新製品レビュー
Canon EOS-1D X Mark III(航空機編)
先代EOS-1D X Mark IIとの高感度ノイズ比較や新センサーの画づくりを検証
2020年5月22日 11:30
EOS-1D X Mark IIIレビューの第2回は、各ISO感度によるノイズ特性や、新たに加わった画像調整項目など、画作りに関係する事項を中心にお伝えする。
高感度ノイズを前機種と比較
はじめは、スポーツ・報道分野で重要視されるノイズ特性。特に高感度時にどれだけノイズを減らせるかが“要”となる。
EOS-1D X Mark IIIとEOS-1D X Mark IIで1段ずつとなるISO感度に設定し同被写体を撮影し、現れるノイズや詳細描写を比較する。キヤノンは表立ってアナウンスをしていないものの、Mark IIIは対Mark II比で約1段分のノイズ低減があるとしている。
羽田空港に駐機するANA787-9型機にEF400mm F2.8L IS III USMを向け、三脚で固定。Mark IIIとMark IIで同じ被写体を撮影した。フォーカスは最後部のドア前にある「DREAM LINER」にマニュアルで合わせた。ピクチャースタイルはスタンダードでパラメーターはデフォルトのまま、高感度時のノイズ低減を標準にして撮影したJPEG画像となる。機体の前部から後部までで明暗の階調が見られるアングルを選んだ。WBは機体を照らす照明に合わせ、一番明るい前部の白が概ね飽和しない露出値とした。
絞りは開放F2.8に固定して、シャッタースピードを1段ずつ上げるのと同時にISO感度を1段ずつ上げることで、EV値を維持した。比較撮影の前にフリッカーの影響がほとんどない照明を選んだつもりだが、高速シャッターで撮影した画像にはその影響が完全に解消されていない可能性があることを予めお伝えしておく。
※[各部を切り出したサムネイル画像は、すべてクリックで等倍画像を表示します(編集部)]
EOS-1D X Mark II
Mark IIIは、Mark IIと画素数こそ同じ約2,000万画素撮像となるが、センサーは新開発されたものに刷新されており、ローパスフィルターも新しい。そのため、発色や階調を決める「ピクチャースタイル」の各パラメーター内、シャープネスに関わる値に変化がある。例えば「スタンダード」でのシャープネスの「強さ」は3→4に、「細かさ」は4→2に、「しきい値」は4→3となった。
同じEV値だが全体としてMark IIIの方がやや明るめに出ている。WBも同じだが、色はMark IIが僅かにグリーン寄りでMark IIIはマゼンタ寄りと、差があることが見てとれる。
ISO 3200まではノイズ自体にそれほどの差は感じない。しかし、シルバーに光る窓枠を見るとMark IIの方がより線が細く、シャープ感がある。文字の出方もMark IIの方がくっきりしている。
ISO 6400になるとMark IIIのノイズが僅かに抑えられている印象を持つ。機体後部、徐々に暗くなる位置の「JA877A」の文字や、その上の青と白のボーダーラインでも精細感でMark IIIが勝る。
ISO 25600では、明らかにMark IIIのノイズ発生は少なく、「JA877A」の文字もくっきりしている。ISO 6400以上であれば1段分ぐらいの差がある、というアナウンスも妥当だといえる結果となった。
ノイズリダクション(クラウド)の効果を検証
EOS-1D X Mark IIIの登場とほぼ同時に、RAW現像/編集ソフト「Digital Photo Professional」(DPP)がバージョンアップ。クラウド経由でのノイズ低減処理に対応した。EOS-1D X Mark IIIのISO 6400以上で撮影したRAW(CR3)データが対象だ。
事前にCanon IDを取得しDPPを立ち上げてログインすると、「クラウド」メニューの中で「クラウドで処理」が選べるようになる。調整するEOS-1D X Mark IIIのRAWデータを「セレクト編集」画面で展開すると「画像ディテールを調整」ウインドウの中の「ノイズリダクション」で「ノイズリダクション(クラウド)」が選択可能になる。OFFとなる「0」を除き「-4」から「4」まで8段階をインジケーターでスライドさせて選べる。従来の「輝度ノイズ緩和」「色ノイズ緩和」との併用はできないが、クラウド処理を選ばなければ、この2項目で調整できる。
