新製品レビュー

FUJIFILM X-T5

コンセプトは“原点回帰” 新レンズ「XF30mmF2.8 R LM WR Macro」の実写も

11月発売の富士フイルム「X-T5」は、APS-Cサイズのセンサーを搭載したミラーレスカメラ。2020年4月に発売された「X-T4」の後継モデルにあたります。

コンセプトは原点回帰。これは、「アナログライクで小型・軽量・高画質なミラーレスカメラ」という、X-Tシリーズが当初から掲げていたコンセプトにいま一度立ち戻る、ということのようです。原点回帰とは言っても、X-T5は第5世代のイメージセンサーと画像処理エンジンを搭載しているなど、スペックは最新のそれで、前モデルのX-T4より大幅な進化を遂げています。

シェイプアップして精悍になったボディ

「X-T5」の高さ×幅×奥行・質量(バッテリーとメモリーカード含む)は、91×129.5×63.8mm・約557gとなっていて、上位機種のX-H2とX-H2S(いずれも136.3×92.9×84.6mm・約660g)と比べると、ひと回り小さく軽くなっています。

さらに言うとX-T5は、前モデルのX-T4/T3/T2よりも高さと幅が小型化され、軽量化も図られています。初代X-T1より少し大きいくらい。原点回帰と言う通り、小型・軽量に戻すことを目指した結果でしょう。実際、X-T5のデザインを見ると、センターファインダーが低く抑えられていて、横幅が狭くなっている分、ずいぶん精悍さが増しているように感じますね。

進化・向上した操作性とスペック

そして、ボディ上面のダイヤルを駆使する「3ダイヤルオペレーション」も継承されました。X-H2とX-H2Sは、ダイヤルオペレーションから離れ、モードダイヤルとコマンドダイヤルで操作するスタイルになっていたので、この点については従前の富士フイルムらしいスタイルを好む人にとっては歓迎すべきところでしょう。

感度ダイヤルです。メニューからでなく、ダイヤルで直接好みのISO感度に設定できるのは分かりやすくてイイです。ISO 125が常用感度になったのは、同じイメージセンサーと画像処理エンジンを搭載するX-H2と同じ。

シャッタースピードダイヤルです。アナログ感あります。往年の銀塩カメラのように、自分でダイヤルを回してシャッター速度を調整するというのは、やはり気分が盛り上がるというものです。

アナログ感があるだけでなく、ちゃんと最新性能も取り入れています。シャッタースピードダイヤルで設定できるのは、メカシャッター時の最高速度である1/8,000秒までですが、電子シャッターだと、1/180,000秒という高速なシャッター速度をリアコマンドダイヤルで設定できます。

フロント/リアコマンドダイヤルは、操作感触が改善されており、またX-Tシリーズが代々受け継いできたプッシュ操作を採用しています。フロントダイヤル押しでは絞り値とISO感度の切り替えができたり、リアコマンドダイヤル押しでは撮影時や再生時のピント位置拡大表示ができたりして、とても便利だったのでこれは嬉しい。X-H2とX-H2Sはともに、コマンドダイヤルのプッシュ操作が見送られているのですよね。

また、背面のボタン類は大型化され、露出補正ダイヤルは親指で回しやすい位置に変更されるなど、操作性の向上が図られています。

レトロな形状のシャッターボタンは、従来モデルより前方に配置され押しやすくなり、同軸上にある電源レバーもONとOFFの切り替えがしやすいです。

3方向チルト式背面モニターが復活。動画撮影はともかく、静止画撮影ではやっぱりレンズの光軸上にモニターがある方が、俄然撮りやすいと感じます。

縦位置撮影でも、モニターが光軸上にくるのが3方向チルト式のイイところ。この仕様から、X-T5はより静止画撮影にウェイトを置いたカメラであることが感じとれるというものです。

EVFは、X-H2とX-H2Sで採用されて好評を得ている、倍率0.8倍、視野率約100%、アイポイント約24mmのファインダーが搭載されました。筆者もX-H2/X-H2Sを試写したときに、素晴らしいくらいの見やすさに感激しました。倍率0.75倍、アイポイント約23mmのX-T4と比べると、視認性の良さは大きく異なります。

記録メディアスロットはSDカードのダブルスロット。両スロットとも、SDXC(UHS-I・UHS-II、ビデオスピードクラスV90)まで対応します。

X-H2とX-H2Sは、CFexpress Type Bカードにも対応していましたが、8K動画が撮れるX-H2や、超がつくほどの高速連写機であるX-H2Sのようなスペックではないので、SDカードで十分という判断でしょう。実際、現状ではスチル中心の撮影でしたら、SDカードの使用でほとんど問題を感じるようなことはないはずです。

