできているので、α7R IIに本レンズを装着した状態であっても、中型ザックへの出し入れや収納に困ることはない。
フィルター径の82mmというサイズは、同じGマスターシリーズの大口径ズームFE 24-70mm F2.8 GMと共通の仕様となってる。ただしFE 70-200mm F2.8 GM OSSは77mmなので、3本とも同じ口径のフィルターを使うことはできない。少々残念だが、超広角ズームレンズと標準ズームレンズを多用するユーザーにとっては、むしろ便利に使えるはずだ。
FE 12-24mm F4 Gはフィルターが使えないタイプだったが、PLフィルターやNDフィルターなどを表現に使いたいユーザにとっては、本レンズのほうが使いやすいだろう。
すでに述べたように、本レンズの焦点距離は比較的定番と言える16mmの超広角から35mmの広角をカバーしている。16mmは十分に「超」がつく広角域だが、35mmは広角でありながら、フットワークを使うことによって標準レンズのような味わいを醸すことができるため、ズームレンズとしては、かなり柔軟な表現力を持っていると言ってよいだろう。
実際、今回はワイド端だけでなく、テレ端も使っているが、少なくとも風景表現を楽しむにあたっては、非常に使いやすい画角を持ったレンズと言ってよい。
画質は、さすがGマスターレンズと評価できるレベルだ。レンズ構成は13群16枚で、そのうちの2枚(最前面と7枚目)には超高度非球面XA(extreme aspherical)レンズを採用。加えて2枚のED(特殊低分散)ガラスを採用することによって、非点収差、像面湾曲、歪曲収差、色収差などを補正して、ズーム全域、そして画面全域での高画質を達成している。α7RIIの約4,240万画素を悠々受け止める性能は、細密な描写力を必要とする風景写真のジャンルでの活躍が見込める。
さらにナノARコーティングを施すことによって、逆光耐性を強化。強い光源を画面内に取り込んでも、ゴーストやフレアの発生は極小レベルでコントラストも高いため、太陽をポイントにした表現に挑めるのは非常に嬉しい。
ボケ味の美しさは特筆モノだ。本レンズでは非球面レンズを3枚使用しているが、非球面レンズによって発生しやすい不自然な輪郭ボケは大幅に低減されており、今回の撮影でも自然なボケ味を楽しむことができた。また絞り羽根は11枚構成とすることで、円形ボケを生み出している。
超広角ズームでボケ味を利用することは少ないかもしれないが、最短撮影距離28cmを活かし、開放F値を使って撮影した画像を大伸ばしをしてみると、ボケ味の良し悪しは一目瞭然となるだけに、こういったこだわりのある製品開発は好感が持てる。
本レンズは防塵・防滴に配慮した設計になっている。とくにレンズマウントにゴムリングを採用することによって、従来よりも高いレベルでのアウトドア性能が得られているので、雨などの条件化でも安心して撮影ができるのは嬉しい。
加えてフローティング機構やダイレクトドライブSSM(DDSSM)を採用しているため、レンズ駆動はスムーズで静粛。アウトドアでの心地よい撮影を支えている。
本レンズにはFE 12-24mm F4 Gと同じく、カスタマイズが可能なフォーカスホールドボタンが装備されている。使用するボディに依存するが、自分の撮影スタイルに合わせたカスタマイズを行えば、よりアウトドアでの操作性が高まり、チャンスを逸したり、まごつくことがなくなる。
作品
中心部の解像力はもちろん、画面の周辺部でも十分なレベルを保っている。風景写真のジャンルで必要な解像力は備わっていると評価してよいだろう。
開放F値で撮影しているが、ピントが合ったコケは等倍に拡大してもリアルな質感が得られている。モニターを見ていると、目の前に実体があるかのような錯覚すら覚えてしまうほど。
可愛らしい葉に接近して撮影。ほぼ最短撮影距離に近いと思うが、ここまで寄れれば、ワイドマクロ的な表現ができる。背景のボケ味の柔らかさ、そして円形ボケの美しさにも着目して欲しい。
最短撮影距離近くから、絞り開放で撮影。周辺部はやや光量落ちをしているが、レンゲツツジに視線を誘導するような働きが得られていて、決してマイナス効果ではない。1段程度絞れば周辺光量落ちは解消する。
太陽を画面の中に入れ込んで撮影。晴れた日だったので強い光となっているが、この場面ではゴーストもフレアもほぼない。F11程度の絞りだが、光条もシャープで美しい。
シダの葉に思い切り近寄って撮影しているので、面白い画面効果が得られている。このレンズを使うコツの1つは、主役にぐっと近づくことにある。
テレ端35mmで撮影。誇張のない自然な描写が得られるので、落ち着いた雰囲気を持っている。16mm側と35mm側を上手く使い分けることができれば、多彩な表現を楽しむことが可能だ。
まとめ
FE 12-24mm F4 Gは、12mmという規格外の画角が楽しめる純正レンズでは唯一無二の存在だが、フィルターが使えないというウイークポイントを持っている。一方のFE 16-35mm F2.8 GMは、特別な性能は持たないが、フィルターが使えて高い解像力を持ち必要十分な超広角表現が味わえるレンズだ。一見、迷いそうだが、実はコンセプトが明確なので、自分が何を求めているかがわかっていれば、選ぶことに時間はかからないだろう。
本レンズは、“正統派超広角ズームレンズ”と言ってよいと思う。「超」レベルの高画質を備え、フィルターワークを楽しめ、ワイド側もテレ側も十分な画角がある。正直に言えば、1本目の超広角ズームを探しているなら、本レンズをお勧めする。おそらく、このレンズを使っていて、ワイド表現、パンフォーカス表現、デフォルメ表現などで困ることはない。
その上で、さらなる画角の旅に出ようと思えたなら、FE 12-24mm F4 Gが待っている。そういう意味で今夏登場する2本の超広角ズームは、それぞれに役割がある。超広角の「目」を持っている表現者には、たまらない夏になりそうだ。