しかし、この従来方法によるノイズ低減で、クラウド処理と近しい結果に追い込もうと試みたが、これらのインジケーターによる調整だけでは、クラウドの処理結果と同等にすることはできず、その優秀さを認めざるをえない結果だった。
従来方法の「輝度ノイズ緩和」「色ノイズ緩和」の各数値を上げていけばノイズは減るがディテールが失われ、暗闇に存在する細い線などは見えなくなった。対するクラウド処理はノイズが減ることはもちろん、細かな線も残り、明暗のコントラストで再現する凹凸感も、ある程度の立体感が損なわれずに残っていた。
ノイズリダクション(クラウド)1:コンテナ
埠頭に着けられたコンテナ船へガントリークレーンでコンテナを積む。1隻に1万4,000個にも及ぶコンテナを積むこともあるらしく、積み込み作業はスムースで速い。単なる風景なら三脚を使いシャッタースピードを落としISO感度も低めで臨みたいが、クレーンに吊るされる動くコンテナを止めるため、1/250秒のシャッタースピードを選んだことで、開放絞りF5.6でISO 25600の露出となった。この画像ではインジケーターで「2」辺りがクレーンの細部も崩さず、コンテナの凹凸もしっかり描写している。
ノイズリダクション(クラウド)2:夜間飛行中の機体
雲の切れ目から漏れる月明りが、羽田空港に進入する767型機を浮かび上がらせた。フルードの三脚を使い、機体に合わせて斜め方向にパン。シャッタースピードを1/15秒としてもF5.6の絞り開放ではISO 12800まで上げる必要があった。機体だけを見ると最強の「4」が良好だが、雲の模様で明暗が分かれる部分に斑点状のノイズが発生しているため、画面全体で捉えると「1」か「2」が好ましいだろう。
ノイズリダクション(クラウド)3:夜間とまっている機体
間もなく離陸のため滑走を始める777-200ER型機。1/8秒のスローシャッターを用い、赤色のビーコンライトと白色のストロボライトが露光中に光るように撮る。ISO 6400とこの項目内では比較的低い感度のためか、インジケーターの数値が隣接どうしであれば大きな違いは見られない。しかし、撮影時に記録していたJPEGと「-4」、そして「4」とを比べれば機体最後部の「JA744A」の文字近辺のノイズの出方に明らかな違いがある。
ノイズリダクション(クラウド)4:離陸後に右旋回を行う機体
陽が沈んだあとの僅かな残照を機体に受け離陸して行くA350型機を1/250秒、開放F5.6、ISO 12800で撮影した。全体的なノイズを見ると最強の「4」の画像が一見良好に感じるが、翼に入るシャドウと白地との境に斑点状のノイズが現われている。
明瞭度
キヤノンでは初搭載となる明瞭度調整。既にアドビのRAW展開ソフトにその調整項目は存在し、カメラ本体ではニコンが2014年発売のD810から搭載する画像調整項目だ。ごく簡単に説明すると、コントラストのあるエッジ部分を局地的に捉え、その部分のコントラストをさらに高め、色味では主に明度を変化させて、濃淡による明瞭度合いを変える処理だ。
ニコン機は画像調整メニュー「ピクチャーコントロール」内の項目となるが、EOS-1D X Mark IIIは「ピクチャースタイル」メニューからは独立して存在し、OFFとなる「0」を除き、「-4」から「4」まで8段階で設定の強弱が付けられる。
「-4」は画像全体のコントラストも低く、ANA機の青の発色も柔らかい印象だ。徐々に数値を上げていくと、機体の青の明度が徐々に下がる。一見しただけではわかりづらいが、RGBポインターで追うと、明瞭度「1」にした場合、ANA機の向こうに駐機するロゴマークのない白い垂直尾翼の周りの空部分が、機体の白に反するように明度を落とし(黒っぽく)、所謂「ハロ」が発生している。
