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富士フイルム説明会で聞いた「X-Pro3」詳報

外観写真とメニュー画面を多数掲載

FUJIFILM X-Pro3

富士フイルムは、ミラーレスカメラ「FUJIFILM X-Pro3」のブラックを11月28日に、DRブラックとDRシルバーを12月中旬に発売する。価格はオープン。店頭予想価格はブラックが税別21万4,500円前後、DRブラックとDRシルバーがそれぞれ税別23万9,500円前後。本稿では同日に行われたメディア向け説明会の内容をお届けする。

説明会場およびX-Pro3の作品ギャラリーが設けられた東京・丸の内の「FUJIFILM Imaging Plaza」ほか、六本木の「FUJIFILM SQUARE」では本日からX-Pro3の実機展示を行うという。また10月26日には東京・上野でファンミーティングイベント「FUJIFEST GLOCAL」が開催。X-Pro3をはじめとした製品のタッチ&トライやトークショーが行われる。
ブラック
DRブラック
DRシルバー

コンセプトと"チタン仕上げ"

X-Pro3は後述するHidden LCDといった要素や、"引き算の美学"という外観スタイリングを前提とした「PURE PHOTOGRAPHY」を標榜。これまでのX-Proシリーズで継続してきたコンセプトをより深め、商品企画担当の上野氏自身が「3m離れたら(X-Pro1/X-Pro2とも)見分けが付かないぐらい」と評する一貫した外観デザインも踏襲している。

商品企画担当の富士フイルム上野隆氏。X-Pro3を手に。

外観部分で目新しいのは、トップカバーやベースプレートといった外装部分にチタンを採用した点。特にデュラテクトを採用したカラーにおいては、ビッカース硬度でサファイアに迫る耐傷性を誇る。「いつまでも新品同様に、長く使ってほしい」とのこと。

DRブラックは腕時計のケースなどに施されるDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングを施し、DRシルバーは表面に硬化層を作るMRK処理がなされている。使用に伴うスレなどのエイジングを楽しむならブラックペイント、素材そのものの色を楽しむにはDRシルバー、使用中に手の脂などが付着して独特の質感を楽しめるのがDRブラック、という印象だ。

DRブラック。「(手の汚れを)あえて拭かずに外観を撮ってほしいぐらい」という上野氏のこだわり。拭き取り用クロスも製品に同梱する。
説明会では、カッターの刃でカメラ表面をこするテストの様子も上映された。
左がX-Pro3のデュラテクト仕上げ、右はX-Pro2のブラックペイント。
X-Proシリーズに施されてきた「フロントウェーブライン」は、1970年代頃の日産スカイラインで"サーフィンライン"と呼ばれた特徴的なプレスラインのような存在だという。
特に露出しやすい部分にチタン外装を採用。
プレス加工で作られている。
研磨は機械と人間の手で行われる。
底面には"TITANIUM"の文字が入る。

外形寸法は140.5×82.8×46.1mm。重量は約497g(バッテリー、SD含む)、約447g(本体のみ)。X-Pro2からは厚さが0.2mm、重量が2g増えた。

絵作り機能の新要素

富士フイルムのメインとなるカラーネガを再現したという新フィルムシミュレーション「Classic Neg.」や明瞭度補正の搭載をはじめ、グレインエフェクト、ホワイトバランスといった設定項目の充実がポイント。多重露出は最大9枚に拡大。HDR設定は3枚合成による「800%」も選べるようになった。

VelviaとClassic Neg.の比較。
明瞭度のパラメーターを新搭載。±5に調節できる。
グレイン・エフェクトは、強度を「強・弱・OFF」、粒度を「大・小」から選べる。
トーンカーブの調節画面。
カラークロームエフェクト「ブルー」の作例。左がオフ、右がオン。
新機能「B&Wモノクロマチック」。

