ラインナップ解説

富士フイルム(2022年冬)

高解像かスピードか「X-H2/X-H2S」、小型で手頃な「X-S10」など

レンズ交換式デジタルカメラの主役となって久しいミラーレスカメラ。ラインナップの拡充が続く各社のミラーレスカメラをまとめました。

一眼レフではニコン製のボディをベースにしたFinePix Sシリーズを発売していた富士フイルムは、ミラーレス化で新規のXマウントを採用。交換レンズも含めた自社ブランド製に転進した。独自のカラーフィルター配列を持つX-Trans CMOSセンサー、フィルムメーカーならではの画づくりでファンを増やしている。

現行のラインナップには、クラシックカメラ然としたデザインのX-ProシリーズやX-Tシリーズと、ホールド性の高い大型グリップを備え、電子ダイヤルによる今風の操作系を採用するX-HシリーズとX-Sシリーズがある。

X-H2

2022年9月29日

概要

X-H2Sと同じボディに新型の撮像センサーと画像処理エンジンを搭載した多画素モデル。強力なボディ内手ブレ補正や被写体検出AFに加えて8K動画などのハイスペックを誇る。最高速1/180,000秒の電子シャッターも見どころだ。

センサーとエンジン

APS-Cサイズ機としては最多となる裏面照射型有効4,020万画素のX-Trans CMOS 5 HRセンサーを搭載。ローパスフィルターレスながらモアレや偽色を効果的に抑制しているのが強みだ。

この新型センサーのおかげで電子シャッターの最高速を1/180,000秒に向上。1/32,000秒に対して2.5段分の余裕が生じたことで、絞りや感度の自由度がさらに増したと言える。

画像処理エンジンはX-H2Sと共通のX-Processor 5。処理速度が従来モデルの2倍に上がったことで静止画の画質、AF性能、動画性能などを大きく進化させている。

感度の設定範囲は常用でISO 125〜12800。拡張でISO 64〜51200。

手ブレ補正

7段分の効果を持つセンサーシフト式の手ブレ補正をボディに内蔵。先代のX-H1(5.5段分)より1.5段分も強化されている。

手ブレ補正機能を持つ純正レンズと組み合わせた場合は、両者が協調動作を行なうようになっている。

センサーシフトのメカを応用した高精細撮影機能ピクセルシフトマルチショットをXシリーズで初めて搭載。20回連写した画像からPixel Shift Combinerソフトウェアを使って1.6億画素記録を実現している。対応ファイル形式はRAWのみ。三脚の使用が前提となる。

AFと連写

AFは117点(13×9)または425点(25×17)測距のハイブリッド。位相差検出画素の増加によりシングルAFでの合焦性能を向上させたほか、X-H2Sのアルゴリズムも取り入れたことでコンティニュアスAF時の安定性も向上した。

ディープラーニング技術を用いた被写体検出AFを搭載している。対応被写体は人物の顔や目のほか、動物、鳥、自動車、バイク/自転車、飛行機、鉄道。

連写最高速はメカシャッターで15コマ/秒、電子シャッターで13コマ/秒。CFexpress Type Bカードを使えばJPEG、RAW(圧縮、ロスレス圧縮、非圧縮とも)のどちらでも1,000枚以上の連写が可能だ。

また、13コマ/秒で全押し前の13枚も記録できるプリ撮影機能も備えており(全押し後は1,000枚以上)、シャッターチャンスを逃がしにくい。

動画

動画はXシリーズでは初の8K(7,680×4,320)解像度。フレームレートは29.97p。放熱効率を高めたボディ構造によって最長2時間40分もの連続撮影を可能にしている。

また、外部レコーダーを接続すると8K・29.97pの12bit RAWデータ出力にも対応している。

別売で冷却ファンFAN-001(税込3万7,400円)が用意されているのはおもしろい。カメラ背面に装着することで発熱によるトラブルを減らし、安定した動画撮影が行なえる。