最強となる「4」は青の明度もさらに下がり、濃い青は紺色といえるほどだ。「ハロ」も一目で確認できるほど目立つようになり、不自然に見える。
HDR
PQ規格に準じたHDR(ハイダイナミックレンジ)撮影が可能となった。これまでのEOSで採用されていた複数枚の画像から生成する合成HDR撮影と違い、HDRを「ON」にするだけのため、通常の撮影と変わらず動体撮影にも適用可能だ。
RAWモードの場合はそのまま「CR3」に、JPEGの場合は「HEIF(ヒーフ)」という拡張子ファイルで記録される。この規格のHDR画像の表示には、対応したディスプレイに画像が記録されるPCと、HDMIケーブルで接続してDPPでブラウズする。
HDR画像を記録したメディアが入るカメラ本体とHDMIケーブルで繋いだHDR対応TVで再生することも可能だ。
従来のSDR(スタンダード)モニターではHDR画像としての表示は出来ないが、高輝度側の階調を抑えたコントラストの浅い画像で簡易表示される。この簡易表示された画像や、HDR設定で撮影した「CR3」や「HEIF」データからJPEG変換したものを、キヤノンでは「HDRライクな画像」としている。従って、HDRで撮影した画像をJPEGに変換して掲載することは「HDRライク」な画像をご覧いただくことになる、というわけだ。
シャッター方式を比較
ミラーアップを行ってのライブビュー撮影では、「メカシャッター」「電子シャッター」「電子先幕シャッター」と3つのシャッター方式が選べる。
モノレール線を真横から見る位置でカメラを三脚に固定、通り過ぎる車両を連写した。レールは水平と思われるものの、車両は上下動によって水平でない可能性はある。全カットに渡って露出値を揃えたが、Mark IIIのライブビュー撮影では、やや暗めになっている。
当然の結果だが電子シャッターで撮影した車両の歪みは相当なもの。しかし、それを補う意味で、微音はするがメカシャッター・電子先幕シャッターでも約20コマ/秒で撮れることは、メカシャッター時に約10コマ/秒が最速のソニーα9 IIと比べれてみても優秀だと言えるだろう。
参考までに筆者自身も愛用しているα9 IIで撮影した画像も掲載する。α9系は電子シャッターでの連続撮影を基本としたカメラだが、撮像素子からのデータ読み出しを速めることで画面内における読み出しタイミングのズレを極力減らし、“アンチディストーションシャッター“を謳っている。
なお、シャッター機構については、以下の記事が詳しい。それぞれの特性についてもっと知りたいという人は、併せて参照いただきたい。
「メカシャッター」ではミラー駆動はないが、撮像面前のメカシャッター(フォーカルプレーンシャッター)が開閉を繰り返すため、軽い振動とともに音が出る。連写時、背面モニター画面に表示されるライブビュー像は、ややカクカクしている。
「電子シャッター」はメカシャッターの開閉がないため無音撮影のメリットがあるものの、撮像素子のローリング(シャッター)による、撮像面(画面)の上と下で記録タイミングにズレが生じ、掲載画像のように横方向に向かって動く動体では、上と下で時間差記録されるために歪む。撮影中に背面モニター画面に表示される映像は、動画撮影時と大差なく滑らかだ。「電子先幕シャッター」で記録される画像はメカシャッターで撮影する歪みのない画像と同等と言えるが、ボケがケラれるなどのデメリットがある。
シチュエーション1:航空機1(航空機で細部描写を見る)
さて、ここからは航空機を被写体とした撮影シーンでのレビューをお伝えしたい。
本来であれば、戦闘機の機動飛行などで16コマ/秒でのAF追随を試したいところだが、撮影タイミングの兼ね合いで、残念ながら今回は叶わなかった。ここでは、羽田空港で見かける民間機へとレンズを向けた。金属質感などの微細な描写を求めるなら高画素機こそが出番となるが、このオールラウンダーEOS-1D X Mark IIIはどんな絵を見せてくれるのか。