端子類です。上から「マイク端子」、「リモートレリーズ端子」、「USB Type-C端子(USB 3.2 Gen 2x1)」、「HDMIマイクロ端子」となっています。

X-H2とX-H2Sは、HDMI端子がフルサイズのType Aでしたが、本機ではType DのHDMIマイクロ端子が採用されています。HDMI機器と接続するならType Aの方が利便性高いのですけど、こうしたところも、本機が動画撮影よりスチル撮影を重視していることのあらわれなのかも知れません。

対応バッテリーは「NP-W235」で、これはX-T4、X-H2、X-H2Sと同じです。バッテリータイプは同じですが、本機は徹底的に省電力化に力が入れられているため、撮影枚数が向上しています。本機X-T5が最大約740枚、前モデルX-T4は最大約600枚、X-H2は最大約680枚、X-H2Sは最大約720枚と、Xシリーズ中でも最高となっています(数値はいずれもエコノミーモード時)。

第5世代のイメージセンサーと画像処理エンジン

「X-H2」が搭載するイメージセンサーは、シリーズ第5世代となる4,020万画素の「X-Trans CMOS 5 HR」で、画像処理エンジンは同じく第五世代の「X-Processor 5」になります。「X-Trans CMOS 5HR」はX-H2と同じで、「X-Processor 5」はX-H2/X-H2Sと同じ。つまり、撮影できる画像の画質およびAF性能は、上位機であるX-H2と同じと考えて問題ないと思います。

X-T5 XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS(F5.6・4.3秒・55mm)ISO 125

「APS-Cサイズセンサーで40MPなんて無理がないか?」と初めは思ったものの、実際に撮影してみると、まったく問題なく見事な解像性能を見せてくれたのは、X-H2の実写結果と同じ。画素ピッチが狭小でも、解像感は高画素に相応しいだけの画作りが可能。APS-Cサイズセンサーに4,000万画素が到来した瞬間を知ることになりました。

X-T5 XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS(F5.6・1/26秒・55mm)ISO 128000

「X-Trans CMOS 5 HR」が裏面照射型であることと、「X-Processor 5」の処理速度が優れていることから、高画素ながらも高感度性能は優秀で、常用最高であるISO 12800でもノイズが少なく、ディテール再現性に優れた写真が撮れます。

厳密に比較したわけではありませんが、AF性能もX-H2と同等といった印象です。つまり、X-H2Sほどではないけど最新の高性能デジタルカメラとして通用するだけの優れたAF性能ということ。ただ、動体撮影はX-H2Sにかなわないものの、位相差AFセンサーが高密度化したことで、止まっている被写体へのAF精度はむしろ高いということです。

もちろん、X-Tシリーズの中において、最も優れたAF性能であることは言うまでもありません。

X-T5 XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS(F3.6・1/220秒・19mm)ISO 800

ディープラーニング技術を用いて開発された被写体検出AF機能を搭載し、「動物」、「鳥」、「クルマ」、「バイク&自転車」、「飛行機」、「電車」に対応していることも、X-H2/X-H2Sと同じ。

X-T5 XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS(F4・1/340秒・55mm)ISO 125

連続撮影速度(クロップなしで)が、メカシャッター時に最高約15コマ/秒、電子シャッター時に最高約13コマ/秒であることは、同じイメージセンサーと画像処理エンジンを搭載しているX-H2と同じです。

作例を交えながら

X-T5 XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS(F4・1/340秒・55mm)ISO 125

X-H2でも感じましたが、撮るたびに詳細な画像があがってきて驚かされます。ひとしきり撮り終えたあとには、すっかり4,000万画素APS-Cの虜になっている自分がいて、ちょっと怖くなったりもします。もちろん、画素数だけの問題でなく富士フイルムの画作りの巧みさもあると思います。


X-T5 XF30mmF2.8 R LM WR Macro(F2.8・1/850秒・30mm)ISO 125

新レンズの「XF30mmF2.8 R LM WR Macro」で撮影しました。最新レンズの描写性能が高いということもありますが、前後のボケの中でピントの合った部分が、高い解像感のおかげで際立っています。なるほど、高解像だとこうした利点もあるのだなと納得しました。望遠レンズでも良い画が撮れそうです。

X-T5 XF30mmF2.8 R LM WR Macro(F2.8・1/105秒・30mm)ISO 125

鳥がいたので被写体検出AFの対象を「鳥」にして撮影。なんなく瞳にピントを合わせてくれるので簡単に撮れました。X-H2やX-H2Sと差をつけることなく、同等の被写体検出AFを搭載してくれたことは嬉しいこと。いちど慣れてしまうと、被写体検出AFなしで撮るのを躊躇ってしまうレベルですから。

XF30mmF2.8 R LM WR Macro

X-T5 XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS(F4.5・1/13秒・25mm)ISO 800