電源

バッテリーにはNP-W235(7.2V・2,350mAh)を使用する。価格は税込1万1,000円。静止画の撮影可能枚数はハイパフォーマンスのブーストモード、ファインダー使用で400枚、モニター使用で530枚と多い。省電力のエコノミーモード、ファインダー使用570枚、モニター使用680枚。

充電は付属のACアダプター(コンセント直差しプラグが付属)とUSBケーブルを使ってカメラ内で行なう。充電時間は3時間。

別売のデュアルバッテリーチャージャーBC-W235(税込1万1,000円)とカメラに付属のACアダプター、USBケーブルを使うと2本のバッテリーを同時に充電可能。バッテリー残量がわかる表示パネルを備えている。充電時間は3時間20分だが、出力が30W以上の機器を使用すると最短2時間30分に短縮できる。

その他

握りやすい大型グリップを持つボディ外装。素材についてWebサイト上には記載はないが、防塵・防滴性に加えてマイナス10度の耐低温性も備えている。

グリップの前後に2つのコマンド(電子)ダイヤルを装備。手動での測距点選択のためのフォーカスレバー(ジョイスティック)もある。機能を変更できるボタン類も多く、割り当てられる機能も多彩で、自由度の高いカスタマイズが可能。

搭載するEVFは576万ドットのOLED(有機EL)で、フルサイズ換算のファインダー倍率は0.8倍相当。液晶モニターは3型・162万ドットのバリアングル式だ。

別売で縦位置バッテリーグリップVG-XH(税込7万2,600円)が用意されている。NP-W235を本体内に1本、グリップ内に2本装填できるので、モバイルバッテリーなどを繋がなくても長時間の撮影が可能なのは頼もしい。

X-H2S

2022年7月14日発売

概要

同社のフラッグシップに位置づけられるX-H1(2018年3月発売)の後継として登場した高速仕様モデル。裏面照射積層型のX-Trans CMOS 5 HSセンサーとX Processor 5を搭載。40コマ/秒のブラックアウトフリー連写を実現している。

センサーとエンジン

撮像センサーにはX-Trans CMOS 5 HSを搭載。有効画素数は従来とほぼ同じ2,616万画素だが、同社初となる裏面照射積層型で、従来のX-Trans CMOS 4の4倍の速さで読み出しできる。

画像処理エンジンも新型のX Processor 5。処理速度は従来のX Processor 4の2倍に高速化されている。

センサーとエンジンの両方の高速化によってAFや動画のハイスペック化、連写性能の引き上げがはかれたことに加えて、動体歪みも大幅に低減できたのも見どころだ。

感度の設定範囲は常用でISO 160〜12800、拡張でISO 80〜51200。

なお、シャッタースピードの上限は電子シャッターで1/32,000秒、メカシャッターで1/8,000秒。ここはX-H2と異なる部分だ。

手ブレ補正

手ブレ補正はX-H2と同様に7段分の効果を持つ。センサーシフトのメカは新開発で、新エンジンのパワーと新センシング制御機能などによって、大幅なスペックアップを果たしている。

なお、X-H2には搭載されているピクセルシフトマルチショット機能は本機には搭載されていない。

AFと連写

AFはX-H2と同じく117点(13×9)または425点(25×17)測距のハイブリッド式。連写中の映像表示と独立して位相差検出画素を制御して演算回数を従来の3倍に増強。高速連写中でも高速かつ高精度なピント合わせを可能にしていると言う。

また、AFの予測アルゴリズムの改良などによって動く被写体への追従性が向上したほか、低コントラストでの合焦精度も上がっている。

ディープラーニング技術を用いた被写体検出AFを搭載。人物の顔や目、動物、鳥、自動車、バイク/自転車、飛行機、鉄道に対応。画面内の被写体を自動的に追尾してくれる。

連写はメカシャッターで15コマ/秒、電子シャッターでは40コマ/秒をAF追従、ブラックアウトフリーで実現。連続で撮れる枚数は40コマ/秒時、JPEGで184枚、ロスレス圧縮RAW170枚。連写速度を30コマ/秒に下げればJPEGは1,000枚以上、ロスレス圧縮RAWでも250枚撮れる。