この場で40MPを越える高画素機で撮影経験があったため、一見して20MPの精細不足は否めないものの、質感再現自体はこの通り何ら支障はない。HDR設定で撮影したため、RAWデータからDPPでHDRをOFFにして、レンズオプティマイザを100%、歪曲補正を100%にしてJPGに変換したものだ。HDR-ONを維持しJPGに変換した画像(HDRライク)を合わせて掲載する。
シチュエーション2:航空機2(800mmF5.6レンズでの使用感)
2020年5月現在、35mm判に対応した、焦点距離800mmのレンズを商品展開しているのはニコンと、このキヤノンだけだ。両メーカーともに、ラインナップ中で最長の焦点距離となる。
スポーツの現場でもあまり使う機会のない焦点距離だが、航空機をアップで狙う際には持ち出したくなることがある。超望遠の圧縮効果が得られるため、機体前や後ろからレンズを向けた場合に、歪みのない整った機体を表現することができる。
ただ、大気の対流(陽炎)をも写し出すため、状況にもよるが詳細な描写は難しい。今回のように地表近くの機体では尚のこと。フルードのビデオ雲台を付けた大型三脚にレンズを据え、やや遅めの1/125秒で背景を僅かに流した。
シチュエーション3:航空機3(800mmF5.6での手持ち撮影)
今度は、羽田空港に乗り入れる最大の機体となる747-8型機の離陸シーンを800mmを装着し手持ちで撮影を行った。この800mmの全長は約46cm、フードを装着すると70cmほどで重量は4.5kgに及ぶ。同じく重量級のEOS-1D X Mark IIIの1.4kgと合わせ、手持ち時のバランスを試した。さすがに軽量コンセプトのEF600mm F4L IS III USMと違い、構えることができるのは数十秒ほど。しかし、EOS-1D X Mark IIIとの組み合わせでは、ギリギリの画面構成が行える、ある意味での安定度があった。
左翼後縁から伸びたフラップの端から、水蒸気が渦を巻きながら現れているのが判る。超望遠域でのみ明確に見える現象だ。HDR設定で撮影していたためRAWデータからDPPでHDRをOFFにし、レンズオプティマイザを100%、湾曲補正を100%に設定しJPG変換している。HDR-ONを維持しJPGに変換した画像を合わせて掲載する。
シチュエーション4:航空機4(ピクチャースタイル、空の色再現)
シドニーから日本の北の玄関口、新千歳空港へと向かう季節便の767型機が首都圏上空で飛行機雲を曳きながら飛んでいた。
キヤノン機が再現するピクチャースタイル「スタンダード」の色味は明るく鮮やかで演出性に富み、クライアントのウケがいいという認識を持っていた。しかし、比較検証を行ったわけではないため感覚的なものだが、今回の「スタンダード」は、近年他社の「スタンダード」の方が余程演出の度合いが著しいと思わせる、実に落ち着いた、ある意味で深みのある空の青さだと、一連のレビュー撮影を重ねたことで意識を新たにした。
シチュエーション5:航空機5(ファインダー撮影でのAF優位性)
東京湾上の東の雲中にサンフランシスコへ向け緩やかに上昇する白い機体が眩しい787-9型機が見えた。このようなコントラストの低い、一面を覆う淡い雲模様にレンズを向けた際、機体を視認できたとしても像面位相差AFを積んだミラーレス機は、AFでの合焦が苦手な場合が多かった。いずれ、オールドタイプになってしまうと思われるミラーボックス下の位相差AFセンサーを使った、一眼レフ方式によるフォーカシングで難なく機体に合焦する結果を見せられると、一眼レフカメラの存在をまだまだ頼もしく思えた場面だった。
シチュエーション6:航空機6(HDR撮影・HDRライク画像)
羽田空港を離陸後、翼を傾け右に旋回する767型機。日の入直前の西陽が持ち上がった左翼を照らした。西陽を受けて赤く染まる翼と、影を濃くする翼の対比を表現しようと、コントラスト感のあるメリハリの効いた画を狙ったが、HDR設定で撮影したため、HDR-ONを維持してJPG変換した画像は落ち着いたトーンとなった。
HDR表示環境がまだ整っていない現状では、RAWデータで撮影してHDRのON/OFFが選べるようにしておくのが賢明だろう。掲載はRAWデータからDPPでHDRをOFFにし、レンズオプティマイザを100%、湾曲補正を100%にしてJPGに変換した画像。そしてHDR-ONを維持しJPGに変換した画像だ。