撮影機能周り

撮像素子はAPS-Cサイズ相当の有効約2,610万画素「X-Trans CMOS IV」センサー。画像処理エンジンはX-Processor 4。ともに一眼レフスタイルのX-T3と同じだという。感度はISO 160-12800(拡張でISO 80-51200)。動画記録は最大4,096×2,160/29.97p・200Mbpsに対応。120fpsのハイスピード動画も記録できる。

シャッター速度は最高1/8,000秒。シンクロ速度は1/250秒以下。電子シャッター時の最高シャッター速度は1/32,000秒となっている。連写速度は最高約11コマ/秒(JPEGで145枚、可逆圧縮RAWで42枚、非圧縮RAWで36枚まで)。

AF方式はコントラストAFと像面位相差AFによる「インテリジェントハイブリッドAF」。位相差AFは-6EV(F1.4、1秒、ISO 12800)までの低輝度に対応しているという。X-Pro2は同-3EV。

レンズ側にフォーカスリミットスイッチがなくても、対応レンズではAFリミッターの機能が使える。

EVFは0.5型・約369万ドットの有機ELパネルを採用。アイポイントは約16.8mm。ファインダー倍率は0.66倍。視度調整機構も内蔵している。OVFの倍率は約0.52倍で、23/27/35mmレンズを組み合わせたスナップ撮影での使用にフォーカスしている。以前はタイムラグや色再現の観点からOVFを重要視していたが、今では表示の遅延も減り、80〜90%のユーザーはEVFのみでX-Proシリーズを使っているということも踏まえ、EVF重視の設計にしたという。

フレームレートはX-T3同様の100fpsとした(X-Pro2は85fps)。「残像低減機能」を利用することで、ライブビューの各フレーム間にブラックフレームが入り、倍速の200fps駆動をしたような残像低減効果があるとしていた。

有機ELでも十分な輝度を得られるようになったことなどから、EVFパネルを液晶から切り替えた。
色再現域も拡大しているという。
OVFはスナップ撮影向けとして残した。倍率は切り替えられなくなったが、歪曲を抑えたほか、アイポイントを長くするなどの改良がある。
消費電力設定でパフォーマンスを「ブースト」にすると、「残像感低減」が選べるようになる。
ライブビューにブラックフレームを挿入することで、残像感を低減するという機能。

サブモニターは1.28型のカラーメモリー液晶。液晶モニターは3.0型約162万ドットのタッチパネル式。下180度にチルトする。

サブモニター。フィルムパッケージのようなデザインに、設定感度などが組み合わせて表示される。バックライトを入れると1mm厚くなるそうで、Hidden LCDのためにボディ全体が厚くなることを嫌ってここでは省略された。
メニュー画面内の「サブモニター表示」を切り替えると、一般的な情報表示パネルのような文字主体の表示となる。
液晶モニターを開いたところ。カメラ設定が馴染んでくるにつれ、ここを開く機会が減ってくるのがX-Pro3流の撮影スタイルだろう。EVF内でも表示は見られる。

通信機能はWi-Fi/Bluetoothに対応。デュアルSDスロットを装備している。USB端子はType-C。

バッテリーはX-Pro2と同じ「NP-W126」「NP-W126S」に対応。撮影可能枚数は約370枚(ノーマルモード時EVF)、約440枚(ノーマルモード時OVF)。

デュアルSDスロット。
USB Type-C端子を搭載。

メニュー画面

設定画面の背景を透過させる設定が加わった。
クイックメニューの表示数を減らせる設定も、X-Pro3で追加。
表示数を4つに減らしたイメージ。

日本市場は「8割方が呆れつつ褒めてくれる」

9月のイベントにおける開発発表後、独特のコンセプトを持つX-Pro3には賛否両論の声があったそうだが、その反応の多さを通じて、市場にインパクトを与えられたことが実感できたという上野氏。特にX-Pro3が標榜する"引き算の美学"が受け入れられやすいという日本市場では、「8割方は呆れつつ(でもこれは富士フイルムにしかできないと)褒めてくれる」そうだ。

本誌:鈴木誠