シャッターボタンの全押し前40枚と全押し後110枚の計150枚を40コマ/秒連写で残せるプリ撮影機能も備えている。

動画

高速なセンサーとエンジンに加えて書き込みの速いCFexpress Type Bカードの組み合わせによって6.2K(6,240×4,160)・29.97pの内部記録を実現。放熱効率を高めたおかげで4K・60p動画を最長4時間連続で撮影できる。

さらに、別売の冷却ファンFAN-001(税込3万7,400円)を装着すれば、気温が高い環境でも長時間の動画撮影が可能だ。

電源

使用するバッテリーはX-H2同様、NP-W235(7.2V・2,350mAh)で価格は税込1万1,000円。静止画の撮影枚数は電力消費が大きなブーストモード、ファインダー使用で390枚、モニター使用で530枚とX-H2と大差ない数字。スペックとしてはかなりの省エネだと言える。

充電は付属のACアダプターとUSBケーブルを接続して行なう。ゼロ→フルの充電時間は3時間だ。

別売で2本のバッテリーを同時に充電できるデュアルバッテリーチャージャーBC-W235(税込1万1,000円)が用意されている。

その他

ボディはX-H2と共通で、大きさも重さも同じ。機種名ロゴ以外で両者を区別するのはほぼ不可能だ。防塵・防滴・耐低温(マイナス10度)のタフネス設計となっている。

内蔵EVFは576万ドットのOLED。フルサイズ換算0.8倍相当と倍率は高め。3型で162万ドットのバリアングル式液晶モニターを備える。

別売の縦位置バッテリーグリップVG-XHは税込7万2,600円と高価だが、ボディと合わせて3本のNP-W235を装填できる。長時間のイベント撮影などでシャッターチャンスを逃がす原因となるバッテリー交換の頻度を減らせる。

X-Pro3

2019年11月28日発売

概要

レンジファインダーカメラのような外観のボディに、光学式と電子式の両方のファインダー機能を備えたハイブリッドビューファインダーを搭載。趣味性の高いカメラに仕上がっている。DRシルバー、DRブラック、ブラックペイントの3色が選べるのも特徴だ。

センサーとエンジン

撮像センサーと画像処理エンジンは裏面照射型のX-Trans CMOS 4とX Processor 4の組み合わせ。独自のカラーフィルター配列によってローパスフィルターレスとしながら偽色やモアレを効果的に抑制している。有効画素数は2,610万画素。

感度の設定範囲は常用で160〜12800。拡張時はISO 80〜51200となる。

ボディ内手ブレ補正機能は搭載していない。純正の交換レンズも手ブレ補正機能を内蔵しているのは36本中13本と少なめ。速めのシャッタースピードを心がける、三脚を多用するなどの対策は欠かせない。

AFと連写

AFは像面位相差検出とコントラスト検出を併用するハイブリッド式。手動で選択できる測距点の数は117点(13×9)または425点(25×17)から選択できる。被写体認識は人物の顔と瞳を検出できる。

AFが追従する連写最高速はメカシャッターで11コマ/秒、電子シャッターで20コマ/秒。1.25倍クロップでは最高30コマ/秒連写も可能だ。

連続で撮れる枚数はクロップなし20コマ/秒でJPEGが79枚、可逆圧縮RAW36枚。

ファインダーとモニター

前面右手側のファインダー切換レバーの操作でEVF(電子式)とOVF(光学式)を切り替えられる。

EVFは露出やホワイトバランス、フィルムシミュレーションなどが適用された映像を見ながら撮れるのが強み。スペックとしては解像度369万ドットのOLEDで、フルサイズ換算のファインダー倍率は0.66倍相当だ。

