ニュース

キヤノン、光学ファインダーで最高約16コマ/秒連写の「EOS-1D X Mark III」

最高約20コマ/秒のライブビュー撮影も スロットはCFexpress×2

キヤノンは、一眼レフカメラのフラッグシップモデル「EOS-1D X Mark III」を2月中旬に発売する。キヤノンオンラインショップでの販売価格は税別80万円。

2016年4月に発売した「EOS-1D X Mark II」の後継機。2019年10月24日に開発発表された製品の詳細が明らかになった。イメージセンサーや画像処理エンジンをはじめとする多くの新開発デバイスを採用し、連写速度およびAF機能の向上、動画記録機能の拡充などが行われている。

新センサー、新エンジン「DIGIC X」、16点分離の新LPF

ノイズ抑制と読み出しの高速化を特徴とする、約2,010万画素の新開発35mmフルサイズCMOSセンサーを搭載。読み出し高速化により、連写速度の向上および4Kフル画角記録が実現しているという。

画像処理エンジンはDIGIC X。解像感と高感度画質がそれぞれ新しい処理により向上し、各レンズの設計値に基づく光学補正を行う「デジタルレンズオプティマイザ」にも対応する。本機のDIGIC Xはシングル搭載だが、それでも処理能力はEOS-1D X Mark IIの「デュアルDIGIC 6+」を大幅に凌ぐとしている。

ローパスフィルターは、これまで2枚のフィルターで4点に点像を分離していたところ、新たに4枚のフィルターで16点に分離する方式を採用。点像分離の最適化により解像感を向上しつつ、斜め方向にも分離することでモアレや偽色も抑制したという。

向上した連写速度。CFexpressダブルスロットを採用

EOS-1D X Mark IIと比べて、最もわかりやすいのが連写速度の向上だ。クイックリターンミラーの動作を伴う光学ファインダー撮影で最高約16コマ/秒、ライブビューではシャッターがメカ/電子のどちらでも最高約20コマ/秒を実現した。いずれもAF/AEが追従する。

EOS-1D X Mark III(すべてAF/AE追従時)

ファインダー撮影時:最高約16コマ/秒
ライブビュー撮影(メカシャッター)時:最高約20コマ/秒
ライブビュー撮影(電子先幕シャッター)時:最高約20コマ/秒
電子シャッター撮影時:最高約20コマ/秒

EOS-1D X Mark II

ファインダー撮影時:最高約14コマ/秒(AF/AE追従)
ライブビュー撮影(メカシャッター)時:最高約16コマ/秒(1コマ目でAF/AE固定)

なお、連続撮影可能枚数は、RAWおよびRAW+JPEGのいずれも1,000枚以上。EOS-1D X Mark IIはRAWのみで約170枚、RAW+JPEGで約81枚だった。

記録メディアスロットは、CFexpressスロットを2つ搭載。EOS-1D X Mark IIではCFとCFast 2.0のダブルスロットとなっていた。

メカシャッターの最高速度は1/8,000秒。シンクロ速度は1/250秒。作動テストは50万回をクリアしているという。

AFセンサーを刷新

従来のラインセンサーから、正方画素を採用した「High-res AFセンサー」に一新。より細かい模様への対応、検出精度の向上、測距点の増加(最大61→191)、低輝度/高輝度対応の拡大などが盛り込まれた。

High-res AFセンサー

測距範囲はEOS-1D X Mark IIと同じ。開放F8でのAF測距が可能(ライブビュー時は開放F11まで対応)。

サーボAF(いわゆる追尾AF)は演算アルゴリズムの改良などにより、かげろう時の測距安定(ファインダー撮影のみ)、遠ざかる被写体への追従性向上を謳っている。

ライブビューAF

従来の顔+追尾優先AF、ライブ1点AF(スポット1点AFに変更)に加え、領域拡大AF(十字/周囲)、ゾーンAF、ラージゾーンAF(縦/横)に対応。

測距エリアは横約80%×縦約80%から、横約90%×縦約100%に拡大した。

追尾は従来の顔検知(輝度/色/顔)に加え、瞳AFと頭部検出に対応(輝度/色/顔/瞳/頭部/奥行情報)。

動画

EOS-1D X Mark IIでは、クロップ4K/60pのMotion JPEG(MOV)のみ対応していたが、本機ではクロップなし(フル画角)の4K/60pや、5.5K/60pのRAW動画、Canon Log 4:2:2 10bitの内部記録にも対応した。

像面位相差AF機能「デュアルピクセルCMOS AF」を利用可能。DIGIC Xの高速処理でより的確なフォーカス制御になったとしている。また、AFエリアが拡大し、被写体検知は顔検知機能のみならず「瞳AF」と「頭部検出」にも新対応している。撮影アシスト機能には、動画電子IS、フォーカスガイド、ピーキングが加わった。

デュアルピクセルCMOS AF(イメージ)

操作性の変更

AF-ONボタンに「スマートコントローラー」を内蔵。光学式マウスと同様の機構により、指の動きを読み取ってAF測距点を移動させる。模様を読み取る仕組みのため、手袋をしていても操作可能だという。従来通り、スティックタイプのマルチコントローラーも搭載する。

ファインダーは倍率約0.76倍、アイポイント約20mm、視野率約100%。ファインダー内に表示できる項目に、6:6のアスペクト枠と、現在時刻の表示を追加。ISOボタンを押すと、ファインダー下部の視野表示が切り替わり「00:06」などと表示される。

タッチ操作できる範囲を拡大。AFエリア選択や画像再生のほかに、メニュー画面の操作などでもタッチ操作を使えるようにした。また、背面ボタンの一部には照明を装備した。

HDR PQガンマによるHEIF 10bit記録

カメラ内設定により、連写速度に影響なくHEIFのみ/RAW+HEIF/CRAW+HEIFの記録が可能。HEIFは、理論値でJPEGの最大4倍という緻密さの階調を実現し、色域はsRGBやAdobeRGBより広いというBT.2020で記録する。

ミラーレスカメラEOS Rでは、パソコンソフト「Digital Photo Professional」によるRAW現像で対応していたが、本機はカメラ内で記録可能。

ネットワーク機能とGPS

有線LANは最大約700Mbpsに、無線LAN(別売ワイヤレスファイルトランスミッターWFT-E9Bを使用)は5GHz対応で最大約270Mbpsにそれぞれ高速化。新たに認証LANとHTTPSにも対応した。内蔵GPSを継承している。

別売ワイヤレスファイルトランスミッターWFT-E9B(2月中旬発売。税別8万円)装着例。

EOS-1D系では初となるWi-Fiユニットの搭載により、カメラ単体でもCamera Connectアプリと連携可能。Bluetooth Low Energyにも対応している(BR-E1リモコンは非対応)。

EOS-1D X Mark IIから90g軽く。撮影枚数も増加

バッテリーはEOS-1D X Mark IIと同じ「LP-E19」を継承。撮影可能枚数はファインダー撮影時で約2,850枚(従来は約1,210枚)、ライブビュー撮影で約610枚(従来は約260枚)。動画撮影時間は約2時間20分(従来は約1時間40分)。ハードウェア構成の見直し、静止画撮影時のファームウェア刷新などにより省電効果を高めたという。

なお、EOS-1D Mark III以降に対応する「LP-E4N」バッテリーも本機に使用可能だが、連写速度に影響が出るという。

外径寸法は158.0×167.6×82.6mmでEOS-1D X Mark IIと同じ。重量は1,250gとなり、従来(1,340g)から90g軽くなった。

外装はマグネシウム合金製。防塵・防滴構造を継承している。

本誌:鈴木誠