いじって喜びを感じるダイヤルオペレーションのカメラなので、やっぱりスナップ撮影が楽しい。ちょうど良いサイズ感と軽さで持ち歩いても苦にならず、ファインダーの見え具合も良いとあって、ついつい撮影枚数が増えてしまいます。さらに、最大7段分というボディ内5軸手ブレ補正も効きますので、多少シャッター速度が遅くなっても安心できるところがまたイイ。


X-T5 XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS(F2.8・1/105秒・18mm)ISO 400

ややローアングルでしたので、3方向チルトモニターを引き出して撮影しました。「やっぱり静止画撮影は光軸とモニターが揃っていると楽だな~」と素直に感じるところです。複雑な機構なのにそれほど厚みが増すこともなく、これだけでX-T5を選ぶ理由になりそう。


X-T5 XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS(F4・1/28秒・55mm)ISO 125

フィルムシミュレーションに「ノスタルジックネガ」が追加されました。1970年代に沸き起こったいわゆる「ニューカラー」の世界感を再現するもの。X-H2/X-H2Sにはありますが、X-T4には搭載されていなかったフィルムシミュレーションです。

これで十分と思える動画撮影機能

X-T5は、最大「6.2K/30p」(4:2:2 10bit内部記録)の動画記録に対応します。同じイメージセンサーと画像処理エンジンを搭載したX-H2の最大は8K/30pでした。なぜ? と思うのですが、これは熱処理の問題が大きいそうです。

6.2Kが撮れることから、オーバーサンプリングによる高品質な4K動画「4K HQ」(4K/30p)記録が可能です。X-H2の8Kオーバーサンプリングほどではありませんけど、通常の4K/30pよりモアレやジャギーが少なく色の再現性が高い動画を撮ることができます。

動画で比べてみると、4K HQ(6.2Kオーバーサンプリング)の方が、通常の4Kよりいくらか高画質であることが分かると思います。ただ、それ以上に画角の変化が気になってしまいます。X-H2の4K HQ(8Kオーバーサンプリング)では画角の変化はありませんでした。

6.2K動画は、どうやらドットバイドットで6.2Kの範囲(6,240×3,510)を撮影し、それをオーバーサンプリングで4K(3,840×1,080)にしているため、画角が狭くなるようです。

一般的には十分な高画質動画の4K/60pももちろん撮影できるのですが、こちらも画角が狭くなってしまいます。画角が狭くなりつつも、4K/30pより滑らかな動きの動画を撮ることができますので、滑らかさを重視するなら重要でしょう。

少しややこしい結果でしたが、Vlogでの自撮り撮影のように画角の広さが大切な場合は通常の4K/30p、画角は狭くなってもイイので画質重視なら4K HQ、同じく画角は狭くなっても構わず動きの滑らかさ重視なら通常の4K/60pということになります。

ややこしくはありますが、静止画重視でカメラを選びたい人にとっては、十分な動画性能と言えると思います。

また、動画の撮影可能時間は、CIPA規格準拠で、実撮影電池寿命が6.2K/30pで約90分、連続撮影電池寿命が6.2K/30pで約130分となっています。X-T5はバッテリーグリップが用意されていないため、撮影可能時間は付属のバッテリー1個使用時の値です。

まとめ

同じイメージセンサーと同じ画像処理エンジンを搭載したX-H2には、「40MP推奨レンズ」というものが設定されていました。しかし今回のX-T5では、それが表記されていないうえに推奨レンズでもない「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」がキットズームに設定されているところをみると、やはり「推奨」というのは富士フイルムが説明を丁寧にしすぎた結果だったようです。Xマウントレンズはいずれも優秀なレンズばかりですので、気にせず使っていこうと筆者は思いました。

さて、「小型軽量高画質」と「3ダイヤルオペレーション」ということで、原点回帰を目指したX-T5ですが、一言で言えば、動画撮影にもリソースを割いたマルチなX-H2/X-H2Sと違って、より静止画撮影ファンに向けたカメラだと感じました。

それを端的に表しているのが、先述の「3ダイヤルオペレーション」の継承と、「3方向チルト式モニター」なのではないかと思います。動画撮影を視野に入れるとなんとも微妙な仕様かもしれませんが、静止画撮影の視点からはむしろ非常に的を射た仕様になるのです。

X-H2と同じイメージセンサーと同じ画像処理エンジンを搭載していて、これまでのAPS-Cミラーレスでは撮れなかった高画質を実現したカメラとしては、かなりのボーナスプライスだと思います。X-H2S、H-H2、X-T5と連続で登場したわけですが、これはなかなか選択が難しい。難しいだけに、自分の撮影スタイルを見直して、自分に最適なカメラはどれかを真剣に考えてみたくなります。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。