OVFは生の光がタイムラグなしでそのまま見られるメリットがある。倍率は0.52倍で固定となり、装着するレンズの焦点距離に合わせて大きさが変わるブライトフレームで写る範囲を示す仕様。広角系のレンズでのスナップ撮影などに使いやすい。

また、OVFの画面にピントチェックができる小窓を重ね合わせて表示するERF(電子レンジファインダー)機能も活用できるなど、光学と電子のいいとこ取りが楽しめるのが本機のハイブリッドビューファインダーのおもしろさだ。

背面にはフィルムシミュレーションやISO感度、ホワイトバランスなどの情報を表示するサブモニターを装備。引き起こすとその内側に3型・162万ドットの液晶モニターがある。

2つのモニターは本機をフィルムカメラっぽく見せるギミックで、チルト式モニターとしても機能する。

動画

動画はC4K(4,096×2,160)・29.97p記録。連続で撮れる時間は最大15分までという制限がある。フルHD(1,920×1,080)・59.94p記録時は59分まで撮れる。

また、フルHD・120p記録となるハイスピード(ハイフレームレート)撮影も可能。連続で最長6分まで撮影できる。ただし、音声は記録されない。

電源

バッテリーはコンパクトタイプのNP-W126S(7.2V・1,260mAh)。パフォーマンスの設定がノーマルの場合、EVF表示で370枚、モニター表示で310枚撮れる。OVF表示では消費電力が抑えられるため、440枚の撮影が可能となる。

単体の充電器などは同梱されておらず、付属のUSBケーブルを使用しての本体充電となる。出力が5V・500mAの端子に接続した際の充電時間は5時間と長い。

充電時間を短縮したい場合は別売のBC-W126S(税込8,910円)を用意することをおすすめする。ゼロ→フルの所要時間は2時間30分となる。

その他

ボディ外装は上下カバーにチタン合金を、前後カバーにはマグネシウム合金を使用している。最近のカメラでプレス加工のチタン材を使うのはかなりめずらしい。防塵・防滴・耐低温(マイナス10度)の耐候性を備えている。

上面にシャッターダイヤル(感度ダイヤルも同居している)と露出補正ダイヤルを持つクラシカルな操作系に加えて、グリップ部前後のコマンド(電子)ダイヤルによる今風の操作系を搭載。好みなどに合わせて使い分けられる。

一般的な十字キーを持たず、ジョイスティック型のフォーカスレバーで測距点の手動選択やメニュー操作などを行なう。

別売のハンドグリップMHG-XPRO3(税込2万900円)を装着するとホールディング性を向上させられる。本機の特徴でもある隠し液晶モニターの展開にも対応しているし、装着したままバッテリー交換も可能だ。

X-T5

2022年11月25日発売

概要

上位のX-H2と同じ撮像センサーと画像処理エンジンを搭載したX-Tシリーズの最新モデル。画素数アップに加えてAFまわりの高性能化やボディ内手ブレ補正の強化など、さまざまな部分で大きなスペックアップを果たしている。オーソドックスなブラックとクラシックカメラ感が味わえるシルバーの2色が選べる。

センサーとエンジン

撮像センサー、画像処理エンジンはともにX-H2と同じ第5世代に更新。裏面照射型有効4,020万画素のX-Trans CMOS 5 HRは独自のカラーフィルター配列によってモアレや偽色を低減。キレのいい描写が得られるローパスフィルターレス仕様としている。

X Processor 5は従来の2倍の処理速度を持つ。センサーとエンジンによって電子シャッター最高速1/180,000秒を実現しているのも特徴だ。

感度は常用でISO 125〜12800の範囲で設定可能。拡張時はISO 64〜51200となる。

手ブレ補正

ボディ内手ブレ補正の効果はX-H2と同じく7段分。先代のX-T4の6.5段分をわずかながら上まわった。

手ブレ補正機能を持つ純正レンズとの協調動作も可能。効果は装着するレンズの焦点距離などによって異なる。

X-H2と同じくピクセルシフトマルチショット機能を搭載。三脚と専用のPixel Shift Combinerソフトウェアの使用が必須となるが、1.6億画素の高精細記録が可能となる。