シチュエーション7:航空機7(HDR撮影・HDRライクな画像)
首都圏から望む円錐峰に陽が沈む。この時は、南寄りの風が吹き、冬の乾いた空気と変わって西の空には薄すい雲が出ていた。肉眼ではもう少し円錐の裾の方まで見えていたが、太陽の形が保たれるように高輝度側に露出を合わせて撮影した。
架かる雲のハイライト部の階調分解が欲しかったのでHDR設定で撮影。HDR-ONから変換した画像は、コントラストが低いが太陽の周りのハイライトの階調が残っており、このような場合での優位性を感じる。掲載はRAWデータからDPPでHDRをOFFにし、レンズオプティマイザを100%、湾曲補正を100%にしてJPGに変換画像。併せてHDR-ONを維持しJPGに変換した画像だ。
シチュエーション8:航空機8(ISO 3200時ノイズ・ライブビューによる流し撮り)
EOS-1D X Mark IIIは、有効画素数を約2,010万画素に抑えたことで、低減される高感度時のノイズ特性が持ち味といえる。ここでは夜間にISO 3200で航空機を撮影し、ノイズの出方を見るのと同時に、ライブビューの電子シャッターでの流し撮りを試した。
羽田空港に着陸するボーイング767型機を対岸の公園から管制塔が背景に入る場所から捉えた。暗がりで光学ファインダーから覗く機体は見えにくいが、ライブビューでは背面液晶に表示される画はゲインアップ(明るく)されるため、また電子シャッターモードではブラックアウトを感じさせないために重宝する。
ランディングランプに照らされた五輪マスコット、ソメイティ(白地にピンクの獣風)を画面上のある1点に合わせて流した。機体のその部分しか止められず、やや半端な結果になったのは恥ずかしいが、アンチコリジョンライトの発光と露光タイミングを重ねられた。
シチュエーション9:航空機と月(ライブビュー、開放絞りF11でのAF)
EF800mmF5.6L IS USMにEXTENDER EF2×IIIを装着し、1,600mm相当の画角で満月から1日過ぎた下弦の月を撮った。開放F値が合成F11となっても、EOS-1D X Mark IIIの場合、ライブビューにすることでAF、そして追随が可能だ。
筆者は当誌掲載の他レビュー記事でも何度か月の前を横切る航空機の作例を掲載しているが、撮影時はいつも機体にフォーカスを合わせて、そのシルエットを際立たせるということに気をつけている。
今回の撮影では、機体のシルエットよりも高輝度の月面をAFが捉えてしまう可能性があったので、機体が月を横切る直前に、暗闇の中の機体がライブビューで見えるまで露出値を合わせ、各種灯火を目安にAFで合焦させた。月面の海といわれる箇所(濃い部分)やクレーターを詳細に描写してこそ、月のアップには意味があるのだが、肝心の機体ディテールを損なってしまえば、その存在感が薄れてしまう。機体への合焦を確認した後に月を画面中央に据えて機体の通過を待った。このような撮影では三脚・雲台の剛性がありながらも、ゆっくりパンできる大型のビデオタイプをお勧めする。
シチュエーション10:カモ(ライブビュー、開放絞りF11でのAF)
EF800mm F5.6L IS USMにEXTENDER EF2×IIIを組み合わせた作例をもう一つ。干潟の水面に浮かぶヒドリガモのつがいだ。
自動認識AFの人物優先を常用していたため、そのままの設定で臨む。EXTENDER EF2×IIIを装着しての1,600mm相当の画角は、遠方にいる鳥類の撮影となれば、撮影者の存在を鳥に警戒させる懸念も減る。ライブビュー限定でAFが使えるとはいっても、迷いながら、そしてスピードも遅い合焦になるだろうと想像していたが、特段の遅延を感じさせることなく、海藻を頬張る雄の羽毛の模様を認識してAFの赤枠が現われて追従も機能した。
次回予告
次回は検証編2として、ライブビューでの撮影検証や5.5KのRAW動画からの静止画切り出しの活用ポイントなどを掘り下げてお伝えする。今回のレビューを通じての全体的な総括もそこでふれることとしたい。