AFと連写

AFは像面位相差検出とコントラスト検出を併用するハイブリッド式。シングルポイントAF時はフォーカスエリアを117点または425点から選択できる。新センサーの位相差検出画素が増加したことでシングルAF時の合焦性能やコンティニュアスAF時の安定性の向上もはかられている。

被写体検出にはディープラーニング技術を応用。人物(顔や目)、動物(犬、猫)、鳥、自動車、バイク/自転車、飛行機、鉄道に対応するが、検出する対象は手動で選択する必要がある。

AFが追従する連写最高速はメカシャッターで15コマ/秒。X-H2(CFexpress Type BとSDのデュアルスロット)と違って、本機はSDカードのデュアルスロット(両方ともUHS-II対応)ということもあって、連続撮影可能な枚数はJPEGで119枚、ロスレス圧縮RAWで22枚と多くない。電子シャッターでは13コマ/秒に落ちるが、JPEGで163枚、ロスレス圧縮RAWで29枚まで連写できる。

1.29倍クロップ撮影時は最高20コマ/秒。JPEGで168枚、ロスレス圧縮RAWで41枚の連写が可能だ。

また、全押し前の瞬間を記録できるプリ撮影機能も装備。フル画素では13コマ/秒、クロップ時は20コマ/秒となる。

動画

動画スペックも記録メディアの違いが影響しているようで、X-H2が8Kに対応しているのに対して、本機は6.2K(6,240×3,510)・29.97p記録となる。

外部レコーダー接続によって6.2K・29.97pの12bit RAWデータ出力が可能だ。

電源

バッテリーはNP-W235(7.2V・2,350mAh)でX-H2と共通。価格は税込で1万1,000円だ。静止画の撮影可能枚数はブーストモード、ファインダー使用で500枚、モニター使用で570枚。パフォーマンスの設定をノーマルモードやエコノミーモードに切り替えると撮影可能枚数は増える。

充電は付属のACアダプターとUSBケーブルによる本体充電。ゼロ→フルの場合は3時間で充電完了となる。

時間短縮をはかるには別売のデュアルバッテリーチャージャーBC-W235(税込1万1,000円)を用意するといい。カメラに付属のACアダプターとUSBケーブルの併用では3時間20分かかるが、30W以上の出力の機器を使えば2時間30分に短縮できる。しかも、2本のバッテリーを同時に充電できるので効率的だ。

その他

ボディの外装素材についてはX-H2同様にWebサイト上には書かれていないが、おそらくはマグネシウム合金製だろう。シーリング個所の数はX-H2の79点にはおよばないが、それでも56点を数える。防塵・防滴だけでなくマイナス10度の耐低温仕様となっている。

ボディ上面にはシャッターダイヤルや感度ダイヤル、露出補正ダイヤルなどがあって、メカっぽさを堪能できる。しかし、シャッタースピードを1/3段ステップで設定したいなどの場合はグリップ部前後のコマンド(電子)ダイヤル操作に切り替える必要がある。

内蔵EVFの解像度は369万ドットでX-H2(576万ドット)に譲る。フルサイズ換算のファインダー倍率0.8倍相当は同じだ。3型・184万ドット液晶モニターはX-H2と違って3方向チルト式。縦位置撮影にも対応可能で、ハイ/ローアングルへの移行がバリアングル式よりスピーディーなのが強みだ。

別売でアルカスイス互換のクイックシュープレートとしても機能するハンドグリップMHG-XT5(税込2万5,300円)が用意されている。本機のグリップはこのクラスのカメラとしては控えめなので、重さのあるレンズを多用するなら検討してもいいだろう。

ただし、MHG-XT5の重さと価格を加えるとX-H2との差はぐっと縮まることも考えるべきだろう。

X-S10

2020年11月19日発売

概要

X-Hシリーズをコンパクト化したかのような、しっかり握れるグリップを備えたエントリーユーザー向けモデル。小型軽量ながらボディ内手ブレ補正や6Kオーバーサンプリングによる4K動画など、価格以上の内容の濃さが魅力だ。

センサーとエンジン

撮像センサーはX-Trans CMOS 4。有効2,610万画素のローパスフィルターレス仕様だ。画像処理エンジンにはX Processor 4を搭載する。この組み合わせはX-Pro3と共通だ。

感度の設定範囲は常用でISO 160〜12800。拡張ではISO 80〜51200の範囲となる。

手ブレ補正

コンパクトなボディサイズに合わせて新開発したセンサーシフトメカを内蔵。X-T4に搭載されているものと比べて体積も重さも30%減としながらも手ブレ補正効果は6段分と良好だ。

手ブレ補正機能を内蔵したレンズとの組み合わせでは、ボディとレンズの両方で協調動作。望遠域での補正効果を高めている。

AFと連写

手動選択時には117点または425点測距となるハイブリッドAFを搭載。AFスピードは0.02秒と速く、上位モデルにも引けを取らない。被写体認識は人物のみ。顔および瞳の検出が可能だ。

連写最高速はメカシャッター時8コマ/秒、電子シャッター時は20コマ/秒。1.25倍クロップ+電子シャッターでは30コマ/秒連写も可能となる。連続で撮れる枚数は20コマ/秒時でJPEGは32枚、RAWはロスレス、圧縮、非圧縮とも17枚。シャッターチャンスが連続するようなシーンでは少々心もとないスペックだ。

動画

動画はC4K(4,096×2,160)解像度、フレームレート29.97p。連続で30分までの時間制限がある。センサー幅全体を使ってとらえた映像をリサイズして高解像に仕上げる6Kオーバーサンプリングを採用している。

フルHD(1,920×1,080)では240pのハイフレームレート撮影が可能。連続撮影時間は3分と短いが、10倍のスローモーションが撮れるのは強みと言える。

また、動画撮影時には電子手ブレ補正が設定可能。さらに、フレーミングを固定して撮影する際の手ブレを強力に補正するブレ防止モードブースト機能も備えている。

電源

バッテリーはX-Pro3と同じNP-W126S(7.2V・1,260mAh)を使用する。ブーストモードでの撮影可能枚数はファインダー使用で235枚、モニター使用で260枚。ノーマルモードではファインダー使用で300枚、モニター使用で325枚に増える。容量から考えれば良好なスペックだ。

充電器は同梱されておらず、付属のUSBケーブルを使っての本体充電となる。出力が5V・500mAのポートからの場合の充電時間は5時間と長い。

効率的に充電したいのであれば、別売の充電器BC-W126S(税込8,910円)を用意すると、充電時間を半分の2時間30分に短縮できる。

その他

ボディ外装は上カバーと前カバーにマグネシウム合金を採用。剛性と放熱性を確保している。防塵・防滴性はない。

Xシリーズと言えば、クラシックカメラのようなアナログ感覚の操作系が特徴だが、本機は今風。他社のカメラと併用するならかえってあつかいやすい。エントリークラスながら、グリップの前後に2つのコマンド(電子)ダイヤルを装備。露出調整などを快適に行なえる。

一般的な十字キーは持たず、メニュー操作などもフォーカスレバー(ジョイスティック)で行なう。

内蔵のEVFはフルサイズ換算0.62倍相当、236万ドットのOLED。モニターは3型・104万ドットのバリアングル式となっている。

北村智史(きたむらさとし)滋賀県生まれ。大学中退後、カメラ量販店で販売員として勤務しながらカメラ専門誌にて記事執筆を開始。その後編集者兼ライターとしてメカ記事等の執筆にたずさわる。1997年からはライター専業となる。現在は北海道札幌市在住。